タホ川 がわ (タホがわ、スペイン語 ご : el Tajo , 発音 はつおん : [ˈtaxo] )またはテージョ川 がわ (ポルトガル語 ご : o Tejo , 発音 はつおん : [ˈtɛʒu] テージュ)は、イベリア半島 はんとう 中央 ちゅうおう 部 ぶ を西 にし に向 む かって流 なが れて大西 おおにし 洋 ひろし に注 そそ いでいる河川 かせん 。全長 ぜんちょう はイベリア半島 はんとう 最長 さいちょう 、流域 りゅういき 面積 めんせき はイベリア半島 はんとう 第 だい 2位 い の河川 かせん である。
その全長 ぜんちょう は文献 ぶんけん によって異 こと なるが、ブリタニカ百科 ひゃっか 事典 じてん は1,007kmとしており、スペイン領 りょう を716km、スペイン=ポルトガル国境 こっきょう を47km、ポルトガル領 りょう を275km流 なが れてからリスボン 都市 とし 圏 けん で大西 おおにし 洋 ひろし に注 そそ ぐ[1] 。流域 りゅういき 面積 めんせき は80,600km2 であり、ドゥエロ川 がわ (ドウロ川 がわ )に次 つ いでイベリア半島 はんとう 第 だい 2位 い である。季 き 節 ぶし による流量 りゅうりょう 差 さ が大 おお きく、春季 しゅんき と流量 りゅうりょう が乏 とぼ しい夏季 かき で約 やく 10倍 ばい の差 さ がある。
流域 りゅういき の経済 けいざい は牧畜 ぼくちく などの農業 のうぎょう が主体 しゅたい である。1970年代 ねんだい までには水力 すいりょく 発電 はつでん や灌漑 かんがい を目的 もくてき としたダムが数多 かずおお く建設 けんせつ された。ダムが多 おお い場所 ばしょ では流 なが れがとても細 ほそ くなるが、アルモーロル城 じょう を過 す ぎると広大 こうだい な沖積 ちゅうせき 谷 だに に入 はい り、しばしば氾濫 はんらん をおこす。港町 みなとちょう のリスボン 周辺 しゅうへん には巨大 きょだい な河口 かこう が形成 けいせい されている。主要 しゅよう な支流 しりゅう にはハラマ川 がわ 、アルベルチェ川 がわ (英語 えいご 版 ばん ) 、アラゴン川 がわ などがある。主要 しゅよう な支流 しりゅう はすべてが右岸 うがん (北側 きたがわ )から合流 ごうりゅう する。
流域 りゅういき にはコルクガシ の森林 しんりん 、硬 かた 葉 は 樹林 じゅりん 、低木 ていぼく 林 りん 、耕地 こうち 、草地 くさち およびイベリアカタシロワシ 、ボネリークマタカ 、ナベコウ 、クロコンドル 、エジプトハゲワシ 、ノガン 、ユーラシアカワウソ 、ミドリカナヘビ (英語 えいご 版 ばん ) などの典型 てんけい 的 てき な地中海 ちちゅうかい 地域 ちいき の動物 どうぶつ 相 しょう があり、2016年 ねん にユネスコ の生物 せいぶつ 圏 けん 保護 ほご 区 く に指定 してい された[4] 。
主要 しゅよう な沿岸 えんがん 都市 とし [ 編集 へんしゅう ]
スペイン
ポルトガル
タホ川 がわ /テージョ川 がわ 下流 したる 部 ぶ は断層 だんそう 線 せん 上 じょう にあり、断層 だんそう のずれは過去 かこ に数 すう 多 おお くの地震 じしん を起 お こしている。もっともよく知 し られた地震 じしん は1309年 ねん の地震 じしん 、リスボン地震 じしん (1531年 ねん ) 、リスボン地震 じしん (1755年 ねん ) などである[5] 。
アルカンタラ・ダム
タホ川 がわ の水源 すいげん はイベリコ山系 さんけい ウニベルサーレス山地 さんち (英語 えいご 版 ばん ) にあり、行政 ぎょうせい 区域 くいき としてはスペインのアラゴン州 しゅう テルエル県 けん フリアス・デ・アルバラシン (英語 えいご 版 ばん ) である。テルエル県 けん とカスティーリャ=ラ・マンチャ州 しゅう クエンカ県 けん の県境 けんきょう を北西 ほくせい に向 む かって流 なが れ、その後 ご クエンカ県 けん とグアダラハラ県 けん の県境 けんきょう をやはり北西 ほくせい に向 む かって流 なが れる。
アルト・タホ自然 しぜん 公園 こうえん (モリナ ・アルト・タホユネスコ世界 せかい ジオパーク [6] )で南西 なんせい に向 む きを変 か え、グアダラハラ県 けん 南部 なんぶ のマール・デ・カスティーリャ (英語 えいご 版 ばん ) (カスティーリャの海 うみ )と呼 よ ばれる地域 ちいき に至 いた る。マール・デ・カスティーリャはエントレペーニャス貯水池 ちょすいち とブエンディア貯水池 ちょすいち の総称 そうしょう であり、いずれもイベリア半島 はんとう 有数 ゆうすう の規模 きぼ を持 も つ貯水池 ちょすいち である。エントレペーニャス貯水池 ちょすいち のダム近 ちか くにはサセドン (英語 えいご 版 ばん ) の町 まち があり、サセドンはタホ川 がわ 流域 りゅういき にある初 はじ めての比較的 ひかくてき 規模 きぼ の大 おお きな町 まち である。マール・デ・カスティーリャ付近 ふきん からは南東 なんとう に向 む かってタホ=セグラ運河 うんが (英語 えいご 版 ばん ) が築 きず かれ、ムルシア などを流 なが れて地中海 ちちゅうかい に注 そそ ぐセグラ川 がわ とタホ川 がわ が結 むす ばれている。
トレドの夜景 やけい とタホ川 がわ
マール・デ・カスティーリャではグアディエーラ川 がわ を集 あつ め、マドリード州 しゅう とトレド県 けん の境界 きょうかい を南西 なんせい に向 む かって流 なが れる。マドリード首都 しゅと 圏 けん の南側 みなみがわ にはアランフエス の町 まち があり、アランフエスは流域 りゅういき にある初 はじ めての都市 とし である。アランフエスを過 す ぎると北方 ほっぽう からハラマ川 がわ が合流 ごうりゅう する。ハラマ川 がわ はマドリード首都 しゅと 圏 けん の東 ひがし 端 はし を流 なが れる河川 かせん であり、マドリード 市街地 しがいち を流 なが れるマンサナーレス川 がわ を支流 しりゅう に持 も つ。
その後 ご 左岸 さがん からアルゴドール川 がわ を集 あつ め、流域 りゅういき のスペイン領 りょう 部分 ぶぶん で最大 さいだい の都市 とし トレド に至 いた る。中世 ちゅうせい にはイベリア半島 はんとう の文化 ぶんか 的中 てきちゅう 心地 ごこち だったトレドの旧 きゅう 市街 しがい は三 さん 方 ぽう をタホ川 がわ に囲 かこ まれた場所 ばしょ にあり、タホ川 がわ の流 なが れを自然 しぜん の要塞 ようさい として活用 かつよう している。トレド周辺 しゅうへん の中流 ちゅうりゅう 部 ぶ では灌漑 かんがい や水力 すいりょく 発電 はつでん 用 よう のダムで堰 せ きとめられている。トレドを過 す ぎると北方 ほっぽう からグアダラマ川 がわ を集 あつ め、タラベーラ・デ・ラ・レイナ の郊外 こうがい ではやはり北方 ほっぽう からアルベルチェ川 がわ (英語 えいご 版 ばん ) を集 あつ める。タラベーラ・デ・ラ・レイナからスペイン=ポルトガル国境 こっきょう までの流域 りゅういき は細長 ほそなが く伸 の びる貯水池 ちょすいち が連続 れんぞく しており、アスタン貯水池 ちょすいち 、バルデカニャス貯水池 ちょすいち (英語 えいご 版 ばん ) 、トレホン=タホ貯水池 ちょすいち (英語 えいご 版 ばん ) 、アルカンタラ貯水池 ちょすいち (英語 えいご 版 ばん ) 、セディーリョ貯水池 ちょすいち のうちで明確 めいかく に「湖 みずうみ 」の形状 けいじょう を有 ゆう しているのはバルデカニャス貯水池 ちょすいち のみである。トレホン=タホ貯水池 ちょすいち の内部 ないぶ ではグレドス山脈 さんみゃく から流 なが れてきたティエタル川 がわ を集 あつ め、アルカンタラ貯水池 ちょすいち の内部 ないぶ ではアルモンテ川 がわ とアラゴン川 がわ を集 あつ める。
スペイン=ポルトガル国境 こっきょう 付近 ふきん
スペイン=ポルトガル国境 こっきょう を47km流 なが れた後 のち にポルトガル領 りょう に入 はい るが、ポルトガル語 ご ではテージョ川 がわ と呼 よ ばれる。ポルトガル領 りょう に入 はい ると南西 なんせい に向 む きを変 か え、「ナチュルテジョ・ダ・メセタ ・メリディオナルユネスコ世界 せかい ジオパーク 」を過 す ぎると[7] 、テージョ川 がわ はヴィラ・ヴェーニャ・デ・ロドン (英語 えいご 版 ばん ) 、アブランテス の町 まち を流 なが れ、コンスタンシア (英語 えいご 版 ばん ) ではゼゼレ川 がわ (英語 えいご 版 ばん ) を集 あつ める。エントロンカメント (英語 えいご 版 ばん ) 付近 ふきん で南西 なんせい に向 む きを変 か え、この町 まち は長 なが く伸 の びる河口 かこう の先端 せんたん 部 ぶ であるとされる。河口 かこう から約 やく 130km(80mil)にあるアブランテスまでの区間 くかん は船舶 せんぱく が遡行 そこう 可能 かのう である。
右岸 うがん のサンタレン を越 こ えると、川幅 かわはば が広 ひろ がって潟 かた 湖 こ となり、1980年 ねん にラムサール条約 じょうやく 登録 とうろく 地 ち となった[8] 。リスボン 首都 しゅと 圏 けん を右岸 うがん に見 み るテージョ川 かわ 河口 かこう はテージョ川 がわ 河口 かこう 自然 しぜん 保護 ほご 区 く (英語 えいご 版 ばん ) に指定 してい されている。右岸 うがん (北岸 ほくがん )のリスボンと左岸 さがん (南岸 なんがん )のアルマダ を結 むす ぶ橋 はし としては、ヨーロッパ有数 ゆうすう の吊 つ り橋 ばし である4月 がつ 25日 にち 橋 きょう (旧称 きゅうしょう サラザール橋 きょう )とヴァスコ・ダ・ガマ橋 きょう が架 か かっており、全長 ぜんちょう 17.2kmのヴァスコ・ダ・ガマ橋 きょう はヨーロッパでもっとも長 なが い橋 はし である。リスボン首都 しゅと 圏 けん 西方 せいほう で大西洋 たいせいよう に注 そそ ぐ。リスボン都市 とし 圏 けん のテージョ川 がわ 河口 かわくち 部 ぶ は鉄鋼 てっこう 、造船 ぞうせん 、石油 せきゆ 精製 せいせい などの重工業 じゅうこうぎょう が盛 さか んであり、近年 きんねん では観光 かんこう 業 ぎょう を含 ふく むサービス業 ぎょう も行 おこな われている。河口 かこう の入口 いりくち には無人島 むじんとう のブージオ島 とう があり、ブージオ灯台 とうだい (ポルトガル語 ご 版 ばん ) が建 た っている。
ポルトガルのテージョ川 がわ 左岸 さがん 部 ぶ は歴史 れきし 的 てき にアレンテージョ と呼 よ ばれるが、これは「テージョ川 がわ を超 こ えた場所 ばしょ 」を意味 いみ する。現在 げんざい のサンタレン県 けん にほぼ相当 そうとう する地域 ちいき には、1936年 ねん から1976年 ねん までリバテージョ県 けん が存在 そんざい したが、これは「テージョ川 がわ の上流 じょうりゅう 」を意味 いみ する。テージョ川 がわ とドウロ川 がわ はそれぞれポルトガルの大西洋 たいせいよう 岸 がん と内陸 ないりく 部 ぶ を結 むす び、国内 こくない を地理 ちり 的 てき に結 むす び付 つ けている。テージョ川 がわ はポルトガルの領域 りょういき を二分 にぶん しており、テージョ川 がわ 以北 いほく は山地 さんち が支配 しはい 的 てき であるが、テージョ川 がわ 以南 いなん は起伏 きふく のある低地 ていち で占 し められている。テージョ川 かわ 以北 いほく はより降水 こうすい 量 りょう が多 おお く、トウモロコシ 、ライムギ 、ブドウ などの作物 さくもつ が植 う えられているが、テージョ川 がわ 以南 いなん は乾燥 かんそう して暑 あつ く、コムギ、オートムギ、コルクガシなどが植 う えられている。テージョ川 かわ 以南 いなん では穀物 こくもつ は灌漑 かんがい を必要 ひつよう とする。
リスボン市街地 しがいち
1996年 ねん から2001年 ねん には、タホ川 がわ /テージョ川 がわ 河口 かこう でペッパー・レック(胡椒 こしょう の難破 なんぱ 船 せん )という通称 つうしょう を持 も つノッサ・セニョーラ・ドス・マルティレス号 ごう の難破 なんぱ 船 せん 発掘 はっくつ が行 おこな われた。この船 ふね は黒 くろ 胡椒 こしょう の貿易 ぼうえき 船 せん であり、1606年 ねん にタホ川 がわ /テージョ川 がわ 河口 かこう で難破 なんぱ した。岩礁 がんしょう と接触 せっしょく したことで浸水 しんすい して難破 なんぱ したが、イベリア半島 はんとう 本土 ほんど に近 ちか かったことから犠牲 ぎせい 者 しゃ は出 で なかった。1993年 ねん にはポルトガル国立 こくりつ 考古学 こうこがく 博物館 はくぶつかん が海底 かいてい で残骸 ざんがい を発見 はっけん し、サン・ジュリアン・ダ・バラ2世 せい によって難破 なんぱ 船 せん の場所 ばしょ が特定 とくてい された。2008年 ねん にアフリカ大陸 たいりく のナミビア沖 おき で別 べつ の難破 なんぱ 船 せん が発見 はっけん されるまで、16世紀 せいき と17世紀 せいき 初頭 しょとう におけるポルトガルのインド貿易 ぼうえき 船 せん としてはトレジャーハンターに略奪 りゃくだつ されていない唯一 ゆいいつ の船 ふね がノッサ・セニョーラ・ドス・マルティレス号 ごう だった。
タホ川 がわ /テージョ川 がわ はリスボン の入口 いりくち を防衛 ぼうえい しているため、スペイン帝国 ていこく ・ポルトガル帝国 ていこく それぞれにとって戦略 せんりゃく 的 てき 価値 かち の高 たか い河川 かせん だった。例 たと えば1587年 ねん 、イギリスの海賊 かいぞく であるフランシス・ドレーク はアンダルシア地方 ちほう のカディス の襲撃 しゅうげき に成功 せいこう した後 のち に、しばらくの間 あいだ タホ川 がわ /テージョ川 がわ に近 ちか づいた[9] 。
リスボン市街地 しがいち とテージョ川 がわ
テージョ川 がわ はポルトガルのいくつもの歌 うた や物語 ものがたり に登場 とうじょう する。共和 きょうわ 政 せい ローマの抒情詩 じょじょうし 人 じん ガイウス・ウァレリウス・カトゥルス 、帝政 ていせい ローマの詩人 しじん オウィディウス 、帝政 ていせい ローマの風刺 ふうし 詩人 しじん ユウェナリス などが作品 さくひん にテージョ川 がわ の砂金 さきん を登場 とうじょう させている。
17世紀 せいき イギリスの詩人 しじん リチャード・クラショー の詩 し 『Saint Mary Magdalene, or the Weeper』には、マグダラのマリアの銀 ぎん の涙 なみだ を望 のぞ む「金 かね の」タホ川 がわ /テージョ川 がわ が登場 とうじょう する。20世紀 せいき 初頭 しょとう のポルトガル人 じん 作家 さっか フェルナンド・ペソア は、「テージョ川 がわ は僕 ぼく の村 むら を流 なが れる川 かわ より美 うつく しいが、テージョ川 がわ は僕 ぼく の村 むら を流 なが れる川 かわ より美 うつく しくない」という書 か き出 だ しを持 も つ詩 し を書 か いた[10] 。ファド には「私 わたし の髪 かみ は白 しろ くなったが、テージョ川 がわ はいまだに若々 わかわか しい」という歌詞 かし が登場 とうじょう する曲 きょく がある。
水域 すいいき 。スペイン首都 しゅと のマドリード 近郊 きんこう から、ポルトガルの首都 しゅと リスボンの間 あいだ を繋 つな ぐが、川 かわ の流 なが れが速 はや く水運 すいうん としての利用 りよう は一部 いちぶ に限 かぎ られる[11] 。
10㎞ごとの落差 らくさ 。落差 らくさ が大 おお きいため、60近 ちか くのダムで発電 はつでん が行 おこな われる[11] 。
左岸 さがん (南岸 なんがん )[ 編集 へんしゅう ]
右岸 うがん (北岸 ほくがん )[ 編集 へんしゅう ]
池上 いけがみ , 岑夫、牛島 うしじま , 信明 のぶあき 、神吉 かんき , 敬三 けいぞう 、金 かね 七 なな , 紀男 のりお 『新版 しんぱん 増補 ぞうほ スペイン・ポルトガルを知 し る事典 じてん 』編者 へんしゃ はほかに小林 こばやし 一宏 かずひろ 、フアン・ソペーニャ、浜田 はまだ 滋 しげる 郎 ろう 、渡部 わたなべ 哲郎 てつろう 、平凡社 へいぼんしゃ 、2001年 ねん 。
Penn, James R (2001). Rivers of the World: A Social, Geographical, and Environmental Sourcebook . ABC-Clio Inc. ISBN 978-1576070420
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