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ジャマイカ英語えいご

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ジャマイカ英語えいご(ジャマイカえいご、Jamaican English)またはジャマイカ標準ひょうじゅん英語えいご英語えいご方言ほうげんであり、独自どくじ方法ほうほうアメリカ英語えいごイギリス英語えいご方言ほうげん一部いちぶ、またそれらが融合ゆうごうしたものをふくんでいる。ジャマイカ英語えいごでは通常つうじょうはイギリス英語えいごつづりを使用しようするが、アメリカしきつづりも使用しようされる[1]。イギリス英語えいごつづりが使用しようされる単語たんごには"theatre"(劇場げきじょう)、"centre"(中心ちゅうしん)、"favour"(好意こうい)、"honour"(名誉めいよ)などがある。

言語げんごあいだ区別くべつについては明確めいかく線引せんひきがあるわけでなく連続れんぞくてきであるとされるが[2]、ジャマイカ英語えいごと、言語げんごがくジャマイカ・クレオールばれる言語げんごや、あるいはラスタファリ運動うんどう使用しようする語彙ごい言語げんご使用しようほう混同こんどうしてはいけない[3]。「パトワ」は本来ほんらいいくつかのクレオールふく地域ちいきフランス語ふらんすごあらわ用語ようごだが、ジャマイカにおいては、ジャマイカじん伝統でんとうてきにそれを「片言かたこと」あるいはただしくない英語えいご認識にんしきしていたジャマイカ・クレオールす。現代げんだい言語げんご学者がくしゃだい部分ぶぶんは、クレオール言語げんご完全かんぜん言語げんごという意見いけんである。

文法ぶんぽう

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ジャマイカ標準ひょうじゅん英語えいご文法ぶんぽうてきにはイギリス標準ひょうじゅん英語えいごちかい。しかしながら最近さいきんでは、経済けいざいてきむすびつきや移住いじゅうりつたかさ、映画えいがやケーブルテレビ、ポピュラー音楽おんがくなどによるジャマイカとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとのちかさのために、アメリカ英語えいご影響えいきょう着実ちゃくじつ増加ぞうかしている。結果けっかとして、"I don't have" や "you don't need"といった構文こうぶんほうが、"I haven't got" や "you needn't"よりも一般いっぱんてきこのまれる。

語彙ごい

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近年きんねんのアメリカ英語えいご影響えいきょう語彙ごいにおいてより明白めいはくである(たとえば "crib"(幼児ようじよう寝台しんだい)、"diaper"あるいは"pampers"(おむつ)、"apartments"、"townhouses"(集合しゅうごう住宅じゅうたく)など)。一般いっぱんてきふる語彙ごいはイギリス英語えいご由来ゆらいしているが、よりあたらしい現象げんしょうは、それらの名前なまえとも通常つうじょうアメリカから「輸入ゆにゅう」されている。

イギリスとアメリカ英語えいご語彙ごい混合こんごう興味深きょうみぶか使用しようは、自動車じどうしゃ関連かんれんにある。イギリス英語えいごの"boot(トランク)"のわりにアメリカ英語えいごでの"trunk"が使用しようされており、一方いっぽうでアメリカ英語えいごの"speed bump(徐行じょこうたい)"のわりに、イギリス英語えいごの"sleeping policeman"が使用しようされている。ボンネットを意味いみするには、イギリス英語えいごの"bonnet"が使用しようされている。これはアメリカ英語えいごの"hood"が、ジャマイカではおそらく"manhood"を省略しょうりゃくした「陰茎いんけい」を意味いみする下品げひんなスラングとして使用しようされているためである。

当然とうぜん、ジャマイカ英語えいごではジャマイカ・クレオールからおおくのローカルな単語たんご使用しようしている。

発音はつおん

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変種へんしゅ英語えいご話者わしゃとのもっとも顕著けんちょなジャマイカ英語えいごちがいは、発音はつおんあるいはアクセントにある。おおくのてんで、アクセントはアイルランド南部なんぶの、とくコークけんのそれに非常ひじょうによくている。おそらくはジャマイカの植民しょくみん時代じだい名残なごりであるとおもわれる。ジャマイカ標準ひょうじゅん英語えいご発音はつおんは、ジャマイカ・クレオールのそれとはおおきなちがいがあるが、それにもかかわらずカリブ海かりぶかい諸島しょとうにおいて認識にんしき可能かのうである。

特徴とくちょうには以下いかてんげられる。

  • "cow"などの単語たんごにおける重母音じゅうぼいん独特どくとく発音はつおんは、イギリス英語えいごまたはアメリカ英語えいごよりもよりせまおんえんくちびる母音ぼいんとなる。
  • えんくちびるしたはんこう母音ぼいん発音はつおん(IPA: [ʌ], "but"のような)もまた標準ひょうじゅん発音はつおんよりせまおん発音はつおんされるが、クレオールほどではない。
  • じゅんrおと(セミロティカリー):すなわち"water"(つよいきおい音節おんせつわりで)や"market"(子音しいんまえ)などの単語たんごで"-r"が欠落けつらくするが、"car"や"dare"(単語たんごわりでのつよいきおい音節おんせつでは)られない。
  • 重母音じゅうぼいん統合とうごう:"fair"と"fear"、"bear"と"beer"などそのおおくの重母音じゅうぼいん統合とうごうは、ジャマイカ英語えいごとジャマイカ・クレオールのどちらでもおこなわれ、これらの2つの単語たんご結果けっかとして同音どうおん異義いぎになる。標準ひょうじゅん英語えいごでの"air"は通常つうじょうせまおん発音はつおんされるが、クレオールではそれを"ear"と表現ひょうげんする。
  • みじかい"a"のおと("man", "hat")はよりひろ発音はつおんされ、アイルランドまたはスコットランド発音はつおんている。"Bacon"と"beer can"は、ジャマイカ英語えいごでは同音どうおん異義いぎとなる。

言語げんご使用しよう標準ひょうじゅんとクレオール

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ジャマイカ標準ひょうじゅん英語えいごとジャマイカ・クレオールは、しまなか典型てんけいてきダイグロシア形態けいたい並行へいこうして存在そんざいする。クレオールはほとんどの人々ひとびとによって毎日まいにち非公式ひこうしき状況じょうきょう使用しようされる。それはもっともジャマイカじんがくつろいで使用しようし、もっとくわしい言語げんごで、地域ちいきのポピュラー音楽おんがく言語げんごでもある。一方いっぽう、ジャマイカ標準ひょうじゅん英語えいごは、教育きょういくハイカルチャー政府せいふメディア公式こうしきのコミュニケーションにおける言語げんごであり、ジャマイカの少数しょうすう人々ひとびと通常つうじょう上流じょうりゅう階級かいきゅう、と伝統でんとうてき中流ちゅうりゅう階級かいきゅう)の母語ぼごでもある。クレオールおも使用しようする人々ひとびとのほとんども、学校がっこう教育きょういく公式こうしき文化ぶんか、マスメディアをつうじて、標準ひょうじゅん英語えいごには堪能かんのうである。標準ひょうじゅん英語えいごかんしては、かれらの受動じゅどうてき能力のうりょくむ・く)は、がいして能動のうどうてき能力のうりょくはなす・く)よりもはるかにすぐれている(かれ自身じしん標準ひょうじゅん英語えいご意図いとした発言はつげん記述きじゅつには、クレオール干渉かんしょう兆候ちょうこうがしばしばしめされる)。

ジャマイカでの言葉ことば標準ひょうじゅん英語えいごでなされる。これは私的してき文書ぶんしょ手紙てがみふくまれる。ジャマイカ・クレオールには標準ひょうじゅんされたつづりがあるが、最近さいきんでは一部いちぶ学校がっこうおしえられるのみであった。その結果けっか、ジャマイカじんだい多数たすうは、標準ひょうじゅん英語えいごのみをくことができ、かれた方言ほうげん作者さくしゃみやすさに妥協だきょうせずに、ことなった度合どあいで独特どくとく構文こうぶん発音はつおん反映はんえいさせようとしたもの)を解読かいどくするのには苦労くろうようする。かれたクレオールおも文学ぶんがくとく民俗みんぞくがくてきな「方言ほうげん」、ユーモアをめた新聞しんぶんコラムとく最近さいきんでは、わか世代せだいのジャマイカじんたちによるインターネットでの言葉ことばとしてあらわれる。かれらはおやよりも積極せっきょくてき自身じしん言語げんご使用しようしているように見受みうけられる[4]

便宜上べんぎじょうジャマイカの言語げんご習慣しゅうかんてき標準ひょうじゅん英語えいごとクレオールとの対比たいひ説明せつめいされるが、この明確めいかく二分にぶんほうではジャマイカじん実際じっさい言語げんご使用しようについてほとんど説明せつめいできない。ひろ意味いみでのパトワと、もう片方かたがたの「完全かんぜんな」標準ひょうじゅん英語えいごきょくあいだには、様々さまざま中間ちゅうかん言語げんご変種へんしゅ存在そんざいする。この状況じょうきょうは、クレオール標準ひょうじゅん上層じょうそう方言ほうげん)に持続じぞくして接触せっしょくしているときこり、クレオール口語こうご連続れんぞくせいばれる。もっと格式かくしきひくい(もっともクレオールである)変種へんしゅ下層かそう方言ほうげん(basilect)、格式かくしきたか標準ひょうじゅん変種へんしゅ上層じょうそう言語げんご(acrolect)、上層じょうそう方言ほうげん下層かそう方言ほうげん中間ちゅうかんは、中層ちゅうそう方言ほうげん(mesolect)とばれる。

以下いかにその形式けいしき例示れいじする。

  • "Im a wok ova de-so"(下層かそう方言ほうげん
  • "Im a workin' ova de-so"(ひく中層ちゅうそう方言ほうげん
  • "(H)e is workin' over dere", "(たか中層ちゅうそう方言ほうげん
  • "He is working over there."(上層じょうそう方言ほうげん

ジャマイカじんは、状況じょうきょうによってこれらの変種へんしゅから話法わほう選択せんたくする。クレオールおも使用しようする話者わしゃは、たとえば公式こうしきのビジネスや結婚式けっこんしきのスピーチなどのあらたまったではより高位こうい変種へんしゅえらぶだろうし、友人ゆうじんとのかかわりにおいては低位ていいのものをえらぶ。標準ひょうじゅんおも使用しようする話者わしゃは、仕事場しごとばでいる以上いじょう市場いちばものをするときに、より低位ていい変種へんしゅれるだろう。たとえば標準ひょうじゅん英語えいごおも使用しようする話者わしゃが、ユーモラスな意味いみたせる目的もくてき、あるいは連帯れんたいかんあらわしたいときに、より低位ていい変種へんしゅえらぶなど、コード・スイッチング(Code-switching:意識いしきてき言語げんごえ)自体じたい隠喩いんゆてきである場合ばあいがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Andrea Sand (1999), Linguistic Variation in Jamaica. A Corpus-Based Study of Radio and Newspaper Usage, Tübingen: Narr,.
  2. ^ Peter L. Patrick (1999), Urban Jamaican Creole. Variation in the Mesolect. Amsterdam/Philadelphia: Benjamins.
  3. ^ Velma Pollard (2000), Dread Talk. Montreal: McGill-Queen's UP.
  4. ^ Lars Hinrichs (2006), Codeswitching on the Web: English and Jamaican Creole in E-Mail Communication. Amsterdam/Philadelphia: Benjamins.