上座かみざ

上座かみざ（かみざ）とは、日本にっぽんの室内しつないに関かんするマナーにおいて、身分みぶんの高たかい人ひとが座すわるところ。対義語たいぎごは下座げざ（しもざ）。概おおむね、入いり口くちから最もっとも遠とおい席せきが上座かみざとなり、以下いか入いり口くちに近ちかくなるにつれて下座げざとなる。

なお、これはあくまでも日本にっぽんにおいて通用つうようする文化ぶんかであり、他たの国くにでは事情じじょうは異ことなる。日本にっぽん国内こくないにおいても上座かみざ・下座げざの意識いしきには地域ちいき差さがあり、沖縄おきなわ県けんにおいては主賓しゅひん以外いがいの序列じょれつはそれほど意識いしきされないことが多おおい。

部屋へやにおける上座かみざ

以下いかに、和室わしつ・洋室ようしつそれぞれについての上座かみざの原則げんそくを記しるす。

なお、下記かきはあくまでも原則げんそくであり、部屋へやによっては別べつの席せきが上座かみざとなる場合ばあいがある。例たとえば、景観けいかんが良よい部屋へやの場合ばあいには、景色けしきが最もっともよく見みえる席せきが上座かみざとなる。

和室わしつにおける上座かみざ

基本きほん的てきには、以下いかの席せきが上座かみざとなる。

• 床ゆかの間あいだに最もっとも近ちかい場所ばしょ。
• 仏壇ぶつだんがある場合ばあいは仏壇ぶつだんに最もっとも近ちかい場所ばしょ。
• 床ゆかの間あいだなどがない部屋へやの場合ばあいには、入いり口くちから最もっとも遠とおい席せき。

洋室ようしつにおける上座かみざ

洋室ようしつには当然とうぜんながら床ゆかの間あいだはないので、通常つうじょうは入いり口くちから最もっとも遠とおい席せきが上座かみざとなるが、暖炉だんろの位置いちや椅子いすの形かたちによって以下いかのようなルールがある。

• 暖炉だんろがある場合ばあいは、暖炉だんろを背せに座すわる位置いちが上座かみざ、その対面たいめんがホスト（主人しゅじん）、ホステスがいる場合ばあいは暖炉だんろ側がわにホステス､向むかいにホストが座すわる。暖炉だんろから遠とおざかるほど寒さむくなるため席せきの格かくも低ひくくなる。
• ソファがある場合ばあいには、ソファが上座かみざ。
  • 二人ふたり掛かけ以上いじょうのソファと、一人ひとり掛かけのソファがある場合ばあい、二人ふたり掛かけ以上いじょうのソファが上座かみざ。

ヨーロッパのマナーではホストの右みぎ隣となりに女性じょせい主賓しゅひん、更さらにその右みぎ隣となりに男性だんせいの第だい三さん客きゃく、ホストの左ひだり隣となりに女性じょせい次じ客きゃく、さらにその左ひだり隣となりに男性だんせい第だい四よん客きゃくと座すわり、ホストの対面たいめん側がわにはホステスがおり、その右みぎ隣となりに男性だんせい主賓しゅひん、さらにその右みぎ隣となりに女性じょせい第だい三さん客きゃく、ホステスの左ひだり隣となりに男性だんせい次じ客きゃく、さらにその左ひだり隣となりに女性じょせい第だい四よん客きゃくと座すわる。全体ぜんたいとしては男女だんじょが交互こうごに座すわる形かたちとなる。ホスト又またはホステスのみの場合ばあいは主賓しゅひんと向むかい合あって座すわる。

乗のり物ものにおける上座かみざ

乗のり物ものの中なかも部屋へやの中なかと見み做し、上座かみざ・下座げざが存在そんざいする。

この場合ばあい、やはり原則げんそくは入いり口くちから最もっとも遠とおい席せきとなる。

実際じっさいには別べつの席せきを好このむ場合ばあいがあるため、最もっとも目上めうえの人物じんぶつにどの席せきが良よいか、予あらかじめ尋たずねることが望のぞましいとされる。

船舶せんぱくにおける上座かみざ

船舶せんぱくにおいては船ふねの最もっとも後部こうぶの上層じょうそう部ぶが上座かみざとなる。 これは帆船はんせん時代じだいの船長せんちょう室しつが船尾せんびにあった名残なごりである。

帆船はんせんは風ふうより早はやく帆走はんそうする事ことは不可能ふかのうであるため常つねに船尾せんびから船首せんしゅに向むかって新鮮しんせんな風かぜが吹ふき、トイレも船首せんしゅ付近ふきんにあった。

乗用車じょうようしゃにおける上座かみざ

乗用車じょうようしゃにおいては、以下いかの順じゅんに上座かみざとなる。（4,5人にん乗のり乗用車じょうようしゃの場合ばあい）

1. 後部こうぶ座席ざせき、運転うんてん席せきの後うしろ
2. 後部こうぶ座席ざせき、助手じょしゅ席せきの後うしろ
3. 後部こうぶ座席ざせき、真中まんなか
4. 助手じょしゅ席せき
5. 運転うんてん席せき

なお、これは日本にっぽんのみのマナーである。国際こくさい的てきな慣例かんれいでは助手じょしゅ席せき側がわ後部こうぶ(歩道ほどう側がわ)が上座かみざであり、運転うんてん席せき側がわ後部こうぶはその次つぎとなる。日本にっぽんでも皇室こうしつや中央ちゅうおう政界せいかい、中央ちゅうおう官庁かんちょう、大だい企業きぎょうなどは国際こくさい慣例かんれいに準じゅんじる。

列車れっしゃ・飛行機ひこうきにおける上座かみざ

列車れっしゃ・飛行機ひこうきのように、座席ざせきが横並よこならびの場合ばあいには以下いかの順じゅんになり、ひじ掛かけなども優先ゆうせん的てきに使つかえる。

1. 窓側まどがわの席せき
2. （あれば）真中まんなかの席せき
3. 通路つうろ側がわの席せき

列車れっしゃのボックスシートの場合ばあい

列車れっしゃの場合ばあい、ボックスシートであれば、進行しんこう方向ほうこうに向むく席せきが上座かみざとなる。

従したがって、以下いかのようになる。

1. 進行しんこう方向ほうこうに向むく窓側まどがわの席せき
2. 進行しんこう方向ほうこうに向むく通路つうろ側がわの席せき
3. 進行しんこう方向ほうこうと逆ぎゃくに向むく窓側まどがわの席せき
4. 進行しんこう方向ほうこうと逆ぎゃくに向むく通路つうろ側がわの席せき

将棋しょうぎにおける上座かみざ

将棋しょうぎ棋士きし・女流じょりゅう棋士きしが公式こうしき戦せんを戦たたかう際さいは、上位じょうい者しゃが上座かみざ（床ゆかの間あいだを背せにした席せき）に座すわる。他たに、上位じょうい者しゃが(1)「王将おうしょう」を持もつ、(2)先手せんて・後手ごてを決きめる振ふ駒こまで基準きじゅんとなる、(3)対局たいきょく前まえと対局たいきょく後ごに駒こまの出だし入いれを行おこなう、などがある。

2019年ねん現在げんざい、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい公式こうしきサイトで「棋士きし序列じょれつ」「女流じょりゅう棋士きし序列じょれつ」がそれぞれ明示めいじされており、それによって上位じょうい者しゃ・下位かい者しゃが決きまる。また、連盟れんめい事務じむ局員きょくいんが対局たいきょく場所ばしょを示しめすホワイトボードに各かく棋士きし・女流じょりゅう棋士きしのネームプレートを貼はる際さいに、東京とうきょう・将棋しょうぎ会館かいかんでの対局たいきょくではネームプレート右側みぎがわを上位じょうい者しゃ、関西かんさい将棋しょうぎ会館かいかんでの対局たいきょくでは左側ひだりがわを上位じょうい者しゃとする。

しかし、上記じょうきはあくまでも慣例かんれいであって、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめいの規定きていではないため、若わかい棋士きしがタイトルを獲えって急きゅうに序列じょれつが上あがった場合ばあいなどに「上座かみざの譲ゆずり合あい」が起おきることが珍めずらしくない。佐藤さとう康光やすみつは24歳さいで竜王りゅうおう位い（格式かくしきとしては名人めいじん位いと並ならび最高さいこう位い）を獲得かくとくした時期じき、大だいベテランを相手あいてに上座かみざに座すわるのも気きは引ひけるとして対局たいきょく開始かいし直前ちょくぜんまで対局たいきょく室しつに入はいらず、（相手あいてに先さきに座すわらせておいて）「空あいてる方ほうに座すわる」としていたと語かたっている。

棋士きしが先さきに上座かみざに座すわっていたことで物議ぶつぎをかもした例れいとして以下いかのものがある。

• 谷川たにがわ浩司こうじが初はじめて名人めいじん在位ざいいしていた1984年ねんの第だい23期き十じゅう段だん戦せん挑戦ちょうせん者しゃ決定けっていリーグで、対戦たいせん相手あいての加藤かとう一二三ひふみ前ぜん名人めいじんが先さきに入室にゅうしつして上座かみざに座すわっていた。谷川たにがわは頭あたまに血ちが上のぼったが、手洗てあらいに行いって頭あたまを冷ひやした後のち、黙だまって下座げざに就つき、さらに対局たいきょく開始かいしから初手しょてを指さすまで10分ふんを使つかって冷静れいせいさを取とり戻もどした結果けっか、勝利しょうりを収おさめた。そして後日ごじつ、『将棋しょうぎ世界せかい』誌し（日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい）の自じ戦記せんき及および、自著じちょ『中学生ちゅうがくせい棋士きし』で遠回とおまわしに非難ひなんした。一方いっぽうで、加藤かとう一二三ひふみは上座かみざに座すわった理由りゆうとして「読売新聞社よみうりしんぶんしゃ主催しゅさいの十じゅう段だん戦せんの対局たいきょくということを重視じゅうしし、私わたしはこれまで十じゅう段だんのタイトルを保持ほじしていた等ひとしの過去かこから十じゅう段だん戦せんに縁えんが深ふかく、現在げんざい谷川たにがわさんよりもリーグの順位じゅんいが上うえだったことを考慮こうりょした」と述のべている。
• 1993年度ねんどの第だい52期きA級きゅう順位じゅんい戦せんでは四よん冠かん（王位おうい・王座おうざ・棋王きおう・棋聖きせい）ながらA級きゅう9位いの羽生はぶ善治よしはるは、八はち戦せん目めでA級きゅう1位いの中原なかはら誠まこと前ぜん名人めいじん（永久えいきゅう名人めいじん資格しかく保有ほゆう者しゃ）、九きゅう戦せん目めでA級きゅう4位いの谷川たにがわ浩司こうじ王将おうしょう、プレーオフでもA級きゅう4位いの谷川たにがわ浩司こうじ王将おうしょうの対局たいきょく時じは、先さきに上座かみざに座すわった。このことは「羽生はぶ善治よしはる3連続れんぞく上座かみざ事件じけん」と呼よばれ、物議ぶつぎをかもした。特とくに永久えいきゅう名人めいじん資格しかく保有ほゆう者しゃである中原なかはら誠まこと前ぜん名人めいじんについては、「前ぜん名人めいじん・前ぜん竜王りゅうおうの位置付いちづけについて」という1993年ねん6月がつ10日とおかの理事りじ会かい決定けってい事ごと事項じこうで規定きていされた「名人めいじんあるいは竜王りゅうおう保持ほじ者しゃが失しつ冠かんし「前まえ」の肩書かたがきとなった場合ばあいの位置付いちづけは、現げんタイトル保持ほじ者しゃの次つぎとする。ただし、永世えいせい（名人めいじん・十じゅう段だん・王将おうしょう・棋聖きせい）の有ゆう資格しかく者しゃは、名人めいじん・竜王りゅうおうの次つぎとする」とする棋士きし序列じょれつに反はんするものであった。ただし、この理事りじ会かい決定けってい事項じこうは対外たいがい的てきに広ひろく広報こうほうされていたわけではなく、羽生はぶ自身じしんも知しらなかったと述のべている。後のちに羽生はぶは将棋しょうぎ雑誌ざっしに謝罪しゃざい文ぶんを掲載けいさいした。

永世えいせい称号しょうごう資格しかく保持ほじ者しゃ・かつ無冠むかんの棋士きし同士どうしの対局たいきょくの場合ばあいは、先さきに最初さいしょの永世えいせい称号しょうごう資格しかくを取得しゅとくしたほうが上位じょうい者しゃとなる規定きていがある。

NHK杯はいテレビ将棋しょうぎトーナメントでは座すわる位置いちについては棋士きし序列じょれつに関係かんけいなくテレビカメラから見みて左側ひだりがわが先手せんて、右側みぎがわが後手ごてと決きまっているが、それ以外いがいの「玉将ぎょくしょう」を持もつ等ひとしは棋士きし序列じょれつによっている。

なお、タイトル戦せんでは男女だんじょ棋士きし序列じょれつに関係かんけいなく常つねに当該とうがいタイトル保持ほじ者しゃが上座かみざに位置いちして対局たいきょくを行おこなう。

落語らくご界かい

落語らくご家かの世界せかいにも上座かみざ・下座げざが存在そんざいする。

詳細しょうさいは「香こう盤ばん#落語らくご界かいにおける香こう盤ばん」を参照さんしょう

海外かいがいの例れい

16世紀せいき、フランス王おうフランソワ1世せいのために金かね細工ざいく師しベンヴェヌート・チェッリーニが製作せいさくした卓上たくじょう塩しお入いれCellini Salt Cellar

中世ちゅうせいでは、長方形ちょうほうけいの長ながいテーブルの中央ちゅうおうに繁栄はんえいとステータスの象徴しょうちょうである豪華ごうかな塩しお入いれが置おかれ、ホストと家族かぞくは塩しおの前まえに座すわり上座かみざとなる。英語えいごの表現ひょうげんで above the saltは、直訳ちょくやくすると「塩しおの上流じょうりゅうに（いる人ひと）」という意味いみで、ホストから塩しおが回まわされてくるため、これを「上座かみざに座すわる」の意いとした。

上座かみざも下座げざもないテーブルとして、円卓えんたくがある。これによって身分みぶんとは関係かんけいなく議論ぎろんしようという理想りそうが語かたられた。

出典しゅってん

• 原田はらだ泰夫やすお (監修かんしゅう)、荒木あらき一郎いちろう (プロデュース)、森内もりうち俊之としゆきら（編へん）、2004、『日本にっぽん将棋しょうぎ用語ようご事典じてん』、東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん ISBN 4-490-10660-2

関連かんれん項目こうもく

• マナー
• 外交がいこう儀礼ぎれい(Protocol) - 席次せきじなど外交がいこう的てきなマナーについて(外交がいこう関係かんけいに関かんするウィーン条約じょうやく)。Anciennität、年功序列ねんこうじょれつ
• 書院造しょいんづくり
• 上手じょうずと下手へた
• 観客かんきゃく席せき、ラグジュアリーボックス、ボックス席せき（ボックス席せき自体じたいも富裕ふゆう層そうの席せきであるが、ステージの真向まむかい中央ちゅうおうボックス席せきは別格べっかくで、Mittelloge、royal box、日本にっぽんの芝居しばい小屋こやでは「お大尽だいじん席せき」と呼よばれる。）
• 座席ざせき表ひょう
• ファーストクラス、一等いっとう車しゃ
• 上座かみざ部ぶ - 仏教ぶっきょうの保守ほしゅ的てきな宗派しゅうは(長老ちょうろう部ぶとも)。