ひだり美濃みの

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こうかつら きむ   かつらこういち
 おうぎん きむ   
 ぎんかくさん
      よん
        
     ろく
 たま ぎん なな
 かくぎん きむ   はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう

ひだり美濃みの(ひだりみの)は将棋しょうぎきょ飛車ひしゃもちいるがこ戦法せんぽうひとつ。たい飛車ひしゃ矢倉やぐらあらわれ、美濃みのがこいやこう美濃みのなどを、たまが8すじるように左右さゆうえてつくる、きょ飛車ひしゃはん美濃みのがこ持久じきゅうせん急戦きゅうせんども柔軟じゅうなん対応たいおうできるとされる[1]

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

かたかこかたはばがあり、初心者しょしんしゃからプロまでもちいる戦法せんぽうがこいである。飛車ひしゃたいする持久じきゅう戦法せんぽう比較ひかくすると、藤井ふじいシステム石田いしだりゅうなどの飛車ひしゃ積極せっきょくさくたいし、極端きょくたん不利ふりになることがすくなく、プロでは持久じきゅうせん自信じしんがないときひかえとして、アマチュアトップクラスでも大会たいかい飛車ひしゃ積極せっきょくさく流行はやっているのなら、リスクのすくない戦法せんぽうとして需要じゅようがある。

かこかた[編集へんしゅう]

8はちたまがた
角行かっこうを7ななげて、8はち位置いちたまかまえる。かつてはよくもちいられていたが、△6かつらが7ななかくたる、かとって5きゅうかくいてしまっては、後手ごてかく玉将ぎょくしょう直接ちょくせつねらわれるという弱点じゃくてんがある。後述こうじゅつ米長よねながたまえることもできるが、序盤じょばんからうすたまあたま直接ちょくせつねらうという構想こうそうひろまってくると、下火したびになっていった。ただし後手ごてが8たまがたであれば、有力ゆうりょく戦法せんぽうである[2]現在げんざいではきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま断念だんねんした場合ばあいなどでもられることがある[よう出典しゅってん]
後手ごて なし
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こうかつら     かつらこういち
 おうきむ     
   きむぎんぎんかく さん
 よん
         
ろく
 たまかつらぎん ぎん   なな
 かくきむ きむ   はち
こう      かつらこうきゅう
天守閣てんしゅかく美濃みの
たまかくすじはいるのをけるため、8ろくとっき8なな位置いちたまかまえるという珍奇ちんきかまえだが、右辺うへんからのめにたいしてはたまとお[ちゅう 1]たか勝率しょうりつほこった。松浦まつうら卓造たくぞうが、1960ねんのAきゅう順位じゅんいせん加藤かとう博二ひろじせんで、はじめて採用さいようした[3]たまあたま非常ひじょうよわいのが欠点けってん。これに対抗たいこうする飛車ひしゃがわ作戦さくせんとしては、藤井ふじいシステムなどがられる。なお、湯川ゆかわ (2005) pp.174-175によれば、きょ飛車ひしゃがわたまが8ななるというかたち自体じたいは1607ねん(慶長けいちょう12ねん)の棋譜きふですでにみられている発想はっそう初代しょだい大橋おおはしそうかつらたい本因坊ほんいんぼうさんすなせんそうかつら採用さいよう)である。みぎのとおりで後手ごてよんあいだ飛車ひしゃたいし、先手せんてひだりがた木村きむら美濃みの・ツノぎん雁木がんぎのようなかまえがそのじんであった。
よんまい美濃みの
天守閣てんしゅかく美濃みのくわえてみぎぎんを7なな位置いちまで移動いどうさせ4まいかこう。
ひだりぎんかんむり
よんまい美濃みのから進化しんかした、ひだり美濃みの最終さいしゅうがたひだりぎんかんむり進化しんかまえひだり美濃みのたいするよんあいだ飛車ひしゃがわ対策たいさくについては、藤井ふじいシステム参照さんしょうたい飛車ひしゃ穴熊あなぐまによくもちいられる。飛車ひしゃ穴熊あなぐま#たいぎんかんむり参照さんしょう
米長よねながたまかた
たまを9はちく。このかたちからぎんかんむりにするのも一時いちじよくされた。8はちたまがたくらべ、かくどうけている意味いみがある。
はし美濃みの
たまを9はちひだり美濃みのひとつ。通常つうじょうよりたま位置いちはしるのでこの名前なまえくしカツがこ途中とちゅうかたち
ひら美濃みの
ひだり美濃みの一般いっぱんかくどうけてかく移動いどうさせる必要ひつようがあるが、これはかくどうけずに方式ほうしきで、こうすることで藤井ふじいシステムとう上部じょうぶからのめを緩和かんわしている。飯島いいじまりゅうかくなどがこの戦型せんけいであるが、通常つうじょうひだり美濃みのくらべ、がこいをんでたま入場にゅうじょうさせるのがむずかしい。
一段いちだんだまがた
▲8きゅう(△2いち)に位置いちする一段いちだんだまならば米長よねながたまミレニアムがこ同様どうように、かくすじたまはいってこないメリットがある。
実戦じっせんれいとして、1954ねん7がつ 順位じゅんいせん高島たかしまいち岐代 vs. △大野おおの源一げんいちせんがある。先手せんてきょ飛車ひしゃがわ高島たかしま5ななぎんみぎがたまいぎんから7はちたまを8きゅう移動いどうし、6なながったぎんを7はちに、5はちかねを6なな移動いどうさせ、ひだり美濃みのえていく。実戦じっせんでは後手ごて飛車ひしゃがわ大野おおのたま金銀きんぎん4まいかこったため、先手せんてうすくなったかくあたまねらって▲3仕掛しかけて局面きょくめんをリードしている。また1989ねん12月 棋聖きせいせん予選よせん羽生はぶ善治よしはる vs.△剱持松二まつじ せんがある。先手せんてきょ飛車ひしゃがわ羽生はぶかくを8はちいたまま▲7はちたま~7ななかつら~8きゅうたまんだのちぎんかんむり発展はってんさせた。


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かく    なな
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  かつらきむぎん    なな
  ぎん      はち
こうたまかくきむ     きゅう

たい飛車ひしゃめのバリエーション[編集へんしゅう]

みぎ4ろくぎんわせ
かくどうけたまま、おも天守閣てんしゅかく美濃みのがこいで飛車ひしゃがわ互角ごかくかたさであることをかし、各種かくしゅ急戦きゅうせん仕掛しかける(だい1-1だい1-2)。通常つうじょうの4ろくぎんみぎ・4ろくぎんひだり鷺宮さぎのみや定跡じょうせきなどにくらべてきょ飛車ひしゃ陣形じんけいいので、おなじようにふねがこい4ろくぎんみぎ・4ろくぎんひだり鷺宮さぎのみや定跡じょうせきなどのときのような手順てじゅんすすめれば有利ゆうりとなる。
ごま なし
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こう  きむ   かつらこういち
  ぎんおうきむぎん  
  かつら  かくさん
   よん
        
    ろく
 たま ぎん  なな
 かくぎん きむ   はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
ごま なし
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こう  きむ   かつらこういち
  ぎんおうきむ   
  かつら ぎんかくさん
   よん
        
 ぎん  ろく
 たま    なな
 かくぎん きむ   はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
かくわせての右辺うへん攻撃こうげき
おもに4まい美濃みのがこいでのすじである。かい飛車ひしゃ以外いがい飛車ひしゃ場合ばあい先手せんてひだり美濃みので▲2よんどうどうかく後手ごてなら△8ろくどうどうかく)という代表だいひょうてきすじがある。相手あいてどうかくれば作戦さくせん成功せいこう。2まわっても3さんかくせいか2とするのが部分ぶぶんてき定跡じょうせきかい飛車ひしゃさいも、飛車ひしゃがわかくが3さん地点ちてんはなれて5などに進出しんしゅつした場合ばあいに、▲2よんから飛車ひしゃ交換こうかんせまかたしょうじる。
たいさんあいだ飛車ひしゃでの類型るいけいは、さんあいだ飛車ひしゃやぶり#ひだり美濃みのでのたいさんあいだ飛車ひしゃ参照さんしょう
5すじ位取くらいどかくがたとのわせ
だい2-1のように飛車ひしゃがわ藤井ふじいシステムの布陣ふじん場合ばあいに、後手ごて△4さんぎん(△6さんきんは▲3)▲5ろくぎん△6さんきん▲3ななかつらさきに▲7きゅうかくは△5よん~△5よんぎん~△6ぎん以下いかだい2-2からだい2-3のようにひだり美濃みのから5すじ位取くらいど布陣ふじんえるじゅんがあり、実際じっさいにアマチュア棋戦きせんでもられた。後手ごてだい2-2時点じてんで△5よんどう△4▲7ななかつら△5などの反撃はんげききたいが、ひだり美濃みのがわも▲7ななかつらえて▲5さんしげるどうかね▲4かつらもあり、以下いか△9きゅうかくなりに▲5さんかつらしげるなどのゆびしゅがある。以下いか△8はちこうには▲7ななぎん。したがって飛車ひしゃがわは7きゅうたまがたのままではやく△5から△5よんあいだわせる必要ひつようがある。
ごま なし
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こう おうきむ   かつらこういち
  ぎん きむぎん  
  かつら  かくさん
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 かくぎん きむ   はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
ごま なし
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こう  きむ   かつらこういち
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  かつらきむぎんかくさん
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 たま  かつら なな
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こうかつらかくきむ    こうきゅう
ごま 
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こう  きむ   かつらこういち
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  ぎん きむ   はち
こうかつら きむ    こうきゅう
腰掛こしかぎんみぎよんあいだ飛車ひしゃとのわせ
みぎよんあいだ飛車ひしゃ#たい飛車ひしゃみぎよんあいだ飛車ひしゃなど参照さんしょう
さんかくまたは四手よつでかく
はやくにかくどうじる展開てんかいになったさいに、▲7ななかく~▲5きゅうかく~▲2ろくかく(△3三角さんかく~△5一角いっかく~△8よんかく)のさんもしくは▲7きゅうかく~▲4ろくかく~3ななかく~▲2ろくかく(△3一角いっかく~△6よんかく~△7三角さんかく~△8よんかく)の四手よつでかくを▲2ろく(△8よん)にもっていき、4すじ後手ごて6すじ)から攻撃こうげきする。
ぎんかんむりたまあたま位取くらいど穴熊あなぐま変化へんかしての持久じきゅうせん
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こう ぎんきむ   はち
たまかつらきむぎん    きゅう
ひだり美濃みのからぎんかんむりかた#かこかたのとおり、バリエーションがいくつかある。きょ飛車ひしゃがわからはさらにひだりぎんかんむりよんまい)から▲9はちこう~9きゅうたま~8はちぎんひだりぎんかんむりさんまい)からは▲9はちこう~9きゅうたま~8はちきんといった、きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま進展しんてんするかたもある。
なお、ひだり美濃みのから穴熊あなぐまえる方式ほうしきのうち、かみ吉宏よしひろたかししたひだり美濃みの骨格こっかくくずさずに穴熊あなぐまむ「神吉かみよしりゅう」というものがある。これはのようにみぎぎんを▲5きゅう~▲6はち~▲7きゅう~▲8はち後手ごてなら△5いち~4~3いち~2)におさめるかたたたかいのタイミングをはかりながらすることで、きゅう開戦かいせんにも対応たいおう可能かのうというかた
ぎんかんむりとく飛車ひしゃ穴熊あなぐま対策たいさく主流しゅりゅうとなっている。飛車ひしゃ穴熊あなぐま#たいぎんかんむり参照さんしょう
2005ねんおこなわれたプロ編入へんにゅう試験しけん瀬川せかわ晶司しょうじたいかみ吉宏よしひろたかしせんでも事前じぜんよんあいだ飛車ひしゃ穴熊あなぐまもちいることを宣言せんげんしていた神吉かんきたいし、瀬川せかわひだり美濃みのからぎんかんむり作戦さくせんもちいた。
たい穴熊あなぐませんぎんかんむりではしばしば▲8(△2)とって角行かっこうを8ろく(△2よん)にかまえ、今度こんど相手あいて飛車ひしゃがわの5すじかくのにらみをかすかたもなされる。
さらに穴熊あなぐま相手あいてには内部ないぶリンクさきたまあたま位取くらいどこうたまあたま位取くらいどりvs穴熊あなぐまれい2のように、7すじ後手ごて3すじ)のをとってかんむり銀将ぎんしょうを4だんげる戦術せんじゅつもある。穴熊あなぐま相手あいてにタイミングによって、先手せんてで▲8よんどう▲8どう▲8よんから8ぎんなどのつぎといった上部じょうぶ制圧せいあつねらいや、6すじもとってかくを6ろく配置はいちし、穴熊あなぐまがわの9さん地点ちてんかせる、といったかたもなされる。

かくどうクローズひだり美濃みの[編集へんしゅう]

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こうかつら   きむおうかつらこういち
   きむ ぎんかく 
   さん
  ぎん    よん
       
  ぎん     ろく
かく なな
      たま はち
こうかつら きむ きむぎんかつらこうきゅう

強力きょうりょく先手せんてちゅう飛車ひしゃたいし、きょ飛車ひしゃ後手ごてならではの作戦さくせんかんがえるようになった。それがすみみちとっひだり美濃みのである。

きょ飛車ひしゃ先手せんて場合ばあい後手ごて態度たいどまえ初手しょて▲7ろくいていることがおおい。しかしながら後手ごてならさき相手あいて態度たいどることができるので、ちゅう飛車ひしゃ確定かくていしたら△3よんかずにすすめる。かくどうけなければ△5よん決戦けっせんさく効果こうか半減はんげんというわけで、こまみの基本きほん。3よんはタイミングをく。△1よん大事だいじなところで、場合ばあいによって△1さんかく使つかねらっている。では△7ってかくあたまねらうか、△7さんかつらこま活用かつようしていくか、後手ごてひだり美濃みの堅陣けんじんから先攻せんこう可能かのうである。

たいひだり美濃みの[編集へんしゅう]

Uターン飛車ひしゃ[編集へんしゅう]

持駒もちごま
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こう おうきむ   かつらこういち
 ぎん  
 ぎんかつらきむ かくさん
    よん
       
     ろく
 たま ぎんかつら なな
 かくぎん きむ    はち
こうかつら きむ    こうきゅう

天守閣てんしゅかく美濃みのたいしては、藤井ふじいシステムや先手せんて6すじ後手ごて4すじ位取くらいどがたほかに、のようなたまあたまめ、飛車ひしゃそくが、一度いちどった飛車ひしゃを2すじ(後手ごてなら8すじ)にもどしてきょ飛車ひしゃにしてたたかじゅんがあり、これをUターン飛車ひしゃという[4]

の△8以下いか、▲3よん△2かく▲4かつら飛車ひしゃよこきがなくなれば、△8どう△8ろくどうたま△7どう△9どうに△7よんぎん成立せいりつ。これを▲どうとすると、△8。こうした戦術せんじゅつ風車かざぐるま戦法せんぽうなどでの▲5きゅう~2きゅう(△5いち~8いち)や、ぎゃく飛車ひしゃがわ飛車ひしゃたいして地下鉄ちかてつ飛車ひしゃ仕掛しかけるかたなどがられる。

類似るいじ名称めいしょうで、そで飛車ひしゃのうち、一度いちどった飛車ひしゃから3すじ(後手ごてなら7すじ)にりなおすそで飛車ひしゃ#飛車ひしゃとしてのそで飛車ひしゃはUターンそで飛車ひしゃばれている。たい飛車ひしゃとくきょ飛車ひしゃぶねがこ急戦きゅうせんでは飛車ひしゃがわからみて3すじ(後手ごてなら7すじ)に王将おうしょうはいするため、たまあたま攻撃こうげきになり、飛車ひしゃがわからきょ飛車ひしゃよりも相手あいてだまちか攻撃こうげき可能かのうになる。

あいきょ飛車ひしゃでのひだり美濃みの[編集へんしゅう]

ひだり美濃みのはそもそも江戸えど時代じだい、17世紀せいきまつから18世紀せいき初頭しょとうに、あいきょ飛車ひしゃせん活用かつようされていたたまがたであった。とく後手ごてばん利用りようすることがおおく、△3三角さんかく角行かっこう位置いちをひとつあげて、たまを3いちから2入場にゅうじょうさせ、こう美濃みの[5]

最初さいしょが1695ねん先手せんてさんだい大橋おおはしはじめあずかたい後手ごてだい伊藤いとうはじめしるしせんでみられる。これは平手ひらてせんであり、当時とうじ次期じき名人めいじんあらそっていた二人ふたり対局たいきょくで、先手せんて雁木がんぎたいして後手ごてばんだいそうしるしひだり美濃みのかまえている。これが記録きろくじょうでははつひだり美濃みのとみられる。ただしこの場合ばあいひだり美濃みのは、相手あいてそで飛車ひしゃめに対応たいおうしてひだり美濃みのかまえたようで、がこいや戦法せんぽうとして確立かくりつしていたかはわからない。

18世紀せいきにはいってからは、1709ねんにはさんだい大橋おおはしはじめあずか先手せんて雁木がんぎたいし、後手ごてばん腰掛こしかけぎんと8よん飛型ひけいうわ飛車ひしゃとのわせでんでいる。昭和しょうわ以降いこうでは6飛型ひけいみぎよんあいだ飛車ひしゃでみられる戦型せんけいである。1736ねんには伊藤いとう寿ことぶきたいはちだい大橋おおはしそうかつらしろ将棋しょうぎで、先手せんて寿ことぶきひだり美濃みのに、後手ごてそうかつら矢倉やぐらかまえている。

1768ねんにはみぎちのしろ将棋しょうぎでもみられる。大橋おおはしはじめじゅんたいきゅうだい大橋おおはしそうかつらせんで、大橋おおはし分家ぶんけむねじゅんと、大橋おおはし本家ほんけ若者わかものであったしるし寿ことぶき、のちのきゅうだいそうかつら対局たいきょく下手へたむねじゅん矢倉やぐら模様もよう上手じょうずきゅうだいそうかつらは△5ちゅう飛車ひしゃにし、ぎゃく真部まなべりゅう4よんぎんがたにしている。このいちきょくそうかつら敗戦はいせんするが、同日どうじつしろ将棋しょうぎそうじゅんは、おこのきょくとして大井おおい中務なかつかさしょう輔ともみぎせん上手じょうずをもっていちきょく今度こんど下手へた大井おおい矢倉やぐら模様もよう上手じょうずそうかつらが△3三角さんかくがたひだり美濃みの採用さいようし、そのさい下手へた大井おおいの▲2よんどうどうかくに△2さんとし、以下いか▲3さんかくなりとしたので△どうたまと、1の先手せんてのようにおうじている。

後手ごて なし
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こうかつら   おう かつらこういち
  ぎんきむ きむかく 
   ぎんさん
      よん
        
    ろく
たまきむ   なな
  ぎん  ぎん  はち
こうかつらかくきむ   かつらこうきゅう

こうした18世紀せいきから19世紀せいき棋戦きせんで、矢倉やぐらひだり美濃みのちゅう飛車ひしゃわせは、矢倉やくらがこ1-8にある1811ねんしろ将棋しょうぎ平手ひらてせん後手ごてじゅうせい名人めいじんろくだい伊藤いとうはじめかまえでもみられる。当時とうじしょうきょ飛車ひしゃ将棋しょうぎは2つの銀将ぎんしょう中央ちゅうおうあつくする雁木がんぎがこ主流しゅりゅうであったが、3すじ・7すじねらそで飛車ひしゃ作戦さくせん出現しゅつげんしてからは3すじ・7すじ攻撃こうげき対応たいおうできる矢倉やぐらもちいられた。ただし矢倉やぐら雁木がんぎくら銀将ぎんしょう左右さゆう分断ぶんだんし、そのため中央ちゅうおううすいとみられ、矢倉やぐらにはちゅう飛車ひしゃにするのがこの当時とうじ対抗たいこうさくであった。そして7はちきんがたくらべ7はちぎんがたきょ飛車ひしゃは、相手あいてからのそで飛車ひしゃには7ななぎん矢倉やくら中央ちゅうおうねらいには6ななぎん雁木がんぎ、そして相手あいて矢倉やぐらには7はちぎんのままたまを7きゅう、8はちかまえてひだり美濃みのからちゅう飛車ひしゃと、当時とうじ戦型せんけい対応たいおう柔軟じゅうなん対応たいおうすることが可能かのうだったのである。そのしろ将棋しょうぎでも先手せんて(もしくは下手へた)は7はちぎんがたに、後手ごて(もしくは上手じょうず)は3ぎんがたかまえるあいきょ飛車ひしゃ将棋しょうぎがしばらくつづいていく。

ときくだって平成へいせい以降いこうひだり美濃みの矢倉やぐらせんでももちいられるようになっていく[6]

美濃みのがこいは矢倉やくらがこくらべて上部じょうぶからのめによわいが、よこからのめにはつよいので、飛車ひしゃりの手順てじゅんてきやすい戦型せんけいいてはもちいられ、かこ手数てかず矢倉やぐらよりすくないことをかして、応用おうようさせることが出来できる。

おもみぎよんあいだ飛車ひしゃがた急戦きゅうせん矢倉やぐらひだり美濃みの作戦さくせん後手ごてばん戦術せんじゅつの1つ)がもちいられている。速攻そっこうさく美濃みのがこい(3いちたまがた)からの先攻せんこう目指めざし、飛車ひしゃりの強襲きょうしゅうえられるよう、飛車ひしゃちにつよ美濃みのがこいにむ。またあい矢倉やぐら模様もようではこう美濃みのから、たまがこいの手数てかず美濃みのがこいよりすくないことを主張しゅちょうして、先攻せんこうするもの。またぎゃく相手あいて急戦きゅうせん矢倉やぐらめにたいしても通常つうじょう矢倉やぐらがこいにくらべて耐久たいきゅうせいがある。

かこさいにはかく先手せんてなら▲7ななかく(△3さんかく)としてたま入城にゅうじょうさせるほかに、だい1のようにぎゃくに▲7ななたま(△3さんたま)として入城にゅうじょうする手法しゅほうもあるが、相手あいてはやく△8-3一角いっかく(▲2-7きゅうかく)にされないように注意ちゅういして入城にゅうじょうする必要ひつようがある。この手順てじゅん以前いぜん田中たなか寅彦とらひこ後手ごてばん矢倉やぐらはやがこいとして△7さんぎんがたまたは△7ぎんがたぼうぎんとともに愛用あいようしていた。ぼうぎん攻撃こうげき態勢たいせいはやきづける反面はんめん、△5さんぎんがたくらべてて中央ちゅうおううすくなるため、素早すばや中央ちゅうおう戦局せんきょく展開てんかいされると矢倉やぐらはやがこいのかた、△3ぎんから△3さんぎん~4たま~3たまというはこびかたであると相手方あいてがた矢倉やぐらちゅう飛車ひしゃみぎよんあいだ飛車ひしゃきょかく急戦きゅうせんなどの速攻そっこうにはえられないが、そのまま美濃みの陣形じんけいならば弱体じゃくたいせず迎撃げいげき可能かのうであった。

後手ごて なし
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こうかつら    おうかつらこういち
     きむ  
 ぎん きむぎんさん
  かく  よん
      
  かく  ろく
 きむ ぎん  なな
 たまぎん     はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
後手ごて かくかく3
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こうかつら     かつらこういち
     おう  
    きむぎんさん
 ぎん  よん
     ぎん 
      ろく
 きむ    なな
 たまぎん     はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
後手ごて かくかく4
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こうかつら     かつら いち
     おう 
    きむ こうさん
 ぎん ぎんよん
        
      ろく
 きむ    なな
 たまぎん     はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう

だい2わきシステム類似るいじ局面きょくめんだい2-1より後手ごて△2たまならば▲6よんかくどうぎん▲4ろくぎんとし、△9よんならば▲3どう▲4一角いっかく△6▲3ぎん△3いちたま▲3かくしげるどうたま▲1よんどう▲1さんだい2-2)がある。だい2-2のような局面きょくめんではとくに△6きゅうかくかず、△4きゅうかくこんひときびしいにならない。以下いか△1さんどうこうならば▲2よんどうどうぎんどうぎんどう△2さん▲2はち△2よんぎん▲1だい2-3)などのじゅん展開てんかいされる。

きょかくひだり美濃みの急戦きゅうせん[編集へんしゅう]

矢倉やぐらながらくきょ飛車ひしゃ王道おうどう戦法せんぽうとして、タイトルせんふくおおくの対局たいきょくされていたが、2015ねんごろからコンピュータ将棋しょうぎ利用りようした研究けんきゅうにより、先手せんて矢倉やぐらには後手ごて速攻そっこう対応たいおうすることで先手せんてばんでの勝率しょうりつがりはじめ、しばらくはあまりされなくなっていく。その原因げんいんとしてげられるものに、ひだり美濃みのきょかく急戦きゅうせんをはじめとする急戦きゅうせん矢倉やぐら発展はってんがみられた。とくみぎよんあいだ飛車ひしゃとのわせはアマチュアあいだでは人気にんき急戦きゅうせん矢倉やぐらとなっていて非常ひじょう攻撃こうげきりょくたかく、愛好あいこうしゃおおくなっていた。

きょかく矢倉やぐらじんめるかたは、以前いぜんから先手せんて▲6ろく後手ごて△4よん)をはや矢倉やぐらかたたいしてきょかく腰掛こしかぎんみぎよんあいだ飛車ひしゃ・▲2保留ほりゅうがたというようなかまえでだい3-2のようなケースやだい3-3のように矢倉やぐらちゅう飛車ひしゃから先手せんて4すじ後手ごてなら6すじ)に飛車ひしゃって手法しゅほうがあった。

みぎよんあいだ飛車ひしゃ#たい矢倉やぐらみぎよんあいだ飛車ひしゃ参考さんこう

後手ごて なし
987654321 
こうかつら  おう  かつらこういち
   ぎんきむ きむ  
   ぎんさん
   かく  よん
        
   ぎん ろく
  かつら なな
 かくぎん きむ   はち
こうかつらたまきむ    こうきゅう
後手ごて なし
987654321 
こうかつら     かつらこういち
  ぎん かくきむおう 
   きむ  さん
  ぎんよん
       かつら 
   ぎんろく
    なな
 かくきむぎんきむ   はち
こうかつら たま    こうきゅう
後手ごて 2
987654321 
こうかつら   きむ かつらこういち
      おうかく 
   きむぎんさん
  ぎん   よん
        
   ぎん ろく
   かつら なな
 かくきむぎんきむ    はち
こうかつら たま  こうきゅう

たい矢倉やぐらきょかくひだり美濃みのたまを△3いち位置いち升田ますだ美濃みのばれるひだり美濃みのおさめ、おもには腰掛こしかぎんみぎよんあいだ飛車ひしゃかたちから速攻そっこう仕掛しかけるのがねらいであるが、場合ばあいによっては飛車ひしゃきょ飛車ひしゃ位置いちで4すじ後手ごてなら6すじ)からまず仕掛しかけ、タイミングを飛車ひしゃさきかたもある。きょかくひだり美濃みの矢倉やぐらむのにくらべてスムーズかつ升田ますだ美濃みの(▲7きゅうたまや△3いちたま位置いち)であっても5すじかないので9ななかくや1さんかくすじのラインから反撃はんげきされることもふせがれているなどが特徴とくちょうとなっており、とく先手せんて矢倉やぐらせんたいしての有力ゆうりょく手段しゅだんひとつとなっていく。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ つめまされにくいということ。6きゅうかねられてもまだ、めろ、すなわち、こちらのたまつぎむという場面ばめんいたらない場合ばあい比較的ひかくてきおおいとされる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 日本にっぽん将棋しょうぎ用語ようご事典じてん』(2004) pp.166-167
  2. ^ えた戦法せんぽうなぞ』p.62-p.68、『将棋しょうぎ基本きほん戦法せんぽう 飛車ひしゃへん』p.9、p.50-p.53
  3. ^ 天狗てんぐ太郎たろう将棋しょうぎ金言きんげんしゅう』(時事通信社じじつうしんしゃ)P.44
  4. ^ 将棋しょうぎ世界せかいSpecial 将棋しょうぎ戦法せんぽう事典じてん100+ 王道おうどう 流行りゅうこう ちん戦法せんぽう 完全かんぜん網羅もうら!』(マイナビ出版しゅっぱん)
  5. ^ 日本にっぽん将棋しょうぎ大系たいけいぜん15かん別冊べっさつ3かん筑摩書房ちくましょぼう、1978ねんから1980ねん(このふし全体ぜんたいについて)
  6. ^ 中田なかた宏樹ひろきたい矢倉やぐらひだり美濃みの作戦さくせん』(このふし全体ぜんたいについて)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 勝又かつまた清和きよかず2003ねん5月14にち、『えた戦法せんぽうなぞ文庫ぶんこばん毎日まいにちコミュニケーションズ ISBN 4-8399-1091-X
  • 中田なかた宏樹ひろき2012ねん、『たい矢倉やぐらひだり美濃みの作戦さくせん』、マイナビ
  • 原田はらだ泰夫やすお監修かんしゅう)、荒木あらき一郎いちろう (プロデュース)、森内もりうち俊之としゆきら(へん)、2004、『日本にっぽん将棋しょうぎ用語ようご事典じてん』、東京とうきょうどう出版しゅっぱん ISBN 4-490-10660-2
  • 森下もりしたたく1997ねん7がつ25にち、『将棋しょうぎ基本きほん戦法せんぽう 飛車ひしゃへん』、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい ISBN 4-8197-0334-X
  • 湯川ゆかわ博士はかせ、2005、『飛車ひしゃとう列伝れつでん』、毎日まいにちコミュニケーションズ ISBN 4-8399-1888-0

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]