かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ

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△ なし
987654321 
こうかつら きむ きむぎんかつらこういち
  ぎん おう うま 
  さん
       よん
         
        ろく
 なな
     たま  はち
こうかつらぎんきむ きむぎんかつらこうきゅう
△ なし
987654321 
こうかつらぎんきむおうきむぎんかつらこういち
      かく 
 さん
        よん
         
       ろく
  なな
 かく      はち
こうかつらぎんきむたまきむぎんかつらこうきゅう

かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ(かくこうかんしけんびしゃ)とは将棋しょうぎ戦法せんぽうひとつ。かく交換こうかんしてよんあいだ飛車ひしゃ戦法せんぽうである。飛車ひしゃ分類ぶんるいされる。四間しけん飛車ひしゃ銘打めいうっているが、かく交換こうかんから先手せんてなら8すじに、後手ごてなら2すじ飛車ひしゃなおして飛車ひしゃさき逆襲ぎゃくしゅうする展開てんかいになりやすく、かい飛車ひしゃ要素ようそつよい。

概要がいよう[編集へんしゅう]

すみあゆみ
987654321 
こうかつらぎんきむおうきむ かつらこういち
       ぎん 
  さん
        よん
        
       ろく
   なな
 ぎん      はち
こうかつら きむたまきむぎんかつらこうきゅう

飛車ひしゃの1つであるよんあいだ飛車ひしゃかく交換こうかんがた戦法せんぽうである。従来じゅうらいきょ飛車ひしゃたい飛車ひしゃ対抗たいこうがたでは、飛車ひしゃがわきょ飛車ひしゃがわ飛車ひしゃさきかくきでける。この状態じょうたいかく交換こうかんおこなうと飛車ひしゃさき突破とっぱされ、飛車ひしゃがわ不利ふりになる(飛車ひしゃにはかく交換こうかんねら)。そのため、飛車ひしゃがわ早々そうそうかくどうめ、たまかこってからたたかいにはいっていたが、かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃかくどうめないまま、もしくはかく交換こうかんしてから将棋しょうぎ展開てんかいしていく。

後手ごてばん飛車ひしゃ場合ばあいかくどうめずに△4飛車ひしゃる。そのみずかかく交換こうかんおこない、飛車ひしゃを2すじなおし、先手せんて飛車ひしゃさきからの逆襲ぎゃくしゅうねらうのである[1]

プロ棋士きし上野うえの裕和ひろかずによれば、この戦法せんぽうには3つの特徴とくちょうがある。まず、かく交換こうかんおこなったのであるから、先手せんてかくあたま(かくとう。かくというこま自分じぶん真正面ましょうめんたいするきがいため、同様どうよう特徴とくちょう桂馬けいまあたまかつらあたま(けいとう)と同様どうよう通常つうじょう弱点じゃくてんとされる)をねらわれる心配しんぱいい。また、持久じきゅうせんとなる傾向けいこうつよい。そして、先手せんて後手ごてどちらでももちいることができる[1]

そのには、飛車ひしゃ全般ぜんぱん天敵てんてききょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまであるが、かく交換こうかんさい飛車ひしゃがわうまどうぎんらせると、きょ飛車ひしゃがわそんしに穴熊あなぐまがこにはめなくなる。また、穴熊あなぐまがこいにんだとしてもかくちあっているためこま片寄かたよ穴熊あなぐまがこいにかくちのすきができやすく、美濃みのがこでも互角ごかく以上いじょうかたさでたたかいになりやすいのも飛車ひしゃがわ利点りてんである。

なお、△4一旦いったん4すじるのは、先手せんてからの▲6かくという有力ゆうりょく反撃はんげきへのそなえである。だが、これではみずかいちそんすることになり、かならずしも満足まんぞくとはえない。しかし▲6かくたれても問題もんだいないと研究けんきゅうされ、飛車ひしゃ直接ちょくせつ2すじダイレクトかい飛車ひしゃという発展はってん戦法せんぽう存在そんざいしており、2011ねんから2013ねんにかけてだい流行りゅうこうせた[2]くわしくは当該とうがい項目こうもく参照さんしょう)。

『イメージとみの将棋しょうぎかん2』(2010ねん日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい)によると、後手ごてばん場合ばあいで1992ねんから2010ねんまでで棋戦きせんで213きょくされて先手せんての116しょう88はい9千日手せんにちて先手せんてからみて5わり6ふん8りんとなっており、後手ごてねらいのひとつとしている千日手せんにちてはそれほどおおくなく、後手ごてばんとしてはあまり成果せいかのある作戦さくせんではない。とく後手ごてではかく交換こうかん飛車ひしゃを4すじから2すじなおすことからかなりそん作戦さくせんではあるが、それでもインタビューの6棋士きし一様いちように、このそんもひとつの作戦さくせんであり、相手あいてをしても主導しゅどうけんにぎったりかすのも大変たいへんであるとし、またこの作戦さくせん基本きほん戦略せんりゃくとして千日手せんにちてねらいがあるので、成立せいりつはしているとみている。ただみな以前いぜんしたこともある羽生はぶ善治よしはるでさえも、今後こんごもあまりしないとしている。

かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃから飛車ひしゃ穴熊あなぐまレグスペ白色はくしょくレグホーンスペシャル、かく交換こうかんあなスペシャル)という戦法せんぽう存在そんざいし、東京大学とうきょうだいがく将棋しょうぎ[3]などのによる研究けんきゅうしょされている。

このほか佐藤さとう康光やすみつ得意とくいとされている1すじ位取くらいど飛車ひしゃ具体ぐたいてきには先手せんてばんで▲7ろく△8よん▲1ろく△3よん▲1はじまる飛車ひしゃがある。後手ごてばんの9すじ位取くらいど作戦さくせん先手せんてばん応用おうようしたもので、後手ごてばんでは先手せんて穴熊あなぐまをけんせいした意味いみになるが、先手せんてばんでは局面きょくめん主導しゅどうけんにぎるという可能かのうせい追求ついきゅうしている。そしてはしれたなら持久じきゅうせんになれば一手いってそんしてかく交換こうかんしたとしてもけさえすればかならきてくる1すじくらい価値かちおおきくなってくるのではというわけで、後手ごては1すじ位取くらいどりがきないようにはげしい展開てんかいむこともある。具体ぐたいてきにはのように後手ごて飛車ひしゃさき交換こうかんしてきてから、▲6はちえて▲7かくとし、以下いか△8には▲5三角みすみしげる△9かくで、▲7ななかつら以下いかは△8はちなりどう△7ななかくしげる▲6はちはげしいたたかいに突入とつにゅうする。▲7ななかつらたいしては△8はちなりのほか、△8なな▲9ろく△8ろくかくまたは△8よんかくや△5ろく▲7うま△5ななしげるどううま△8なな▲5はちなどの展開てんかいもある。

流行りゅうこう升田ますだ幸三こうぞうしょう[編集へんしゅう]

かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ長沢ながさわ千和子ちわこが2000ねん前後ぜんこうから女流じょりゅう棋戦きせん採用さいようしており、男性だんせい棋戦きせんでは長沢ながさわ同郷どうきょう木下きのした浩一こういちが2002ねんごろに多用たよう。のちに植山うえやまえつぎょうがこの戦法せんぽうもちいて三浦みうら弘行ひろゆきったことで注目ちゅうもくされるようになった[4]。これとはべつ上野うえのによると、藤井ふじいシステムわるあらたなきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま対策たいさく模索もさくしていた藤井ふじいたけしが、元々もともと大学だいがく将棋しょうぎかいもちいられていたこの戦法せんぽうがプロの世界せかいにもはいってきたころ、これに着目ちゃくもく採用さいようしたことが流行りゅうこうのきっかけであるとのことである[1]藤井ふじいたけしはこの戦法せんぽうにより、2013年度ねんど升田ますだ幸三こうぞうしょう受賞じゅしょうした。

その[編集へんしゅう]

植原うえはらりゅうかく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ

埼玉さいたまのアマチュア強豪きょうごう植原うえはら正則まさのり考案こうあん立石たていしりゅう類似るいじし、さびがたな応用おうようしたかく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ戦法せんぽうで、かく先手せんてとして8はち位置いちるままで6いてかく交換こうかんいどむ。相手あいてからしてこない場合ばあいのように飛車ひしゃがわから交換こうかんし、すぐに▲7ななかつらとし、つぎきょ飛車ひしゃが△8いてこなければすかさず▲8ろくとして、桂馬けいま飛車ひしゃさきまも格好かっこうにし、その▲7はちきんかくみにそなえて左翼さよくじんかため、7ろく飛型ひけいにしてから▲2八角はっかくって飛車ひしゃ連動れんどうして7、8すじ攻撃こうげきする。

後手ごて かく
987654321 
こうかつら きむ きむ かつらこういち
    おう ぎん 
 ぎん さん
      よん
        
        ろく
かつら なな
     たま  はち
こうかつらぎんきむ きむぎんかつらこうきゅう
後手ごて すみあゆみ2
987654321 
こうかつら     かつらこういち
     きむおう 
   ぎんきむぎんさん
     よん
       
     ろく
 かつら ぎん なな
  きむ  きむたまかく はち
こうかつら    ぎんかつらこうきゅう
萱谷かやだにりゅうかつらとべこわはさまかく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ

アマチュア強豪きょうごう萱谷かやだに祐司ゆうじろう考案こうあんかく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃで、すみあたま戦法せんぽう一手いってそんかくわりをヒントにつくられている。かくあたま戦法せんぽうでは4かく交換こうかん拒否きょひの△4よんされることもあるため、▲7ろく△3よんですぐに先手せんてから▲2かくなりとしてしまい、▲7ななかつらとすぐねる。 △3さんぎん▲7はちきんに△5よんかく筋違すじちがかくには7ろくらせたら▲6き、かくを9ろく方面ほうめん排除はいじょ。あとはこのかく目標もくひょう反撃はんげきする。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 上野うえの裕和ひろかず (2014), NHK将棋しょうぎ講座こうざ 2014ねん9がつごう 別冊べっさつ付録ふろく 上野うえの裕和ひろかずのNHKはい序盤じょばんがわかる! (2) かく交換こうかんよんあいだ飛車ひしゃ / ダイレクトかい飛車ひしゃ, NHK出版しゅっぱん