ドライ・トートゥガス国立こくりつ公園こうえん

ドライ・トートゥガス国立こくりつ公園こうえん（ドライ・トートゥガスこくりつこうえん、Dry Tortugas National Park）は、フロリダ・キーズのジェファーソン砦とりで（英語えいご版ばん）（Fort Jefferson）地区ちくとドライ・トートゥガス地区ちくを保護ほごしている米国べいこくの国立こくりつ公園こうえんである。公園こうえんの面積めんせきは262 km²（101 平方へいほうマイル）、大半たいはんは水域すいいきで、メキシコ湾わん、キー・ウェストの西方せいほう約やく109 km（68 マイル）にある。

豊ゆたかな海洋かいよう生物せいぶつ、色いろとりどりのサンゴ礁さんごしょう、難破なんぱ船せんと海うみの底そこに眠ねむる財宝ざいほうの伝説でんせつで有名ゆうめいである。公園こうえんの最大さいだいの呼よび物ものは、ジェファーソン砦とりでで、巨大きょだいなしかし未み完成かんせいの海岸かいがんの要塞ようさいである。西半球にしはんきゅう最大さいだいの石造せきぞう建築けんちく物ぶつで ^[1]^[2]^[3]、16百ひゃく万まん個こ超ちょうのレンガでできている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

1824年ねん12月下旬げじゅんと1825年ねん1月がつ上旬じょうじゅん、スペインが米国べいこくに5百ひゃく万まんドルでフロリダを売却ばいきゃくしたおよそ5年ねん後ごに、米国べいこく海軍かいぐんのデイヴィッド・ポーター（英語えいご版ばん）（David Porter）提督ていとくがドライ・トートゥガス諸島しょとうを視察しさつした。提督ていとくは、カリブ海かりぶかいの海賊かいぞくを鎮圧ちんあつするのに役立やくだつ海軍かいぐん基地きちの場所ばしょを探さがしていた。彼かれは、自分じぶんの見みたものに感銘かんめいを受うけず、海軍かいぐん長官ちょうかんに、ドライ・トートゥガスはいかなる海軍かいぐんの施設しせつにも向むいていないと知しらせた。ドライ・トートゥガスは、わずかに海面かいめんに顔かおを出だす小ちいさな砂すなの島しまで構成こうせいされており、真水まみずがないうえ、砦とりでを築きずくための土地とちもほとんどなく、いずれにせよおそらく砦とりでを支ささえられるほど頑丈がんじょうではないと報告ほうこくした。

ポーター提督ていとくは、ドライ・トートゥガスは海軍かいぐん基地きちには向むかないと考かんがえたが、米国べいこく政府せいふの他ほかの者ものは、サンゴ礁さんごしょうや小島こじま周辺しゅうへんの船ふねを導みちびく灯台とうだい建設けんせつには適てきした島しまであると考かんがえた。ブッシュ・キー（Bush Key）と呼よばれた小島こじま－後ごにガーデン・キー（Garden Key）と呼よばれる－が、灯台とうだいの場所ばしょとして選えらばれた。灯台とうだいはガーデン・キー灯台とうだい（英語えいご版ばん）（Garden Key Light）として知しられるようになった。建設けんせつは1825年ねんに始はじまり、1826年ねんに終おわった。65 フィートの灯台とうだいは、白しろしっくい塗ぬりの外観がいかんを有ゆうする、レンガ造づくりの建物たてものである。灯台守とうだいもりのための小ちいさな白しろい家いえが灯台とうだいの傍かたわらに建たてられた。

1829年ねん5月、ジョン・ロジャース（John Rodgers）提督ていとくが、投錨とうびょう地ちとしての適性てきせいを評価ひょうかするため、ドライ・トートゥガスに立たち寄よった。ポーター提督ていとくの体験たいけんに反はんし、ロジャースは自分じぶんが見出みいだしたものに喜よろこんだ。彼かれは、ドライ・トートゥガスが11の小ちいさな島しま、周囲しゅういのサンゴ礁さんごしょう、堆うずたかで構成こうせいされており、堆うずたかの上うえで海うみが分わかれていると報告ほうこくした。外港がいこうと内うち港こうがあり、外港がいこうは常時じょうじ安全あんぜんな投錨とうびょう地ちとして利用りよう可能かのうで、多数たすうの船舶せんぱくが投錨とうびょうできるほど広ひろかった。さらに重要じゅうようなことに、内うち港こうは戦列せんれつ艦かんに十分じゅうぶんな水深すいしんを有ゆうすると同時どうじに、せいぜい110 m（120 ヤード）しかない狭せまい入口いりくちを兼かね備そなえていた。ロジャースは、万一まんいち、敵対てきたい勢力せいりょくがドライ・トートゥガスを占領せんりょうすれば、メキシコ湾わんでの米国べいこくの船舶せんぱく輸送ゆそうは恐おそろしく危険きけんなものとなり、「絶対ぜったい的てきな制海権せいかいけん」 ("nothing but absolute naval superiority")^{[要よう説明せつめい]} を握にぎられてしまう。しかし、占領せんりょうして米国べいこくが要塞ようさい化かすれば、ドライ・トートゥガスはメキシコ湾岸わんがんの防御ぼうぎょのための「前哨ぜんしょう基地きち」となるであろうと述のべた。

一連いちれんの技術ぎじゅつ研究けんきゅうと官僚かんりょう的てきな遅おくれのため17年間ねんかんもかかったが、1846年ねん、ジェファーソン砦とりで（第だい3代だい大統領だいとうりょうトーマス・ジェファーソンに因ちなんで名付なづけられた）の建設けんせつが、ようやくガーデン・キーで始はじめられた。既存きそんのガーデン・キー灯台とうだいと灯台守とうだいもりの小屋こやを砦とりでの擁よう壁かべ内ないに取とり込こめるように、新あたらしい砦とりでは作つくられた。灯台とうだいは、1876年ねんに砦とりでの隣となりの壁かべの上うえに現在げんざいの金属きんぞく製せいの灯台とうだいが設置せっちされるまで、ドライ・トートゥガス諸島しょとう水域すいいきを航行こうこうする船ふねを案内あんないする重要じゅうような機能きのうを果はたし続つづけた。元もとのレンガの灯台とうだいは1877年ねんに取とり壊こわされた。

砦とりでの構造こうぞうは、3層そう6面めんの420の重砲じゅうほうを持もつ砦とりでで、99 m（325 フィート）の2面めんと145 m（477 フィート）の4面めんを有ゆうする。壁面へきめんの角かくには堡塁ほうるいが設もうけられている。堡塁ほうるいは、取とり付つけられた壁面へきめんに沿そった防御ぼうぎょ射撃しゃげきを可能かのうにするよう設計せっけいされた大おおきな突起とっきである。重砲じゅうほうは、壁かべの中なかの一連いちれんの屋根やねのない砲ほう郭くるわまたは砲ほう室しつに取とり付つけられ、銃眼じゅうがんと呼よばれる大おおきな開口かいこう部ぶを通とおして海うみへ向むけられていた。ジェファーソン砦とりでは、難攻不落なんこうふらくの巨大きょだいな砲ほう床ゆかであり、強力きょうりょくな砲ほうの射程しゃてい範囲はんい内ないに来くる無謀むぼうな敵てき船せんを破壊はかいすることができるように設計せっけいされた。

砦とりでを維持いじするために必要ひつような兵へいと士官しかんのための宿舎しゅくしゃ、火薬かやく庫くら、倉庫そうこ、その他たの建物たてものは、砦とりでの巨大きょだいなレンガ壁かべの内側うちがわの練兵れんぺい場じょうにあった。軍ぐんは、砦とりでの建設けんせつ支援しえんのため、民間みんかんの機械きかい製作せいさく工こう、大工だいく、鍛冶屋かじや、石工せっこう、一般いっぱん労働ろうどう者しゃ、収容しゅうようしている囚人しゅうじん、奴隷どれいを雇用こようした。1863年ねん、南北戦争なんぼくせんそうの期間きかん中ちゅうは、ジェファーソン砦とりでの軍ぐんの囚人しゅうじんの数かずが非常ひじょうに増加ぞうかしたため、奴隷どれいをもはや必要ひつようとしないほどであった。当時とうじは、22名めいの黒人こくじん奴隷どれいが、建設けんせつプロジェクトのために雇やとわれていた。

ジェファーソン砦とりでのピーク時じの軍人ぐんじん数すうは1,729名めいであった。加くわえて、多おおくの士官しかんが家族かぞくを、限かぎられた数かずの下士官かしかんと兵へいが妻つまを洗濯せんたく婦ふ（通常つうじょうは1中隊ちゅうたいあたり4人にん）として連つれてきた。灯台守とうだいもりとその家族かぞく、料理人りょうりにん、民間みんかんの医師いしとその家族かぞく、その他たの人ひともいた。ピーク時じにはジェファーソン砦とりでに全体ぜんたいで2,000人にん近ちかくの人ひとが暮くらしていた。

砦とりでは、南北戦争なんぼくせんそうの間あいだ中ちゅう、北きた軍ぐんの手中しゅちゅうにとどまった。1865年ねん、南北戦争なんぼくせんそうの終結しゅうけつと共ともに、砦とりでの人口じんこうは、486名めいの兵士へいしまたは民間みんかん人じんと、527人にんの囚人しゅうじんからなる1,013人にんに減へった。ジェファーソン砦とりでの大だい部分ぶぶんの囚人しゅうじんは兵士へいしで、その一般いっぱん的てきな罪つみは脱走だっそうだった。民間みんかん人じんの囚人しゅうじんの犯おかした最もっとも一般いっぱん的てきな罪つみは強盗ごうとうだった。しかし、1865年ねん7月がつ、4人にんの特殊とくしゅな民間みんかんの囚人しゅうじんが到着とうちゃくした。サミュエル・マッド（英語えいご版ばん）（Samuel Mudd）博士はかせ、エドマン・スパングラー（英語えいご版ばん）（Edmund Spangler）、サミュエル・アーノルド（英語えいご版ばん）（Samuel Arnold）、マイケル・オローレン（英語えいご版ばん）（Michael O'Laughlen）で、彼かれらはエイブラハム・リンカーン大統領だいとうりょうの暗殺あんさつの共犯きょうはんとして有罪ゆうざい判決はんけつを受うけていた。ジェファーソン砦とりでは、マッド博士はかせとその仲間なかま達たちが到着とうちゃくしたときも、まだ建設けんせつ中ちゅうであり、収容しゅうようされていた期間きかん中ちゅうずっと、そしてその後ご数すう年間ねんかん建設けんせつが続つづいたが、完全かんぜんにできあがることはなかった。1867年ねん、マッドは、黄き熱ねつの蔓延まんえん時じに砦とりでで行おこなった医療いりょう行為こういが高たかく評価ひょうかされ、結局けっきょく、アンドリュー・ジョンソン大統領だいとうりょうによって恩赦おんしゃ、釈放しゃくほうされた。1888年ねんには、ジェファーソン砦とりでの軍事ぐんじ的てき有用ゆうよう性せいは減げんじ、頻繁ひんぱんなハリケーンの発生はっせいと、腐食ふしょく、消耗しょうもうさせる熱帯ねったいの気候きこうの影響えいきょうにより生しょうじる砦とりでの維持いじコストはもはや正当せいとう化かできなくなった。

1888年ねん、軍ぐんは砦とりでを米国べいこく公衆こうしゅう衛生局えいせいきょく（Marine-Hospital Service）に検疫けんえき所ところとして運営うんえいするよう引ひき渡わたした。1935年ねん 1月がつ4日にち、フランクリン・ルーズベルト大統領だいとうりょうは、船ふねでこの地ちを訪おとずれ、ジェファーソン砦とりで国定こくてい史跡しせきに指定していした。1970年ねん 11月10日にち、歴史れきし遺産いさん登録とうろく制度せいど（英語えいご版ばん）（National Register of Historic Places）に登録とうろくされた。1976年ねんに近隣きんりんのエバーグレーズ国立こくりつ公園こうえんと共ともにユネスコの生物せいぶつ圏けん保護ほご区くに指定していされた^[4]。1992年ねん 10月26日にち、ジェファーソン砦とりでを含ふくめ、ドライ・トートゥガスは国立こくりつ公園こうえんとなった。ドライ・トートゥガス島とうには、いまだいかなる静水せいすいもなく、季き節ぶし河川かせんすらみられない。それ故こ、「ドライ」という名ながある。こうした状況じょうきょうで生いき残のこることは困難こんなんなため、島しまの一ひとつは空軍くうぐん兵へい訓練くんれん用ようの軍ぐんのサバイバル映画えいがの撮影さつえい場所ばしょとして使用しようされた。

楽たのしみ方かた[編集へんしゅう]

公園こうえんは、キー・ウェストの西にし、ボートでおよそ70 マイル（60 海里かいり）すなわち110 kmのところにあり、毎年まいとしほぼ80,000人にんの人ひとが訪おとずれる。水上みずかみ飛行機ひこうきまたはボートでのみ行いくことができる。シュノーケリング、ピクニック、スキューバ・ダイビング、海うみ釣つり、野鳥やちょう観察かんさつが楽たのしめる。

最もっとも人気にんきのある野鳥やちょう観察かんさつの行事ぎょうじは、2月がつから9月がつまでの間あいだのブッシュ・キーでのセグロアジサシの巣すごもり期きで、推定すいてい100,000 羽わのアジサシが集つどう。巣すごもり期きには、ブッシュ・キーへの観光かんこう客きゃくの立たち入いりは禁止きんしされるが、双眼鏡そうがんきょうや望遠ぼうえんレンズを持もっていればジェファーソン砦とりでからその光景こうけいを見物けんぶつできる。園内えんないで見みられるその他たの鳥類ちょうるいとしては、クロアジサシ、カッショクペリカン、アメリカグンカンドリ、アオツラカツオドリ、ベニアジサシ、カツオドリ、ミミヒメウが挙あげられる。