フライ・バイ・ワイヤ

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エアバスA320ファミリーは、フルグラスコックピットとデジタル・フライ・バイ・ワイヤ飛行ひこう制御せいぎょシステムを搭載とうさいした最初さいしょ民間みんかん旅客機りょかくき唯一ゆいいつのアナログ計器けいきは、無線むせん方向ほうこう探知たんち、ブレーキ圧力あつりょく指示しじ、スタンバイ高度こうどけい姿勢しせい指示しじ後者こうしゃの2つは、生産せいさんモデルでデジタル統合とうごうスタンバイ計器けいきシステム英語えいごばんえられた。

フライ・バイ・ワイヤ英語えいご: Fly by wire, FBWりゃくされる)とは、航空機こうくうきひとし操縦そうじゅう飛行ひこう制御せいぎょシステムの1しゅ直訳ちょくやくすると「電線でんせんによる飛行ひこう」。航空機こうくうき従来じゅうらい手動しゅどう飛行ひこう制御せいぎょ電子でんしインターフェースにえるシステム。

飛行ひこう制御せいぎょ装置そうちうごきは、ワイヤによって送信そうしんされる電子でんし信号しんごう変換へんかんされ、飛行ひこう制御せいぎょコンピューターは、かく制御せいぎょめんアクチュエータうごかして、順序付じゅんじょづけられた応答おうとう提供ていきょうする方法ほうほう決定けっていする。機械きかいしき飛行ひこう制御せいぎょ英語えいごばんバックアップシステム(ボーイング777など)を使用しようすることも、完全かんぜんなフライ・バイ・ワイヤ制御せいぎょ使用しようすることもできる[1]

概要がいよう[編集へんしゅう]

フライ・バイ・ワイヤ以前いぜんりょく操縦そうじゅうシステムでは、パイロット操縦そうじゅう)やラダーペダルにあたえた入力にゅうりょくは、金属きんぞくせいのロープ(鋼索こうさく、この分野ぶんやにおける「ワイヤ」とのけでは「ケーブル」とぶ)、ロッド、滑車かっしゃによる機械きかいてきリンクを経由けいゆして直結ちょっけつ、あるいは油圧ゆあつしき電動でんどうしき空気圧くうきあつしきとうアクチュエータ補助ほじょにより、補助ほじょつばさ昇降しょうこうかじ方向ほうこうかじなどの操縦そうじゅうつばさめんうごかされていた。自動じどう操縦そうじゅう自動じどう操縦そうじゅう装置そうちがケーブルなどへ機械きかいてき入力にゅうりょくあたえることで達成たっせいされていた。

フライ・バイ・ワイヤでは、パイロットの操作そうさをセンサーによって感知かんち電気でんき信号しんごうつたえ、アクチュエータ動作どうささせ操縦そうじゅうつばさめん操作そうさするものである。実際じっさいには、パイロットの操作そうさはコクピットにある発信はっしん人工じんこう感覚かんかく装置そうち電気でんき信号しんごう変換へんかんされ、機体きたいにかかる加速度かそくどかたむきを検知けんちするセンサとコンピュータ組込くみこんだシステムをかいして、アクチュエータ電線でんせん伝達でんたつされており、操縦そうじゅうしゃ感知かんち能力のうりょくおぎなうことができるシステムとなっている。操縦そうじゅう桿や方向ほうこうかじペダルは操縦そうじゅうしゃ操縦そうじゅう信号しんごうをコンピュータに入力にゅうりょくするためのものとなるため、いままでの操縦そうじゅうシステムでのおもさと操舵そうだりょうの2つの機械きかいてき入力にゅうりょく不要ふようとなり、くわえるちからおおきさの入力にゅうりょく信号しんごうだけで十分じゅうぶんとなる。

従来じゅうらい操縦そうじゅうシステムにおいて、航空機こうくうき姿勢しせいえる場合ばあいには機体きたいごとにことなるりょうかじ[2]操縦そうじゅう適切てきせつてる必要ひつようがあったが、フライ・バイ・ワイヤでは、コンピュータが計算けいさんして必要ひつようぶんだけかじることが可能かのうとなり負担ふたん軽減けいげんされた。また飛行ひこう性能せいのうくても、操作性そうさせいわる安定あんていせいわる操縦そうじゅう困難こんなん航空機こうくうき実用じつようすることが可能かのうとなった。

アナログコンピュータ使用しようした初期しょきのものはアナログFBW、デジタルコンピュータを使用しようするものはデジタルFBWとばれる。また電気でんき信号しんごうつたえる電線でんせん複数ふくすうにして、多重たじゅうけいにすることにより冗長じょうちょうせいたせている。

おおむね以下いかのような利点りてん欠点けってんがある。

利点りてん
  • ケーブル・ロッド・滑車かっしゃなどの機械きかい部品ぶひん電線でんせんえられることにより、重量じゅうりょう軽減けいげん繁雑はんざつ機械きかい部品ぶひん点検てんけん作業さぎょう不要ふようとなり、操縦そうじゅうけい整備せいびせい向上こうじょう電子でんし機器きき自己じこ診断しんだん機能きのう可能かのうとなる。
  • 機械きかいてき機構きこうから信号しんごうせんわることにより、配線はいせん操縦そうじゅう系統けいとう設計せっけい自由じゆうたかまる(ジョイスティックかた操縦そうじゅう登場とうじょう)。
  • コンピュータを介在かいざいさせることによる以下いか利点りてん
    • プログラムをオートパイロットなどのシステムと統合とうごうすることが可能かのうとなる。旅客機りょかくきでは飛行ひこう管理かんり装置そうち入力にゅうりょくすればFBWの制御せいぎょ最適さいてき調整ちょうせいされるため、パイロットは離陸りりく巡航じゅんこう着陸ちゃくりくかくモードを選択せんたくするだけでフラップスポイラーこまかく調整ちょうせいをする必要ひつようがない。
    • 自動じどう制限せいげん機能きのう(リミッタ)により、失速しっそく荷重におもなどによる飛行ひこう制限せいげんにすることなく操縦そうじゅう可能かのう。それにともないパイロットの負担ふたん減少げんしょうする。また、旅客機りょかくきには、操縦そうじゅうりょく(パイロットが操縦そうじゅう桿を操作そうさするちから)を速度そくどによって変化へんかさせて、パイロットが過大かだい操縦そうじゅうおこなうことをふせ人工じんこう感覚かんかく装置そうちばれる操作そうさ感覚かんかく最適さいてきする装置そうち装備そうびされている[3]。さらに手動しゅどう操縦そうじゅうにもオートパイロットを操縦そうじゅうアシストや安全あんぜん装置そうちとして利用りようする機種きしゅ登場とうじょうしている。
    • パイロット誘導ゆうどう振動しんどう動的どうてき抑制よくせいすることが可能かのう。リミッターとことなる機能きのうとして、離着陸りちゃくりくモードのみ動作どうささせることもできる。
    • エレボンフラッペロンには複雑ふくざつ角度かくど計算けいさん操縦そうじゅう桿とペダルのうごきを合成ごうせいする機構きこう必要ひつようとなるが、コンピュータであれば瞬時しゅんじ計算けいさんかくどうつばさのアクチュエータを最適さいてき角度かくど設定せっていできる。
    • せい安定あんていせい緩和かんわなどのCCV技術ぎじゅつ導入どうにゅうによる燃費ねんぴ向上こうじょう機動きどうせい向上こうじょう戦闘せんとうではトレードオフの関係かんけいにあった燃費ねんぴ機動きどう両立りょうりつすることが可能かのうとなった。旅客機りょかくきでは機体きたい振動しんどう抑制よくせいすることで快適かいてきせい向上こうじょうする。
    • 左右さゆう補助ほじょつばさ昇降しょうこうかじどう一方向いちほうこううごかすことでそらりょくブレーキとして利用りようできるため着陸ちゃくりく滑走かっそう距離きょりみじかくすることが可能かのう手動しゅどうでの調整ちょうせいむずかしいがセンサーで計測けいそくすることにより機体きたいかたぶかない角度かくど調整ちょうせい可能かのうである。
    • 機械きかいしき操縦そうじゅうけい比較ひかくして操縦そうじゅうけい構成こうせいする電線でんせん多重たじゅう容易よういとなるため、冗長じょうちょうせい確保かくほしやすい。
    • 各種かくしゅ設定せってい変更へんこうすることで飛行ひこう特性とくせいことなる機種きしゅちかいものに変化へんかさせ、乱気流らんきりゅうちゅう挙動きょどうなどを調査ちょうさする「インフライト・シミュレーション」が可能かのうとなる[4]
    • 本来ほんらいことなる飛行ひこう特性とくせい機体きたい操縦そうじゅう感覚かんかく近似きんじさせることによって、複数ふくすう機種きしゅにおいて相互そうご乗員じょういん資格しかく設定せっていしたり、さらにいちすすめて同時どうじ定期ていき運航うんこう乗務じょうむ可能かのうとなった。
欠点けってん
  • 飛行ひこう制御せいぎょコンピュータとそれにともな環境かんきょう調節ちょうせつシステムの設置せっちによる空間くうかんてき重量じゅうりょうてき制約せいやく
  • 導入どうにゅう初期しょきに、プロテクション機能きのうただしく理解りかいせず無理むり操縦そうじゅうおこなったことが原因げんいんおもわれる事故じこ発生はっせいした(エールフランス296便びん事故じこ参照さんしょう)。
  • 機体きたい制御せいぎょをソフトウェアに依存いぞんしているため、ソフトウェアの欠陥けっかん(バグ、データの間違まちがいなど)が事故じこにつながるおそれがある。
    • グリペン試作しさく初号しょごう制御せいぎょプログラムの欠陥けっかんにより過度かどパイロット誘導ゆうどう振動しんどう発生はっせい着陸ちゃくりく失敗しっぱい大破たいはしている。
    • ピトーかんへのちゃくごおりにより正確せいかくたい速度そくど入力にゅうりょくされなくなったため自動じどう操縦そうじゅう解除かいじょされて失速しっそく状態じょうたいおちいり、パイロットが対処たいしょあやまったために墜落ついらくした事例じれいがある。(エールフランス447便びん墜落ついらく事故じこ参照さんしょう
  • 操作そうさたいする油圧ゆあつやリンクの応力おうりょく手応てごたえ)がないことによる以下いか欠点けってん
    • 物理ぶつりてきなリンクがない場合ばあい系統けいとうれても操縦そうじゅう桿やペダルのおもさが不変ふへんであるため、該当がいとう機能きのう正常せいじょう作動さどうしているか感覚かんかくでは把握はあくしにくい。
    • 急激きゅうげき操作そうさ可能かのうになるため、戦闘せんとうでは旋回せんかいにすぐに限界げんかいGにたっしてしまい、G-LOCこしやすい。アメリカ空軍くうぐんでF-16が導入どうにゅうされてから急激きゅうげき操作そうさによるG-LOCが原因げんいん墜落ついらく多発たはつしたことが一時期いちじきあった[5]
  • つね安定あんていした電源でんげん必要ひつよう
    • FBWのみで機械きかいしきのバックアップがない機体きたいは、電源でんげん喪失そうしつ制御せいぎょコンピュータが停止ていしすると操縦そうじゅう不能ふのうとなり、最悪さいあく場合ばあい墜落ついらくにつながることになる。
    • 通常つうじょう航空機こうくうきよりおおくの電力でんりょく必要ひつようとするため、発電はつでん能力のうりょくたか補助ほじょ動力どうりょく装置そうち緊急きんきゅう電源でんげんとしてバッテリーを搭載とうさいする必要ひつようもある。
    • コンピュータの操縦そうじゅうけいへの介入かいにゅう前提ぜんていとして設計せっけいされたそらりょく安定あんていせいひく機体きたいでは、バックアップ系統けいとうがあっても手動しゅどう操縦そうじゅうむずかしい。(マクドネル・ダグラス MD-11など)

CAS[編集へんしゅう]

FBWへの移行いこうぜん段階だんかいとして、CAS(コントロール増強ぞうきょうシステム)とばれるものがある。操縦そうじゅう桿およびフットペダルの操作そうさ電気でんき信号しんごう変換へんかんしてかくどうつばさ油圧ゆあつサーボ・シリンダを作動さどうさせるもので、コンピュータによる飛行ひこう制御せいぎょ補助ほじょとしてもちいるものである。FBWほどの効果こうかられないが、コンピュータとリンク機構きこう片方かたがた故障こしょうしても操縦そうじゅう可能かのうという利点りてんがある。F-15などだい4世代せだいジェット戦闘せんとう一部いちぶ採用さいようされている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

アブロ・カナダ CF-105 アローはフライ・バイ・ワイヤ制御せいぎょシステムで飛行ひこうした最初さいしょ試作しさく航空機こうくうき
F-8 クルセイダー のデジタル・フライ・バイ・ワイヤのテスト飛行ひこう

1930年代ねんだいにソビエトのツポレフANT-20は、最初さいしょにサーボ電気でんき作動さどうする操縦そうじゅうでテストされた[6]機械きかいてきおよび油圧ゆあつ接続せつぞく長時間ちょうじかん実行じっこうは、ワイヤおよび電気でんきサーボにえられた。

1941ねんシーメンスのエンジニアであるカール・オットー・アルトファーターは、航空機こうくうき電子でんしインパルスによって完全かんぜん制御せいぎょされるハインケル He111よう最初さいしょのフライ・バイ・ワイヤ・システムを開発かいはつおよびテストをした[7]

1934ねん、カール・オットー・アルトファーターは、航空機こうくうき地面じめん接近せっきんしたときにフレアさせた自動じどう電子でんしシステムについて特許とっきょ申請しんせいした[8]

1958ねんに、フライ・バイ・ワイヤ飛行ひこう制御せいぎょシステムを使用しようして設計せっけいおよび飛行ひこうされた最初さいしょ試作しさく航空機こうくうきは、アブロ・カナダ CF-105 アロー[9][10]

60年代ねんだい初頭しょとうから中期ちゅうきにかけて、英国えいこくでは、2人ふたりりのアブロ 707英語えいごばんCは、機械きかいてきバックアップをそなえたフェアリーシステム[11]飛行ひこうした。機体きたい飛行ひこう時間じかん使つかたしたときにプログラムは縮小しゅくしょうされた[12]

1964ねんに、月面げつめん着陸ちゃくりく試験しけん英語えいごばん(LLRV)が、機械きかいてきなバックアップなしでフライ・バイ・ワイヤ飛行ひこう開拓かいたくした[13]制御せいぎょは、3つのアナログ冗長じょうちょうチャネルをそなえたデジタルコンピュータをかいしておこなわれた。

1968ねん最初さいしょ飛行ひこうしたアポロ月面げつめん着陸ちゃくりく試験しけん英語えいごばん(LLTV)は、機械きかいてきまたは油圧ゆあつバックアップのない最初さいしょ純粋じゅんすい電子でんしフライ・バイ・ワイヤ航空機こうくうきである[14]

1969ねんコンコルドは、最初さいしょのフライ・バイ・ワイヤで製造せいぞうされた民間みんかん旅客機りょかくきである(アローは5製造せいぞうでキャンセルされた試作しさく)。このシステムには、ソリッドステートコンポーネントとシステムの冗長じょうちょうせいふくまれ、コンピューターされたナビゲーションと自動じどう検索けんさくおよび追跡ついせきレーダーと統合とうごうするように設計せっけいされ、データのアップリンクとダウンリンクを使用しようして地上ちじょう制御せいぎょから飛行ひこう可能かのうであり、パイロットに人工じんこうてき感触かんしょく(フィードバック)を提供ていきょうした[10]

1972ねんに、米国べいこくのNASAによってテスト航空機こうくうきとして電子でんしてき改造かいぞうされたF-8 クルセイダーは、機械きかいてきバックアップのない最初さいしょのデジタルフライバイワイヤー固定こていつばさ航空機こうくうき[15]。F-8は、アポロのガイダンス、ナビゲーション、および制御せいぎょハードウェアを使用しようしていた[16]。ほぼ同時どうじに、ソ連それんはじめてのフライ・バイ・ワイヤのスホーイT-4飛行ひこうした。また、イギリスでは、ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント改造かいぞうされたホーカー ハンター戦闘せんとうのトレーナーバリアントが、みぎせきパイロットようのフライ・バイ・ワイヤ飛行ひこう制御せいぎょそなえた[12]

1988ねんに、エアバスA320は、デジタル・フライ・バイ・ワイヤ制御せいぎょそなえた最初さいしょ旅客機りょかくきとしてサービスを開始かいしした[17]

採用さいようれい[編集へんしゅう]

フライ・バイ・ワイヤは、元々もともとはアポロ計画けいかくでのつき着陸ちゃくりくせんやVTOLなどの空気くうきりょくにより安定あんていられない宇宙船うちゅうせん航空機こうくうき使用しようされていた装置そうちであったが、そのちょう音速おんそく運動うんどうせい向上こうじょう大型おおがた経済けいざいせい向上こうじょう手段しゅだんとして採用さいようされている。以下いか採用さいようれいしめす。

軍用ぐんよう[編集へんしゅう]

フライ・バイ・ワイヤを搭載とうさいしたF-4実験じっけん62-12200号機ごうき

軍用ぐんようでは、試作しさくのみでわった大型おおがた戦闘せんとうCF-105 アローがデジタルFBWを採用さいようしていた。

実用じつようではF-16はじめてアナログFBWが搭載とうさいされた。F-16はCCV技術ぎじゅつ導入どうにゅうにより運動うんどうせい向上こうじょうはかられており、以降いこうおおくの戦闘せんとう同様どうよう技術ぎじゅつ採用さいようされるようになった。F/A-18実用じつようとしてはじめてデジタルFBWを搭載とうさいし、F-16ものちにデジタルFBWにかわそうされた。

F-16以前いぜんにおいても、F-15場合ばあい機械きかい系統けいとう戦闘せんとうなどで破損はそんしても、前述ぜんじゅつのCASをつうじて問題もんだいなく操縦そうじゅう可能かのうになっており、完全かんぜんなデジタルFBWのいち手前てまえ状況じょうきょうまでていた。ただしCASはFBWとことなり1じゅうのシステムであり、故障こしょう考慮こうりょして制御せいぎょ範囲はんい最大さいだいかじかくかず%程度ていどおさえていたため、機体きたいそれ自体じたい安定あんていせい放棄ほうきするCCV技術ぎじゅつ導入どうにゅう不可能ふかのうであった。またF/A-18も機体きたい設計せっけいそれ自体じたいはF-16よりもふるく、また機械きかいてき操縦そうじゅう機構きこうをバックアップとしてそなえており、CCV技術ぎじゅつ導入どうにゅうはされていない。

日本にっぽんではP2V-7にアナログFBWを搭載とうさいした可変かへん特性とくせい研究けんきゅう開発かいはつされ、データ収集しゅうしゅうおこなわれた。

民間みんかん[編集へんしゅう]

旅客機りょかくきでは、コンコルドがはじめてアナログFBWを採用さいようした。

エアバスA320で、旅客機りょかくきとしてはじめてデジタルFBWを採用さいようした。同時どうじ操縦そうじゅう桿はジョイスティックがたとなり、操縦そうじゅうせきわき配置はいちされた。以降いこうA330A340A380などでも踏襲とうしゅうされている。エアバスではボーイングにくらべるとコンピュータによるプロテクション機能きのう優先ゆうせんしており、そのてんふくめた設計せっけい思想しそうちがいはたびたび議論ぎろんまととなっている(前述ぜんじゅつエールフランス296便びん事故じこ中華航空ちゅうかこうくう140便びん墜落ついらく事故じこ参照さんしょう)。

マクドネル・ダグラスはベストセラーさんはつDC-10拡大かくだいがたであるMD-11においてFBWを採用さいよう。DC-10にして水平すいへい尾翼びよく面積めんせきを30%削減さくげんして燃費ねんぴ向上こうじょうはかったが、ETOPS認定にんてい双発そうはつでの長距離ちょうきょり路線ろせん可能かのうになったことで販売はんばいなやむ。旅客機りょかくき軍需ぐんじゅるわず窮地きゅうちおちいった同社どうしゃは、のちにボーイングに吸収きゅうしゅうされることになる。

ボーイング777はじめてデジタルFBWを採用さいようした。形状けいじょう従来じゅうらい操縦そうじゅうであり、エアバスのようなジョイスティックではない。プロテクション機能きのうはあるものの、操縦そうじゅう感覚かんかくおもくなることでパイロットに注意ちゅういうながすだけで、それ以上いじょうちから操縦そうじゅう桿にくわえれば、プロテクション機能きのうえる操縦そうじゅうをすることもできる。これは空中くうちゅう衝突しょうとつなどをけるための急激きゅうげき回避かいひ行動こうどうれるようにするための措置そちで、安全あんぜんせいおとるということではない。

にはイリューシンのIl-96、ボンバルディアのCRJシリーズ、エンブラエルエンブラエル E-Jet(アナログFBW)などのれいがある。

ヘリコプター[編集へんしゅう]

ヘリコプター操縦そうじゅうシステムは、リンク機構きこうやリンク機構きこうかいして油圧ゆあつアクチュエータを作動さどうさせることにより、メインローターやテールローターのブレードをうごかす機体きたいがほとんどであるが、フライ・バイ・ワイヤを採用さいようしているものもある。れいとしてNH-90では、メインローターとテールローターをフライ・バイ・ワイヤによって制御せいぎょする、また、メインローター、テールローター、エンジンのうごきをモニタリングするセンサーと機体きたい姿勢しせい検知けんちするセンサーからの情報じょうほうを、FBWの飛行ひこう制御せいぎょコンピュータにフィードバックすることにより機体きたい安定あんていさせるようになっている。
民間みんかんでは、ベル・ヘリコプター開発かいはつちゅうベル 525英語えいごばんがフライ・バイ・ワイヤを採用さいようし、サイクリック・レバー操縦そうじゅう)をサイドスティックしき配置はいちしている。

純然じゅんぜんたるヘリコプターではないが、ティルトローターであるV-22AW609固定こていつばさモードと回転かいてんつばさモードのあいだ転換てんかんする途中とちゅう飛行ひこう特性とくせい機体きたい制御せいぎょ方法ほうほう変化へんかすることもあり、操縦そうじゅうけいはコンピュータによって制御せいぎょされたフライ・バイ・ワイヤによるもののみとなっている。

発展はってん[編集へんしゅう]

フライ・バイ・ライト
世界せかいはつのフライバイライトを採用さいようした実用じつよう 川崎かわさき P-1
操舵そうだ信号しんごう電線でんせんではなくひかりケーブルによってつたえるシステムはフライ・バイ・ライト (Fly-by-light, FBL) またはフライ・バイ・オプティクス (Fly-by-optics) とばれる。フライ・バイ・ライトは電磁でんじ干渉かんしょうつよく、電磁でんじシールドをはぶけることによるさらなる軽量けいりょう高速こうそくだい容量ようりょう伝送でんそう実現じつげん防火ぼうかせいすぐれるなどというメリットがある。その反面はんめん構造こうぞうじょうひかりファイバーは特性とくせいどうせんよりおとるため配線はいせんには設計せっけい段階だんかいからの対応たいおう必要ひつようであったり、断線だんせん修理しゅうりむずかしいというデメリットがある。実用じつようでは川崎重工業かわさきじゅうこうぎょう固定こていつばさ哨戒しょうかいP-1唯一ゆいいつ採用さいようしている。[18]
F-22F-35戦闘せんとうでは、レーダー電子でんし光学こうがくセンサー膨大ぼうだい情報じょうほうりょう対処たいしょするため光通信ひかりつうしん利用りようされている。[19][20]操縦そうじゅう系統けいとうには使つかわれていない。
民間みんかんとしてはワールドワイド・エアロスしゃ英語えいごばん開発かいはつちゅうハイブリッド飛行船ひこうせんエアロスクラフト試作しさくドラゴンドリーム英語えいごばん実証じっしょう実験じっけんおこなわれた。
パワー・バイ・ワイヤ
現用げんようのFBWでは、電気でんき信号しんごうつたわるのは油圧ゆあつアクチュエータまでである。そのため依然いぜんとして油圧ゆあつシステム(タンク・ポンプ・配管はいかん・アクチュエータ)は存在そんざいし、重量じゅうりょう整備せいびせいにおいての課題かだいとなっている。このためアクチュエータとして、電動でんどうモーターまたは密閉みっぺいしき電気でんき油圧ゆあつしきアクチュエータを採用さいようし、タンク・ポンプ・配管はいかん削減さくげんしたシステムが開発かいはつされ、パワー・バイ・ワイヤ (Power-by-wire, PBW) とばれている。F-35A380のバックアップシステムとして採用さいようされている[21][22]
フライ・バイ・ワイヤレス
大型おおがた民間みんかん旅客機りょかくきには10まんほん以上いじょうのワイヤーがあり、全長ぜんちょうは470km、重量じゅうりょうは5,700kgにもなる。また冗長じょうちょうのためにおな信号しんごう複数ふくすうことなる経路けいろじゅうさんじゅう配線はいせんする必要ひつようり、ワイヤーをとおすため隔壁かくへき貫通かんつうもうける必要ひつようり、これは構造こうぞうじょう弱点じゃくてんになる。このようにワイヤーを配線はいせんするコストは膨大ぼうだいで、より設計せっけい困難こんなんにし、製造せいぞう・メンテナンスに多大ただいなコストがかかる。無線むせんにすれば劇的げきてきなコスト削減さくげん軽量けいりょう、ワイヤーが切断せつだんされるような損傷そんしょうでも通信つうしん維持いじできるたか信頼しんらいせい期待きたいできる。[23]世界せかい無線むせん通信つうしん会議かいぎによって4.2GHz〜4.4GHzがてられているが、レーダー電波でんぱ高度こうどけいにも使用しようされているのでこれと共存きょうぞんもとめられる。[24]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Fly by Wire Flight Control Systems Sutherland
  2. ^ 一旦いったんおおきくどうつばさ操舵そうだして姿勢しせいえたのち反対はんたいどうつばさ操舵そうだしてから中立ちゅうりつ位置いちどうつばさもどす。機体きたいごとにことなるほか速度そくど高度こうど姿勢しせいにも影響えいきょうされる。
  3. ^ FBWにかぎらず、どうつばさアクチュエータ作動さどうさせる動力どうりょく操作そうさ装置そうち装備そうびする航空機こうくうきにはかなら操作そうさ感覚かんかく装置そうち装備そうびされる。
  4. ^ 実験じっけんよう航空機こうくうき | 飛行ひこう試験しけん設備せつび - JAXA
  5. ^ 最強さいきょう戦闘せんとうパイロット』 - 岩崎いわさき貴弘たかひろしる、p276。
  6. ^ One of the history page, PSC "Tupolev", オリジナルの10 January 2011時点じてんにおけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110110064230/http://tupolev.ru/Russian/Show.asp?SectionID=163 
  7. ^ The History of German Aviation Kurt Tank Focke-Wulfs Designer and Test Pilot by Wolfgang Wagner page 122.
  8. ^ Patent Hoehensteuereinrichtung zum selbsttaetigen Abfangen von Flugzeugen im Sturzflug, Patent Nr. DE619055 C vom 11. Januar 1934.
  9. ^ W. (Spud) Potocki, quoted in The Arrowheads, Avro Arrow: the story of the Avro Arrow from its evolution to its extinction, pages 83–85. Boston Mills Press, Erin, Ontario, Canada 2004 (originally published 1980). ISBN 1-55046-047-1.
  10. ^ a b Whitcomb, Randall L. Cold War Tech War: The Politics of America's Air Defense. Apogee Books, Burlington, Ontario, Canada 2008. Pages 134, 163. ISBN 978-1-894959-77-3
  11. ^ “Fairey fly-by-wire”, Flight International, (10 August 1972), オリジナルの6 March 2016時点じてんにおけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20160306090112/http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1972/1972%20-%202032.html 
  12. ^ a b “RAE Electric Hunter”, Flight International: p. 1010, (28 June 1973), オリジナルの5 March 2016時点じてんにおけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20160305165438/https://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1973/1973%20-%201822.html 
  13. ^ 1 NEIL_ARMSTRONG.mp4 (Part Two of Ottinger LLRV Lecture)”. ALETROSPACE (2011ねん1がつ8にち). 2018ねん4がつ24にち閲覧えつらん
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  23. ^ Fly-by-Wireless | Space Apps Challange 2019”. 2019.spaceappschallenge.org. NASA. 2023ねん7がつ3にち閲覧えつらん
  24. ^ Development of Wireless Avionics Intra-Communications”. interactive.aviationtoday.com (2017ねん5がつ30にち). 2023ねん7がつ3にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 日経にっけいエレクトロニクス 2007ねん11月19にちごう P147-158
  • ヘリコプタ 日本航空にほんこうくう技術ぎじゅつ協会きょうかい 1990ねん ISBN 4930858453
  • 飛行機ひこうき構造こうぞう 日本航空にほんこうくう技術ぎじゅつ協会きょうかい 1989ねん ISBN 4930858429
  • 飛行機ひこうき構造こうぞう だい3はん だい1さつ 日本航空にほんこうくう技術ぎじゅつ協会きょうかい 2012ねん ISBN 978-4-902151-22-0
  • 最強さいきょう 世界せかい軍用ぐんようヘリ図鑑ずかん 学研がっけんパブリッシング 2012ねん ISBN 978-4-05-405191-1
  • 航空機こうくうき飛行ひこう制御せいぎょ実際じっさい -機械きかいしきからフライ・バイ・ワイヤへ- 片柳かたやなぎ亮二りょうじ森北もりきた出版しゅっぱん、2011ねんISBN 978-4-627-69091-2

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

  • ドライブ・バイ・ワイヤ - フライバイワイヤから発展はってんした自動車じどうしゃ電子でんし制御せいぎょ技術ぎじゅつで、現状げんじょうではスロットル制御せいぎょのみ普及ふきゅうしている。
  • 電気でんき指令しれいしきブレーキ - 鉄道てつどう車両しゃりょうのブレーキを電気でんきてき制御せいぎょする方式ほうしき
  • MIL-STD-1553英語えいごばん - フライ・バイ・ワイヤのかく機器きき通信つうしんはこの規格きかくおこなわれている。