鬼おに殺ごろし (将棋しょうぎ)

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鬼おに殺ごろし（おにごろし、英えい: Demon Killer, Demon Slayer）は、将棋しょうぎの戦法せんぽうの一ひとつ。先手せんての奇襲きしゅう戦法せんぽうである。

大正たいしょう時代じだい末期まっきに大道だいどう詰将棋つめしょうぎを出題しゅつだいしていた野田のだ圭けい甫はじめが販売はんばいした「可か章しょう馬ば（かしょうま）戦法せんぽう」という本ほんの売うり文句もんく「この戦法せんぽうを使つかえば鬼おにも逃にげ出だす、鬼おにも倒たおせる」から、この名ながついたとされている。

いきなり桂かつらが高こう跳とびするという手順てじゅんだが、早はや石田いしだの変化へんか（王手おうて飛車ひしゃをはじめとする両りょう取とり狙ねらい、7三さん地点ちてんの突破とっぱ）を取とり込こんでいるために破壊はかい力りょくがあり、庶民しょみんに分わかりやすかったことから縁台えんだい将棋しょうぎで流行りゅうこうした。

原始げんし鬼おに殺ごろし

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ           角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん                   五ご     歩ふ             六ろく 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず1-1 3手て目め▲7七なな桂かつらまで

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ   銀ぎん       角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん   歩ふ         歩ふ     四よん     歩ふ 桂かつら           五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず1-2 7手て目め▲7五ご歩ほまで

△持もち駒ごま 角かく 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう 金きむ   桂かつら 香こう 一いち   飛ひ   銀ぎん       銀ぎん   二に 歩ふ   歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん   歩ふ   歩ふ     歩ふ     四よん     歩ふ 桂かつら 角かく         五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな               飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず1-3 11手て目め▲5五ご角かくまで

△持もち駒ごま 角かく二に 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら     王おう 金きむ   桂かつら 香こう 一いち   飛ひ   銀ぎん           二に 歩ふ   と   歩ふ 歩ふ 銀ぎん 歩ふ 歩ふ 三さん   歩ふ   金きむ     歩ふ     四よん       桂かつら           五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな     飛ひ             八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 歩ふ二に 図ず1-4 19手て目め▲7三さん歩ほ成なりまで

▲7六ろく歩ほ△3四よん歩ほに▲7七なな桂かつらと跳はねる（図ず1-1）。これに対たいして後手ごてが△8四よん歩ほときたら、▲6五ご桂かつら△6二に銀ぎん▲7五ご歩ほ（図ず1-2）とする。これに手抜てぬきすると▲7四よん歩ほ△同どう歩ふ▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご角かくで飛車ひしゃ・銀ぎんの両りょう取とりとなるため△6四よん歩ほと対応たいおうするが、▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご角かくと進すすむ（図ず1-3）。この後のち、△3三さん銀ぎん▲6四よん角かく△5二に金きん右みぎ▲7四よん歩ほ△6三さん金きん▲7八はち飛ひ△6四よん金きん▲7三さん歩ほ成なりで先手せんて必勝ひっしょうとなる。（図ず1-4）

後手ごての有効ゆうこうな対策たいさくとしては、△6二に銀ぎんで△6二に金きんと立たつ手てがある。▲6五ご桂かつらに対たいして△6四よん歩ほ～△6三さん金きんとしておけば、先手せんてに有効ゆうこうな手段しゅだんはない。

△6二に金きんの受うけが発見はっけんされてから、鬼おに殺ごろしはハメ手しゅの奇襲きしゅうとして扱あつかわれ、廃すたれてしまったが、稀まれにプロの対局たいきょくでも出現しゅつげんすることがあり、その時ときは後手ごてはいずれも3手て目め▲7七なな桂かつらに対たいして4手て目め△6二に銀ぎんと指さしている。これまでの先例せんれいは佐藤さとう大だい五郎ごろう対たい中原なかはら誠まこと戦たたかえ、神かみ吉宏よしひろ充たかし対たい瀬川せかわ晶司しょうじ戦せんであるが、佐藤さとうを破やぶった中原なかはらは「△6二に銀ぎん（▲7六ろく歩ほ△3四よん歩ほ▲7七なな桂かつらの局面きょくめんで△8四よん歩ほとの比較ひかくで）の方ほうが勝まさる」と述のべている。

森もり雞二の著書ちょしょでは▲6五ご桂かつらと飛とぶ前まえに▲7八はち飛ひとし、以下いか△8五ご歩ほであると、▲6五ご桂かつらに△6二に金きんとしても、▲7五ご歩ほ△6四よん歩ほに、▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご角かく△6三さん金きんではなく、▲7四よん歩ほとして先手せんてよしとある。以下いか、▲7四よん歩ほを△同どう歩ふでは▲同どう飛ひ△7三さん歩ほ▲6四よん飛ひ△8八角やすみ成しげる▲同どう銀ぎん△5五ご角かく▲6六ろく角かく△6四よん角かく▲1一角いっかく成なり△3二に銀ぎんに▲6六ろく馬うまで、次つぎの▲8四よん香こうが厳きびしいとしている。一方いっぽうで▲7四よん歩ほに△6五ご歩ほは▲7三さん歩ほ成しげる△同どう金かねに▲同どう飛ひ成なり△同どう桂かつら▲7四よん歩ほである。

△持もち駒ごま 桂かつら 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん   王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち     金きむ   飛ひ     角かく   二に 歩ふ 歩ふ     歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん     歩ふ       歩ふ     四よん       歩ふ           五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく 飛ひ             八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 歩ふ 図ず2-1 12手て目め△6五ご歩ほまで

△持もち駒ごま 角すみ桂かつら 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら       金きむ   桂かつら 香こう 一いち   銀ぎん 金きむ 飛ひ   王おう   銀ぎん   二に 歩ふ 歩ふ     歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん     歩ふ       歩ふ     四よん       歩ふ 角かく         五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな     飛ひ   金きむ   玉たま     八はち 香こう   銀ぎん     金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 歩ふ 図ず2-2 21手て目め▲5五ご角かくまで

△持もち駒ごま 角かく二に銀ぎん桂かつら歩あゆみ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう         金きむ 王おう 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ           銀ぎん   二に 歩ふ 歩ふ 龍りゅう   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん       歩ふ           五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな         金きむ   玉たま     八はち 香こう   銀ぎん     金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 金きん桂かつら歩あゆみ 図ず2-3 31手て目め▲7三さん同どう飛ひ成なりまで

また、将棋しょうぎ電でん王おう戦せんFINALの事前じぜん企画きかくとして指さされた、Selene対たい永瀬ながせ拓たく矢やの30分ふん切きれ負まけ将棋しょうぎでは、鬼おに殺ころしを指さしたSeleneに対たいし、永瀬ながせは△6二に金きんの代かわりに△5二に飛ひと受うけた。以下いか▲7八はち飛ひ△7二に金きん▲7五ご歩ほ△6四よん歩ほ▲7四よん歩ほ△6五ご歩ほと進すすみ、歩ふ桂かつら交換こうかんで後手ごての大おおきな駒こま得とくとなった。（図ず2-1）

しかし、▲4八はち玉たま△8二に銀ぎん▲3八はち玉たま△6二に飛ひ▲5八はち金きん左ひだり△4二に玉たまと、囲がこいの手順てじゅんに入はいったところでSeleneが▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご角かくと強襲きょうしゅう。（図ず2-2）以下いか、△3一いち玉たま▲8二に角かく成しげる△同どう金かね▲7一いち銀ぎん△3二に飛ひ▲8二に銀ぎん不ふ成なり△同どう飛ひ▲7三さん歩ほ成しげる△同どう桂かつら▲同どう飛ひ成なりとなり（図ず2-3）、そのまま先手せんてが押おし切きった。

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん   香こう 一いち   飛ひ           角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん                   五ご     歩ふ         歩ふ   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず3-1 △3三さん桂かつらまで

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん   香こう 一いち   飛ひ               二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん                   四よん         角かく 桂かつら 歩ふ 歩ふ   五ご     歩ふ     歩ふ       六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ   歩ふ 七なな   銀ぎん       銀ぎん   飛ひ   八はち 香こう 桂かつら   金きむ 玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 角かく 図ず3-2 △5五ご角かくまで

△持もち駒ごま 歩ふ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん   香こう 一いち               角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん   歩ふ               五ご     飛ひ     銀ぎん 歩ふ 歩ふ   六ろく 歩ふ 歩ふ 角かく 歩ふ 歩ふ 歩ふ     歩ふ 七なな     金きむ         飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん   玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず3-3 ▲3六ろく銀ぎんまで

後手ごて番ばんでは図ず3-1から先手せんてが▲2五ご歩ほとして図ず3-2となれば、以下いか▲7七なな角かくは△4六ろく角かく▲5八はち金きん右みぎに△3六ろく歩ほで成功せいこうであるが、実際じっさいは図ず3-1で▲4八はち銀ぎんで難むずかしい。『イメージと読よみの将棋しょうぎ観かん』（2010、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい）では神かみ吉宏よしひろ充たかしが後手ごて番ばんをもって図ず3-1から▲2五ご歩ほに△1四よん歩ほ▲4八はち銀ぎん△8四よん歩ほ▲6八はち銀ぎん△8五ご歩ほ▲7七なな銀ぎん△8四よん飛ひ▲6八はち玉たま△3五ご歩ほ▲7八はち玉たま△3四よん飛ひとひねり飛車ひしゃを1993年ねんの順位じゅんい戦せんほか2局きょく指さし、勝利しょうりは挙あげていないという。プロ棋士きしでも6名めい全員ぜんいんが先手せんてをもったらありがたい、後手ごては全然ぜんぜんだめとしているが、図ず3-1の先手せんて側がわの次つぎ手しゅは▲4八はち銀ぎんが手堅てがたく、佐藤さとう康光やすみつや羽生はぶ善治よしはるは△8四よん歩ほなら▲7八はち金きん△8五ご歩ほ▲7七なな角かくで、△8四よん飛ひ▲3六ろく歩ほ△7四よん飛ひ▲3七なな銀ぎん△7六ろく飛ひであると▲4六ろく銀ぎん（図ず3-3）から▲3五ご歩ほとして楽勝らくしょう、渡辺わたなべ明あきらは△8四よん歩ほなら▲7八はち銀ぎんとし、以下いか△8五ご歩ほ▲7七なな銀ぎん△3五ご歩ほ▲4六ろく歩ほ、谷川たにがわ浩司こうじはとがめるなら▲2五ご歩ほ△4五ご桂かつら▲4八はち金きんの定跡じょうせきどおり、藤井ふじい猛たけしは▲2五ご歩ほと突ついて後手ごてが△3二に金きんならば▲4八はち銀ぎんで様子ようすをみるとしている。森内もりうち俊之としゆきは▲4八はち銀ぎんに△8四よん歩ほ▲6八はち銀ぎん以下いか△8五ご歩ほ▲7七なな銀ぎん△3五ご歩ほ▲6八はち玉たま△8四よん飛ひとなると、8五ごの歩ふが負担ふたんとなりそうで、またいずれ3三さんの桂かつら頭あたまが負担ふたんになるとしている。

新しん・鬼おに殺ごろし

△持もち駒ごま 角かく

9	8	7	6	5	4	3	2	1
香こう	桂かつら	銀ぎん	金きむ	王おう	金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	一いち
	飛ひ								二に
歩ふ		歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ		歩ふ	歩ふ	三さん
						歩ふ			四よん
	歩ふ	歩ふ							五ご
									六ろく
歩ふ	歩ふ	桂かつら	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	七なな
		飛ひ							八はち
香こう		銀ぎん	金きむ	玉たま	金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	九きゅう

▲持もち駒ごま 角かく
図ず4-1 ▲7七なな桂かつらまで

ハメ手しゅの要素ようそが強つよい鬼おに殺ころし戦法せんぽうであるが、この戦法せんぽうの改良かいりょう型がたが米長よねなが邦雄くにおによって考案こうあんされ、プロの実戦じっせんでも指さされたことがある。

▲7六ろく歩ほ△8四よん歩ほに対たいして▲7五ご歩ほと早はや石田いしだ含ふくみの駒こま組ぐみを進すすめるのが特徴とくちょうで、以下いか△8五ご歩ほ▲7七なな角かく△3四よん歩ほ▲7八はち飛ひで、△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつらとなって図ず4-1の基本きほん型がたとなる。

ほかに初手しょてから▲7六ろく歩ほ△8四よん歩ほに▲7八はち飛ひとし、以下いか△8五ご歩ほに▲7七なな角かく△3四よん歩ほ▲7五ご歩ほ△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつら。米長よねながの著書ちょしょでは▲7六ろく歩ほ△8四よん歩ほに▲7五ご歩ほとし、以下いか△8五ご歩ほに▲7七なな角かく△3四よん歩ほ▲7八はち飛ひ。途中とちゅう▲7五ご歩ほに△3四よん歩ほ▲7七なな角かく△8五ご歩ほでも▲7八はち飛ひで、図ず4-1に合流ごうりゅうする。

また米長よねながの著書ちょしょでは初手しょて▲7六ろく歩ほに△3四よん歩ほには角すみ頭あたま歩ふ付つき戦法せんぽうを進すすめているが、以下いか▲7五ご歩ほとし、△8四よん歩ほに▲7八はち飛ひ△8五ご歩ほ▲7七なな角かく△同どう角すみ成しげる▲同どう桂かつらとなれば、図ず4-1に合流ごうりゅうする。途中とちゅう△8五ご歩ほに△8八角やすみ成しげる▲同どう銀ぎん△6五ご角かくは、▲7六ろく角かくがあって、早はや石田いしだの切きり返かえしと合流ごうりゅうする。

図ず4－1から後手ごての指さし手ては△8六ろく歩ほ、△7六ろく角かく、△4五ご角かく、△2二に角かく、△5四よん角かくなどや△6二に銀ぎんなどがあるが、新しん鬼おに殺ごろしはそれらすべてに対たいして切きり返かえしが用意よういされており、応おうじて臨機応変りんきおうへんに動うごいていくことができるのが特徴とくちょうである。△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふに△8七なな角かくは飛車ひしゃを逃にげずに▲7四よん歩ほで、△7八角やすみ成しげる▲同どう銀ぎんとなると、角かくをもっているほうが角かくの打うち込こみのスキがある陣じんとなってしまっている後手ごて居きょ飛車ひしゃ側がわが不利ふりな状況じょうきょうとなっている。△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふに△8六ろく同どう飛ひは▲7四よん歩ほ。

△7六ろく角かくや△4五ご角かくにも▲7四よん歩ほ△同どう歩ふ▲5五ご角かく。△2二に角かくには▲6六ろく角かくで、△同どう角かく▲同どう歩ふ△6七なな角かくは▲6五ご桂かつら、△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふ△同どう飛ひは▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲6五ご桂かつらである。△5四よん角かくに対たいする切きり返かえしは以下いか▲5五ご角かく△2二に銀ぎん▲8五ご桂かつらなどがある。

後手ごてが△6二に銀ぎんから無難ぶなんに指さすと、この場合ばあいは前述ぜんじゅつの▲7四よん歩ほから鬼おに殺ごろしのように攻せめる戦たたかいが可能かのうとなっている。△6二に金きんとして通常つうじょうの鬼おに殺ごろし同様どうようの封ふうじをしてきた場合ばあいには、例たとえば▲8八はち飛ひから角かく交換こうかん型がた向むかい飛車ひしゃにして戦たたかう手段しゅだんなどが知しられる。

後手ごてが先手せんてから奇襲きしゅうを恐おそれて図ず4-1の前まえに、例たとえば△6二に銀ぎんとして、そもそも角かく交換こうかんをしてこない場合ばあいは、角かくを7七ななに上あげた関係かんけいで一いち手て損そんとなっているので、▲7四よん歩ほから早はや石田いしだを目指めざすことができるほか、角かく道どうを止とめて本ほん石田いしだ流りゅうを目指めざすことも可能かのうとなっている。

△遠山とおやま 角かく

9	8	7	6	5	4	3	2	1
香こう	桂かつら	銀ぎん	金きむ		金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	一いち
	飛ひ				王おう				二に
歩ふ		歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ		歩ふ		三さん
						歩ふ			四よん
	歩ふ	歩ふ	桂かつら					歩ふ	五ご
									六ろく
歩ふ	歩ふ		歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	七なな
		飛ひ				玉たま			八はち
香こう		銀ぎん	金きむ		金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	九きゅう

▲門倉かどくら 角かく
図ず4-2 ▲6五ご桂かつらまで

初手しょて▲7八はち飛ひに2手て目め△8四よん歩ほにも対応たいおうでき、後手ごての対策たいさくもいろいろあるが、通常つうじょうの鬼おに殺ごろしと比くらべて飛車ひしゃが使つかいやすいことで先手せんても十分じゅうぶんに戦たたかえる。

プロの対局たいきょくで実際じっさいにあったのが図ず4-2の局面きょくめん、2012年ねん1月がつの門倉かどくら啓あきら太ふとし対たい遠山とおやま雄つよし亮あきら戦せんで、大だい乱戦らんせんになった。門倉かどくらの初手しょて▲7八はち飛ひに以下いか△8四よん歩ほ▲7六ろく歩ほ△8五ご歩ほとし、その後ご▲7七なな角かく△3四よん歩ほ▲4八はち玉たまに、△7七なな角かく成なりとしたもので、以下いか▲同どう桂かつらに△1四よん歩ほ▲3八はち玉たま△1五ご歩ほ▲7五ご歩ほ△4二に玉たまに門倉かどくらは▲6五ご桂かつらと進すすめた（図ず4-2）。以下いか△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふ△3三さん角かく▲6六ろく歩ほ△8六ろく飛ひ▲7四よん歩ほと進行しんこうした。

手順てじゅんが本格ほんかく的てきになったことで、原始げんし鬼おに殺ごろし同様どうようの狙ねらいだけでなく、持久じきゅう戦せんにも対応たいおうする形かたちとなったが、後手ごてが穏おだやかに応おうじれば先手せんてであるにもかかわらず後手ごて番ばんで石田いしだ流りゅうに構かまえたのと同おなじような展開てんかいとなるため、プロ間あいだでは「先手せんての得とくがない」という理由りゆうで戦法せんぽうとして定着ていちゃくするまでには至いたらなかった。しかし、狙ねらいとなる筋すじは明快めいかいで、アマチュアには非常ひじょうにわかりやすかったことから、この戦法せんぽうを著あらわした米長よねなが邦雄くにおの「新しん鬼おに殺ころし戦法せんぽう」は60刷さつ近ちかくを数かぞえるロングセラーとなった。

普通ふつうの鬼おに殺ごろしのように角かくが8八はちのままで▲7七なな桂かつらと跳はねると、△6四よん歩ほと突つかれた時ときに足あしが止とまってしまうのであるが、新しん鬼おに殺ごろしは角かくを交換こうかんしているので、 手てを作つくりやすい。

鬼おに殺ころし向むかい飛車ひしゃ

△持もち駒ごま なし

9	8	7	6	5	4	3	2	1
香こう	桂かつら	銀ぎん	金きむ	王おう	金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	一いち
							飛ひ		二に
歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	角かく	歩ふ	歩ふ	三さん
						歩ふ			四よん
							歩ふ		五ご
		歩ふ							六ろく
歩ふ	歩ふ		歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ		歩ふ	七なな
	角かく						飛ひ		八はち
香こう	桂かつら	銀ぎん	金きむ	玉たま	金きむ	銀ぎん	桂かつら	香こう	九きゅう

▲持もち駒ごま なし
図ず5 6手て目め2二に飛ひまで

鬼おに殺ころし戦法せんぽうの更さらなる改良かいりょう形がたともいえるのが、島しま朗あきら考案こうあんの「鬼おに殺ころし向むかい飛車ひしゃ」戦法せんぽうである。これは角かく道どうを止とめずに向むかい飛車ひしゃに振ふり、相手あいてが角かく交換こうかんから角かくを打うってきた時ときには一気いっきに鬼おに殺ごろしへ変化へんかするという戦法せんぽうである。これまで考案こうあんされた鬼おに殺ころし系統けいとうの戦法せんぽうの中なかで、唯一ゆいいつ相手あいてが常つねに正ただしい手てを指さし続つづけても不利ふりにならないとされている。

なお角かく交換こうかんしない場合ばあいは普通ふつうの向むかい飛車ひしゃとなるが、相手あいてが角かく道どうを止とめざるを得えないので有利ゆうりになる。また、後手ごてが左ひだり銀ぎんを上あがった状態じょうたいで先手せんてから角かく交換こうかんすると、後手ごては桂馬けいまではなく銀ぎんで馬うまを取とる。この場合ばあいは後手ごてがダイレクト向むかい飛車ひしゃよりも有利ゆうりな形かたちで駒こま組ぐみを行おこなうことができ、後手ごて不満ふまんなしとなる。よって居きょ飛車ひしゃ側がわは7手て目めに角かく交換こうかんする。その後ご、△同どう桂かつらに先手せんては▲９六ろく歩ほと玉たま側がわの端歩はしふを突つくのが良よいとされている。

この戦法せんぽうに近ちかい戦たたかい方かたは森内もりうち俊之としゆき対たい羽生はぶ善治よしはるの第だい62期き名人めいじん戦せん第だい1局きょくで行おこなわれた。後手ごて森内もりうちの鬼おに殺ころし向むかい飛車ひしゃ模様もように対たいし、先手せんて羽生はぶは角かく交換こうかんしなかったものの、森内もりうちはそのまま玉たまを穴熊あなぐまに囲かこい、勝利しょうりを収おさめた。考案こうあん者しゃの島しまが自著じちょ『島しまノート』で紹介しょうかいしたため、インターネット将棋しょうぎでは一時期いちじき非常ひじょうに流行りゅうこうしたという。

近年きんねんでは2017年ねん 第だい3期き叡あきら王おう戦せん 九きゅう段だん予選よせん 藤井ふじい猛たけし対たい三浦みうら弘行ひろゆきで藤井ふじい猛たけしが採用さいようし、勝利しょうりした。

対たい振ふり飛車ひしゃ用よう

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ   桂かつら 香こう 一いち   飛ひ         銀ぎん     二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   角かく 歩ふ 歩ふ 三さん           歩ふ 歩ふ     四よん     歩ふ         歩ふ   五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず6-1 ▲7七なな桂かつらまで

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ   金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち       王おう   飛ひ       二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   角かく 歩ふ 歩ふ 三さん           歩ふ 歩ふ     四よん     歩ふ         歩ふ   五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず6-2 △6二に玉たままで

振ふり飛車ひしゃ党とうに対たいして▲7五ご歩ほから▲7七なな桂かつらと構かまえて指さす鬼おに殺ころし戦法せんぽうもある。　図ず6-1のように角かく道どうを止とめて△3二に銀ぎんとするノーマルの四よん間あいだ飛車ひしゃの出でだして、△4二に飛ひならば▲6五ご桂かつらとし、以下いかは△6二に金きん　7四よん歩ほで、△同どう歩ふならば▲5五ご角かく△4五ご歩ほ▲9一角いっかく成なり△9九きゅう角かく成しげる▲8一いち馬うま△7二に銀ぎん▲7一いち馬うま△4四よん馬うま▲5六ろく香こう△5四よん歩ほ▲7八はち飛ひ△7五ご香こう（△5五ご歩ほは▲7四よん飛ひ△5六ろく歩ほ▲4四よん飛ひ△同どう飛ひ▲5三さん角かくまたは▲6二に馬うま）▲7五ご同どう飛ひ△同どう歩ふ▲5三さん香こう△5二に金きん上じょう▲同どう香こう成なりで、△同どう飛ひまたは△同どう玉たまいずれも▲7四よん桂かつらなどと攻せめを続つづけることができる。▲7七なな桂かつらに△4三さん銀ぎんならば▲2六ろく飛ひで、△2二に飛ひならば▲6五ご桂かつらとし、以下いか△6二に金きん▲7四よん歩ほ△6四よん歩ほ▲7三さん歩ほ成しげる△同どう桂かつら▲同どう桂かつら成しげる△同どう金かね▲7四よん歩ほ、これを△同どう金かねは▲6三さん桂かつら、△7二に金きんは▲5五ご角かく△6二に飛ひ▲6五ご桂かつら△6一いち桂かつら▲7三さん歩ほ成しげる△同どう金かね▲同どう桂かつら成しげる△同どう桂かつら▲7六ろく飛ひ△7二に歩ほ（△7二に銀ぎんなら▲7四よん金きん△6五ご桂かつらの後のち、▲6八はち銀ぎんを入いれてから▲6四よん角かくや▲6四よん金きん）▲8六ろく飛ひ△8二に銀ぎん▲8一いち金きんなど、攻せめが続つづく。これを避さけるには▲6五ご桂かつらの跳はねに△6二に金きんに代かえて△6二に銀ぎんとする必要ひつようがある。

戻もどって、四よん間あいだ飛車ひしゃの場合ばあいに図ず6-1の△3二に銀ぎん～△4二に飛ひではなく、単たんに△4二に飛ひからの駒こま組ぐみであれば、▲7七なな桂かつらには普通ふつうに△6二に玉たま（図ず6-2）で、以下いか▲6五ご桂かつらなら△6四よん歩ほで何なんでもない。したがって先手せんても▲7七なな桂かつらとはせずに▲7八はち金きんとし、以下いか△6二に玉たま▲7四よん歩ほ△8二に銀ぎん▲7三さん歩ほ成しげる△同どう銀ぎんと後手ごても形かたちは乱みだれるがこれで一いち局きょく。　また▲7七なな桂かつらも▲7八はち金きんともせずに▲7四よん歩ほ△同どう歩ふに▲5五ご角かくとしても、後手ごても△8二に銀ぎんや△9二に飛ひで対応たいおうができる。　さらに▲2六ろく飛ひとし、△3二に銀ぎんを待まって▲7四よん歩ほ△同どう歩ふ▲5六ろく飛ひもあり、以下いか△5二に飛ひとし▲5五ご角かく△8二に銀ぎん▲6六ろく飛ひに△7二に金きんとしておき、▲8二に角かく成しげる△同どう金かね▲6三さん飛ひ成なりには△4五ご歩ほの切きり替かえしがある。

四よん間あいだ飛車ひしゃ型がた

△持もち駒ごま 歩ふ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ           角かく   二に 歩ふ   歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん   歩ふ     銀ぎん   歩ふ     四よん     歩ふ 桂かつら           五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ     歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく   飛ひ   玉たま       八はち 香こう   銀ぎん 金きむ   金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 歩ふ 図ず7-1 ▲6五ご桂かつらまで

△持もち駒ごま 歩ふ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち           飛ひ   角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ     歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん           桂かつら       五ご     歩ふ   銀ぎん     歩ふ   六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ   歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう   銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま 歩ふ 図ず7-2 △4五ご桂かつらまで

先手せんて四よん間あいだ飛車ひしゃには相手あいての後手ごてが右みぎ四よん間あいだ模様もようで後手ごての△6四よん歩ほとした際さいに▲7五ご歩ほとして、△6三さん銀ぎんに▲7七なな桂かつらとし、△5四よん銀ぎんに▲6五ご歩ほ△同どう歩ふ▲同どう桂かつらと鬼おに殺ごろしのように仕掛しかけていく戦法せんぽうがある。以下いか△8八はち角かく成なりは▲5三さん桂かつら不ふ成なりから▲6一いち飛ひ成なりを狙ねらわれる。△6五ご銀ぎんは▲同どう飛ひ△8八角やすみ成しげる▲同どう銀ぎん△5四よん角かく▲6八はち飛ひ△2七なな角かく成なりに▲6三さん歩ほ。△5二に金きん右みぎならば▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲7一角いっかく△7二に飛ひ▲5三さん桂かつら不ふ成なり△7一いち飛ひ▲4一いち桂かつら成しげる△同どう玉たま▲6二に金きんなど。したがって△4二に玉たまか△4二に金きんとすれば、▲7一角いっかくの筋すじはない。図ず7-2のように後手ごて四よん間あいだ飛車ひしゃであれば、同おなじように進すすんだときに△4八はち金きんに▲7七なな角かくと準じゅん王手おうて飛車ひしゃがあるが、以下いか△3九きゅう金きん▲4三さん歩ほは△4九きゅう飛ひ▲7八はち玉たま△4三さん飛ひ成なりがある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 米長よねなが邦雄くにお『新しん鬼おに殺ころし戦法せんぽう』山海さんかい堂どう、1988年ねん、ISBN 4-381-00068-4

外部がいぶリンク

• 鬼おに殺ごろし 日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい - 将棋しょうぎコラム