上手じょうずと下手へた

上手じょうずと下手へた（かみてとしもて、うわてとしたて、じょうずとへた）とは、方向ほうこうや技量ぎりょうの上下じょうげを表あらわす用語ようご。

「かみて」と「しもて」

舞台ぶたい

能のう舞台ぶたい。左右さゆう非対称ひたいしょうで、下手へたには「橋はし掛かけ」がある。

舞台ぶたいの楽器がっき配置はいちの例れい。一般いっぱん的てきなピアノの場合ばあい、大だい屋根やね（反響はんきょう板ばん）を客席きゃくせきに向むかって開ひらくと、奏者そうしゃは下手へた側がわになる。

舞台ぶたい用語ようごで上手じょうず（かみて）と下手へた（しもて）は、舞台ぶたい（ステージ）の左右さゆうを区別くべつする言葉ことばである。

上手じょうずは舞台ぶたいの左側ひだりがわ（客席きゃくせきから見みて右側みぎがわ）、下手へたは舞台ぶたいの右側みぎがわ（客席きゃくせきから見みて左側ひだりがわ）である。客席きゃくせきからでは左右さゆうが逆ぎゃくになるので、これらを右みぎと左ひだりで区別くべつすることは非常ひじょうに紛まぎらわしいが、英語えいごでは舞台ぶたいから見みた左右さゆうで表あらわし、上手じょうずは stage left、下手へたは stage right と呼よぶ。フランス語ふらんすごでは上手じょうずは côté cour（中庭なかにわ側がわ）、下手へたは côté jardin（庭園ていえん側がわ）と呼よぶ。これはかつてのコメディ・フランセーズの上手じょうず側がわにルーヴル宮殿きゅうでんとテュイルリー宮殿きゅうでんの中庭なかにわがあり、下手へた側がわにテュイルリー庭園ていえんがあったことに由来ゆらいする。

上手じょうずと下手へたどちらがどちらかを覚おぼえる語呂合ごろあわせに「ピアニッシモ」があり、舞台ぶたいでピアノを弾ひく側がわが下手へたである。

その他た

目上めうえの人ひとや自分じぶんにとって上位じょういにあたる人ひとが座すわる上座かみざの方向ほうこうを上手じょうずと表あらわす。日本にっぽんで用もちいられる場合ばあい、家いえの入口いりくちである玄関げんかんから遠とおく、床ゆかの間あいだに最もっとも近ちかい席せきを指さす場合ばあいが多おおい。主おもに、父親ちちおや（家長かちょう）などが座すわるとされる。

川かわや河川かせんの流ながれてくる方向ほうこう（上流じょうりゅう、川上かわかみ）や風ふうの吹ふいてくる方向ほうこう（風上かざかみ）を表あらわすときにも用もちいられる。この用例ようれいでは「上手じょうず（うわて）」とも。

このように「手て」という言葉ことばを用もちいる場合ばあい、「手て」には「方向ほうこう」を示しめすニュアンスがこめられる。また、「上うえ」には「重要じゅうようなもの」や「物事ものごとの流ながれてくる方向ほうこう」（起点きてん）の意味いみがある。

「うわて」と「したて」

上手じょうず（うわて）とは、ある物ものや人ひとが、能力のうりょくや思考しこうの点てんで別べつの物ものや人ひとよりも優すぐれていること、あるいはある人ひとよりも立場たちばが上うえの場合ばあいのことを指さす。「君きみは僕ぼくより一いち枚まい上手じょうずだ」など。対たいして、下手へた（したて）とは、へりくだって非ひ好戦こうせん的てきな態度たいどで接せっすることを卑下ひげすることを指さし、「下手へたに出でる」という形かたちで用もちいられる。

相撲すもうで上手じょうず（うわて）とは、互たがいに同おなじ側がわの廻まわしを取とり合あった状態じょうたいで、相手あいての腕うでの外側そとがわから相手あいての廻まわしを引ひいた状態じょうたいのこと。また、その相手あいての廻まわしにやった手てのことをいう。上手じょうずを取とって投なげるのを上手じょうず投なげなどと言いう風ふうにも使つかわれる。一般いっぱんにはき手きてで上手じょうずを取とった方ほうが有利ゆうりとされているので、これを嫌きらって「上手じょうずを切きる」ことがある。対たいして、相手あいての腕うでの下したでまわしをつかむこと、そのつかんだ手てのことを下手へた（したて）という。

囲碁いごや将棋しょうぎにおいて上手じょうず（うわて）とは比較ひかくしてより強つよい方ほう、下手へた（したて）とは弱よわい方ほうを指さす。特とくにハンデキャップをつけた対局たいきょく（将棋しょうぎでは駒こま落おち、囲碁いごでは置おき碁ご）において、駒こまを落おとしている側がわ、または石いしを置おかせている側がわの対局たいきょく者しゃを上手じょうず（うわて）、駒こまを落おとしていない側がわ、または石いしを置おいている側がわの対局たいきょく者しゃを下手へた（したて）という。

「じょうず」と「へた」

上手じょうず（じょうず）とは、技術ぎじゅつや動作どうさに優すぐれていたり習熟しゅうじゅくしていること、あるいはそのような人ひとのことを表あらわし、しばしば褒ほめ言葉ことばとして用もちいられる。また、「人ひとを喜よろこばせてうまく（都合つごうのいいように）物事ものごとを運はこぶ」ような意味いみあいから転てんじて、お世辞せじなど口先くちさきだけのことばを言いって相手あいてを喜よろこばせることを「お上手じょうず」（おじょうず）と言いうことが多おおい。ある分野ぶんやにおいて特とくに優すぐれた者ものでも失敗しっぱいやつまずくことはあるという意味いみで、「上手じょうずの手てから水みずが漏もれる」という諺ことわざも存在そんざいする。対たいして、下手へた（へた）とは、あるものごとを人並ひとなみに達成たっせいできない様子ようすで、道具どうぐなどを操あやつるときの不器用ぶきようさを表現ひょうげんするときによく用もちいられる。

このように「手て」という言葉ことばを用もちいる場合ばあい、「手て」には「技量ぎりょう」・「腕前うでまえ」を示しめすニュアンスがこめられる。また、「上うえ」には「（能力のうりょくが）高たかい」「うまい」のような意味いみがある。

また上手じょうずは江戸えど時代じだいの囲碁いご・将棋しょうぎの段だん級きゅう位い制せいにおいて名人めいじん（九きゅう段だん）・準じゅん名人めいじん（八はち段だん）に続つづく地位ちい（七なな段だん）である。

関連かんれん項目こうもく

• 上手じょうず - 地名ちめいなどについて
• 下手へた - 地名ちめいなどについて
• 上下じょうげ - 左右さゆう

（うわて）

• 上手じょうず投なげ - 上手じょうず廻まわし
• 相撲すもう用語ようご一覧いちらん