モンゴルと北朝鮮きたちょうせんの関係かんけい

モンゴルと北朝鮮きたちょうせんの関係かんけい (モンゴルときたちょうせんのかんけい、モンゴル語ご: Монгол, БНАСАУ-ын харилцаа、朝鮮ちょうせん語ご: 몽골-조선민주주의인민공화국 관계) では、過去かこから現在げんざいに至いたるまでのモンゴルと朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく（北朝鮮きたちょうせん）の二に国こく間あいだ関係かんけいについて説明せつめいする。

背景はいけい

南みなみモンゴル出身しゅっしんの楊海英えいによると、一般いっぱんにモンゴル人じんは「朝鮮ちょうせんはモンゴル帝国ていこくの属国ぞっこく」「モンゴルの血統けっとうで権威けんいを確立かくりつしていた国くに」であり、朝鮮ちょうせんは清朝せいちょうにも戦争せんそうで惨敗ざんぱいして臣下しんかの礼れいをとり、ベトナム・タイ王国おうこくなどのほかの朝貢ちょうこう国こくと比較ひかくすると、有史ゆうし以来いらい代だい々中国ちゅうごく王朝おうちょうの属国ぞっこくであった実態じったいが伴ともなっていると認識にんしきしている^[1]。

元朝がんちょう時代じだいには、朝鮮ちょうせんは代々だいだい大だい都とのモンゴルの帝室ていしつから娘むすめを娶めとって高麗こうらい王おうの皇后こうごうとするなど永ながくモンゴルの帝室ていしつの婿むこ殿どのの立場たちばであり、元朝がんちょうは朝鮮ちょうせん王おうの子こが新あらたに朝鮮ちょうせん王おうになると、モンゴルから妻つまを降嫁こうかさせ朝鮮ちょうせんをコントロールした^[1]。朝鮮ちょうせんはモンゴルの歓心かんしんを得えることに必死ひっしで、元もと寇も高こう麗うらら・忠ちゅう烈れつ王おうが、義父ぎふの前まえで手柄てがらを立たてたかったので、侵略しんりゃくを進すすめた。また、貢みつぎ女おんなとして、朝鮮ちょうせんの娘むすめたちはモンゴルの帝室ていしつに差さし出だされ、宮廷きゅうていに入はいって皇后こうごうや王族おうぞくのそばで働はたらきながら、モンゴルの支配しはい層そうと結婚けっこんすることを願望がんぼうしていたが、それはモンゴルの帝室ていしつに入はいって朝鮮ちょうせんの身内みうちを送おくって発言はつげん力りょくを確保かくほしようとする朝鮮ちょうせんなりの生いき残のこるための術じゅつだったが、モンゴルは朝鮮ちょうせんの魂胆こんたんを見抜みぬいており、モンゴル王族おうぞくは高麗こうらい貢みつぎ女おんなと結婚けっこんしてはいけないという取とり決きめがあり、モンゴルの大だいハーン一族いちぞくは、通つう婚こんするモンゴルの部族ぶぞくから后きさきを選えらんだが、トゴン・テムルが貢みつぎ女おんなを后きさきとした結果けっか、貢みつぎ女おんなはモンゴルの取とり決きめを無視むしして後宮こうきゅうで権力けんりょくを振ふりかざしたので、モンゴル帝室ていしつに対たいする人心じんしんの離反りはんを招まねき、反乱はんらんが広ひろがり元朝がんちょうが滅ほろんだとモンゴル人じんは信しんじており、モンゴルの年代ねんだい記きには、元朝がんちょうが滅ほろんだのは貢みつぎ女おんなを娶めとったからだと記録きろくされている^[1]。

関係かんけい史し

両国りょうこく間あいだの外交がいこう関係かんけいが樹立じゅりつしたのは1948年ねん 10月15日にちのことである。モンゴルはソビエト連邦れんぽうに次ついで2番目ばんめに北朝鮮きたちょうせんを国家こっか承認しょうにんしている。モンゴルは1950年ねんから1953年ねんにかけての朝鮮ちょうせん戦争せんそうに直接ちょくせつ参戦さんせんはしなかったものの、中国ちゅうごく・北朝鮮きたちょうせん連合れんごう軍ぐんに対たいして支援しえんを行おこなっており、北朝鮮きたちょうせんの戦後せんご復興ふっこうにも貢献こうけんした。1953年ねん末まつに署名しょめいされた援助えんじょ合意ごういに基もとづいて、モンゴル政府せいふは北朝鮮きたちょうせんに10,000頭とうもの馬うまを送おくった^[2]。

朝鮮ちょうせん戦争せんそう後ごの1960年代ねんだいから1970年代ねんだいにかけてモンゴルは400名めい以上いじょうの戦争せんそう孤児こじを受うけ入いれ養育よういくした。1960年代ねんだいから1980年代ねんだい半なかばにかけての中ちゅうソ対立たいりつにおいて、モンゴルは一貫いっかんして親しんソ派はの立場たちばを取とったのに対たいして、北朝鮮きたちょうせんは通常つうじょうソ連それんよりも中国ちゅうごくに近ちかい立たち位置いちを取とったため、モンゴル - 北朝鮮きたちょうせん間あいだの二に国こく間あいだ協力きょうりょくも大おおきく妨さまたげられることとなった。これらの立場たちばの違ちがいが時ときとして様々さまざまな形かたちで軽度けいどの摩擦まさつを引ひき起おこすことがあった^[3]。後ごの1982年ねんに中ちゅうソ関係かんけいが改善かいぜんされ、1986年ねんにはモンゴルと北朝鮮きたちょうせんの間あいだで最初さいしょの友好ゆうこう協力きょうりょく条約じょうやくが結むすばれた^[4]。また1988年ねんには当時とうじ北朝鮮きたちょうせんの最高さいこう指導しどう者しゃであった金きむ日成いるそんがモンゴルを訪問ほうもんした^[5]。しかしながらモンゴルの共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけんが崩壊ほうかいすると、その関係かんけいは緊張きんちょうしたものとなった。 1995年ねんに両国りょうこくは友好ゆうこう協力きょうりょく条約じょうやくを破棄はきし、1999年ねんには韓国かんこくの金きむ大中でじゅん大統領だいとうりょうによるモンゴル公式こうしき訪問ほうもんをきっかけに北朝鮮きたちょうせんはウランバートルの大使館たいしかんを閉鎖へいさした。なおこれは韓国かんこく大統領だいとうりょうによる初はつのモンゴル公式こうしき訪問ほうもんであった^[4]。モンゴルはそれまでに2名めいの北朝鮮きたちょうせん外交がいこう官かんをスーパーノート(偽にせ米あめりかドル札さつ)を流通りゅうつうさせようとしたとして国外こくがい追放ついほうしていた^[6]。その後ご、モンゴルは北朝鮮きたちょうせんとの関係かんけい改善かいぜんを目的もくてきに北朝鮮きたちょうせん政策せいさくの強化きょうかを始はじめた^[7]。 2002年ねんには北朝鮮きたちょうせんの白はく南みなみ淳あつしが14年ねんぶりとなる外務がいむ大臣だいじんによるモンゴル訪問ほうもんを実施じっしした^[4]。最近さいきんのハイレベルな二に国こく間あいだ訪問ほうもんは2007年ねんに行おこなわれた。このとき最高さいこう人民じんみん会議かいぎ委員いいん長ちょうの金永南きんえいなんは3度目どめのモンゴル訪問ほうもんを果はたした。金かねは1985年ねんと1988年ねんにもモンゴルを訪問ほうもんしたことがあった^[5]。

非公式ひこうしきには北朝鮮きたちょうせんからの訪問ほうもん者しゃはモンゴルの経済けいざい改革かいかくに対たいして著いちじるしい興味きょうみを示しめすという。モンゴル側がわの見方みかたによれば、モンゴルは同おなじ非ひ西欧せいおう国くにの仲間なかまであり、また共産きょうさん圏けんにおいて共通きょうつうの経験けいけんをしているため、北朝鮮きたちょうせんはモンゴルの経済けいざい発展はってんを脅威きょういとは見みなしていないとされる^[8]。モンゴルが自由じゆう市場いちば資本しほん主義しゅぎを北朝鮮きたちょうせんに広ひろめることはモンゴル自体じたいの利益りえきにもつながる。潜在せんざい的てきには韓国かんこくからヨーロッパを繋つなぎうる重要じゅうような鉄道てつどうルートであるシベリア鉄道てつどうは中国ちゅうごくとモンゴルの国境こっきょうにあるモンゴル縦貫じゅうかん鉄道てつどうで経由けいゆできる。北朝鮮きたちょうせんが経済けいざい自由じゆう化かを行おこなえば、韓国かんこくから北朝鮮きたちょうせん国境こっきょうを越こえての輸送ゆそうが可能かのうになることで、鉄道てつどうルート上じょうの大おおきな障害しょうがいが消きえることになり、モンゴルに経済けいざい的てき利益りえきをもたらすであろうとされる^[9]。

脱北者だっぽくしゃ (北朝鮮きたちょうせん難民なんみん) は両国りょうこく政府せいふにとってデリケートな問題もんだいである。 2005年ねんには韓国かんこくの慈善じぜん団体だんたいが、ウランバートルから40km離はなれたある場所ばしょにて、モンゴル政府せいふより1.3km²の土地とちを割わり当あてを受うけ、脱北者だっぽくしゃ向むけの難民なんみんキャンプを開設かいせつしたとされる^[10]。しかしながら2006年ねん11月時点じてんでモンゴルの首相しゅしょうのミェーゴンボ・エンフボルド（英語えいご版ばん）は難民なんみんキャンプの存在そんざいを公式こうしきに否定ひていしている。ある研究けんきゅう者しゃの推計すいけいによれば、政府せいふ間あいだ合意ごういに基もとづき軽工業けいこうぎょうやインフラ整備せいび事業じぎょうに従事じゅうじする出稼でかせぎ労働ろうどう者しゃ（英語えいご版ばん）にまぎれて、毎月まいつき500名めいの脱北者だっぽくしゃがモンゴル国内こくないに入はいってきているという^[11]。

2013年ねんにモンゴルの大統領だいとうりょうのツァヒアギーン・エルベグドルジは北朝鮮きたちょうせんを訪問ほうもんし、特とくに石油せきゆ精製せいせいの分野ぶんやにおいて2国こく間あいだの経済けいざい的てきな繋つながりを強化きょうかすると発表はっぴょうした^[12]^[13]。

外交がいこう使節しせつ

駐ちゅうモンゴル北朝鮮きたちょうせん大使たいし

洪ひろし奎（ホン・ギュ、2013～2017年ねん）
呉ご勝まさる虎とら（オ・スンホ、2017年ねん～、信任しんにん状じょう捧呈ほうていは2018年ねん1月がつ8日にち^[14]）

駐ちゅう北朝鮮きたちょうせんモンゴル大使たいし

ジャムスランギーン・サンブー（モンゴル語ご版ばん、英語えいご版ばん）（1950～1952年ねん）
バティーン・ドルジ（モンゴル語ご版ばん、ロシア語ご版ばん）（1961～1963年ねん）
シャラヴィン・ゴンガードルジ（1992年ねん～）
ジャンチヴドルジーン・ロムヴォ（～2008年ねん）
ソドブジャムツ・フレルバータル（2008～2011年ねん、信任しんにん状じょう捧呈ほうていは5月13日にち^[15]）
マニバドラフ・ガンボルド（2012～2016年ねん、信任しんにん状じょう捧呈ほうていは5月7日にち^[16]）
スレンギン・ツォグゲレル（2016年ねん～、信任しんにん状じょう捧呈ほうていは5月13日にち^[17]）

脚注きゃくちゅう

^ ^a ^b ^c SPA! 2014
^ Balázs Szalontai, Kim Il Sung in the Khrushchev Era: Soviet-DPRK Relations and the Roots of North Korean Despotism, 1953-1964 (Stanford: Stanford University Press; Washington, D.C.: Woodrow Wilson Center Press, 2005), pp. 46-47.
^ On a DPRK-provoked incident in 1976, see Balázs Szalontai, “Expulsion for a Mistranslated Poem: The Diplomatic Aspects of North Korean Cultural Policies.” In: Vu Tuong and Wasana Wongsurawat, eds., Dynamics of the Cold War in Asia: Ideology, Identity, and Culture (New York: Palgrave Macmillan, 2009), pp. 157-159.
^ ^a ^b ^c “Mongolia, N. Korea sign friendship treaty”. Kyodo. (2002年ねん8月がつ12日にち). オリジナルの2007年ねん10月がつ26日にち時点じてんにおけるアーカイブ。 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b “North Korean Kim visits Mongolia”. The UB Post. (2007年ねん7月がつ20日はつか). オリジナルの2007年ねん8月がつ12日にち時点じてんにおけるアーカイブ。 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ “Pyongyang Watch”. Asia Times. (2001年ねん6月がつ16日にち) 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ Batchimeg, Migeddorj (March–April 2006). “Mongolia's DPRK Policy: Engaging North Korea”. Asian Survey 46 (2): 275–297. doi:10.1525/as.2006.46.2.275.
^ “A surprising sphere of influence: Ancient ties may be key to N. Korea”. The Boston Globe. (2004年ねん12月12日にち) 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ “A softer approach to North Korea: Mongolia offers itself as a model for change”. International Herald Tribune. (2005年ねん3月がつ18日にち) 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ “Center Offers Haven For North Korean Defectors in Mongolia”. Radio Free Asia. (2005年ねん9月がつ6日にち)
^ “Mongolia not planning camps for North Korea”. Gulf Times, Qatar. (2006年ねん11月24日にち). オリジナルの2007年ねん9月がつ30日にち時点じてんにおけるアーカイブ。 2007年ねん8月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ “What Do North Korea And Mongolia Have In Common?”. The Diplomat（英語えいご版ばん）. (2013年ねん10月がつ30日にち)
^ “Mongolia's special relationship with North Korea pays economic dividends”. the Guardian. (2013年ねん10月がつ25日にち)
^ New North Korean ambassador presents credentials to president | The UB Post （英語えいご）
^ Credentials to Kim Yong Nam from Mongolian Ambassador | Korean News （英語えいご）
^ North Korea Newsletter No. 209 (May 10, 2012) | Yonhap News （英語えいご）
^ Kim Yong Nam Receives Credentials from Mongolian Ambassador | Korean News （英語えいご）

参考さんこう文献ぶんけん

“モンゴル帝室ていしつに女性じょせいを献上けんじょうしていた「高麗こうらい時代じだいの朝鮮ちょうせん」”. 日刊にっかんSPA!. (2014年ねん9月がつ11日にち). オリジナルの2020年ねん11月20日にち時点じてんにおけるアーカイブ。

表ひょう話はなし編へん歴れき朝鮮半島ちょうせんはんとうの国際こくさい関係かんけい（朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくの国際こくさい関係かんけい、大韓民国だいかんみんこくの国際こくさい関係かんけい）
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