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きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
将棋しょうぎ > がこ > 穴熊あなぐまがこ > きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま
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こうかつら きむ   かつらこういち
 おうぎん     
 きむぎんかく さん
     よん
       
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かくぎん なな
こうぎんきむ     はち
たまかつらきむ    かつらこうきゅう

きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま(いびしゃあなぐま、えい: Static Rook Anaguma[1])は、将棋しょうぎ戦法せんぽうひとつ。おもたい飛車ひしゃせんにおいて、きょ飛車ひしゃそく穴熊あなぐま目指めざ作戦さくせん総称そうしょうである。

概要がいよう

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きょ飛車ひしゃたい飛車ひしゃ将棋しょうぎいて、ふるくからある持久じきゅうせんさくとしてはたまあたま位取くらいどひだり美濃みのなどがされていた。きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまはこれらにくらべバランスがわるしづらいとされていたが、田中たなか寅彦とらひこ体系たいけいすすだか勝率しょうりつをあげたことで昭和しょうわ50年代ねんだいごろから流行りゅうこうした[2]当時とうじ異端いたんとされていたきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまて、序盤じょばん戦術せんじゅつ向上こうじょうさせた功績こうせきおおきい。田中たなか自身じしん公式こうしきせんはじめてきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐましたのはよんだんデビュー2せん、1976ねん10がつ8にち名将めいしょうせんたい佐藤さとうだい五郎ごろうせんである。このいちせんこそはやぶれたが、その田中たなかは10連勝れんしょう記録きろくし、76年度ねんど連勝れんしょうしょう新人しんじんしょう受賞じゅしょうした。自身じしんのデビュー年度ねんど将棋しょうぎ大賞たいしょう受賞じゅしょうした棋士きし田中たなか史上しじょうはつで、そのあとも2006年度ねんど糸谷いとたに哲郎てつろう (糸谷いとたに連勝れんしょうしょう新人しんじんしょう)しかいない(藤井ふじいさとしふとしはデビューが2016年度ねんどあきで、連勝れんしょうしょう新人しんじんしょう受賞じゅしょうは2017年度ねんど対象たいしょうとなっている)。田中たなか棋戦きせんはつ優勝ゆうしょうは5年度ねんど新人しんじんおうせんで、決勝けっしょうさんばん勝負しょうぶでも飛車ひしゃ穴熊あなぐま駆使くしし、伊藤いとうはてを2しょう0はい千日手せんにちてきょくふくむと、3採用さいよう)でくだした。きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま現代げんだい戦法せんぽうとして体系たいけいづけ、流行りゅうこうみちびいたのは田中たなか功績こうせきとされるが、田中たなか以前いぜん飛車ひしゃ穴熊あなぐまされた有名ゆうめい将棋しょうぎげると、だい7名人めいじんせん だい2きょく升田ますだ幸三こうぞうたい大山おおやま康晴やすはるで、先手せんて升田ますだきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま採用さいようしたのがられる。結果けっか終盤しゅうばんいちしつがあり、升田ますだ敗戦はいせんとなったが途中とちゅう互角ごかく以上いじょう飛車ひしゃ穴熊あなぐまたたかっていた。当時とうじ朝日新聞あさひしんぶん紙面しめん掲載けいさいされたさかえ記者きしゃ観戦かんせん[ちゅう 1]には『きゅうだんは8はちたまったあと、無造作むぞうさに、ノータイムで9はちこうがった。そして、立会たちあい大野おおのはちだんわたしたちがすわっている記録きろくせきほうかおけて「フフフ......」 とわらった』とある。

初期しょききょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまでは飛車ひしゃがわきょ飛車ひしゃ4まい穴熊あなぐまゆるしているケースがおおかったが[3]きょ飛車ひしゃがわ圧倒的あっとうてき勝率しょうりつをあげていたためかい飛車ひしゃ立石たていしりゅうよんあいだ飛車ひしゃのような飛車ひしゃからうごじゅん模索もさくされた。しかしいずれも対策たいさくがたてられきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま隆盛りゅうせいめるにはいたらなかった[4]飛車ひしゃがわからのさくとしては藤井ふじいシステム一時期いちじき猛威もういるったが、これも飛車ひしゃがわ対策たいさくされ、確実かくじつ戦法せんぽうとはなっていない。2013ねん現在げんざいではかくどうめる飛車ひしゃはこのきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまによりだい一線いっせんから退しりぞけられている状態じょうたいである。とはいえ、一目散いちもくさん穴熊あなぐまむと前述ぜんじゅつのような積極せっきょくさくたい形勢けいせいそこねてしまうのは事実じじつであり、飛車ひしゃだしによっては穴熊あなぐまではなくひだり美濃みのにしたり、ふねがこからの急戦きゅうせん有力ゆうりょくである[5]

たいかくどうめる飛車ひしゃ

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ごま なし
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こう  きむ   かつらこういち
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 かつらきむぎんかくさん
    よん
       
   ぎん    ろく
   なな
こうぎん かく    はち
たまかつらきむきむ   かつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつら きむ   かつらこういち
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  きむ ぎんかくさん
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    なな
こうぎんきむかく    はち
たまかつらきむ    かつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつら きむ   かつらこういち
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   きむ ぎんかくさん
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ぎん   なな
こうぎんきむかく    はち
たまかつらきむ    かつらこうきゅう

かくどうめている飛車ひしゃたいして、大抵たいてい場合ばあいきょ飛車ひしゃじん飛車ひしゃさきばしており、穴熊あなぐまとのバランスはわるい。きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまがわ▲6ろくぎんがた(4ろくぎんがた)のねらいのひとつとして7すじ(3すじ)の攻略こうりゃくがあり、こう美濃みの不用意ふよういに△7さんかつら(▲3ななかつら)をねるとかつらあたまねらってしやすくなる。きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまがわ先手せんてとして、だい1-1から▲7に△どうは▲どうぎん、△6反発はんぱつは▲7ななぎん△7▲8ろくぎん△7よんきん▲5ななかくたまあたません手段しゅだんしょうじる。さらに穴熊あなぐまがわが▲7きゅうきん-▲6きゅうきんがた場合ばあいは▲7はちしょうじて攻撃こうげきりょくすことになる。もうひとつの攻撃こうげき手段しゅだんかくで、場合ばあいによっては飛車ひしゃがわに△2(▲8はち)を強要きょうようさせることになる。だい1-2で△4は▲2よんからの仕掛しかけがしょうじる。

その展開てんかい飛車ひしゃがわ不用意ふよういかくうごかすと▲2よんどうどう(もしくは1あれば▲2さん)からの飛車ひしゃ交換こうかんせまることができ、有利ゆうり展開てんかいできる。だい1-3はそのいちれい後手ごて飛車ひしゃがわからの△5に▲2よん以下いか△2よんどうなら▲5とし、かくすと▲2よんまたは▲2さんから▲2よん)がしょうじる。

たいよんあいだ飛車ひしゃ

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1990年代ねんだい以降いこう飛車ひしゃ手順てじゅん洗練せんれんされ、前述ぜんじゅつのような飛車ひしゃがわ積極せっきょくさく無理むりせず対応たいおうできるよう理想りそうてきな4まい穴熊あなぐま放棄ほうきする[6]たとえばだい2-1のように飛車ひしゃがわはやめに△5よんぎんるのにたいして▲6ろくぎんがると△4で▲6はちかくでは△6ぎんしょうじる。▲6ろくとしても△6よん~△4~△6があり、先手せんて対策たいさくとして▲5はちきん~▲6ななきん必要ひつようしょうじることで、上記じょうききょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまがわねらい(6ろくぎんからの7すじ攻撃こうげきかくせん)を緩和かんわしていくことが可能かのうになっている。

ごま なし
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こうかつら きむ きむ かつらこういち
  ぎんおう    
  かくさん
    ぎん  よん
       
       ろく
かくぎん なな
こうたま      はち
 かつらぎんきむ きむ かつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつら きむ   かつらこういち
 おうぎん     
  きむ かくさん
  ぎん   よん
      
     ろく
 きむぎん  なな
こうぎん      はち
たまかつらきむ かく  かつらこうきゅう
ごま なし
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こう  きむ   かつらこういち
 おうぎん     
かつらきむ  かくさん
  ぎん  よん
       
     ろく
かくきむ   なな
こうぎんきむぎん    はち
たまかつら     かつらこうきゅう

『イメージとみの将棋しょうぎかん』(鈴木すずき宏彦ひろひこ、2008、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい)では、だい2-1から▲6ろく△6よん▲9きゅうたまとした類似るいじ局面きょくめんから△6仕掛しかけの是非ぜひについて棋士きし6めい検討けんとうしているが、谷川たにがわ浩司こうじはその局面きょくめんきょ飛車ひしゃ危険きけんで▲8はちぎんは△6ろくどうぎん△4穴熊あなぐまがわこのましくなく、▲9きゅうたままえに▲5はちきんみぎさきにすべきとし、渡辺わたなべあきら藤井ふじいたけしも▲5はちきんみぎさきにしておくべきとしており、渡辺わたなべ藤井ふじい検討けんとうしてみると、△6に▲6はちは△2よんであるが、△6に▲5はちきんみぎ△4▲6どうぎん▲3三角みすみしげるどうかつら▲2よんどうどう△4ろくどうぎん△7ろくぎん▲8はちぎんで、案外あんがい後手ごてめがうるさいとしている。の3めいは、▲8はちぎん△4△6ろくどうぎん△4▲5△6さんぎん引▲2ろくか▲8はちぎん△4▲6どうぎん▲3三角みすみしげるどうかつら▲2よんどう▲5はちきんみぎや、▲6はち△6ろくどうぎん△4▲5△6さんぎん引▲5ななぎん△6よんなどを検討けんとうし、すこ無理むりっぽいかんじがあるとしている。

飛車ひしゃ待機たいきさく場合ばあいかくを▲5きゅうかく~▲3ななかくねらいは▲5どうぎん▲2よんなど)[7]や▲2ろくかく[8]転換てんかんして使用しようして(だい2-2)、きょ飛車ひしゃには▲6はちぎん~▲7ろくぎんもしくは▲7はちから7すじ手持てもちにしたり[9]などの打開だかいさくがある。

きょ飛車ひしゃとしては飛車ひしゃ飛車ひしゃさきかよっていなければ松尾まつおりゅう穴熊あなぐまへのえ(くみみきれば勝率しょうりつ8わり)をせるこまみをすることで、飛車ひしゃがわへの牽制けんせいおこな[10]だい2-3のような後手ごて櫛田くしだりゅう松尾まつおりゅうへのえもあるが『イメージとみの将棋しょうぎかん』によると2003ねんあらわれてから2008ねんまでの18きょくについて9しょう9はいぶん成績せいせきで、うち8きょくが△5、7きょくが△5さんぎんである。同書どうしょでは△5どう△4ろくなら▲どう△5ぎん▲2よんどう▲3△4ろく▲3よん△4よんかく▲2よん△2▲2にじっと△4や、△5どうどうぎんなら▲2よんどう▲3△6など、△5さんぎんには▲2よんどう▲6△7ななかくしげるどうぎんみぎ△6かつら▲2よん△7ななかつらしげるどうかねよせ△2など、いずれもいい勝負しょうぶとみられているが、局面きょくめんとしてはたまかた穴熊あなぐまがわちやすそうであるとみている。

実際じっさいには飛車ひしゃがわ後手ごてばんとして△4よんぎん~△5などのうごきをせれば穴熊あなぐまがわも▲どうどうぎんから▲2よんどう▲3どう▲3よんと5すじもちいてかく飛車ひしゃさばくなどの手段しゅだんがある。このときよんあいだ飛車ひしゃかくを4けないため飛車ひしゃがいる)、すみあたまからかくすじきょ飛車ひしゃねらすじとなる。

よんあいだ飛車ひしゃ穴熊あなぐまあい穴熊あなぐま場合ばあい飛車ひしゃさき突破とっぱねらためねらすじおおきくわるわけではない。四間しけん飛車ひしゃよりもぎん穴熊あなぐまきつけやすい利点りてんかし(よんあいだ飛車ひしゃ飛車ひしゃ邪魔じゃましてひだりぎんを4〜5さん使つかえない)、相手あいて穴熊あなぐまあいだ理想りそうてきな4まい穴熊あなぐまみにくことが1つのねらいである[11]

たいさんあいだ飛車ひしゃ

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ごま なし
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こうかつら きむ きむ かつらこういち
  ぎんおう ぎん  
 かくさん
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かく  なな
  たま  ぎん  はち
こうかつらぎんきむ きむ かつらこうきゅう

たいさんあいだ飛車ひしゃではみぎぎんを▲6ろく~▲7なな(△4よん~△3さん)と展開てんかいビッグ4などに一番いちばんみやすい。四間しけん飛車ひしゃのような△4~△4ろくからの突破とっぱがないために▲5ななぎんが6ろく地点ちてん移動いどうしやすく、6ろくぎん-6はちかくかまえがきずやすく、そのため安定あんていして穴熊あなぐまみやすい。

一方いっぽうみぎぎんを3すじからのさばきにそなえて4はち保留ほりゅうし▲5ろく~▲5ななぎん活用かつようする2省略しょうりゃくして穴熊あなぐま完成かんせいいそぐこともできる。これはたいよんあいだ飛車ひしゃのように△4ばしてはやくにかくどうをあけることがすくないため、6すじみぎぎんける必要ひつようがないためである。▲7ななかくさきにするかた以前いぜんからたいよんあいだ飛車ひしゃもちいられていたが、かりだい3-1で△7いちたまとすると▲6はちかくしょうじ、以下いか△4▲8はちぎんつぎに▲2よんからの仕掛しかけがある。さんあいだ飛車ひしゃ場合ばあいは△2かるが、よんあいだ飛車ひしゃ場合ばあいは3ぎんがいるかまえでは2飛車ひしゃまわせないため、△4さんとして▲2よんどうどうかくに△4よんかく用意よういする必要ひつようがある。

ただ飛車ひしゃがわはやめにうごく△5よん~△5さんぎん~△6よんぎん(▲5ろく~▲5ななぎん~▲4ろくぎん)や△4さんぎん~△5よんぎん~△6ぎん(▲6ななぎん~▲5ろくぎん~▲4ぎん)のうごきには注意ちゅうい必要ひつよう

さんあいだ飛車ひしゃがわ中田なかたいさおXP石田いしだりゅうへのえがねらすじであるが、これにはきょ飛車ひしゃがわ飛車ひしゃ陣形じんけいみぎぎん圧力あつりょくをかけつつ、飛車ひしゃからうごかさせてたたかいをこすのがねらすじ石田いしだりゅうには▲6八角はっかく~▲4ろくぎん(△4かく~△6よんぎん)と3地点ちてんにプレッシャーをかけていく。

あい穴熊あなぐまになるとかたいになることがおお[12]

さんあいだ飛車ひしゃがわにはこのほか真部まなべりゅう」とばれる、さんあいだ飛車ひしゃ特有とくゆうひだりぎんが△5さんぎん~△6よんぎんうごけるため6すじをとって△5ねらう(5なな地点ちてんにときんをつくるとうのねらい)かたもある。これとかたで、飛車ひしゃがわだしでかくどうめずに△5よんとしてすみ交換こうかんさそい、交換こうかんしてきたら飛車ひしゃってむか飛車ひしゃかまえて5さんかくたせて△4ぎん▲8ろくかくなりとさせてうまをつくらせる大野おおのりゅうかい飛車ひしゃ応用おうようし、きょ飛車ひしゃがわ穴熊あなぐまにしてきたら飛車ひしゃがわは△6よん~△6~△5さんぎん~△6よんぎんこうかたちきずいて圧迫あっぱくするかたもよくされていた。

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こうかつら きむ   かつらこういち
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だい3-2から3-3は、たい石田いしだりゅうたいするきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま羽生はぶ善治よしはるちょ羽生はぶ頭脳ずのう』ではだい3-2の△3たいする▲5ろくは、つぎ一手いってを△4かく限定げんていしているとしている。そして△1よんなどであるとすかさず▲5ななぎんがあり、以下いか△4かくでも▲4ろくぎんて、△3よんには▲6はちかくがある。このとき石田いしだりゅうかくがまだ5さんていないので、▲4ろくぎん△3よん▲6はちかくのときに△4のカウンターがかない。また△4かく▲2ろく△6四角よつかどで△3ろくねらうのも△6よんかくのときに▲1ななこうで、以下いか△3ろくなら▲どう△1きゅうかくしげる▲4ろくぎんである。また局面きょくめんすすんだだい3-3で▲7はちきんみぎより▲6ろくぎんぎんさきて5すじ交換こうかんさきにするとしている。また後手ごてが△7よんとしたら▲7として、以下いかどうどうぎん△7よんに▲8ろくぎんとして、2ろく飛車ひしゃ起動きどういきひろげておく。以降いこうは▲7ろくまわっての▲7や▲2よんどう▲2さんなどのさぶりをかけるなどがある。

たいちゅう飛車ひしゃ

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飛車ひしゃよんあいだ飛車ひしゃのように藤井ふじいシステムや、さんあいだ飛車ひしゃのような石田いしだりゅうへのえをたないためきょ飛車ひしゃに4まい穴熊あなぐまゆるしやすい。しかし、よんあいだ飛車ひしゃよりぎんたまきつけやすい利点りてんかした矢倉やぐらりゅうもちいられている。穴熊あなぐまがわたいちゅう飛車ひしゃ場合ばあい中央ちゅうおうまもりがあるので、みぎぎんを▲6ろく~▲7なな(△4よん~△3さん)といった展開てんかいはしずらく、みぎぎんめに使つかっていく展開てんかいおおい。

たいかい飛車ひしゃ

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かい飛車ひしゃさんあいだ飛車ひしゃ同様どうように、そのまま持久じきゅうせん目指めざすときょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまにスムーズにまれやすい。その意味いみはやめに反撃はんげきするさく必要ひつようとなる。

ごま かく
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こうかつらぎんきむ きむ かつらこういち
  おう     
ぎん  さん
       よん
        
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  なな
こう    ぎん  はち
たまかつらぎんきむ きむ かつらこうきゅう

飛車ひしゃ場合ばあいでもむか飛車ひしゃなおしすることでもちいられるが、▲7はちきん(△3きんがたかまえて速攻そっこう仕掛しかけるかたもちいられる。もともときょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまたいする速攻そっこうはこの▲7はちきん(△3きんがた急戦きゅうせんおおかった。

このほかきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまがわが5すじかないで場合ばあいむか飛車ひしゃがわは▲6はち(△4)にぎんかまえておき、かくどうをあけてかく交換こうかんせまかたもみられる。あらかじめむか飛車ひしゃなので、飛車ひしゃさき突破とっぱされる心配しんぱいがなく、かく手持てもちにしたほうがかい飛車ひしゃがわ有利ゆうりはたらくためである。

類似るいじ手法しゅほうとして、以前いぜんは5すじづけ穴熊あなぐまたいし、だい4-1のようにの△4さんぎんがた飛車ひしゃからきょ飛車ひしゃが▲9はちこうのとき△4いてかく交換こうかんせまり、以下いか▲2かくなりに△どうかく交換こうかんかい飛車ひしゃにするかたされていた。四間しけん飛車ひしゃ相手あいての△4に▲6ろくだと△5よんぎん▲5はちきん△6よん▲6ななきん△5ぎんしょうじる。

たいかくどうめない飛車ひしゃ

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2012ねん現在げんざい流行りゅうこうしているかくどうめない飛車ひしゃ長所ちょうしょきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐままれにくいてんである。しかし、それでもきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま有力ゆうりょく作戦さくせんである。

たいゴキゲンちゅう飛車ひしゃ

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従来じゅうらいゴキゲンちゅう飛車ひしゃたいしてきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまむのはそで飛車ひしゃにされてそんとされており、すみみちめるため作戦さくせんけになりやすいとかんがえられていた。しかし、そで飛車ひしゃ対策たいさくとして▲8はちぎん保留ほりゅうして、かく退路たいろ確保かくほするのが有効ゆうこうきょ飛車ひしゃたたかえることがかった[13]きょ飛車ひしゃうわ飛車ひしゃかまえたり▲8ろくかくなどとだいこまこまかく使つかいながらそで飛車ひしゃ警戒けいかい[14]さぶりをかけながらつくだまがた松尾まつおりゅう穴熊あなぐま目指めざし、ちゅう飛車ひしゃがわ穴熊あなぐまあい穴熊あなぐま有力ゆうりょくされている[15]ほかにも石田いしだりゅうえたり[16]平凡へいぼんに5よんぎんがたからこう美濃みのかたち有力ゆうりょくであるが[17]穴熊あなぐまかたけしやすい[15]。また、△5よんぎん~△4ぎんから△5ろくという一直線いっちょくせんめは▲6八角はっかく無理むりすじとなる[18]

このほか、『菅井すがいノート』218ページのれいだい5-1▲6ななきん以下いか、△5いち▲7ななかく△9よん▲9ろく△8よん▲8はちたま△8ななぎん▲7はちきん△7きん▲9はちこうで、穴熊あなぐまにするじゅんなどがられる。

ごま なし
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こうかつら きむ きむ かつらこういち
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 かくさん
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 かくたまぎん    はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつら  きむ かつらこういち
 おうきむ      
 ぎん  かくさん
  ぎん  よん
       
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こうたまきむぎん    はち
 かつら     かつらこうきゅう

先手せんてちゅう飛車ひしゃには5すじらせないできょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま作戦さくせん有力ゆうりょく。5すじらせるとそで飛車ひしゃきびしいとされたためだが[19]きょ飛車ひしゃがわれいもあり難解なんかいである[20]

たい石田いしだりゅう

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きょ飛車ひしゃがわがややそんとされるも、村田むらたあらわひろし[21]野月のづきひろしたからによって研究けんきゅう実戦じっせんかさねられている。石田いしだりゅうがわ一方いっぽうてきさばきやおさみをゆるさないのが肝要かんようで、たたかいさえきればたまがたかたさととおさをかつかせる。

たいかく交換こうかん飛車ひしゃ

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ぎんを8はち−7ななへとえ、へこみ矢倉やぐらかたちから穴熊あなぐまえることがある。

きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま戦法せんぽう訴訟そしょう

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将棋しょうぎ戦法せんぽうきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま」の元祖がんそだれかをめぐり、支部しぶ名人めいじんせん優勝ゆうしょう1かい赤旗あかはた名人めいじんせん優勝ゆうしょう3かい実績じっせきゆうするアマチュア強豪きょうごう大木おおき和博かずひろが「考案こうあんしたのは自分じぶん」として、プロ棋士きし田中たなか寅彦とらひこ相手あいてに300まんえん慰謝いしゃりょう支払しはらいと、元祖がんそ名乗なのらないようもとめた訴訟そしょう

1999ねん6がついちしん東京とうきょう地裁ちさいは「二人ふたりとも元祖がんそ創始そうししゃばれるにふさわしい」と指摘してきし、慰謝いしゃりょう支払しはらいの請求せいきゅう棄却ききゃく

2000ねん3月、しん東京とうきょう高裁こうさいいちしん判決はんけつ支持しじした。

2001ねん2がつ22にち最高裁さいこうさいだい1しょう法廷ほうていどうけん上告じょうこくしんとして受理じゅりしないことを決定けっていした(上告じょうこく棄却ききゃく[22]。この棄却ききゃく決定けっていにより、しん東京とうきょう高裁こうさい判決はんけつ確定かくていすることとなった。

なお1968ねんだい27名人めいじんせん大山おおやま4-升田ますだ0)だい2きょく先手せんてばん升田ますだ幸三こうぞう実力じつりょくせいだいよんだい名人めいじんきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまのコンセプト[ちゅう 2][ちゅう 3]後手ごてばん大山おおやま康晴やすはるじゅうせい名人めいじんよんあいだ飛車ひしゃ相手あいて実践じっせんしていた。しかし、実際じっさい飛車ひしゃ穴熊あなぐま現代げんだい戦法せんぽうとして再編さいへん体系たいけいづけてプロ棋士きしあいだだい流行りゅうこうさせて本格ほんかくてきたい飛車ひしゃ攻略こうりゃくとして定着ていちゃくさせたのは田中たなか寅彦とらひこ功績こうせきである。小倉おぐら久史ひさしちょ下町したまちりゅうさんあいだ飛車ひしゃ戦法せんぽう一節いっせつ』によれば、当人とうにんのコメントとして「うったえられたからたたかった」そうである。また、田中たなか以前いぜんには西村にしむら一義かずよしきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま戦法せんぽうなん実戦じっせん採用さいようしており、田中たなかはこの西村にしむらにもすくなからず影響えいきょうけている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 途端とたんわたしはあっと見張みはった。あなグマ。升田ますだきゅうだんの「あなグマ」、それはおそらくはじめてのことであろう。天下てんか名人めいじんあらそいのちがけのだい棋戦きせんはじめての戦法せんぽうこころみるとは。成功せいこうするかどうかはべつ問題もんだいとして、さすがは,新手あらて一生いっしょう"をひょうぼうするきゅうだん面目めんぼく躍如やくじょたるものがある。」
  2. ^ 当時とうじ棋戦きせん解説かいせつでは「めずらしいひだり穴熊あなぐま」としるされた。
  3. ^ 棋譜きふ週刊しゅうかん将棋しょうぎへん不滅ふめつめい勝負しょうぶ100」(毎日まいにちコミュニケーションズ)で確認かくにんできる。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Kawasaki, Tomohide (2013). HIDETCHI Japanese-English SHOGI Dictionary. Nekomado. p. 13. ISBN 9784905225089 
  2. ^ 現代げんだいきる大山おおやま飛車ひしゃ』p.125を参照さんしょう
  3. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへん)』p.12を参照さんしょう
  4. ^ 現代げんだいきる大山おおやま飛車ひしゃ』p.129を参照さんしょう
  5. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(急戦きゅうせんへん)』p.10を参照さんしょう
  6. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへん)』p.47を参照さんしょう
  7. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま)』p.164,234を参照さんしょう
  8. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへん)』p.118,146を参照さんしょう
  9. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへん)』p.242を参照さんしょう
  10. ^ よんあいだ飛車ひしゃやぶり(きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへん)』p.81,83を参照さんしょう
  11. ^ 『ホントにてる穴熊あなぐま』p.178を参照さんしょう
  12. ^ 『ホントにてる穴熊あなぐま』p.177を参照さんしょう
  13. ^ 棋譜きふだい22竜王りゅうおうせん5くみランキングせん準決勝じゅんけっしょう豊島としま将之まさゆきたいまことせん参照さんしょう
  14. ^ 『NHK将棋しょうぎ講座こうざテキスト2011ねん4がつごう』p.63を参照さんしょう
  15. ^ a b 『ゴキゲンちゅう飛車ひしゃ急所きゅうしょ』p.212を参照さんしょう
  16. ^ 『ゴキゲンちゅう飛車ひしゃ急所きゅうしょ』p.208を参照さんしょう
  17. ^ 『ゴキゲンちゅう飛車ひしゃ急所きゅうしょ』p.204を参照さんしょう
  18. ^ 『ゴキゲンちゅう飛車ひしゃ急所きゅうしょ』p.200を参照さんしょう
  19. ^ 遠山とおやまりゅうちゅう飛車ひしゃ持久じきゅうせんガイド』p.104を参照さんしょう
  20. ^ 棋譜きふだい71Aきゅう順位じゅんいせん1回戦かいせん谷川たにがわ浩司こうじたい渡辺わたなべあきら参照さんしょう
  21. ^ 最新さいしん戦法せんぽうマル定跡じょうせきファイル』だい3しょう参照さんしょう
  22. ^ きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま戦法せんぽう訴訟そしょう “最終さいしゅうきょく”もけに/最高裁さいこうさい双方そうほうとも元祖がんそ”. 産経さんけい将棋しょうぎweb・棋王きおうせん (2001ねん2がつ23にち). 2002ねん12月17にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2002ねん12月17にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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