ニゴイ

ニゴイ
	ニゴイ Hemibarbus barbus ニゴイの成魚せいぎょ（筑後川ちくごがわ水系すいけい）
分類ぶんるい
学名がくめい
	Hemibarbus barbus; (Temminck et Schlegel, 1846)
和名わみょう
	ニゴイ（似に鯉こい）
英名えいめい
	Japanese barbel

ニゴイ（似に鯉こい、鯫、Hemibarbus barbus）は、コイ科か・カマツカ亜あ科かに分類ぶんるいされる魚さかなの一種いっしゅで、急流きゅうりゅうでない川かわや湖みずうみ沼ぬまなどに生息せいそくする日本にっぽんの固有こゆう種しゅの淡水魚たんすいぎょ。塩分えんぶん耐たい性せいを有ゆうし海水かいすい中ちゅうでの生息せいそくも可能かのうである^[1]。

形態けいたい[編集へんしゅう]

体長たいちょうは最大さいだい70cmに達たっする。成魚せいぎょの体からだ色しょくは緑みどり褐色かっしょくで、1対ついのひげを持もつなど和名わみょうどおりコイに似にるが、口吻こうふんが長ながく突出つきだし^[2]、口くちは下向したむきにつく^[2]。体型たいけいは細長ほそながい流線型りゅうせんけいを示しめし、より流水りゅうすいに適てきする形態けいたいを示しめす^[2]。背鰭せびれはコイのような前後ぜんごに長ながい不等ふとう脚あし台形だいけいではなく、小ちいさく三角形さんかっけい^[2]。尾おびれは二又ふたまたが深ふかい。

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅう北部ほくぶに分布ぶんぷする。このうち中部ちゅうぶ地方ちほう以北いほくの本州ほんしゅうと九州きゅうしゅう北部ほくぶのものがニゴイで、本州ほんしゅう西部せいぶと四国しこくのものは近きん縁えん種しゅコウライニゴイ H. labeo (Pallas, 1776) (Barbel steed) であるとされている。コウライニゴイは朝鮮半島ちょうせんはんとうから中国ちゅうごく、台湾たいわんまで分布ぶんぷする。

生態せいたい[編集へんしゅう]

川かわの中流ちゅうりゅうから下流かりゅう、大小だいしょうの湖沼こしょうと、淡水たんすい域いきの極きわめて広範囲こうはんいに生息せいそくする。水みずの汚よごれにも比較的ひかくてき強つよいが、低てい酸素さんそへの耐たい性せいは高たかくない。汽水域すいいきにも生息せいそくできるが海水かいすい耐たい性せいは無なく、塩分えんぶん濃度のうど 0.2%以下いかの水域すいいきに多おおく、塩分えんぶん濃度のうど 1.5%以上いじょうの水域すいいきでは捕獲ほかくされなかった^[3]。小石こいしや砂すな底そこがある水域すいいきを好このむが、それ以外いがいでも生息せいそくしている。また、低層ていそうを泳およいでいることが多おおいが、止とめ水すいを好このむコイ、フナよりも流水りゅうすいへの適応てきおう性せいが高たかい。産卵さんらん期きは水温すいおんの高たかい地域ちいきほど早はやく4月がつ-7月がつで、直径ちょっけい3mmほどの粘着ねんちゃく性せいの卵たまごを産うむ。稚魚ちぎょは体側たいそくに黒くろい斑点はんてんが10個こ前後ぜんこう並ならんでいるが、成長せいちょうすると斑点はんてんが消きえる。繁殖はんしょく期きのオス個体こたいには、「追つい星ほし」と呼よばれる白色はくしょくの瘤こぶ状じょう小しょう突起とっき物ぶつが出現しゅつげんする。

1980年代ねんだい後半こうはんに筑後川ちくごがわで行おこなわれた調査ちょうさによれば、生後せいご1年ねんから3年ねん程度ていどを感かんじ潮しお域いきで過すごし、以降いこうは20km以上いじょう上流じょうりゅうの産卵さんらん域いきのある浅瀬あさせ周辺しゅうへんに移動いどうする^[3]。

食しょく性せい[編集へんしゅう]

雑食ざっしょく性せいであるが餌えさは季き節ぶし毎ごとに変化へんかし、生息せいそく水域すいいきで利用りようしやすいものを餌えさとしている^[4]。体長たいちょう 40mm程度ていどまでの稚魚ちぎょ期きはプランクトン、成長せいちょうすると小しょう魚さかな、水生すいせい生物せいぶつ、藻類そうるい、小型こがた二枚貝にまいがいなどを食たべる^[5]。また、成長せいちょうするにつれて顕著けんちょな魚さかな食しょく性せいを示しめし^[6]、大型おおがた個体こたいはルアーでも釣つれるようになる^[7]。なお、発達はったつした咽頭いんとう骨こつと咽頭いんとう歯ぱを備そなえており、摂食せっしょくした餌えさはそこで噛かみ砕くだかれて消化しょうか管かんに送おくられる^[5]。

漁獲ぎょかく[編集へんしゅう]

ニゴイを目当めあてに漁獲ぎょかくすることは少すくないが、栃木とちぎ県けんなどではサイタタキ漁りょう^[8]と呼よばれる専せん門もんの漁りょうが行おこなわれる。コイやフナ、ウグイ、ウナギなどの大型おおがた淡水魚たんすいぎょと一緒いっしょに漁獲ぎょかく（混こん獲え）されることがある^[6]。その一方いっぽう、商品しょうひん価値かちが低ひくく大型おおがたに育そだち膨大ぼうだいな数かずに繁殖はんしょくする雑魚ざこであり、シラスウナギやモクズガニなども捕食ほしょくすることから、地域ちいきの漁協ぎょきょうによっては駆除くじょ目的もくてきの漁獲ぎょかくも実施じっしされる^[9]。

小骨こぼねが多おおいが、白身しろみの上品じょうひんな肉質にくしつで食味しょくみは良好りょうこうな魚さかなであり^[10]、唐揚からあげなどで食たべられる他ほか、ヒラメの代用だいよう魚ぎょとされたこともある^{[要よう出典しゅってん]}。旬しゅんは春はるとされている。

味あじは良よいが骨ほねが多おおく食たべにくい雑魚ざことして扱あつかわれ、蒲鉾かまぼこや天てんぷらの材料ざいりょうとして使つかわれてきた。

別名べつめい（地方ちほう名めい）[編集へんしゅう]

ミノ
- 青森あおもり県けん
セータ
- 関東かんとう地方ちほう
アラメ
- 長野ながの県けん
マジカ
- 滋賀しが県けん
- 京都きょうと府ふ
キツネゴイ
- 大阪おおさか府ふ
ヒバチゴイ
- 奈良なら県けん
イダゴイ
- 岡山おかやま県けん

など。

近きん縁えん種しゅ[編集へんしゅう]

ニゴイ属ぞく (Hemibarbus) の魚さかなは中国ちゅうごくを中心ちゅうしんとした東ひがしアジア地域ちいきに分布ぶんぷし、8種類しゅるいほどが知しられる。日本にっぽんではニゴイ、コウライニゴイの他ほかにズナガニゴイ H. longirostris (Regan, 1908) が近畿きんき地方ちほうと中国ちゅうごく地方ちほうに分布ぶんぷしている。全長ぜんちょうは20cmほどで、体からだの背中せなか側がわは黄き褐色かっしょくの地ちに小ちいさな褐色かっしょくの斑点はんてんがたくさんある。他たの2種類しゅるいに比くらべると小型こがたで外見がいけんも異ことなる。

野生やせい下かのコウライニゴイ（三重みえ県けん）。
ニゴイ（左ひだり）とコウライニゴイ（右みぎ：下しも唇くちびるの皮かわ弁べんが発達はったつ）の比較ひかく。

ギャラリー[編集へんしゅう]

ルアーにより釣つり上あげられた個体こたい。繁殖はんしょく期きの追つい星ほしが出現しゅつげんしている

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ 石崎いしざき大介だいすけ, 淀よどみ太ふと我わが、「耳みみ石せき微量びりょう元素げんそ分析ぶんせきに基もとづいたニゴイ類るいの塩分えんぶん環境かんきょう経験けいけんの証拠しょうこ」『伊豆沼いずぬま・内沼うちぬま研究けんきゅう報告ほうこく』 2018年ねん 12巻かん p.63-71, doi:10.20745/izu.12.0_63
^ ^a ^b ^c ^d 本ほん項こう掲載けいさい写真しゃしん参照さんしょうのこと。
^ ^a ^b 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの回遊かいゆうについて『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1991年ねん 57巻かん 5号ごう p.869-873, doi:10.2331/suisan.57.869
^ 霞ヶ浦かすみがうらに生息せいそくするニゴイの食しょく性せい茨城いばらき県けん農林のうりん水産すいさん部ぶ水産すいさん試験場しけんじょう内ない水面すいめん支ささえ場じょう茨城いばらき内水うすい試ためし研けん報ほう No.44 (2011) , p.25-28
^ ^a ^b 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの食しょく性せい『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1995年ねん 61巻かん 6号ごう p.860-867, doi:10.2331/suisan.61.860
^ ^a ^b 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの年齢ねんれいと成長せいちょう『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1991年ねん 57巻かん 1号ごう p.29-34 , doi:10.2331/suisan.57.29
^ “ニゴイのルアーフィッシング”. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。
^ 小ちいさな旅たび　水みず清きよく心こころあたたか～栃木とちぎ県けん　那須なす烏山うざん市し～ NHKオンデマンド^{[リンク切きれ]}
^ “仁淀川によどがわ漁協ぎょきょう : ニゴイの駆除くじょを実施じっし”. 仁淀川によどがわ漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。
^ “週刊しゅうかんつり太郎たろう釣つり魚ぎょのレシピ”. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

小林こばやし久雄ひさお, 前田まえだ孟はじめ：日本にっぽん産さんコイ科か魚類ぎょるいの咽頭いんとう骨こつと咽頭いんとう歯ぱに関かんする研究けんきゅう結果けっかのまとめ『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1964年ねん 30巻かん 5号ごう p.400-406, doi:10.2331/suisan.30.400
ニゴイ(コウライニゴイ）大阪おおさか府立ふりつ環境かんきょう農林のうりん水産すいさん総合そうごう研究所けんきゅうじょ

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

ニゴイ - 河川かせん生態せいたいナレッジデータベース

[1] 石崎いしざき大介だいすけ, 淀よどみ太ふと我わが、「耳みみ石せき微量びりょう元素げんそ分析ぶんせきに基もとづいたニゴイ類るいの塩分えんぶん環境かんきょう経験けいけんの証拠しょうこ」『伊豆沼いずぬま・内沼うちぬま研究けんきゅう報告ほうこく』 2018年ねん 12巻かん p.63-71, doi:10.20745/izu.12.0_63

[r1g-2] 本ほん項こう掲載けいさい写真しゃしん参照さんしょうのこと。

[suisan.57.869-3] 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの回遊かいゆうについて『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1991年ねん 57巻かん 5号ごう p.869-873, doi:10.2331/suisan.57.869

[4] 霞ヶ浦かすみがうらに生息せいそくするニゴイの食しょく性せい茨城いばらき県けん農林のうりん水産すいさん部ぶ水産すいさん試験場しけんじょう内ない水面すいめん支ささえ場じょう茨城いばらき内水うすい試ためし研けん報ほう No.44 (2011) , p.25-28

[suisan.61.860-5] 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの食しょく性せい『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1995年ねん 61巻かん 6号ごう p.860-867, doi:10.2331/suisan.61.860

[suisan.57.29-6] 竹下たけした直彦なおひこ, 木村きむら清きよし朗ろう：筑後川ちくごがわにおけるニゴイの年齢ねんれいと成長せいちょう『日本水産にっぽんすいさん学会がっかい誌し』 1991年ねん 57巻かん 1号ごう p.29-34 , doi:10.2331/suisan.57.29

[7] “ニゴイのルアーフィッシング”. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。

[8] 小ちいさな旅たび　水みず清きよく心こころあたたか～栃木とちぎ県けん　那須なす烏山うざん市し～ NHKオンデマンド^{[リンク切きれ]}

[9] “仁淀川によどがわ漁協ぎょきょう : ニゴイの駆除くじょを実施じっし”. 仁淀川によどがわ漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。

[10] “週刊しゅうかんつり太郎たろう釣つり魚ぎょのレシピ”. 2018年ねん12月19日にち閲覧えつらん。

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