ぞうそう

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ぞうそう(ぞうそう)は、兵器へいき外部がいぶけられる追加ついか燃料ねんりょうタンクのこと。内蔵ないぞう燃料ねんりょうでは不十分ふじゅうぶんな、長期ちょうき長距離ちょうきょり作戦さくせん遂行すいこうするために装備そうびされる。増加ぞうか燃料ねんりょうタンク(ぞうかねんりょうタンク)、増設ぞうせつ燃料ねんりょうタンク(ぞうせつねんりょうタンク)とも。軍用ぐんよう翼下よくか機体きたい機体きたい側面そくめん軍用ぐんようしゃ側面そくめんこうめんなどにけられる。

大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん航空こうくう部隊ぶたい陸軍りくぐん航空こうくう部隊ぶたい)では落下らっかタンク(らっかタンク)としょうした。

軍用ぐんようぞうそう[編集へんしゅう]

軍用ぐんようもちいられるぞうそうには、ドロップタンク(drop tank, 落下らっかがたぞうそう)とコンフォーマル・フューエル・タンク(conformal fuel tank, CFT, 密着みっちゃくがたぞうそう[1])があり、初期しょきジェット戦闘せんとうやジェット練習れんしゅうなどには、つばさはしぞうそう(tip tank)がもちいられていた。には、あるじフロート内部ないぶふえそうもうけたしき水上すいじょう戦闘せんとうや、主翼しゅよく固定こていしきぞうそうそなえたC-130などもある。

現代げんだい外部がいぶ搭載とうさいひん前提ぜんてい設計せっけいされた軍用ぐんようだい部分ぶぶんはあらかじめ基本きほん装備そうびふえそうふくんでいる。くわえてぞうそうおおきな容積ようせきっていることから、機体きたい改修かいしゅう風洞ふうどう試験しけんようさずばや大型おおがた装備そうびひん追加ついかする手段しゅだんとして、ぞうそうしたあるいはそのものを筐体きょうたい流用りゅうようすることがある。代表だいひょうてきなものがドローグホース、ポンプ、まき追加ついかしタンクない燃料ねんりょう機体きたい供給きょうきゅうする空中くうちゅう給油きゅうゆポッド。ほかにも各種かくしゅカメラ、センサーとう内蔵ないぞうする偵察ていさつポッド。大気たいきちゅうかく爆発ばくはつ証跡しょうせきさぐるためのしゅうちりポッド。わったところではかくばくだんぞうそう一体化いったいかしたB-58ハスラーのミッションポッド、おも搭乗とうじょうしゃのための貨物かもつようトラベルポッドとうがある。

翼下よくかのハードポイントにドロップタンクを搭載とうさいしたP-51
主翼しゅよくのハードポイントにドロップタンク、主翼しゅよくつばさはしにチップタンクを搭載とうさいしたF-104S
ドロップタンク
ハードポイントけられ、飛行ひこうちゅうはな可能かのうぞうそう[2]普通ふつうりょうはしとがった円柱えんちゅう形状けいじょうあるいは紡錘形ぼうすいけいをしており、一見いっけんしたところばくだんミサイルのようにもえる。それ自体じたい飛翔ひしょう目的もくてきとしないので、ほとんどのもの安定あんていばんたないが、投下とうか機体きたいにぶつからないように安定あんていさせるためにけられたものもある。堀越ほりこし二郎じろう考案こうあんにより日本にっぽんきゅうろくしき艦上かんじょう戦闘せんとう採用さいようされた[3][4]ものを皮切かわきりにだい世界せかい大戦たいせんごろから各国かっこく使用しようされるようになった。この時期じき機関きかんじゅう機関きかんほうによるドッグファイト機会きかいおおかったため、空気くうき抵抗ていこう重量じゅうりょう低減ていげんたまによる引火いんか爆発ばくはつ防止ぼうしのため、ざんりょうにかかわらずかいてき投棄とうきされることがおおかった。そのため、飛行ひこうにはさきにドロップタンクの燃料ねんりょうから消費しょうひし、機内きないタンクの燃料ねんりょう温存おんぞんした。
ドロップタンクを海上かいじょう投棄とうきした場合ばあい回収かいしゅう容易よういではないが、イギリスドイツフィンランドなどは、おも戦略せんりゃく物資ぶっしであるアルミニウム合金ごうきん節約せつやく目的もくてきとして、陸上りくじょう投棄とうきされたぞうそう回収かいしゅうしていたという事例じれいもある(ドイツの場合ばあい発見はっけんした民間みんかんじんたいし「礼金れいきんすのでとどけよ」と、回収かいしゅううなが注意ちゅういきがぞうそうってあったほどである)。反対はんたいに、イギリス駐留ちゅうりゅうアメリカだい8航空こうくうぐんでは、てき資源しげんとして回収かいしゅうされないようにかみつくられ、燃料ねんりょう注入ちゅうにゅう一定いってい時間じかん経過けいかすると使用しよう不能ふのうになるタンクも使用しようされた。だい大戦たいせん日本にっぽんぐんでもたけせい枠組わくぐみにかみったり、ベニヤ板べにやいた加工かこうし、防水ぼうすい処理しょりしたドロップタンクも使つかわれたが、これは回収かいしゅうされないようにとうより、自国じこく資源しげん不足ふそく原因げんいんであった。
大戦たいせん戦闘せんとう大型おおがたにともなってぞうそうだい容量ようりょうしており、自衛隊じえいたい運用うんようするF-15F-2F-16同等どうとうひん)で容量ようりょう2000リットルちょうにもなり、そらのタンクであってもこう高度こうどから落着らくちゃくすれば相応そうおう被害ひがいをもたらしうるため、緊急きんきゅうのぞ空中くうちゅう投棄とうきしないのが一般いっぱんてきになっている。
また、スペースシャトル巨大きょだい外部がいぶ燃料ねんりょうタンクも、一種いっしゅのドロップタンクであるとえる。
F-15Eのコンフォーマル・フューエル・タンク
コンフォーマル・フューエル・タンク
機体きたい側面そくめん上部じょうぶ密着みっちゃくするように装備そうびされるぞうそうのこと。飛行ひこうちゅうはなしはできないが、ドロップタンクにくら空気くうき抵抗ていこうちいさいため燃費ねんぴすぐれ、ハードポイントをようしないのでよりおおくのへいそう搭載とうさいできるという有利ゆうりめんがある[2]F-15Eでは標準ひょうじゅん装備そうびされている。F-16 ブロック60と(ポーランド空軍くうぐん採用さいようしている)ブロック52+も採用さいようしている。ほかには、サーブ 39 グリペンラファールタイフーンでも利用りよう検討けんとうされている。
つばさはしぞうそう(チップタンク)
ひだり右翼うよくはしけられたぞうそう[2]はず不可能ふかのう固定こていしきと、ちゅうちゅうかぎはず可能かのう飛行ひこうちゅうはなしは不可能ふかのう)なはん固定こていしきがある。つばさはし重量じゅうりょうぶつ装着そうちゃくすることは一見いっけん強度きょうどてき負荷ふかおおきくおもえるが、実際じっさいには飛行ひこうちゅう航空機こうくうき機体きたい重量じゅうりょう主翼しゅよくげるため、かたちになる主翼しゅよくがクリーン状態じょうたいよりもチップタンクでつばさりょうはし重量じゅうりょうぶつほう強度きょうどてき有利ゆうりである。ただし重量じゅうりょうぶつ左右さゆうけるため、どう重量じゅうりょう機体きたい中心ちゅうしんじくちかくに搭載とうさいするよりもロールレートがひくくなり機動きどうせいへの悪影響あくえいきょうおおきい。おもに、初期しょきのジェット戦闘せんとうもちいられたが、戦闘せんとう任務にんむ考慮こうりょしない練習れんしゅうおよびCOINでは現在げんざいでももちいられている。採用さいようした機種きしゅP-80T-33F9FF-5A/BF-104L-39A-37SF-260など。
後方こうほう乱気流らんきりゅう視界しかい関係かんけい密集みっしゅう編隊へんたいみにくくなるため曲技きょくぎ飛行ひこうさいはず場合ばあいがある(れいフレッチェ・トリコローリMB-339PAN)。
機体きたいりょうわきふえそう装備そうびしたUH-60J
ヘリコプターよう
一部いちぶ機種きしゅは、パイロンふえそうけることができる。従来じゅうらい機内きない燃料ねんりょうタンクを増設ぞうせつする方式ほうしきくらべて機内きないスペースを犠牲ぎせいにすることなく航続こうぞく距離きょり飛行ひこう時間じかんばせるというメリットがある。UH-60CH-53AH-64OH-1などで採用さいようされている。一般いっぱん中身なかみそらになっても平時へいじはなさずに帰投きとうする。
なお、固定こていつばさ主翼しゅよく内部ないぶ空間くうかんく、速度そくどてき空気くうき抵抗ていこうもあまりおおきな問題もんだいとならないヘリコプターの場合ばあいしゅ燃料ねんりょうタンクがMi-8のように外装がいそうがたないしCH-47のようにコンフォーマルタンクである場合ばあいがある。

軍用ぐんよう車両しゃりょうぞうそう[編集へんしゅう]

T-72ぞうそう
後部こうぶ甲板かんぱんにジェリカンを数個すうこ積載せきさいする装甲車そうこうしゃ
ぞうそう兼用けんようのサイドスカートを装備そうびした、スウェーデンのStrv.103Cがた

戦車せんしゃはしほう装甲車そうこうしゃのような軍用ぐんよう車両しゃりょうにもふえそうけられることもある。

戦車せんしゃ燃料ねんりょうは、引火いんかてんたかディーゼル燃料ねんりょうであっても榴弾りゅうだん爆発ばくはつ高温こうおん着火ちゃっかし、装備そうび位置いちによっては車体しゃたい全体ぜんたい延焼えんしょうして危険きけんであるため、非常時ひじょうじ戦闘せんとうのために車内しゃないから操作そうさして投棄とうき可能かのうなものがおおい。戦後せんごソ連それんぐん戦車せんしゃ場合ばあい、フェンダーじょうなどにも露出ろしゅつした固定こていしき燃料ねんりょうタンクが搭載とうさいされたものおおいが、中東ちゅうとう戦争せんそうではこれらに着火ちゃっかしてしまうケースが実際じっさいおおかった。通常つうじょう外装がいそうしきのタンクが着火ちゃっかしても、車体しゃたい外側そとがわ延焼えんしょうするだけであり爆発ばくはつはしない。しかし一方いっぽう大量たいりょう燃料ねんりょうのこっている状態じょうたいなどで引火いんかすると消火しょうか困難こんなんでそのまま戦車せんしゃ全焼ぜんしょうした事例じれい多々たたある。

また、だい世界せかい大戦たいせん直前ちょくぜん燃料ねんりょう補給ほきゅう利便りべんのためにジェリカン発明はつめいされ、補助ほじょタンクわりに車体しゃたい外部がいぶ大量たいりょう搭載とうさいしているれいられた。

歩兵ほへいよう携行けいこうがた対戦たいせんしゃ兵器へいきおおもちいられている成形せいけい炸薬さくやくだん(HEATだん)への防御ぼうぎょ効果こうか期待きたいして、引火いんか危険きけん考慮こうりょしたうえ外部がいぶ燃料ねんりょうタンクを「装甲そうこう」の一種いっしゅとして配置はいちした設計せっけいれいもある。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Boeing: ボーイング・ジャパン - F-15イーグル戦闘せんとう
  2. ^ a b c 石津いしづ, 祐介ゆうすけ (2018ねん2がつ22にち). 戦闘せんとうがる燃料ねんりょうタンク「ぞうそう」、どういうもの? 緊急きんきゅうには投棄とうきも”. りものニュース. https://trafficnews.jp/post/79762/ 
  3. ^ 堀越ほりこし二郎じろうれいせん その誕生たんじょう栄光えいこう記録きろく角川かどかわ文庫ぶんこ、2012ねん12月25にち
  4. ^ 撃墜げきついおう坂井さかい三郎さぶろうれいせんたくしたサムライたましい. PHP文庫ぶんこ. (2008-06-02)