ヘルメット (オートバイ)

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ヘルメットオートバイやそれにじゅんずるものにおいて、乗車じょうしゃちゅう転倒てんとう事故じこさい乗員じょういん頭部とうぶ保護ほごする身体しんたい装備そうびのひとつである。オートバイ乗車じょうしゃちゅう事故じこにおける死因しいん頭部とうぶ外傷がいしょうによるものが最多さいたであり、そのため頭部とうぶ外傷がいしょう防止ぼうし軽減けいげんするものとしてヘルメットの装着そうちゃく推奨すいしょうないし義務ぎむとされている。

起源きげん[編集へんしゅう]

19世紀せいき後半こうはんにオートバイが発明はつめいされ、20世紀せいき初頭しょとうから使用しようはじまったが、ヘルメットを着用ちゃくようするという習慣しゅうかんながらくく、事故じこたいする研究けんきゅうもされてこなかった。しかし、アラビアのロレンスでられるトーマス・エドワード・ロレンスがオートバイ乗車じょうしゃちゅう事故じこ頭部とうぶ外傷がいしょうにより死亡しぼうしたことから、治療ちりょうチームの一員いちいんであった外科げかのヒュー・ケアンズはオートバイ乗車じょうしゃちゅう事故じこによる負傷ふしょう研究けんきゅうはじめ、ヘルメットを使用しようすることが死者ししゃすう大幅おおはばらすという結論けつろんた。これがヘルメットの有効ゆうこうせいしめ最初さいしょ研究けんきゅうである[1]。その世界せかい各国かっこくでオートバイが普及ふきゅうするなか死亡しぼう事故じこ増加ぞうか問題もんだいされ、各国かっこく規格きかく義務ぎむされるようになった。

形状けいじょうによるちが[編集へんしゅう]

オートバイようヘルメット(ひだりからじゅんにオープンフェースがた・フルフェースがた・フリップアップがた

形状けいじょうによる分類ぶんるいは、つぎとおりである。

ハーフがた
半球はんきゅうがたはんキャップ、おわんがたともばれる。気軽きがるかぶれ、価格かかくやすいのが利点りてんであるが、保護ほご範囲はんいせまいのが欠点けってんであり、とくがわ頭部とうぶへの衝撃しょうげき致命傷ちめいしょうになりやすい(みみ上方かみがたにあたる部分ぶぶん頭蓋骨ずがいこつ比較的ひかくてきうすい)。みみ露出ろしゅつしているため、高速こうそく走行そうこうには風切かざきおんのノイズのせいで周囲しゅういおとこえにくくなるという問題もんだいもある。
日本にっぽんでは排気はいきりょう125ccまでのオートバイよう規格きかく製造せいぞうされている。
スリークォーターズがた
ハーフがたよりもがわ頭部とうぶ保護ほご範囲はんいみみ半分はんぶんおお程度ていどまでひろげられており、ハーフがたとオープンフェースがた(ジェットがた)のなかあいだてき形状けいじょうであるところからセミジェットがたともばれる。業務ぎょうむようオートバイでの使用しようおおい。シールド装着そうちゃくできるものもあり、シールドがないと顔面がんめんから転倒てんとうするような場合ばあいにはかおきずつけるおそれがある。ただしシールドがあっても顔面がんめん保護ほごできるがあご損傷そんしょうするおそれがある。
日本にっぽんでは排気はいきりょう125ccまでのオートバイよう規格きかく製造せいぞうされているものがほとんどである。
オープンフェースがた
がわ頭部とうぶ後頭部こうとうぶのほぼすべてをおおうが顔面がんめん露出ろしゅつしているタイプ。むかしのジェット戦闘せんとう操縦そうじゅう装着そうちゃくしていたヘルメットの形状けいじょうからジェットがたともばれる。上記じょうきふたつとくらべて安全あんぜんせいたかいほか、視野しやひろさ、開放かいほうかん利便りべんせいかおかくさないので、ヘルメットをこうむったままみずんだり会話かいわできる)をそこなわない。シールドが装着そうちゃくできるものもある。
日本にっぽんではほぼぜん排気はいきりょうのオートバイよう規格きかく製造せいぞうされている。
フルフェースがた
インテグラルがたともばれる。オープンフェースがたにチンガード(あご部分ぶぶんおおい)をけたもの。視界しかい確保かくほする部分ぶぶん以外いがいおおわれることになる。よりたか安全あんぜんせい顔面がんめんから転倒てんとうするような場合ばあい)が最大さいだい利点りてんであり、また、かぜみにくいためとく高速こうそく走行そうこう快適かいてきせいすぐれている。顔面がんめん頭部とうぶへの損傷そんしょうふせぐことができるが、頸部への負荷ふかがかかりやすく脊髄せきずい損傷そんしょう呼吸こきゅう困難こんなんなどをこすおそれもある。また、口元くちもとおおわれていることで気道きどう確保かくほとう救命きゅうめい措置そちさまたげることがあり、そのため、ヘルメットリムーバーとばれる事故じこ発生はっせいにすぐにヘルメットをはずせるような構造こうぞうのものもある。スペインのヘルメットメーカーであるAPCシステムズからエアバッグ内蔵ないぞうのヘルメットが開発かいはつされている。さらに頸部への負荷ふか軽減けいげんするためエアバッグジャケットやネックブレースシステムなどとわせることで安全あんぜんせいがる。基本きほんてきぜん排気はいきりょうのオートバイよう規格きかく製造せいぞうされている。SKULLYをはじめBikesystems、BMWなどがHUD内蔵ないぞうのヘルメットを開発かいはつしている。

また、上記じょうきかく形状けいじょうには以下いか部分ぶぶん形状けいじょう変更へんこう機構きこうまれている場合ばあいがある。

ベンチレーションシステム
フルフェースがたやオープンフェースがたでは通気つうきこうもうけられているものがあり、そういったタイプでははんして走行そうこうちゅうすずしく快適かいてきになっている。最近さいきんは、女性じょせいけにシールドにUVカットをほどこしたり、サイドシールドのふうみを低減ていげんさせたりしてかるさを重視じゅうしした構造こうぞうのものもあり、ファミリーがたばれている。
ハーフがた一見いっけんすずしそうにえるが、ベンチレーションシステムがく、通気つうきせいがないために夏場なつばなかれ、ふゆ露出ろしゅつおおさでかおこごえるようにさむくなる。そういったてんではジェットがたやフルフェースがたよりも不快ふかいである。
オフロードけの改良かいりょう
オフロード専用せんようつくられたフルフェースがたはモトクロスをはじめとしたレースようとしてつくられているため視界しかいわるい。そのため、シールドをはずしてゴーグルを着用ちゃくようすることもある。最近さいきんはフルフェースがたでありながらフェースガード部分ぶぶんをシールドごと開閉かいへい出来できたり、ぼうたいとの分割ぶんかつ合体がったい自在じざい構造こうぞうのものもあり、フリップアップがた(システムがたばれている。ノーラングループが製造せいぞうしているクロスオーバーがた状況じょうきょうおうじてチンガードが着脱ちゃくだつできたり、バイザーも交換こうかんできる。
オフロード走行そうこうではフロントアップやアクセルターンなどボディアクションがおおきく体力たいりょく消費しょうひおおきいので、呼吸こきゅうすこしでもおこないやすいようにチンガードが前方ぜんぽうびている。また、くるま周囲しゅうい車両しゃりょうによりどろげられるため、バイザーがけられている。それでも多少たしょうなりゴーグルがよご視界しかいふさがるため、複数ふくすうまいかさねた使つかてフィルムやまき装置そうちきのフィルムを併用へいようする場合ばあいもある

使用しよう限度げんど[編集へんしゅう]

ヘルメットは製造せいぞう時間じかんつにつれ、シェルや衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうライナーが劣化れっかしてくる。での劣化れっかじょうきょうかりつらいが、新品しんぴん購入こうにゅうよりもゆるくなれば寿命じゅみょう目安めやすとされる[2]日本にっぽんのヘルメットメーカーしゃ北米ほくべい市場いちば購入こうにゅうねん製造せいぞうななねん品質ひんしつ保証ほしょうけて販売はんばいしているが[3]日本にっぽん市場いちばではSGマークの表示ひょうじ有効ゆうこう期間きかん[4]乗車じょうしゃようヘルメットでは使用しよう開始かいし購入こうにゅうさんねんとなるため、期限きげんないでの交換こうかん推奨すいしょうしている[5]

また、ヘルメットは衝撃しょうげきたいしてつぶれることで頭部とうぶ保護ほごしているため、いちでもつよ衝撃しょうげきけたものは外見がいけんじょうおおきな損傷そんしょうられなくても保護ほご能力のうりょくうしなっており、交換こうかん必要ひつようになるとされている。ただし、った状態じょうたいあるいはオートバイのシートからコンクリートめんとした程度ていどでは「つよ衝撃しょうげき」にはたらないとされている。[1]

装着そうちゃく義務ぎむ[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、道路どうろ交通こうつうほうによって原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃまたは普通ふつう自動じどうりんしゃ大型おおがた自動じどうりんしゃ定義ていぎされるもの公道こうどう走行そうこうをするときは、ヘルメットを着用ちゃくようする義務ぎむ法規ほうきさだめられている。サイドカー同様どうよう。(着用ちゃくようは1てん加算かさん反則はんそくきんなし)道路どうろ運送うんそう車両しゃりょうほう原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃ定義ていぎされるミニカーや、りん小型こがた自動車じどうしゃまたはりん軽自動車けいじどうしゃとして定義ていぎされるトライク場合ばあいでも、道路どうろ交通こうつうほうでは普通ふつう自動車じどうしゃあつかいをけるため着用ちゃくよう義務ぎむはないか、安全あんぜんのため極力きょくりょく着用ちゃくようすべきである。ただしりん同等どうとうあつかいをける内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指定していするさんりん以上いじょうのものや特定とくていりんしゃ該当がいとうするものについては義務ぎむとなっている。トライク登録とうろくのサイドカーについてはクラウザー・ドマニのようなものをのぞけば任意にんいでの着用ちゃくようとなる。ミニカー登録とうろくの50cc未満みまんぜん地形ちけい対応たいおうしゃやトライク登録とうろく排気はいきりょう無制限むせいげんぜん地形ちけい対応たいおうしゃについても着用ちゃくよう義務ぎむはない。

なお、産業さんぎょう競争きょうそうりょく強化きょうかほうによる区域くいき期間きかん限定げんていした特例とくれい措置そちもとづく特定とくてい電動でんどうしゃについては上記じょうきかぎりではない。詳細しょうさいは「原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃ#電動でんどう小型こがた車両しゃりょうとうたいする規制きせい」を参照さんしょう

日本にっぽんにおいて最初さいしょに「乗車じょうしゃようヘルメット」とばれたものは、1952ねん昭和しょうわ27ねん)に公営こうえい競技きょうぎオートレースけに供給きょうきゅうされた二輪車にりんしゃ競技きょうぎようのヘルメットとされる[6]

日本にっぽんでのヘルメット装着そうちゃく義務ぎむは、

1965ねん昭和しょうわ40ねん)に高速こうそく道路どうろでのヘルメット着用ちゃくよう努力どりょく義務ぎむ罰則ばっそくなし)が規定きてい

1972ねん昭和しょうわ47ねん)には最高さいこう速度そくど規制きせいが40kmをえる道路どうろでのヘルメット着用ちゃくよう義務ぎむ罰則ばっそくなし)

1975ねん昭和しょうわ50ねん)から罰則ばっそくありの義務ぎむ政令せいれい指定してい都市とし区間くかんで50ccちょうのオートバイのヘルメット着用ちゃくよう義務ぎむ

1978ねん昭和しょうわ53ねん)にはすべての道路どうろ(ただし制限せいげん速度そくどが30km/h以下いか道路どうろのぞく)で50ccちょうのオートバイのヘルメット着用ちゃくよう義務ぎむ

1986ねん昭和しょうわ61ねん)には原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃふくすべてのオートバイにすべての道路どうろ制限せいげん速度そくどが30km/h以下いか道路どうろふくむ)でのヘルメットの着用ちゃくよう義務ぎむ

1990ねん平成へいせい2ねん)には内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指定していするさんりん以上いじょうのものに該当がいとうするトライクにヘルメットの着用ちゃくよう義務ぎむ

2009ねん平成へいせい21ねん)には特定とくていりんしゃ該当がいとうするトライクにヘルメットの着用ちゃくよう義務ぎむ

義務ぎむ背景はいけいには1960年代ねんだいから70年代ねんだいにかけてのオートバイ人口じんこう増加ぞうか若年じゃくねんライダーの事故じこ増加ぞうかによるものがおおきい。

各国かっこく[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける法規ほうきしゅうによってことなる。2016ねん現在げんざいアイオワしゅうイリノイしゅうニューハンプシャーしゅうなどヘルメット着用ちゃくよう義務ぎむがないしゅうは28しゅうテキサスしゅうフロリダしゅうなどでは、若年じゃくねんしゃ初心者しょしんしゃかぎって着用ちゃくよう義務ぎむづけられる。着用ちゃくよう完全かんぜん義務ぎむされているのはカリフォルニアしゅうニューヨークしゅうなどである。 2012ねん以前いぜんのミシガンしゅうでは、オートバイ利用りようしゃ全員ぜんいんにヘルメット着用ちゃくよう義務付ぎむづける州法しゅうほう存在そんざいしていたが、しゅう議会ぎかい議員ぎいんがオートバイ愛好あいこうしゃ権利けんり主張しゅちょうし、廃案はいあんれいられた[7]

ベトナムではオートバイ事故じこ多発たはつけて2007ねんヘルメットの着用ちゃくよう義務ぎむ開始かいしされ、負傷ふしょう死亡しぼう事故じこ減少げんしょうした[8]

規格きかく[編集へんしゅう]

ヘルメットの安全あんぜんせいっただけではわかりづらく、しかも安全あんぜんせい欠如けつじょ生命せいめい危険きけん直結ちょっけつするため、各種かくしゅ規格きかくさだめられそれにしたがうことがもとめられている。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおいて通用つうようする規格きかくとして、JISSGまたはPSCなどがある。以前いぜん規格きかくごとにこまかな検査けんさ内容ないようことなっていたが、2010ねん以降いこうはSG規格きかくはJIS規格きかく(T8133)を採用さいようすることになったため、安全あんぜん性能せいのうかんする試験しけん内容ないようおな基準きじゅんとなった。表示ひょうじ取扱とりあつかい説明せつめいしょへの記載きさいなどはSG規格きかく独自どくじ規則きそくもうけている。SG規格きかくとPSCマークはセットで付与ふよされ、この規格きかくがないと日本にっぽん国内こくない流通りゅうつうさせることができない。そのに、サーキットにおいての競技きょうぎ使用しようみとめる規格きかく日本にっぽんモーターサイクルスポーツ協会きょうかい (MFJ) がさだめている。

日本にっぽん乗車じょうしゃようヘルメットは消費しょうひ生活せいかつよう製品せいひん安全あんぜんほうにより特定とくてい製品せいひんとされ、事業じぎょうしゃ該当がいとうする検査けんさおこない、くにさだめた技術ぎじゅつじょう基準きじゅん適合てきごうしたむね表示ひょうじであるPSCマーク(PSマーク)がいと「乗車じょうしゃようヘルメット」として販売はんばいおよ陳列ちんれつができない[9][10]製造せいぞう事業じぎょうしゃおよび輸入ゆにゅう事業じぎょうしゃは、対象たいしょう製品せいひん自己じこ確認かくにん自社じしゃまたは適切てきせつ検査けんさ機関きかんにおける検査けんさ)することが義務付ぎむづけられており、その結果けっか技術ぎじゅつ基準きじゅん適合てきごうしていれば当該とうがい検査けんさ記録きろく作成さくせいして保管ほかんすることなど一定いってい事項じこうたしたとどをすればPSCマークが表示ひょうじできる条件じょうけんとなり、日本にっぽん国内こくないで「乗車じょうしゃようヘルメット」として販売はんばいおよ陳列ちんれつ可能かのうとなる[9][10]対象たいしょう製品せいひん検査けんさ実施じっし当該とうがい検査けんさ記録きろく作成さくせい製品せいひん安全あんぜん協会きょうかいでもっており、そのさいにSGマーク制度せいど表示ひょうじ申請しんせいがあれば、SGマーク対象たいしょう製品せいひんとなる[10]

MFJ規格きかく
日本にっぽんモーターサイクルスポーツ協会きょうかい制定せいていした競技きょうぎ対応たいおう規格きかく。ほぼJISまたはスネル規格きかく下記かき)どちらかの認定にんていけているが競技きょうぎ用途ようとによって規格きかくことなり、ロードレースようではたい貫通かんつうせいがスネル規格きかく準拠じゅんきょとなっている[11]
JIS T8133(2007ねん改定かいていばん)における・1しゅ(125cc以下いか限定げんてい
125cc以下いか二輪車にりんしゃ限定げんてい使用しようされることを想定そうていして最低限さいていげん安全あんぜんせい確保かくほ目的もくてきとした規格きかく過去かこきゅうJIS・Aたねくら安全あんぜんせい強化きょうかされた。ハーフがた・スリークォーターズがた該当がいとう
JIS T8133(2007ねん改定かいていばん)における・2しゅ排気はいきりょう無制限むせいげん
排気はいきりょうにかかわらずすべての二輪車にりんしゃでの使用しよう想定そうていした規格きかく基本きほんてききゅうCたねをベースとしつつ安全あんぜんせい強化きょうかはかられた。一部いちぶたい貫通かんつうせいのテストであまくなっている部分ぶぶんもあるが、いままでのJIS規格きかくなかもっと安全あんぜんせいたかいとされている。オープンフェースがた・フルフェースがた該当がいとう
きゅうJIS規格きかく・Aたね
125cc以下いか二輪車にりんしゃ限定げんてい使用しようゆるされている規格きかく低速ていそくでの安全あんぜんせいのみ確保かくほされている。
きゅうJIS規格きかく・Bたね
125ccちょう二輪車にりんしゃ対応たいおうしており、最低限さいていげん必要ひつよう安全あんぜんせいたしている。
きゅうJIS規格きかく・Cたね
きゅうJIS規格きかくなかではもっと安全あんぜんせいたかいもの。
PSCマーク
日本にっぽん国内こくない販売はんばいされている「乗車じょうしゃようヘルメット」はかならずこの表示ひょうじがあり、消費しょうひ生活せいかつよう製品せいひん安全あんぜんほうさだめる技術ぎじゅつ基準きじゅん適合てきごうしていることをしめす。この表示ひょうじがないと規格きかく表示ひょうじがあっても「乗車じょうしゃようヘルメット」として販売はんばい陳列ちんれつみとめられない。上記じょうきJIS規格きかくおなじく「125cc以下いか限定げんてい」と「排気はいきりょう無制限むせいげん」の種類しゅるい基準きじゅんがあり、それぞれきゅうJISのAたね・Bたね相当そうとうであったが、2010ねん平成へいせい22ねん)5がつ改訂かいていによりJIS2007の1しゅ・2しゅ相当そうとう基準きじゅんげられ、安全あんぜんせい強化きょうかされた。
SGマーク
製品せいひん安全あんぜん協会きょうかい審査しんさにより基準きじゅん適合てきごうしているものとみとめた製品せいひん表示ひょうじされるもの。規格きかく内容ないよう自体じたいはPSCと同等どうとうであるが、第三者だいさんしゃ機関きかんによる審査しんさ義務付ぎむづけられており(PSCはメーカーない検査けんさのみでりる)、製品せいひん欠陥けっかんにより被害ひがい発生はっせいしたときのための対人たいじん賠償ばいしょう保険ほけん(1おくえん限度げんど)が付帯ふたいされる。SGマークは任意にんいであるが、日本にっぽん国内こくない流通りゅうつうするヘルメットの大半たいはんにPSCとならんでSGマークが表示ひょうじされている。

法的ほうてき基準きじゅん[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおけるオートバイに使用しようする乗車じょうしゃようヘルメットの法的ほうてき基準きじゅんは、道路どうろ交通こうつうほうにより以下いかようさだめられている。

道路どうろ交通こうつうほう だいななじゅういちじょうよん
1. 大型おおがた自動じどうりんしゃまた普通ふつう自動じどうりんしゃ運転うんてんしゃは、乗車じょうしゃようヘルメットをかぶらないで大型おおがた自動じどうりんしゃしくは普通ふつう自動じどうりんしゃ運転うんてんし、また乗車じょうしゃようヘルメットをかぶらないもの乗車じょうしゃさせて大型おおがた自動じどうりんしゃしくは普通ふつう自動じどうりんしゃ運転うんてんしてはならない。
2. 原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃ運転うんてんしゃは、乗車じょうしゃようヘルメットをかぶらないで原動機げんどうきづけ自転車じてんしゃ運転うんてんしてはならない。
(3〜5.省略しょうりゃく
6. だい1こうおよだい2こう乗車じょうしゃようヘルメットの基準きじゅんは、内閣ないかくれいさだめる。
内閣ないかくれい道路どうろ交通こうつうほう施行しこう規則きそくだいきゅうじょう乗車じょうしゃようヘルメットの基準きじゅん
1. 左右さゆう上下じょうげ視野しやじゅうふんとれること。
2. 風圧ふうあつによりひさしがしだれて視野しやさまたげることのない構造こうぞうであること。
3. いちじるしく聴力ちょうりょくそこねない構造こうぞうであること。
4. 衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうせいがあり、かつ、ぼうたいたい貫通かんつうせいゆうすること。
5. 衝撃しょうげきにより容易よういげないように固定こていできるあごひもをゆうすること。
6. 重量じゅうりょうキログラム以下いかであること。
7. からだきずつけるおそれがある構造こうぞうでないこと。

このよう道交法どうこうほうにおいては、オートバイようヘルメットにたいする一律いちりつ法的ほうてき基準きじゅんさだめられており、この基準きじゅんたしているものであれば、現行げんこう規格きかくなどにかかわらず、そのまま使用しようしても問題もんだいはない。

ただし、ほうとはべつ規格きかく種別しゅべつかれており(前述ぜんじゅつ)、125cc以下いか限定げんていのヘルメットは高速こうそく道路どうろでの走行そうこう前提ぜんていとしない保護ほご能力のうりょくひく規格きかくであるため、事故じこ発生はっせい危険きけんせいたか[12]

シールド(風防ふうぼう・バイザー)はSG認定にんてい基準きじゅんたしたものであれば、クリアー・スモーク・ミラータイプ、およびそれらがわされたもの、いずれも使用しよう可能かのう

公道こうどう走行そうこう乗車じょうしゃようとしてみとめられていないヘルメット、安全あんぜんヘルメットや乗車じょうしゃよう類似るいじした外観がいかん構造こうぞうゆうする装飾そうしょくようヘルメット・ファッションヘルメットなどは、罰則ばっそく適用てきようされる可能かのうせいがある罰則ばっそく適用てきようされる[よう出典しゅってん]ほか、保護ほご性能せいのうたされているか不明ふめいであり危険きけんせい非常ひじょうたか[13] 、また基準きじゅんがい使用しようほうとなることから、保険ほけんなど様々さまざまめん十分じゅうぶん保護ほごけられない可能かのうせいがある[6]

各国かっこく[編集へんしゅう]

世界せかい各国かっこくには、それぞれ独自どくじ規格きかく存在そんざいしており、

  • EU・ECE R22-05
  • イギリス・BSI 6658およびACU
  • アメリカおよびカナダ・DOT FMVSS 218
  • ブラジル・NBR 7471
  • オーストラリアおよびニュージーランド・AS/NZS 1698
  • インドネシア・SNI
  • ベトナム・TCVN 5756
  • マレーシア・SIRIM QAS
  • インド・IS 4151
  • 韓国かんこく・KS
  • 台湾たいわん・CNS

などがあり、ヘルメットメーカーはこれらの基準きじゅんたさなくてはならない。このほか、民間みんかん規格きかくとしてSNELL(スネル規格きかく)があり、世界せかい各国かっこく製品せいひん販売はんばいされている。これはアメリカのスネル記念きねん財団ざいだん[14] による各種かくしゅヘルメットの安全あんぜん規格きかくで、オートバイよう規格きかくは1984ねん制定せいていのM85以来いらい、5ねん単位たんい更新こうしんされており、最新さいしん規格きかくはM2010となっている。SNELL規格きかく試験しけんはヘルメット規格きかくなかでも厳格げんかくとされている[15]

モータースポーツよう[編集へんしゅう]

バイクレースとう使用しようされるヘルメットは、従来じゅうらいはSNELL規格きかくなどの民間みんかん規格きかく準拠じゅんきょしたものを使用しようすることとされてきたが、国際こくさいモーターサイクリズム連盟れんめい(FIM)では2019ねんより「FIM・レーシング・ホモロゲーション・プログラム」として、FIM公認こうにんレースで使用しようできるヘルメットを独自どくじ公認こうにんするようになり、2020ねんからはレースにおけるFIM公認こうにんヘルメットの装着そうちゃく義務ぎむされた[16]。このためヘルメットメーカーも、レースようとしてFIM公認こうにんたヘルメットの販売はんばい開始かいししており、FIMでも公認こうにんヘルメットの一覧いちらん公開こうかいしている[17]

テスト方法ほうほう[編集へんしゅう]

オートバイのヘルメットの安全あんぜんせいにおけるテスト方法ほうほうについてはかくメーカーや規格きかくによって共通きょうつう部分ぶぶん独自どくじ部分ぶぶんがあり、以下いか代表だいひょうてきなテストである。

衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうテスト
人体じんたい頭部とうぶ模型もけい(ダミーヘッド。以下いか人頭じんとう模型もけい)にヘルメットをかぶらせ、かく規格きかくさだめられたたかさからとすことにより人頭じんとう模型もけいへのダメージを検証けんしょうするテスト。試験しけんするヘルメットのサイズによってことなる人頭じんとう模型もけい使用しようする。事前じぜん試験しけんようヘルメットをことなるコンディション(高温こうおん低温ていおん常温じょうおん浸水しんすい)にしておき、さまざまな環境かんきょう想定そうていした試験しけんおこなう。規格きかくによりヘルメットの落下らっか高度こうどやどこにダメージをあたえるかがちがう。
JIS規格きかくでは、ぜん排気はいきりょう対応たいおうヘルメット(2しゅ)はおな箇所かしょを2かい衝撃しょうげきあたえる。1かいは7.0m/s、2かいは5.0m/s
Snell M2010では7.75 m/s (27.9km/h) での衝突しょうとつおこな[18]
たい貫通かんつうせいテスト
突起とっきぶつたいするヘルメットの強度きょうどはかるテスト。実際じっさい重量じゅうりょうぶつ(ストライカー)をヘルメットにとしておこなう。路上ろじょうには突起とっきぶつ無数むすうにあるためそれがヘルメットにたったさいにヘルメットを貫通かんつうしてしまうようでは安全あんぜんとはいえないことからおこなわれる。
JIS規格きかくでは、たかさ2mからストライカーを落下らっかさせる。MFJ規格きかくでは、たかさ3m。ECE規格きかくではたい貫通かんつうテストはない。
あごひも強度きょうどテスト
転倒てんとう事故じこ発生はっせいあごひもびたり、れたりすることでヘルメットがあたまからはずれてしまわないかを調しらべるテスト。あごひも重量じゅうりょうぶつけて規定きてい距離きょりとしてあごひもびたながさが規定きていないおさまっているかを調しらべる。
ロールオフテスト
ヘルメットをがすようなちからくわえ、ヘルメットがげないかを調しらべるテスト。固定こていした人頭じんとう模型もけいにヘルメットをかぶせ、ヘルメットがげるようなちからくわえて調しらべる。
視野しやかく保護ほご範囲はんいテスト
人頭じんとう模型もけいにヘルメットを装着そうちゃくさせ、視野しやがしっかり確保かくほされていること、またさだめられた頭部とうぶ保護ほご範囲はんいまさしくシェルと衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうライナーでおおわれていることを調しらべる。
チンバーテスト
ヘルメットのあご(チン・バー)部分ぶぶん強度きょうどはかるテスト。転倒てんとうあごつライダーもおおいため顔面がんめんきずつけるおそれがあることからあご部分ぶぶんおもりとすことで強度きょうど調しらべる。ECE規格きかく

製造せいぞう販売はんばい業者ぎょうしゃ[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

かく項目こうもくはメーカー名称めいしょう株式会社かぶしきがいしゃなどをのぞく)。社名しゃめい製品せいひんブランドめいことなる場合ばあいは「○○○」で併記へいき

日本にっぽん国外こくがい[編集へんしゅう]

かく項目こうもく五十音ごじゅうおんじゅん原則げんそくてきにメーカーめい一部いちぶにブランドめいふくむ。

かつて製造せいぞうしていたメーカー[編集へんしゅう]

かく項目こうもく五十音ごじゅうおんじゅん日本にっぽん国内こくないメーカーと日本にっぽん国外こくがいメーカーをふくむ。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Lawrence of Arabia, Sir Hugh Cairns, and the origin of motorcycle helmets.英語えいご
  2. ^ SHOEI HELMET SIZING, HANDLING, AND CARE英語えいご
  3. ^ Shoei F.A.Q.英語えいごHELMET WARRANTY英語えいご
  4. ^ SGマーク Q&Aコーナー
  5. ^ ヘルメットのご使用しようにあたって (SHOEI)FAQ (ARAI)
  6. ^ a b 乗車じょうしゃようヘルメットの規格きかく技術ぎじゅつ変遷へんせん (PDF) 社団しゃだん法人ほうじん 自動車じどうしゃ技術ぎじゅつかい
  7. ^ バイクのヘルメット義務ぎむ反対はんたいべい議員ぎいん事故死じこし着用ちゃくようして”. CNN (2016ねん9がつ16にち). 2020ねん7がつ20日はつか閲覧えつらん
  8. ^ ベトナムでヘルメット義務ぎむ10ねん着用ちゃくようりつわり”. SankeiBiz(サンケイビズ) (2018ねん1がつ5にち). 2021ねん9がつ19にち閲覧えつらん
  9. ^ a b 消費しょうひ生活せいかつよう製品せいひん安全あんぜんほう概要がいよう 経済けいざい産業さんぎょうしょう
  10. ^ a b c 特定とくてい製品せいひん特別とくべつ特定とくてい製品せいひんとは 財団ざいだん法人ほうじん 製品せいひん安全あんぜん協会きょうかい
  11. ^ MFJ競技きょうぎようヘルメット公認こうにんかんする規則きそく - 2009ねん10がつ現在げんざい
  12. ^ 根本ねもとまなぶ, 佐藤さとう陽二ようじ, 後藤ごとう英昭ひであき ほか、「二輪車にりんしゃ事故じこにおけるヘルメットの保護ほご性能せいのうについての報告ほうこく とく日本工業規格にほんこうぎょうきかく(JIS規格きかく)Aたねヘルメットの危険きけんせいについて」 『日本にっぽん救急きゅうきゅう学会がっかい雑誌ざっし』 1999ねん 10かん 12ごう p.717-724, doi:10.3893/jjaam.10.717
  13. ^ PSCマークのない「乗車じょうしゃよう ヘルメット」にご注意ちゅういください - 経済けいざい産業さんぎょうしょう-
  14. ^ SNELL MEMORIAL FOUNDATION英語えいご
  15. ^ アライヘルメット・規格きかくについて
  16. ^ ショウエイのしんヘルメット『X-SPR Pro』がFIM公認こうにんに。MotoGPライダーがテストで使用しよう - オートスポーツ・2022ねん2がつ17にち
  17. ^ Helmets - FIM RACING HOMOLOGATION PROGRAMME
  18. ^ 2010 STANDARD FOR PROTECTIVE HEADGEAR英語えいご

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]