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チョル

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チョル
Ch'ol[1]
はなされるくに メキシコの旗 メキシコ
話者わしゃすう 14まん5せんにん(2000ねん[2]
言語げんご系統けいとう
マヤ語族ごぞく
表記ひょうき体系たいけい ラテン文字もじ
言語げんごコード
ISO 639-3 ctu
Linguist List ctu
Glottolog chol1282  Chol[4]
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チョル(チョルご、Chʼol, Chol)とはメキシコチアパスしゅう北部ほくぶはなされる言語げんごマヤ語族ごぞくのチョルぐんぞくする。これともっときんえん言語げんごチョンタル・マヤである。

方言ほうげん[編集へんしゅう]

チョル通常つうじょうティラ英語えいごばん方言ほうげんトゥンバラ英語えいごばん方言ほうげんの2つに大別たいべつされる[5]

音声おんせい[編集へんしゅう]

チョルには20の子音しいんがある[6]

りょう唇音しんおん 歯茎はぐきおん 後部こうぶ歯茎はぐきおん かた口蓋こうがいおん 軟口蓋なんこうがいおん 声門せいもんおん
破裂はれつおん p pʼ b ty tyʼ k kʼ ʼ
やぶおと ts tsʼ ch chʼ
摩擦音まさつおん s x j
鼻音びおん m ñ
ながれおん l
半母音はんぼいん w y

のマヤ歯茎はぐきおんのt tʼ nにかわって口蓋こうがいしたty tyʼ ñ [tʲ tʲʼ ɲ]があるてんおおきな特徴とくちょうがある[7]言語げんご類型るいけいろんてきてチョル口蓋こうがい子音しいん風変ふうがわりである[8]

bはマヤ祖語そごの*bʼ [ɓ]由来ゆらいするもので、通常つうじょうぜん声門せいもんおとであり、語末ごまつでは[ʔ]または[p]になる[9]

母音ぼいん/a//e//i//o//u/の5母音ぼいんちゅうした母音ぼいん/ɨ/くわえた6母音ぼいん体系たいけいつ。ラテン文字もじではちゅうした母音ぼいんは"ä"であらわされる。母音ぼいん長短ちょうたん区別くべつされない。歴史れきしてきにäはみじかいaに由来ゆらいし、aはちょう母音ぼいんaaに由来ゆらいする。a以外いがいでは長短ちょうたん区別くべつった[10]

音節おんせつ構造こうぞうとしては子音しいんj [h]母音ぼいんうしろにくわえられたCVjCがた音節おんせつがある。れい:sajkʼ「バッタ」[11]実際じっさい音声おんせいでは母音ぼいん通常つうじょう発声はっせいではじまるが、後半こうはんいきもれごえになる。文法ぶんぽうじょうこのjはせっちゅうとしてはたらき、他動詞たどうし語根ごこんから受動態じゅどうたい語幹ごかん派生はせいさせるのにもちいられる[9]

文法ぶんぽう[編集へんしゅう]

名詞めいし単独たんどくでは単数たんすうでも複数ふくすうでもありる。人間にんげん動物どうぶつについては複数ふくすうあらわ接尾せつびが-obをくわえることができる。-tyakは不定ふてい複数ふくすうあらわ[12]名詞めいしにはAがた人称にんしょう接辞せつじくわえて所有しょゆう構文こうぶんつくることができる。身体しんたい部位ぶい親族しんぞく名称めいしょうなどは人称にんしょう接辞せつじ必要ひつようとする。ただし-Vl(Vは母音ぼいん接尾せつびくわえた場合ばあいには人称にんしょう接辞せつじ不要ふようになる[13]

マヤ語族ごぞく独特どくとく位置いち語根ごこん位置いち形状けいじょう物理ぶつりてき状態じょうたいあらわす)をチョルつ。位置いち語根ごこんには派生はせい接辞せつじくわえて自動詞じどうしつくることができる[14]

直接ちょくせつ名詞めいし修飾しゅうしょくできる形容詞けいようし存在そんざいするがかずすくない。それ以外いがい位置いち語根ごこん関係かんけいぶし構成こうせいする-bäをくわえる必要ひつようがある[15]。この-bäは歴史れきしてきミヘ・ソケ語族ごぞくソケ英語えいごばんから借用しゃくようしたものである[16]

十進法じっしんほう数詞すうしつが、わか世代せだいでは4または5よりもおおきなかずはスペイン表現ひょうげんすることがおおい。数詞すうし単独たんどくもちいることはできず、かず分類ぶんるい助数詞じょすうし)をくわえる必要ひつようがある。かず分類ぶんるい大半たいはんせっちゅうjをったかたちをしており、他動詞たどうしまたは位置いち語根ごこんから派生はせいしたものである[17][18]

前置詞ぜんちしはtyiがひとつだけあり、空間くうかん関係かんけい具体ぐたいてき表現ひょうげんするにはのマヤ同様どうよう関係かんけい名詞めいし使用しようする[19]

動詞どうし語幹ごかんには人称にんしょうそう自動詞じどうし他動詞たどうし区別くべつなどをあらわ屈折くっせつ接辞せつじくわえる必要ひつようがある。

チョルはほかのマヤ語族ごぞく言語げんご同様どうようのう格言かくげんであり、人称にんしょう接辞せつじにAがたのうかく)とBがた絶対ぜったいかく)の区別くべつがある。他動詞たどうし主語しゅご(A)はAがた他動詞たどうし目的もくてき(O)と自動詞じどうし主語しゅご(S)はBがた人称にんしょう接辞せつじ標示ひょうじされる[20]動詞どうし述語じゅつごぶん主語しゅごもBがた人称にんしょう接辞せつじ標示ひょうじされる[21]。チョルそう条件じょうけんとした分裂ぶんれつのうかく現象げんしょうがあり、不完全ふかんぜんしょうでは自動詞じどうし主語しゅごがAがた人称にんしょう接辞せつじあらわされる[22][23]

チョル自動詞じどうし活動かつどうあらわすもの(行為こういしゃてき、agentive)と状態じょうたいあらわすもの(行為こういしゃてき、non-agentive)の区別くべつがある。おな動詞どうしでも行為こういしゃてき場合ばあい行為こういしゃてき場合ばあいがあり、ディクソンのいう「流動的りゅうどうてきS」にあたる。後者こうしゃ動詞どうし直接ちょくせつ述語じゅつごになるが、前者ぜんしゃ場合ばあい述語じゅつごにならずに名詞めいしし、「する」を意味いみするかる他動詞たどうしchaʼlの目的もくてきになる。意味いみじょう主語しゅごはchaʼlの主語しゅごとしてAがた接辞せつじあらわされる。同様どうよう現象げんしょうモパンチョンタルポコムチられる[24][25]

チョルでは受動態じゅどうたい適用てきようたい使役しえきぎゃく受動態じゅどうたいなどのたい発達はったつしている[26]

基本きほんてき語順ごじゅんVOSがただが、動詞どうしまえ主題しゅだい焦点しょうてんくことができる[27]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Montejo López (2005).
  2. ^ a b c d e Lewis et al. (2015).
  3. ^ a b c d e Hammarström et al. (2016).
  4. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Chol”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/chol1282 
  5. ^ Coon (2017) p.648
  6. ^ Coon (2017) pp.648-648
  7. ^ England and Baird (2017) pp.176,187
  8. ^ Bennett (2016) p.482
  9. ^ a b Coon (2017) p.649
  10. ^ Coon (2017) p.649
  11. ^ Bennett (2016) p.474
  12. ^ Coon (2017) pp.651-652
  13. ^ Coon (2017) p.651
  14. ^ Coon (2017) pp.660-661
  15. ^ Coon (2017) p.653
  16. ^ Polian (2017) p.216
  17. ^ Coon (2017) pp.661,666
  18. ^ Polian (2017) p.219
  19. ^ Coon (2017) pp.662-663
  20. ^ Coon (2017) p.654
  21. ^ Coon (2017) pp.659,667-670
  22. ^ Coon (2017) p.658
  23. ^ Zavala Maldonado (2017) pp.233-235
  24. ^ Zavala Maldonado (2017) pp.241-244
  25. ^ Coon (2017) pp.658-659,669-670
  26. ^ Coon (2017) pp.671-674
  27. ^ Coon (2017) p.663

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Chol”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/chol1282 
  • Chol. In Lewis, M. Paul; Simons, Gary F.; Fennig, Charles D., eds. (2015). Ethnologue: Languages of the World (18th ed.). Dallas, Texas: SIL International.
  • Bennett, Ryan (2016). “Mayan Phonology”. Language and Linguistic Compass (10): 469-514. https://people.ucsc.edu/~rbennett/resources/papers/pdfs/Bennett%20(2016)%20-%20Mayan%20phonology.pdf. 
  • Coon, Jessica (2017). “Chʼol”. In Judith Aissen, Nora C. England, Roberto Zavala Maldonado. The Mayan Languages. Routledge. pp. 648-684. ISBN 9780415738026 
  • England, Nora C.; Baird, Brandon O. (2017). “Phonology and Phonetics”. In Judith Aissen, Nora C. England, Roberto Zavala Maldonado. The Mayan Languages. Routledge. pp. 175-200. ISBN 9780415738026 
  • Montejo López, Bernabé [et al.] (2005) Diccionario multilingüe: SVUNAL BATS'I K'OPETIK. México: Siglo Veintiuno Editores. ISBN 968-23-2523-4
  • Polian, Gilles (2017). “Morphology”. In Judith Aissen, Nora C. England, Roberto Zavala Maldonado. The Mayan Languages. Routledge. pp. 201-225. ISBN 9780415738026 
  • Zavala Maldonado, Roberto (2017). “Alignment Patterns”. In Judith Aissen, Nora C. England, Roberto Zavala Maldonado. The Mayan Languages. Routledge. pp. 226-258. ISBN 9780415738026 
  • 八杉やすぎ佳穂かほ「チョル亀井かめいたかし河野こうの六郎ろくろう千野ちの栄一えいいち へん言語げんごがくだい辞典じてんだい2かん三省堂さんせいどうISBN 4-385-15216-0

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]