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ウグイ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウグイ
分類ぶんるい
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : じょうひれつな Actinopterygii
: コイ Cypriniformes
: コイ Cyprinidae
: ウグイ Leuciscinae
ぞく : ウグイぞく Tribolodon
たね : ウグイ T. hakonensis
学名がくめい
Tribolodon hakonensis
(Günther1877)
シノニム
和名わみょう
ウグイ
英名えいめい
Japanese dace
Redfin dace
Big-scaled redfin
Redbelly dace
Redside dace
通常つうじょう個体こたい
ルアーげられた、あざやかな婚姻こんいんしょくそなえた繁殖はんしょく個体こたい
ぐんおよげするウグイ

ウグイ(鯎、石斑魚うぐい学名がくめいTribolodon hakonensis)は、コイウグイウグイぞく分類ぶんるいされる硬骨魚こうこつぎょるいの1たね基本きほんてきには淡水魚たんすいぎょであるが、くだうみかたうみくだるタイプ)もいる。

名称めいしょう

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和名わみょう

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」は日本語にほんご固有こゆう漢字かんじ表記ひょうき。「石斑魚うぐい」は、日本語にほんご広東かんとん共通きょうつうする用字ようじである。

標準ひょうじゅん和名わみょうウグイ」の語源ごげんについては、ほんしゅがスマートなからだをしていることから、神事しんじ御幣ごへいけるためにてるかみきよしくいである「ときくい(いくい)」が連想れんそうされたことにはじまるとするせつがある。またべつに、「がよくさかな」であることから「ウグイ(くえ)」とばれたことにはじまるとするせつがある。さらには、水面すいめんちかくを遊泳ゆうえいしていることから「ウキウオ(浮魚うきうお)」とばれたことにはじめるとするせつもある[1]一部いちぶでは、うみったウグイを「オオガイ」とんで区別くべつする。

地方ちほうめいについては、おおくの地方ちほうオイカワカワムツなどといちくくりに「ハヤ」とばれている。関東かんとう地方ちほうはじめとするほんたねとしての「ハヤ」の普及ふきゅう標準ひょうじゅん和名わみょうしの地域ちいきもある。なお、姿すがたがウグイにさかなで「ハヤ」の通称つうしょうをもつさかなとしてはアブラハヤタカハヤがいる。

棲息せいそくいき広大こうだいさから、ほんしゅには上記じょうきのほかにもすうおおくの地方ちほうめいがあり、「アイソ」「アカハラ」「クキ」「タロ」「ニガッパヤ」「イダ」[2]「ヒヤレ」[3]「デイス」「イス」[4]「イダ」[5]など、各地かくち独特どくとく名前なまえけられている。

中国語ちゅうごくごめい

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古来こらい日本語にほんごで「石斑魚うぐい」はウグイを意味いみするが、香港ほんこんなどの広東かんとんけんでは「石斑魚うぐい拼音:sek6baan1yu2〈日本語にほんごおとうつしれい:セッパーンユー〉)」はハタcf. zh:ずし#石斑魚うぐいぞく(Epinephelus), zh:石斑魚うぐい)を意味いみする。一方いっぽう北京ぺきんでウグイは「さんかたまりぎょ拼音sānkuàihóngおとうつしれい:サーンクゥアィホォン〉)」または「たまぼしさんかたまりぎょ拼音zhūxīng sānkuàihóng〈おとうつしれい:ヂゥーシィン サーンクゥアィホォン〉)」という。

生物せいぶつがくてき特徴とくちょう

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形態けいたい

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成魚せいぎょ体長たいちょう最大さいだい50 cmたっするが、多数たすうめるのは30 cm前後ぜんこう個体こたい側面そくめんがた流水りゅうすいせいコイ淡水魚たんすいぎょ共通きょうつうする流線型りゅうせんけいしめす。

からだしょく全体ぜんたいにこげちゃしょくびた銀色ぎんいろで、体側たいそくに1ほんくろよこたいはしる。腹部ふくぶ繁殖はんしょく以外いがいにはぎん白色はくしょくである。かくひれとくはらひれしりひれおよ尾鰭おびれはし色味いろみびる。はる(3がつ上旬じょうじゅんから5がつ中旬ちゅうじゅん)になると雌雄しゆうともにあざやかな3ほん朱色しゅいろじょうせん独特どくとく婚姻こんいんしょく変化へんかする。婚姻こんいんしょく朱色しゅいろじょうせんより「アカウオ」[2]や「サクラウグイ」とばれることもある[6]

生態せいたい

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沖縄おきなわ地方ちほうのぞ日本にっぽん全国ぜんこく分布ぶんぷあわ水棲すいせいで、河川かせんうえ流域りゅういきからしも流域りゅういき幅広はばひろ生息せいそくする。れをんでおよまわるので、はしうえなどからさかなかげ確認かくにんすることができる。しょくせい雑食ざっしょくせい水生すいせい昆虫こんちゅうみずちた昆虫こんちゅう水底みなそここけちいさなさかなさかなたまご甲殻こうかくるいなどを捕食ほしょくするほか、えさとしてはミミズ残飯ざんぱんなどなんでもこうにする。

繁殖はんしょくはるには、かわ浅瀬あさせ比較的ひかくてきながれのゆるやかな直径ちょっけい2 - 5 cmのつぶてしつ場所ばしょえらび、はるから初夏しょかにかけて集団しゅうだん産卵さんらんする。

全国ぜんこく河川かせんでもっとも普通ふつうられたさかなであるが、関東かんとう地方ちほうなどの河川かせんではオイカワカワムツえてウグイの生息せいそくいきがだんだん上流じょうりゅういやられ、個体こたいすう減少げんしょう傾向けいこうにある[よう出典しゅってん]

幅広はばひろ水域すいいきられるさかなではあるが、特筆とくひつすべきは pH 4以下いかつよさんせいでもきられるてんであり[7]強酸きょうさんせいのためにクニマス絶滅ぜつめつした田沢湖たざわこや、おそれやま宇曽うそとぎ[2]屈斜路湖くっしゃろこ猪苗代湖いなわしろこなどでも生息せいそくしている。また、水質すいしつ汚染おせんはげしい水域すいいきでも割合わりあい生息せいそく可能かのうである。

  • 一生いっしょう河川かせんごす淡水たんすいがた一旦いったんうみくだうみがたがいる。くだうみがたきたくほどその比率ひりつす。
  • 産卵さんらん行動こうどうは、水温すいおんが11 - 13 上昇じょうしょうする時期じきはじまり、直径ちょっけい2 mm程度ていど粘着ねんちゃくせいのあるあわ黄色きいろたまごを、流速りゅうそく10 cm/s以下いかなるりゅう付着ふちゃくしていない小石こいしける。たまご水温すいおん13 ℃程度ていどやく1 - 3週間しゅうかんかかり孵化ふかする。孵化ふかから1ねんやく5 cm、2ねんに10 - 15 cm程度ていど成長せいちょうし、2 - 4ねん繁殖はんしょく活動かつどうおこなう。
  • 雑食ざっしょくせいであるため、生息せいそく域内いきないべつさかなしゅたまご稚魚ちぎょ捕食ほしょくする。この性質せいしつ利用りようするとブルーギル増殖ぞうしょく抑制よくせい有効ゆうこうである可能かのうせいしめされている[8]

酸性さんせい適応てきおう機構きこう

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酸性さんせいでは、えらえら塩類えんるい細胞さいぼうかたちわり、かつ、かずえている。通常つうじょう塩類えんるい細胞さいぼう1個いっこずつバラバラに上皮じょうひ存在そんざいしているが、宇曽うそとぎおそれやまみずうみ)のウグイでは多数たすう塩類えんるい細胞さいぼう濾胞形成けいせいしている。これにより体液たいえきのpH調整ちょうせいおこなっている[9]

具体ぐたいてきには、Na+/H+ 交換こうかん輸送ゆそうたい (NEH3) という827アミノ酸あみのさんもとからなる分子ぶんしはたらきにより、Na+み、交換こうかんに H+排出はいしゅつしている。また、炭酸たんさん脱水だっすい酵素こうそはたらきによって細胞さいぼううちしょうじた炭酸たんさん水素すいそイオン (HCO3-) を中和ちゅうわ利用りようしている。さらに、窒素ちっそ代謝たいしゃによってしょうじたアンモニア中和ちゅうわ利用りようしている。通常つうじょう代謝たいしゃけいでは、アンモニアは尿素にょうそ回路かいろ尿素にょうそ変換へんかんされて排出はいしゅつされる。

きんえんしゅ

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人間にんげんとのかかわり

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料理りょうり

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はるからなつにかけてはかわぎょ独特どくとく泥臭どろくささがあるが、冬季とうきあぶらった美味びみであり、「かん(かん)バヤ(バエ)」とばれる。小骨こぼねおおいが、ふるくから日本にっぽん各地かくちコイフナなどととも貴重きちょう動物どうぶつせい蛋白たんぱくみなもととして利用りようされて[10]甘露煮かんろに塩焼しおやてんぷら燻製くんせいいずしなどで食用しょくようにされる。しかし、横川よこかわ吸虫などの寄生虫きせいちゅう[11]問題もんだいるため生食なましょく推奨すいしょうされない。

東北とうほく地方ちほう各地かくちには、いずし(はやのいずし)にしてべる風習ふうしゅうがある。しかし、いずしはウグイの腸管ちょうかん生育せいいくするボツリヌスきんにより、致死ちしりつたか食中毒しょくちゅうどくこす事例じれいおお報告ほうこくされた[12]。また、滋賀しがけんふな寿司ずしなれずし一種いっしゅ)では、希少きしょうしゅである本来ほんらいニゴロブナわりに安価あんかなウグイをもちいることもある[よう出典しゅってん]

小矢部川おやべがわのサクラウグイは郷土きょうど料理りょうりとしてしたしまれている[よう出典しゅってん]

漁獲ぎょかく

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ウグイのつけばりょうのために人為じんいてきととのえたながれ。
つけばでのウグイ漁獲ぎょかく風景ふうけい
せんもんりょう
  • つけじょうりょうせんもんりょうは4がつから6がつ産卵さんらんおこなわれことおおく、福岡ふくおかけん[13]長野ながのけん信濃川しなのがわ流域りゅういき一部いちぶ地域ちいきでは、ながれのなか人工じんこう産卵さんらん場所ばしょつくってあみ捕獲ほかく[14]かわ隣接りんせつした小屋こや料理りょうり提供ていきょうする[15]
  • せつきりょうづけりょう):山形やまがたけん最上川もがみがわ流域りゅういきなど。産卵さんらんのために浅瀬あさせあつまったさかな投網なげあみ捕獲ほかくする。
  • アイソりょう茨城いばらきけん群馬ぐんまけんなどでは、アイソりょうばれるはりりょうおこなわれている。

では、ほとんどのえさいついてくるため、水遊みずあそびの相手あいてとして古来こらいなじみふかさかなである。およがせようとしてられることもある。えさは、ミミズや、カワゲラるいなどの水棲すいせい生物せいぶつ以外いがいに、魚肉ぎょにくソーセージかまぼこなどの魚肉ぎょにく製品せいひんイカ塩辛しおからとりレバーカステラ羊羹ようかんしぶどう油揚あぶらあべいつぶもうはりえさしょくパンしエビ、昆虫こんちゅうるいなど様々さまざまなものでれる。河川かせんでは冬場ふゆばてい水温すいおん水深すいしんのあるながれのよわ場所ばしょあつまるため、あつまったウグイを「さむバヤ」とび、りがおこなわれる。しかし、河口かこうでは生息せいそくいきハゼひとし食用しょくようぎょかさなるため、ハゼを専門せんもんとしているじんからはえさりの外道げどうとしてきらわれている。

スピナー、スプーンとう小型こがたルアー使つかルアーフィッシングフライフィッシングでもれる。きはちいさなサイズでもヤマメイワナ区別くべつできないくらい強力きょうりょくである。渓流けいりゅうりの外道げどうとして有名ゆうめいであるが、マスるい禁漁きんぎょのターゲットともされている。せん

文化ぶんか

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福島ふくしまけん河沼かわぬまぐん柳津やないづまち所在しょざいするくに天然記念物てんねんきねんぶつ柳津やないづウグイ生息せいそく」は古来こらいさかなふち(うおぶち)」とばれているが、古代こだいからウグイにまつわる伝説でんせついろどられている[16][17][18]

宮城みやぎけん北上川きたかみがわうえ流域りゅういき位置いちする登米とよね津山つやままち横山よこやまきゅう本吉もとよしぐん津山つやままち横山よこやま江戸えどまくはん体制たいせいした陸奥みちのくこく本吉もとよしぐん横山よこやま代官だいかんしょりょう)の横山よこやま不動尊ふどうそんでは、不動尊ふどうそん使つかいとあつかわれる(cf. 横山よこやま不動尊ふどうそん#横山よこやまのウグイ生息せいそく)。

参考さんこう文献ぶんけん

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書籍しょせき、ムック
  • 本山もとやま荻舟てきしゅう飲食いんしょく事典じてん 上巻じょうかん平凡社へいぼんしゃ平凡社へいぼんしゃライブラリー 777〉、2012ねん12月25にち、52ぺーじhttps://www.heibonsha.co.jp/book/b160968.html ISBN 4-582-76777-XISBN 978-4-582-76777-3OCLC 840071356
  • 魚類ぎょるい文化ぶんか研究けんきゅうかいまさうらら へん図説ずせつ ぎょかい事典じてん望月もちづき賢二けんじ 監修かんしゅう柏書房かしわしょぼう図説ずせつ ぎょかいだい事典じてん〉、2005ねん4がつ1にち、75ぺーじhttp://www.kashiwashobo.co.jp/book/b227785.html ISBN 4-7601-2657-0ISBN 978-4-7601-2657-6OCLC 676676833
論文ろんぶん

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ 図説ずせつ ぎょかい事典じてん (2005), p. 75.
  2. ^ a b c 本山もとやま (2012), p. 52.
  3. ^ 秋田あきたけん広報こうほう協会きょうかい発行はっこう「ホットアイあきた(通巻つうかん408ごう)」”. 秋田あきたけん (1996ねん7がつ1にち). 2013ねん10がつ5にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  4. ^ コウノトリ市民しみん研究所けんきゅうじょ 北垣きたがき和也かずや「たじまのしぜんブログ ウグイ」” (2013ねん9がつ14にち). 2014ねん8がつ11にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  5. ^ 福田ふくだ 2006 [ようページ番号ばんごう]
  6. ^ サクラウグイ解禁かいきん”. 小矢部おやべ. 小矢部おやべ観光かんこう協会きょうかい (2017ねん3がつ6にち). 2022ねん10がつ2にち閲覧えつらん
  7. ^ おそれやまウグイの酸性さんせい適応てきおう機構きこう” (PDF). 東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがく. 2004ねん7がつ25にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  8. ^ 片野かたの & 坂野さかの 2006 [ようページ番号ばんごう]
  9. ^ 広瀬ひろせ, 平田ひらた & こう嵜 2006 [ようページ番号ばんごう]
  10. ^ 郷土きょうど料理りょうりひゃくせん”. 2007ねん10がつ27にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  11. ^ 内田うちだら 1999 [ようページ番号ばんごう]
  12. ^ 大友おおとも & 豊川とよかわ 1992 [ようページ番号ばんごう]
  13. ^ 多部田たべた & 塚原つかはら 1964 [ようページ番号ばんごう]
  14. ^ 川尻かわじり 1952 [ようページ番号ばんごう]
  15. ^ 千曲川ちくまがわのつけばりょう”. 上田うえだ (2009ねん11月3にち). 2010ねん10がつ28にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん5がつ11にち閲覧えつらん
  16. ^ 柳津やないづウグイ生息せいそく”. 文化ぶんか遺産いさんオンライン. 文化庁ぶんかちょう. 2022ねん10がつ2にち閲覧えつらん
  17. ^ 天然記念物てんねんきねんぶつウグイ生息せいそく さかなふち”. 会津あいづやないづ. 柳津やないづ観光かんこう協会きょうかい. 2022ねん10がつ2にち閲覧えつらん
  18. ^ 平田ひらた春男はるお (2000ねん9がつ14にち 朝日新聞あさひしんぶん福島ふくしまばん連載れんさいコラム). “おく会津あいづかみ れいぎょ 水底みなそこかみさかな”. おく会津あいづ書房しょぼう. 2022ねん10がつ2にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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