ノトロニクス

ノトロニクス
生息せいそく年代ねんだい: 92–91 Ma PreЄ Є O S D C P T J K Pg N ↓
N. mckinleyi復元ふくげん骨格こっかく
地質ちしつ時代じだい
中生代ちゅうせいだい白はく亜紀あき後期こうき -  チューロン期き前期ぜんき~中期ちゅうき
分類ぶんるい
ドメイン : 真ま核かく生物せいぶつ Eukaryota 界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 脊索せきさく動物どうぶつ門もん Chordata 亜あ門もん : 脊椎動物せきついどうぶつ亜あ門もん Vertebrata 綱つな : 爬虫綱つな Reptilia 亜あ綱つな : 双そう弓ゆみ亜あ綱つな Diapsida 下綱しもつな : 主しゅ竜りゅう形がた下綱しもつな Archosauromorpha 上目うわめ : 恐竜きょうりゅう上目うわめ Dinosauria 目め : 竜りゅう盤ばん目め Saurischia 亜あ目め : 獣しし脚あし亜あ目め Theropoda 階級かいきゅうなし : コエルロサウルス類るい Coelurosauria 科か : †テリジノサウルス科か Therizinosauridae 属ぞく : ノトロニクス Nothronychus
学名がくめい
Nothronychus Kirkland & Wolfe, 2001
種たね
N. mckinleyi Kirkland & Wolfe, 2001（タイプ種しゅ） N. graffami Zanno et al., 2009

ノトロニクス（Nothronychus）は白はく亜紀あき後期こうきに現在げんざいの北きたアメリカに生息せいそくしたテリジノサウルス類るい（Therizinosauria）の獣しし脚あし類るい恐竜きょうりゅうの属ぞくの一ひとつである。

タイプ種しゅNothronychus mckinleyi は2001年ねんにジェームス・カークランドとDouglas G. Wolfeにより記載きさいされた。化石かせきはニューメキシコ州しゅうとアリゾナ州しゅうの境さかいにあるズニ盆地ぼんち（Zuni Basin）として知しられる地域ちいきにある、モレノヒル層そうの白はく亜紀あき後期こうき（チューロン期き中期ちゅうき）の9100万まん年ねん前まえの地層ちそうから発見はっけんされた。第だい2の標本ひょうほんはユタ州しゅうのトロピックシェイル層そうにあるN. mckinleyiのものより50万まん年ねんから100万まん年ねん早はやいチューロン期き前期ぜんきの地層ちそうから発見はっけんされ、2009年ねんに第だい2の種たねNothronychus graffami として記載きさいされた。

属ぞく名めいは古代こだいギリシャ語ごで「ナマケモノのような鉤かぎ爪つめ」という意味いみである。

くちばしを持もつ草食そうしょく性せいの獣しし脚あし類るいであり、骨盤こつばんは鳥とりに似にて（同様どうようの構造こうぞうの鳥とり盤ばん類るいとは類縁るいえん関係かんけいに無ない）いて、足あしには4本ほんの趾があり4本ほんとも前方ぜんぽうを向むいていた。

特徴とくちょう

N. mckinleyiの想像そうぞう図ず

ヒトとの大おおきさ比較ひかく

ノトロニクスはコエルロサウルス類るいであり、この分類ぶんるい群ぐんにはティラノサウルスのような肉食にくしょくの恐竜きょうりゅうが含ふくまれている。しかし、より詳細しょうさいには下位かい分類ぶんるい群ぐんのマニラプトル類るいに属ぞくしており、この分類ぶんるい群ぐんは雑食ざっしょく性せいに進化しんかしていて、ノトロニクスそのものは草食そうしょく性せいの科かに属ぞくしている。二に足そく歩行ほこう性せいで、肉食にくしょく性せいの祖先そせんよりも直立ちょくりつした姿勢しせいで歩行ほこうしていた。N. graffami は体重たいじゅう1 t、体長たいちょう4.5-6 m、体高たいこう3-3.6 mで、一方いっぽうN. mckinleyi はこれより若干じゃっかん小ちいさかった。

2つの別べつの種たねで骨格こっかく全体ぜんたいの40-50%が回収かいしゅうされていて、根元ねもとが丸まるい葉はっぱ状じょうの歯は、長ながい首くび、各々おのおのの指ゆびに30cmに及およぶカーブした鉤かぎ爪つめのあり器用きようそうな手てを持もった長ながい腕うで、大おおきく太鼓腹たいこばら状じょうの腹部ふくぶ、頑丈がんじょうな後肢あとあし、相対そうたい的てきに短みじかい尾おが記載きさいされている。N. mckinleyi はN. graffami より華奢きゃしゃで、尾お椎しいの詳細しょうさいが異ことなり、下しも腕うで（尺しゃく骨こつ）がより曲まがっている点てんで区別くべつされる

発見はっけんと種たね

後のちにノトロニクスとされる化石かせき証拠しょうこはニューメキシコ州しゅうのズニ盆地ぼんちにあるヘイバック・ビュート・サイトでの古こ生物せいぶつ調査ちょうさ隊たいによって発見はっけんされた。発見はっけんされたテリジノサウルス類るいの腸ちょう骨こつの一ひとつは当初とうしょ、鱗状りんじょう骨こつと間違まちがえられ、新あらたに発見はっけんされた角すみ竜りゅう類るいズニケラトプスの頭部とうぶの隆起りゅうきの一部いちぶとされた。しかし、詳細しょうさいな調査ちょうさの結果けっか正ただしく同定どうていされ、すぐに他たの部分ぶぶんの骨格こっかくも発見はっけんされた。ジム・カークランドとDoug Wolfeの率ひきいるニューメキシコの古こ生物せいぶつ調査ちょうさ隊たいは発見はっけんした化石かせきを新しん属ぞく新種しんしゅNothronychus mckinleyi のタイプ標本ひょうほんとして、2001年ねん8月がつ22日にちにJournal of Vertebrate Paleontology誌しで発表はっぴょうした。しかし、この名なはアリゾナ・リパブリック紙かみで2001年ねん6月がつ19日にちにラルフ・モルナーのコラムのなかで最初さいしょに報告ほうこくされている。属ぞく名めいはギリシャ語ごで「重おもい」もしくは「slothful」（一般いっぱん的てき意味いみは「怠惰たいだな」、ここではsloth=ナマケモノに似にたものの意味いみで使用しよう）という意味いみのνωθρός（nothros）と「鉤かぎ爪つめ」を意味いみするὄνにゅーυうぷしろんξくしー（onyx）から派生はせいしたものである。種たね小名しょうみょうは発見はっけん地ちの農場のうじょう主ぬしBobby McKinleyに献けんじ名めいされたものである。ホロタイプ標本ひょうほん MSM P2106 は二ふたつの頭骨とうこつの断片だんぺん、脳のう函はこ、いくつかの椎骨ついこつ、肩かた帯たいの一部いちぶ、前肢ぜんし、骨盤こつばん、前肢ぜんしで構成こうせいされる。

第だい2のそしてより完全かんぜんな標本ひょうほんであるUMNH VP 16420は2000年ねんにユタ州しゅうのビッグウォーターに在住ざいじゅうするMerle Graffamによってユタ州しゅう南部なんぶにあるトロピックシェイル層そう（チューロン期き前期ぜんき）の地層ちそうから発見はっけんされた。ビッグウォーター周辺しゅうへんの地域ちいきは北きたアリゾナ博物館はくぶつかん(MNA)による調査ちょうさが何なん度どか行おこなわれており、海うみ棲爬虫類はちゅうるい、とくに首長しゅちょう竜りゅうの化石かせきが多数たすう発見はっけんされている。白はく亜紀あき後期こうきには一帯いったいには西部せいぶ内陸ないりく海路かいろと呼よばれる浅あさい海うみが広ひろがっており、広範こうはんに渡わたり海うみ生せいの堆積たいせき物ぶつが保存ほぞんされている。Graffamの最初さいしょ発見はっけん（大おおきな孤立こりつした趾の骨ほね）は首長しゅちょう竜りゅうではなく明あきらかに陸棲りくせいの恐竜きょうりゅうのものであったため、に多おおくの研究けんきゅう者しゃが驚愕きょうがくした。しかし、骨ほねの発見はっけんされた場所ばしょは白はく亜紀あきの海岸かいがん線せんから100 kmほどの場所ばしょであった。MNAの職員しょくいんによるこの地域ちいきでの探査たんさでより多おおくの骨格こっかくが明あきらかになると、この化石かせきがテリジノサウルス類るいのものであると判明はんめいし、アメリカで発見はっけんされた最初さいしょのテリジノサウルス類るいとなった。それまでテリジノサウルス類るいの化石かせきは全すべて中国ちゅうごくとモンゴルで発見はっけんされていた。これは最もっとも完全かんぜんなテリジノサウルス科かの標本ひょうほんであるものの、頭骨とうこつは失うしなわれている。

N. graffami の復元ふくげん骨格こっかく

ユタの標本ひょうほんはMNAで研究けんきゅうされ、体格たいかく（より重厚じゅうこう）、や年代ねんだい（50万まん年ねん早はやい）が異ことなるもののN. mckinleyiに近きん縁えんであることが分わかった。MNAの標本ひょうほんはアメリカ地質ちしつ学会がっかいロッキー山脈さんみゃく部会ぶかいの54次じ集会しゅうかいで最初さいしょに報告ほうこくされた。後のちにArizona Geology でN. mckinleyi と別種べっしゅであることが議論ぎろんされたものの、命名めいめいはされなかった。2009年ねん7月がつ15日にちにLindsay ZannoらによりProceedings of the Royal Society B誌しにおいて新種しんしゅとして分類ぶんるい、命名めいめいがなされた。N. graffami の種たね小名しょうみょうは最初さいしょの標本ひょうほんの発見はっけん者しゃであるGraffamに献けんじ名めいされたものである。 N. graffami の復元ふくげん骨格こっかくは2007年ねんからMNAに展示てんじされている。

系統けいとう

Nothronychus mckinleyi は2001年ねんにテリジノサウルス科か（Therizinosauridae）に分類ぶんるいされた。2010年ねんに行おこなわれた分岐ぶんき学がく的てきな解析かいせきの結果けっかN. graffami と姉妹しまい群ぐんであることが示しめされた。