コーラス (ポピュラー音楽おんがく)

コーラスは、合唱がっしょうを意味いみする音楽おんがく用語ようごである。ポピュラー音楽おんがくにおけるコーラスとは、メイン・ヴォーカルに対比たいひして用もちいられる言葉ことばで、主しゅ旋律せんりつを歌うたう者ものに対たいして、その後うしろで、補助ほじょ的てきに歌うたを歌うたう、または、ハミング等とうで唱和しょうわすることを言いう。そのようなコーラスを担当たんとうする人物じんぶつを称しょうしてコーラスと呼よぶことも多おおい。

また、ア・カペラのように、コーラス（合唱がっしょうないし重唱じゅうしょう）を主体しゅたいとする場合ばあいもあり、そのような場合ばあいには、メイン・ヴォーカルとバックグラウンド・ヴォーカルとを区別くべつせずに、コーラスと呼よぶこともある。また、そのようなコーラスをするグループを、コーラス・グループやクワイア（本来ほんらいは聖歌せいか隊たいの意い）という。

英語えいご圏けんでは主おもにバッキング・ボーカル（英えい: backing vocal）と称しょうされ、担当たんとうする人物じんぶつをバッキング・ボーカリスト（英えい: backing vocalist）と呼よぶ。また、英語えいご圏けんでコーラス（英えい: chorus）は日本にっぽんにおけるサビ及およびリフレイン形式けいしきを意味いみする。

日本にっぽんのポピュラー音楽おんがくのコーラス

日本にっぽんのポピュラー音楽おんがくにおいては、1970年代ねんだい初頭しょとうから、赤あかい鳥とり（のち、コーラスグループのハイ・ファイ・セットとデュオの紙かみふうせんに分裂ぶんれつ）、チューリップ、オフコースなど、コーラスを重視じゅうしするグループが多おおく存在そんざいした。しかし、ソロ歌手かしゅでは、スタジオ・ミュージシャンやバックバンドとしてのコーラスがほとんど存在そんざいしなかったこともあり、荒井あらい由実ゆみ（ハイ・ファイ・セット、山下やました達郎たつお、吉田よしだ美奈子みなこ、大貫おおぬき妙子たえこ、シンガーズスリー、タイムファイヴ、伊集いじゅ加代子かよこなどが参加さんか）などの例外れいがい的てきなケースを除のぞいて、1970年代ねんだい末すえまで、コーラスを積極せっきょく的てきに用もちいる例れいはあまりなく、コーラスを専せん門もんに行おこなう主要しゅようなスタジオ・ミュージシャンとしては、山川やまかわ恵津子えつこ、比山ひやま清きよし（貴き咏史）、木戸きどやすひろ（泰弘やすひろ）、くらいしか登場とうじょうしなかったが、この3名めいによる混声こんせいコーラスはスタジオ界かいに旋風せんぷうを巻まき起おこした。

このような状況じょうきょうを変かえるきっかけともなったのは、1980年ねん12月に山下やました達郎たつおが発表はっぴょうした『ON THE STREET CORNER』であろう。これは、基本きほん的てきに山下やました1人にん（吉田よしだ美奈子みなこも1曲きょくに参加さんか）による、ア・カペラ・アルバムで、それまで、コンサートのために録ろくりためていた作品さくひんをまとめたものであった。1980年ねんには、シングル「Ride on Time」が大だいヒットしており、この時期じきを逃のがしたなら、二度にどとこのような特殊とくしゅなアルバムを制作せいさくすることなどかなわない（レコード会社かいしゃが認みとめてくれない）と、本人ほんにんの希望きぼうで急遽きゅうきょ制作せいさくされたとも言いわれる。

1970年代ねんだいから、自分じぶんの作品さくひん（レコード）に多重たじゅう録音ろくおんによって自分じぶんの声こえをのせるということはなされていた。しかし、フォークの例れいなどでは、あまり質しつは高たかくなく、また、山下やました達郎たつお、竹内たけうちまりや、八神やがみ純子じゅんこ、合唱がっしょう団だんの経験けいけんが長ながい山本やまもと達彦たつひこなどの例れいは、質しつは高たかいが、数かずも少すくなく、全体ぜんたいから見みれば、ごく例外れいがい的てきなものであった。

しかし、必かならずしもこのアルバムがその唯一ゆいいつの理由りゆうとまではいえないが、1980年ねん以降いこうは、状況じょうきょうは大おおきく変かわり、自分じぶん自身じしんによる多重たじゅうコーラスは、当然とうぜんのものとなっていった。そのようなアーティストとしては、杉すぎ真理まり、安部あべ恭弘やすひろ、EPO、村田むらた和人かずと、楠瀬くすのせ誠志郎せいしろうなど、枚挙まいきょに暇ひまがない。

1990年代ねんだいを迎むかえ、ビーイングの女性じょせいアーティストが、今日きょうのJ-POPのような、多重たじゅうコーラスも楽器がっきの一環いっかんとして扱あつかうサウンド・メイキングにいち早はやく取とり組くみ、完成かんせい度ども高たかかった。90年代ねんだい中盤ちゅうばんより、大黒おおくろ摩季まきや宇徳うとく敬子けいこといった女性じょせいシンガーソングライターがコーラス・アレンジも自みずから手てがけ、なおかつ自身じしんの声こえを多重たじゅう録音ろくおんする手法しゅほうの基礎きそをJ-POPにおいて確立かくりつさせた。今日きょうでは、アイドルとアーティストの差別さべつ化かの一環いっかんとして、作詞さくしや作曲さっきょく以外いがいにも自身じしんのコーラスが重視じゅうしされる傾向けいこうにもある。

バンド形式けいしきのアーティストの場合ばあい、先さきの場合ばあいのほか、他たの担当たんとう（ギター、ベースなど）が兼任けんにんする場合ばあいも多おおい。

関連かんれん項目こうもく

• 合唱がっしょう
• 重唱じゅうしょう
• ア・カペラ
• マルチトラック・レコーダー 一人ひとり多た重唱じゅうしょうを可能かのうにする装置そうち