パフヌティ・チェビシェフ

Pafnuty Chebyshev
Pafnuty Lvovich Chebyshev
生誕せいたん	(1821-05-16) 1821年ねん5月16日にち ロシア帝国ていこく、カルーガ県けんボロフスク
死没しぼつ	1894年ねん12月8日にち(1894-12-08)（73歳さい） ロシア帝国ていこく、ペテルブルク
国籍こくせき	ロシア帝国ていこく
研究けんきゅう分野ぶんや	数学すうがく
研究けんきゅう機関きかん	サンクトペテルブルク大学さんくとぺてるぶるくだいがく
出身しゅっしん校こう	モスクワ大学だいがく
博士はかせ課程かてい 指導しどう教員きょういん	ニコライ・ブラシュマン
博士はかせ課程かてい 指導しどう学生がくせい	ドミトリ・グレーブ アレクサンドル・コルキン アレクサンドル・リャプノフ アンドレイ・マルコフ ウラジミール・アンドレィビッチ・マルコフ コンスタンチン・ポッセ
主おもな業績ぎょうせき	力学りきがく, 解析かいせき幾何きか, 確かく率りつ
主おもな受賞じゅしょう歴れき	デミドフ賞しょう (1849)
プロジェクト:人物じんぶつ伝でん

パフヌーティー・リヴォーヴィッチ・チェビシェフ（露ろ: Пафну́тий Льво́вич Чебышёв [pɐfˈnutʲɪj ˈlʲvovʲɪtɕ tɕɪbɨˈʂof] ( 音声おんせいファイル)、ラテン転写てんしゃ: Pafnuty Lvovich Chebyshev、1821年ねん5月16日にち（ユリウス暦れき5月4日にち） - 1894年ねん12月8日にち（ユリウス暦れき11月がつ26日にち））は、ロシアの数学すうがく者しゃ。ラテン文字もじを用もちいる地域ちいきでの姓せいの転写てんしゃ方法ほうほうはさまざまであり、Chebychev、Chebyshov、Tchebycheff、Tschebyscheffなどがある。日本語にほんご表記ひょうきもチビショフ、シェビチェフなど揺ゆれが大おおきい（なおロシア語ごでの発音はつおんはチブィショーフに近ちかい）。

経歴けいれき

初期しょき

チェビシェフはカルーガ州しゅうボロフスク地区ちくのオカトヴォという村むらで、9人にん兄弟きょうだいの1人ひとりとして生うまれた。彼かれの父ちちレフ・パーヴロヴィッチは裕福ゆうふくな地主じぬしであった。チェビシェフは当初とうしょ、母ははのアグラフェーナ・イヴァーノヴナに読よみ書かきを、いとこのアヴドーティヤ・クヴィンティリャーノヴナ・スーハレヴァにフランス語ふらんすごと算数さんすうを習ならった。チェビシェフはまた、音楽おんがくの教師きょうしも彼かれの正確せいかくさや解析かいせき的てきな考かんがえ方かたを高たかめてくれた重要じゅうような存在そんざいであるということを述のべている。

チェビシェフは（原因げんいんは不明ふめいだが）身体しんたい障碍しょうがいを持もち、これが彼かれの青年せいねん期きにおける発達はったつに影響えいきょうを与あたえた。幼少ようしょう期きから彼かれは足あしを引ひきずる障碍しょうがいがあり、歩あるく際さいに杖つえをつく必要ひつようがあったため、両親りょうしんは彼かれを（一族いちぞくの伝統でんとうとなっていた）軍人ぐんじんにしようという考かんがえを捨すてた。彼かれの障碍しょうがいは、彼かれを多おおくの子供こどもたちが楽たのしんでいた遊あそびから遠とおざけ、代かわりに機械きかいを作つくるということに人生じんせいの情熱じょうねつを傾かたむけることになった。

1832年ねん、家族かぞくは年長ねんちょうの息子むすこパフヌーティーとパーヴェル（彼かれは法律ほうりつ家かになった）に教育きょういくを施ほどこすため、モスクワに転居てんきょした。教育きょういくは引ひき続つづき家庭かていで行おこなわれ、両親りょうしんは彼かれに評判ひょうばんの高たかい教師きょうしをあてがった。その中なかには、数学すうがくと物理ぶつり学がくの教師きょうしであったポゴレルスキー（小説しょうせつ家かツルゲーネフの家庭かてい教師きょうしも務つとめた）が含ふくまれる。

大学だいがくでの研究けんきゅう

1837年ねん夏なつ、チェビシェフはモスクワ大学だいがくの入学にゅうがく試験しけんに合格ごうかくし、秋あきには同どう大学だいがくの第だい2哲学てつがく科かで数学すうがくの勉強べんきょうを始はじめた。彼かれが師事しじした教員きょういんにはブラシュマン、ツェルノフ、ペレヴォシュチノフなどが含ふくまれるが、とりわけニコライ・ブラシュマンは彼かれに大おおきな影響えいきょうを与あたえた。ブラシュマンは実践じっせん的てきな力学りきがくを教おしえ、またおそらくフランスの技術ぎじゅつ者しゃジャン＝ヴィクトル・ポンスレの業績ぎょうせきをチェビシェフに示しめしたと思おもわれる。1838年ねんに完成かんせいさせた「方程式ほうていしきの根ねの計算けいさん」に関かんする業績ぎょうせきが認みとめられ、1841年ねんにチェビシェフは銀ぎんメダルを授与じゅよされた。この研究けんきゅうの中なかで、チェビシェフはニュートン法ほうに基もとづいたn次つぎ代数だいすう方程式ほうていしきの近似きんじ解法かいほうを導みちびいた。同年どうねん、彼かれは「最もっとも卓越たくえつした業績ぎょうせきの候補こうほ」と言いえる研究けんきゅうを完成かんせいさせた。

1841年ねん、チェビシェフの経済けいざい的てき状況じょうきょうは劇的げきてきに変化へんかした。ロシアに飢饉ききんが発生はっせいし、彼かれの両親りょうしんはモスクワを離はなれざるを得えなくなったのだ。両親りょうしんはこれ以上いじょう彼かれを支ささえることができなくなったが、彼かれは数学すうがくの研究けんきゅうを続つづける道みちを選えらび、6ヶ月かげつにわたって修士しゅうし課程かていへの入学にゅうがく試験しけんに備そなえた。チェビシェフは1843年ねん10月に最終さいしゅう試験しけんを通過つうかし、1846年ねんには「確率かくりつ論ろんの初等しょとう的てき解析かいせきに関かんするエッセイ」という修士しゅうし論文ろんぶんを提出ていしゅつした。彼かれの伝記でんきを著あらわしたプルドニコフは、チェビシェフがその頃ころ出版しゅっぱんされた確率かくりつ論ろんの書籍しょせき、またはロシアの保険ほけん業ごうにおける収支しゅうしに関かんする書籍しょせきで学まなんだ後のちに、確率かくりつ論ろんの分野ぶんやに興味きょうみを持もったのではないかという説せつを示しめしている。

壮年そうねん期き

1847年ねん、チェビシェフは「対数たいすうを援用えんようした積分せきぶんについて」と題だいされた論文ろんぶんをサンクトペテルブルク大学さんくとぺてるぶるくだいがくに提出ていしゅつし、同どう大学だいがくで講師こうしの資格しかくを得えた。この頃ころ、レオンハルト・オイラーの業績ぎょうせきのいくつかがフスによって再さい発見はっけんされ、ヴィークトル・ブニャコフスキーによって編纂へんさんされていた。ブニャコフスキーはチェビシェフに対たいしてこれらの研究けんきゅうを行おこなうよう勧すすめ、このことはチェビシェフの業績ぎょうせきに影響えいきょうを与あたえた。1848年ねん、彼かれは「合同ごうどうの理論りろん」と題だいした博士はかせ論文ろんぶんを提出ていしゅつ、1849年ねん5月に学位がくいを得えた。1850年ねんにはサンクトペテルブルク大学さんくとぺてるぶるくだいがくの特とく任にん教授きょうじゅに推挙すいきょされ、1860年ねんには（通常つうじょうの）教授きょうじゅ職しょくを得えた。25年ねんにわたる教育きょういく業績ぎょうせきにより、1872年ねんには功労こうろう教授きょうじゅとなった。1882年ねん、彼かれは大学だいがくを辞じして残のこりの人生じんせいを研究けんきゅうに捧ささげた。

また1852年ねんから1858年ねんにかけて、彼かれはサンクトペテルブルク南郊なんこうのツァールスコエ・セロー（現在げんざいのプーシキン）にあったツァールスコエ・セロー・リセで実践じっせん的てき力学りきがくの講義こうぎを担当たんとうした。

科学かがく的てきな業績ぎょうせきにより、彼かれは1856年ねんに科学かがくアカデミーの準じゅん会員かいいんに推挙すいきょされた。同年どうねんには特別とくべつ会員かいいん、1858年ねんには正会員せいかいいんとなった。同おなじく1858年ねんにはモスクワ大学だいがく名誉めいよ会員かいいんにもなり、その他たにもいくつかの名誉めいよ職しょくを得えた。1856年ねんには教育きょういく省しょうの科学かがく委員いいん会かいに加くわわった。1859年ねんには科学かがくアカデミーの兵器へいき部門ぶもんの常任じょうにん委員いいんに任命にんめいされ、さらに委員いいん長ちょうとして砲術ほうじゅつや射撃しゃげき理論りろんに関連かんれんした問題もんだいを扱あつかうことになった。フランス科学かがくアカデミーは1860年ねんに彼かれを通信つうしん会員かいいんに、また1874年ねんには外国がいこく人じん正会員せいかいいんに加くわえた。1893年ねん、チェビシェフは（その3年ねん前まえに設立せつりつされた）サンクトペテルブルク数すう学会がっかいの名誉めいよ会員かいいんに推挙すいきょされた。

チェビシェフは1894年ねん11月26日にち、サンクトペテルブルクで死去しきょした。

数学すうがくにおける功績こうせき

チェビシェフは確率かくりつ論ろん、統計とうけい学がくおよび数かず論ろんにおける業績ぎょうせきで知しられている。チェビシェフの不等式ふとうしきは、標準ひょうじゅん偏差へんさ$\sigma$を持もつ確かく率りつ変数へんすうXに対たいして、Xの実現じつげん値ちとXの平均へいきん値ちのずれが$a\sigma$以上いじょうになる確かく率りつは、決けっして1/$a^{2}$を超こえないということを示しめしている。すなわち、

$\Pr(|X-{\mathbf {E} }(X)|\geq a\,\sigma )\leq {\frac {1}{a^{2}}}$

チェビシェフの不等式ふとうしきは、大数たいすうの法則ほうそくを証明しょうめいするために用もちいられる。

ベルトラン＝チェビシェフの定理ていりは、任意にんいの$n>1$に対たいして$n<p<2n$なる素数そすうが必かならず存在そんざいするということを述のべている。これはx以下いかの素数そすうの数かず$\pi (x)$に関かんするチェビシェフの不等式ふとうしき（$\pi (x)$は$n/\log(n)$のオーダーであることを示しめす）から導みちびかれる。より正確せいかくな形かたちは、素数そすう定理ていりによって与あたえられる。

遺産いさん

チェビシェフは、ロシアの数学すうがくの父ちちとも言いわれている。彼かれの教おしえ子ごの中なかには、ドミートリー・グラーヴェ、アレクサンドル・コルキン、アレクサンドル・リャプノフ、アンドレイ・マルコフなどがいる。en:Mathematics Genealogy Projectによると、チェビシェフの弟子でしは4000人にんにもなる。

彼かれの功績こうせきを記念きねんして、月つき面めんにはチェビシェフの名なを冠かんしたクレーターがあり、また小惑星しょうわくせい2010チェビシェフが存在そんざいする。

関連かんれん項目こうもく

• チェビシェフフィルタ
• チェビシェフ関数かんすう
• チェビシェフ多項式たこうしき
• チェビシェフの不等式ふとうしき
• チェビシェフの和わの不等式ふとうしき
• チェビシェフ方程式ほうていしき
• チェビシェフ距離きょり
• チェビシェフの偏かたより

外部がいぶリンク

• Biography, another one, and yet another（ロシア語ご）
• Œuvres de P.L. Tchebychef （フランス語ふらんすご）
• 『チェビシェフ』 - コトバンク
• パフヌティ・チェビシェフ - ブリタニカ百科ひゃっか事典じてん