ユーラシアカワウソ

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ユーラシアカワウソ
ユーラシアカワウソ
ユーラシアカワウソ Lutra lutra
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1][2][3]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょI
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 食肉しょくにく Carnivora
: イタチ Mustelidae
ぞく : カワウソぞく Lutra
たね : ユーラシアカワウソ L. lutra
学名がくめい
Lutra lutra (Linnaeus, 1758)[3][4][5][6][7]
和名わみょう
カワウソ[7]
ユーラシアカワウソ[5]
英名えいめい
Eurasian otter[3][7]
Eurasian river otter[3][5]

ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)は、哺乳ほにゅうつな食肉しょくにくイタチカワウソぞく分類ぶんるいされる食肉しょくにくるい別名べつめいヨーロッパカワウソ[5]

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

ツンドラ地帯ちたいのぞユーラシア大陸たいりく[5]アルジェリアインドネシアスマトラ島すまとらとう)、スリランカチュニジアモロッコ[3]

しき標本ひょうほん産地さんち基準きじゅん産地さんち・タイプ産地さんちしき産地さんち)はスウェーデンとされる[6]

形態けいたい[編集へんしゅう]

あたまどうちょう体長たいちょう)57 - 70センチメートル[5]尾長おなが35 - 40センチメートル[5]体重たいじゅう4.1 - 16キログラム[5]背面はいめん黒褐色こっかっしょくはい褐色かっしょくのどからほお胸部きょうぶ腹部ふくぶにかけてはあわ黄色きいろ灰白色かいはくしょく[5]

鼻孔びこう周辺しゅうへん体毛たいもうわらない裸出らしゅつはなきょうじょうえんは、アルファベットの「W」じょう[5]ゆび趾のあいだには幅広はばひろ水掻みずかきがあり、にくだま半分はんぶん程度ていど位置いちまでたっする[5]

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

以下いか分類ぶんるいは、MSW3(Wozencraft,2005)にしたが[6]

Lutra lutra lutra (Linnaeus, 1758)
Lutra lutra angustifrons Lataste, 1885
Lutra lutra aurobrunneus Hodgson, 1839
Lutra lutra barang F. G. Cuvier, 1823
Lutra lutra chiensis Gray, 1837
Lutra lutra hainana Xu & Lu, 1983
Lutra lutra kutab Schinz, 1844
Lutra lutra meridionalis Ognev, 1931
Lutra lutra monticolus Hodgson, 1839
Lutra lutra nair F. G. Cuvier, 1823
Lutra lutra seistanica Birula, 1913

MSW3(Wozencraft,2005)ではニホンカワウソ独立どくりつしゅLutra nipponとしているが[6]過去かこ分布ぶんぷをwidely distributed in Japanとしており北海道ほっかいどうふくめた日本にっぽん広域こういきとみなしている可能かのうせいがある[8]亜種あしゅニホンカワウソの記載きさい論文ろんぶんふくむMSW3の出典しゅってんでは北海道ほっかいどうさんL. nipponとされたことはなく、日本にっぽんさん食肉しょくにくるいでも北海道ほっかいどう分布ぶんぷあやまりや見落みおとしがあることからニホンカワウソをふくまないほんたね分布ぶんぷいきから北海道ほっかいどう見落みおとされた可能かのうせい指摘してきされている[8]

以下いか日本にっぽんさん絶滅ぜつめつ個体こたいぐんふくせつもある。分類ぶんるい石井いしい(2014)にしたが[9]

Lutra lutra nippon Imaizumi & Yoshiyuki, 1989 Japanese river otter(絶滅ぜつめつ亜種あしゅ
日本にっぽん本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅう壱岐いき対馬つしま[9]文献ぶんけん調査ちょうさやききと調査ちょうさから、五島列島ごとうれっとうにも分布ぶんぷしていたとされる[10]かたぎしき標本ひょうほん産地さんち高知こうちけん中村なかむら[5]
体長たいちょうたいする比率ひりつが60 - 70 %と、比率ひりつおおきい[5][9]
ミトコンドリアDNAシトクロムb塩基えんき配列はいれつ比較ひかくでは、大陸たいりくさん個体こたいとは7 - 9塩基えんき置換ちかんがあり遺伝いでんてき差異さいがあることが示唆しさされている[9]
Lutra lutra whiteleyi (Gray, 1867) Hokkaido river otter[9]絶滅ぜつめつ亜種あしゅ
日本にっぽん北海道ほっかいどう[9]
こう眼窩がんか突起とっき小型こがたで、眼窩がんかのちえん不明瞭ふめいりょう[9]
若齢じゃくれい個体こたいのみの少数しょうすう標本ひょうほんもとづく記載きさいで、雌雄しゆう年齢ねんれい地理ちり変異へんいなど亜種あしゅとの比較ひかく必要ひつようだが絶滅ぜつめつした可能かのうせいたか正確せいかく分類ぶんるいじょう位置いち不明ふめい[9]

生態せいたい[編集へんしゅう]

河川かせんみずうみ湿原しつげん海岸かいがんなどに生息せいそくする[5]夜行やこうせいだが、薄明はくめい薄暮はくぼにも活動かつどうする[5]

おも魚類ぎょるいべるが(しょくせいの70 - 90 %)、カエル鳥類ちょうるいアナウサギやデスマンるいなどの小型こがた哺乳類ほにゅうるい、ザリガニるいなどの甲殻こうかくるいなどもべる[5]れで協力きょうりょく獲物えものらえることもある。

陸上りくじょう水中すいちゅうで1 - 2あいだにわたり追跡ついせきおこなったのちに、水中すいちゅう交尾こうびおこなうことがおお[5]妊娠にんしん期間きかんは59 - 65にち[5]。1かいに1 - 5とう平均へいきん2 - 3とう)のようじゅう[5]生後せいご28 - 35にち開眼かいがんする[5]授乳期じゅにゅうきあいだは2かげつで、離乳りにゅうするころになると水中すいちゅうはいるようになる[5]

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

地域ちいきによってはひといならされ、漁業ぎょぎょうもちいられることもある[5]一方いっぽう漁獲ぎょかくぶつ食害しょくがいするがいじゅうとしてあつかわれることもある。

河川かせん改修かいしゅうダム建設けんせつによる生息せいそく破壊はかいおよびそれによる獲物えもの減少げんしょう水質すいしつ汚染おせん交通こうつう事故じこ漁業ぎょぎょうによるこん毛皮けがわ目的もくてき食用しょくよう狩猟しゅりょうなどにより、生息せいそくすう減少げんしょうしている[3]西にしヨーロッパでは生息せいそくすう回復かいふく傾向けいこうにあるとされるが、アフリカ大陸たいりく北部ほくぶやアジアでは生息せいそくすう推移すいいかんするデータがない[3]日本にっぽんでは毛皮けがわよう乱獲らんかく森林しんりん伐採ばっさいによるみず資源しげん枯渇こかつ河川かせん改修かいしゅうによる獲物えもの減少げんしょう農業のうぎょう生活せいかつ工業こうぎょう排水はいすいによる水質すいしつ汚染おせん漁業ぎょぎょうによるこんがいじゅうとしての駆除くじょにより絶滅ぜつめつした[9]1964ねんくに天然記念物てんねんきねんぶつ1965ねん特別とくべつ天然記念物てんねんきねんぶつ指定していされている[9]。 1976ねんにチュニジアの個体こたいぐんがワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIIに、1977ねんにワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIに掲載けいさいされている[2]

L. l. nippon ニホンカワウソ(本州ほんしゅう以南いなん亜種あしゅ
本州ほんしゅうでは1954ねん和歌山わかやまけん友ヶ島ともがしまでの生息せいそく報告ほうこくされて以降いこう記録きろくがない[9]五島列島ごとうれっとうでは文献ぶんけん調査ちょうさによると1950年代ねんだい、ききと調査ちょうさでは確認かくにん死骸しがい発見はっけんれいから1980年代ねんだい絶滅ぜつめつしたとかんがえられている[10]以降いこう記録きろくおも四国しこくとく愛媛えひめけん高知こうちけんかぎられる[9]香川かがわけんでは1948ねんに3ひきこん徳島とくしまけんでは1977ねん轢死れきしたい1979ねん足跡あしあとくそによる痕跡こんせきのみが確認かくにんされている[9]愛媛えひめけんでは瀬戸内海せとないかい沿岸えんがんでは1965ねん宇和海うわかい沿岸えんがんでは1975ねん以降いこう記録きろくがない[9]高知こうちけんでは須崎すさきでの1979ねん目撃もくげきれい以降いこう確実かくじつ記録きろくがない[9]。1994ねん環境省かんきょうしょうにより生態せいたい調査ちょうさおこなわれたが、生息せいそく確認かくにんできなかった[9]。1923 - 1927ねん狩猟しゅりょう捕獲ほかくすうは57、111、49、30、46ひき[9]。1945 - 1978ねんの126れい死亡しぼう記録きろくではこんによる溺死できしが39れい、タイ・ハマチ養殖ようしょくでの駆除くじょが38れい報告ほうこくされている[9]
絶滅ぜつめつ環境省かんきょうしょうレッドリスト[9]
L. l. whiteleyi ニホンカワウソ(北海道ほっかいどう亜種あしゅ
北海道ほっかいどうでは昭和しょうわ初期しょきには石狩いしかり地域ちいきでもられたが、1940 - 1950年代ねんだいには生息せいそく記録きろくはほぼなくなった[9]1955ねん斜里しゃりまち斜里川しゃりがわ水系すいけい捕獲ほかくされて以降いこう記録きろくがなく1950年代ねんだい絶滅ぜつめつしたとかんがえられている[9]
絶滅ぜつめつ環境省かんきょうしょうレッドリスト[9]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 06/03/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Lutra lutra. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 06/03/2020)
  3. ^ a b c d e f g Roos, A., Loy, A., de Silva, P., Hajkova, P. & Zemanová, B. 2015. Lutra lutra. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T12419A21935287. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-2.RLTS.T12419A21935287.en. Downloaded on 06 March 2020.
  4. ^ Nancy Hung, Chris J. Law, Lutra lutra (Carnivora: Mustelidae), Mammalian Species, Volume 48, Number 940, American Society of Mammalogists, 2016, Pages 109-122.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 斉藤さいとうまさる東員とういんよし細田ほそだ孝久たかひさ西木にしき秀人ひでと 「イタチ分類ぶんるい」『世界せかい動物どうぶつ 分類ぶんるい飼育しいく2(食肉しょくにく)』今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい、1991ねん、22-57ぺーじ
  6. ^ a b c d W. Christopher Wozencraft, "Order Carnivora," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 532-628.
  7. ^ a b c 米田よねだ正明まさあき 「カワウソ」『日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい改訂かいてい2はん】』阿部あべひさし監修かんしゅう東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい、2008ねん、88ぺーじ
  8. ^ a b 本川ほんがわ雅治まさはる下稲葉しもいなばさやか、鈴木すずきさとし日本にっぽんさん哺乳類ほにゅうるい最近さいきん分類ぶんるい体系たいけい阿部あべ(2005)とWilson and Reeder(2005)の比較ひかく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい46かん 2ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2006ねん、181-191ぺーじ
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 石井いしい信夫しのぶ 「ニホンカワウソ(本州ほんしゅう以南いなん亜種あしゅ)」「ニホンカワウソ(北海道ほっかいどう亜種あしゅ)」『レッドデータブック2014 -日本にっぽん絶滅ぜつめつのおそれのある野生やせい動物どうぶつ-1 哺乳類ほにゅうるい環境省かんきょうしょう自然しぜん環境かんきょうきょく野生やせい生物せいぶつ希少きしょうしゅ保全ほぜん推進すいしんしつへん株式会社かぶしきがいしゃぎょうせい2014ねん、8-10ぺーじ
  10. ^ a b 上田うえだ浩一こういち, 安田やすだ雅俊まさとし五島列島ごとうれっとうにおけるカワウソの分布ぶんぷ絶滅ぜつめつ」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい56かん 2ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2016ねん、151-157ぺーじ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]