ひねり飛車ひしゃ

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こうかつら きむおう ぎんかつらこういち
  ぎん   かく 
 きむさん
        よん
        
        ろく
 なな
 かくきむ   ぎん  はち
こうかつらぎん たまきむ かつらこうきゅう
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こうかつら きむ   かつらこういち
    ぎんおうかく 
 ぎんきむ  さん
    よん
        
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かく かつら  なな
  きむぎん たまぎん  はち
こう    きむ かつらこうきゅう

ひねり飛車ひしゃ(ひねりびしゃ、えい: Twisting Rook[1])は、将棋しょうぎ戦法せんぽうひとつ。たて(たてふどり)が別名べつめいとされていた時期じきもあった[2]。ヒネリ飛車ひしゃとも[3]江戸えど時代じだい末期まっき成立せいりつしたとされる。加藤かとう治郎じろうによれば、ふるくは戦法せんぽうめいを「児玉こだまぐみ」とばれていたという[4]近年きんねんではきょ飛車ひしゃあいかり戦法せんぽう一種いっしゅとして定跡じょうせきしょ登場とうじょうすることがおお[5]

概要がいよう[編集へんしゅう]

加藤かとう著書ちょしょとして執筆しっぴつした『将棋しょうぎ戦法せんぽうだい事典じてん』(大修館書店たいしゅうかんしょてん、1985ねん)によると、現在げんざいられるひねり飛車ひしゃは、純粋じゅんすい戦後せんごしん戦法せんぽうである「たてり」をもとに角田つのだ三男みつお開発かいはつした。戦前せんぜん修業しゅうぎょう時代じだいおく伝統でんとうてき将棋しょうぎかん支配しはいにあった角田つのだも「終戦しゅうせん直後ちょくごにある後援こうえんしゃがおこの対局たいきょくをしてくれまして、まあ気楽きらく将棋しょうぎだったので、おもいつきでやってみたら案外あんがい成功せいこうしたというわけです」「いちって石田いしだりゅうになればせるという発想はっそうですが、わかひとにあまりせっしてほしくないですな。矢倉やぐらあたりをじっくりしてからにしてほしいですな」とかたり、みずからのしん戦法せんぽう異端いたんてきなものとみている。▲7ろく石田いしだりゅう近似きんじするが、その石田いしだりゅう自体じたい当時とうじ異端いたんてきとされていた。

ながあいだ戦法せんぽうとしてみとめられず、田舎いなか将棋しょうぎさげすまれていたが、升田ますだ幸三こうぞうらが定跡じょうせき整理せいりして公式こうしきせん成果せいかげたため、一般いっぱん認知にんちされるようになった。

加藤かとう一二三ひふみによればこの戦法せんぽう利点りてん下記かきのとおりである[6]

  • 普通ふつう飛車ひしゃがまずけにまわるのにくらべ、まもりの負担ふたんがなく強力きょうりょくめをねらえる。
  • 自分じぶんだけが手持てもちにでき、相手あいてにしない。
  • 先手せんてひねり飛車ひしゃ飛車ひしゃかくぎんかつらあゆみ急戦きゅうせんねらうことができ、たままもりもたん手数てかず連絡れんらく陣形じんけい構築こうちくできる。
  • たいする後手ごては△7きん強要きょうようされだままもりがうすくなる。
  • 先手せんて飛車ひしゃかくてる強攻きょうこうさくることが可能かのう

観戦かんせん記者きしゃ横田よこたみのるもひねり飛車ひしゃ利点りてんをあげており、

こともげている[7]。▲3ろくしでは威力いりょくとぼしいから早晚そうばんうごくが、そんきら正統せいとうせいせつてき将棋しょうぎかんでは発想はっそうしにくく、なによりもかけないことがきらわれたにちがいないとしており、自由じゆうなあるいは革新かくしん雰囲気ふんいきがなければ、当人とうにんすうきょくためしただけでわってとてもおおくの追随ついずいしゃ獲得かくとくできなかったとしているが、おおくの追随ついずいしゃなか後述こうじゅつ丸田まるた祐三ゆうぞうによる丸田まるたりゅうによって、先手せんてかたのみちの作戦さくせん可能かのうになった。

数々かずかず利点りてんから一時期いちじき将棋しょうぎ先手せんて必勝ひっしょうほうがあるとすれば、これではないかと、一部いちぶかんがえられたほどの革新かくしんだった。

プロ棋士きし人気にんき戦法せんぽうだいさんになったこともある。[よう出典しゅってん]

おもとしては、先手せんてきょ飛車ひしゃ飛車ひしゃどうけたのちあいかりのかたちから交換こうかんし、後手ごての△3よんねらって、2ろくにいたうわ飛車ひしゃを3ろくる(もちろん後手ごてられないようにする)。このこうこの飛車ひしゃ左翼さよくへと転換てんかんする(これが「ひねり飛車ひしゃ」の由来ゆらい)。△3よんねらったそんになるようながするが、△3よんまもるには△3さんきむとすることになる(後手ごて悪形あくがたにされてかたがこいができなくなるので、2010年代ねんだい後半こうはんからは△8よん多用たようされるようになってきた。これまでは飛車ひしゃはたらきが不自由ふじゆうになるのでされなかった)。つまり、相手あいてひだりきんさんだんげて悪形あくがたにするのが▲3ろくだいいちねらいである。またこのときに後手ごてかくどうまるため、つぎ先手せんてが▲7ろくとしたときに後手ごては△8ろくかないと、▲7ななかくとされて先手せんてだけ飛車ひしゃさき交換こうかんとくになるとされていた、もしくは▲6はちぎん~7ななぎん~7~7ろくぎん~7ななかつら~▲8ぎん後手ごて飛車ひしゃさきをかすめとるじゅんされていた。

以降いこうは、△8ろくならば▲どうどうに▲7と、後手ごて飛車ひしゃ交換こうかんせまる、あるいは▲7ななかつらとして、つぎに▲8りをねらう、後手ごて飛車ひしゃさき交換こうかんをしてこないさい先手せんてから▲7~9ななかく~8ろくで、以下いか△8ろくどうどうとぶつけて飛車ひしゃ交換こうかんねらうのがだいねらい。このとき後手ごて飛車ひしゃさき交換こうかんをしない作戦さくせんは、先手せんてから▲8ろくからの交換こうかんのほうが、そんにならないからである。

後手ごてじん先手せんてじんくらべて飛車ひしゃみによわいため、通常つうじょう飛車ひしゃ交換こうかんけるが、そこから先手せんてひねり飛車ひしゃがわ作戦さくせんは、飛車ひしゃ圧迫あっぱくしてきゅうおさむねらいのある▲8ろく飛型ひけい石田いしだりゅうかたちにしてじっくりしたかたちにする▲7ろく飛型ひけい大別たいべつされる[8]

ひねり飛車ひしゃ対策たいさく発展はってん[編集へんしゅう]

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こうかつら きむおう ぎんかつらこういち
  ぎん  きむかく 
  さん
        よん
        
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 かくきむ   ぎん  はち
こうかつらぎん たまきむ かつらこうきゅう

ひねり飛車ひしゃ猛威もういるうなか後手ごて上記じょうき局面きょくめん打破だはするための対策たいさくてられた。まず対策たいさくされたのは△3よん省略しょうりゃくである。△3よんかなければ、△3さんきん悪形あくがたにする必要ひつようもなく、たまうすくならない。

このときに△3よんがなくとも3ろく飛車ひしゃってかくどうをあけさせないようにして、▲7ろくさいに△8ろく交換こうかん強要きょうようするかたもみられていく。これは、飛車ひしゃねこ、△3さんねずみたとえてネコしきたてばれた。ただし、かねさんだんげないので後手ごてがこいもかたくつくることができる。

1986ねんころからの塚田つかだスペシャル流行りゅうこうけ、1992ねんころにそれを応用おうようしたかたもみられた。[よう出典しゅってん] これは1すじ端歩はしふ▲1ろく・1よんがた+▲2ろく飛型ひけいさきにすることで(以前いぜん攻撃こうげき態勢たいせいの▲9ろくさきにしていた)、後手ごてが△6よんなどとすればすかさず▲2よんかたで、以下いかどうどう△6さんぎんなら▲1どう▲1よん仕掛しかけがしょうじる。以降いこう後手ごては▲2よんたれるのを警戒けいかいするかた主流しゅりゅうとなっていった。[よう出典しゅってん]再度さいどの▲2よん先手せんていちそこねさせる利点りてんはあるものの、それよりも▲2よんからの仕掛しかけがきびしいためである。本家ほんけ塚田つかだスペシャルは決定的けっていてき対抗たいこうさくてしまってすたれたが、ここにそれががれている。

しかしとにかく△3さんきん必要ひつようとなってたまかたかこえることとなり、先手せんて勝率しょうりつおさえられていったのはたしかである。[よう出典しゅってん]

1999ねん刊行かんこうされた深浦ふかうらやすしがこれまでの研究けんきゅうをまとめた『これが最前線さいぜんせんだ!』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ1999では、後手ごてが「たかく・たまかたく」をモットーにするのが最近さいきんのひねり飛車ひしゃ対策たいさくで、これにより先手せんてひねり飛車ひしゃがわ簡単かんたんてなくなったとしている。

しかしながら、それにたいして米長よねなが邦雄くにお考案こうあんした▲3ななぎん・5ななきんがたなどのさらなる対策たいさく考案こうあんされたため、依然いぜんとしておおされたようである。

それから20ねん加藤かとう一二三ひふみいちさん玉手箱たまてばこ』2019では、近年きんねんではプロ公式こうしきせんではほとんどなくなっている、プロであれば基本きほんっていて将棋しょうぎになるからだとしている[9]。ただし、2019ねん現在げんざいでもすくないながら実戦じっせんれいはあり若手わかて棋士きし島本しまもとあきら大橋おおはしたかこう独自どくじのひねり飛車ひしゃ考案こうあんしている(後述こうじゅつ)。また、かく従来じゅうらいはしかくから7きゅう~5なな転換てんかんし、ごまをいかして▲9から9すじはしからめるかたなども考案こうあんされて、従来じゅうらいとはちがかたこころみられている。

おもかた[編集へんしゅう]

先手せんて(ひねり飛車ひしゃ[編集へんしゅう]

角田つのだりゅう
角田つのだ三男みつお1-1aのようにすみみちけずに▲9ななかくはしかく)にかまえてから▲8ろくどう▲8ろくとぶつけるかたであった。この戦型せんけいの1982ねん6がつ 棋聖きせいせん予選よせん決勝けっしょうもり雞二vs.真部まなべ一男かずおせん先手せんてばんもり採用さいようして勝利しょうりし、挑戦ちょうせんけん獲得かくとく以降いこう棋聖きせい奪取だっしゅにつなげる。
先手せんて角田つのだ三男みつおたい後手ごて山中やまなか和正かずまさたたかえ 昭和しょうわ33年度ねんどCきゅう1くみ順位じゅんいせん
ごま なし
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こうかつら きむ おう かつらこういち
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かく   なな
  きむぎん  ぎん  はち
こうかつら  たまきむ かつらこうきゅう
先手せんてもりけいたい後手ごて真部まなべ一男かずおせん 昭和しょうわ57年度ねんど棋聖きせいせん予選よせん
ごま 
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こうかつら きむ おう かつらこういち
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 きむ さん
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  きむ   ぎん  はち
こうかつら  たまきむ かつらこうきゅう
丸田まるたりゅう
創始そうししゃ丸田まるた祐三ゆうぞう後手ごて飛車ひしゃさき交換こうかんしてきたとき、8すじたずに▲9ななかく丸田まるた新手あらて)とがり、2手持てもちにして主導しゅどうけんにぎかたである。△8きゅうなりには▲8八角はっかくでふたをして▲8ろくまわ構想こうそう
かつてはひねり飛車ひしゃにおける代表だいひょうてきかただったが、あいかりの新旧しんきゅう対抗たいこうがたされなくなったこともあり、従来じゅうらい6がっていたみぎぎんを7がり、9すじう、さらに飛車ひしゃさき交換こうかんをしてないなど、後手ごて対策たいさくすすんだため、現在げんざいでは上級じょうきゅうしゃ対戦たいせんではこの局面きょくめんけるかたになったが、定跡じょうせきしょなどでは現在げんざい掲載けいさいされている。
山田やまだ ごま 
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こうかつら きむおう ぎんかつらこういち
  ぎん   かく 
  きむ さん
      よん
        
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かく かつら なな
  きむ   ぎん  はち
こう ぎん たまきむ かつらこうきゅう
三枚さんまいどう ごま なし
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こうかつら きむ おう かつらこういち
    ぎんきむかく 
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かく かつら なな
  きむ  たまぎん  はち
こう ぎん  きむ かつらこうきゅう
後手ごてが△6ぎんではなく△7ぎんがたで▲9ろく-△9よんがたであると、丸田まるだりゅうの▲9ななかくでは、△9どう△8きゅうなり▲8ろく△9きゅうりゅうで、△7ぎんがたいてくる。したがって先手せんてかくはしまえに▲8としておくと、以下いか△6さんぎん▲7ろく△3よん▲6はちぎん△3いちたま▲3きゅうたまいちきょくとなる。
後手ごてかくどうまっている陣形じんけいならば▲8えて▲6ろくというもあり、これは6よんりをせて、△6さんぎん移動いどうさせてから▲9ななかくがる構想こうそうである。以下いか△9には▲どう△8きゅうなり▲8ろく△9きゅうりゅうに▲8いちなり△7ぎん▲9いちりゅうで△9ななりゅうには▲6さんこうがある。類似るいじ実践じっせんとして平成へいせい30ねんがつ新人しんじんおうせん、▲斎藤さいとうあきらにちvs△さんまいどう達也たつやせんがある。先手せんてのようにかまえ、以下いか△3よん▲8ろく△8よん▲6はちぎん△3いちたま▲3きゅうたま△7きん▲7ろく△5よんぎん▲7よんどう▲6よんかくめてひねり飛車ひしゃがわ快勝かいしょうしている。▲6ろくには△3よん▲6よん△8なな▲9ななかく△9▲7よん展開てんかいいちきょくである。
勝浦かつうらりゅう
創始そうししゃ勝浦かつうらおさむ勝浦かつうら別名べつめいから「カミソリりゅうひねり飛車ひしゃ」ともばれた。通常つうじょう石田いしだりゅうではひだりぎんを6なながって攻撃こうげき使つかうことがおおく、ひねり飛車ひしゃにおいてもそれが当然とうぜんされていたが、ぎんを5なながり場合ばあいによってはがこいのひとつとして利用りようしようというかた考案こうあんされ、一時いちじ流行りゅうこうした。ひねり飛車ひしゃたまうすさをおぎなうための工夫くふうである。とくにたこきん有効ゆうこうとされ、ひねり飛車ひしゃ持久じきゅう戦型せんけいとして定跡じょうせきとなっている。ただし攻撃こうげきりょく若干じゃっかんちるため、後手ごてにもみぎきん自由じゆう使つかわれてしまうことがわかり、ひねり飛車ひしゃ衰退すいたいから回復かいふくさせるまではいたらなかった。
7はちぎんがた(耀龍ひねり飛車ひしゃ
創始そうししゃ青野あおのあきらで、青野あおのりゅうともばれる。通常つうじょうあいかりの序盤じょばんではかくあたままもるために7はちにはかねがるが、はじめからひねり飛車ひしゃねらっている場合ばあいぎんを7はちがることもある。ひだりきん円滑えんかつに5はちっていけるてん長所ちょうしょである。
近年きんねんでは大橋おおはしたかこうが「耀龍(ようりゅう)ひねり飛車ひしゃ」と命名めいめいして工夫くふうした定跡じょうせき研究けんきゅうしている。
中原なかはら ごま なし
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こうかつら     かつらこういち
    ぎんおうかく 
きむぎんきむ  さん
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 ぎん  なな
 かくきむ   ぎんたま はち
こうかつら   きむ かつらこうきゅう
中原なかはら ごま なし
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こうかつら     かつらこういち
    ぎんおうかく 
 きむぎんきむ  さん
    よん
かつら       
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 かくきむ   ぎんたま はち
こう    きむ かつらこうきゅう
升田ますだしき
升田ますだ幸三こうぞう升田ますだしき石田いしだりゅうならんでおお採用さいようし、加藤かとう一二三ひふみ中原なかはらまことやぶった独特どくとくかたで、たま坊主ぼうず美濃みの(2ななのないかた美濃みのがこ)にかこい、飛車ひしゃを7ななにかまえるのが特色とくしょく
2-1は1970ねん7がつおこなわれたAきゅう順位じゅんいせんで、相手あいてはAきゅう1年生ねんせい中原なかはらまこと基本きほん2-1のように後手ごてぼうきんたいして先手せんて升田ますだは7ろく飛車ひしゃを▲7なないて対応たいおうする。このとき「升田ますだながれや、ひとにはおしえられん」とつぶやいたという。もし後手ごてがここで△4としても▲7ろくぎん△6ろくかく▲6なな△8八角やすみしげるどうかねで、かえって先手せんてがさばけるかたちとなる。実践じっせんでは2-2のように桂馬けいまを▲9ななかつら~▲8かつら活用かつよう局面きょくめんをリードする展開てんかいとなった。その後手ごてじんが△3さんかく-△5よんきんがたとなって先手せんては▲2よんどう▲2どうたま▲4一角いっかくから▲6さんかくなりなどの攻防こうぼうつづいた。
ごま なし
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こうかつらぎんきむおう ぎんかつらこういち
     きむかく 
  さん
        よん
       
        ろく
きむ なな
 かく      はち
こうかつらぎん たまきむぎんかつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつらぎんきむ おう かつらこういち
     きむぎん 
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きむ なな
 かく   たまぎん  はち
こうかつらぎん  きむ かつらこうきゅう
ごま なし
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こうかつらぎんきむ おう かつらこういち
    かくきむ  
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こうかつらぎん  きむたまかつらこうきゅう
7ななきんがた(きんとうん戦法せんぽう
▲8ろく飛型ひけい飛車ひしゃ交換こうかん強要きょうようさく実行じっこうするためにかねがる。飛車ひしゃかねうえにあるかたちになるので「きんとうん」。創始そうししゃ島本しまもとあきらであるが、『将棋しょうぎ戦法せんぽうだい事典じてん』(1985ねん)によると、このかまえは先手せんてたてせん模様もよう飛車ひしゃさき交換こうかんした従来じゅうらいのスタイルでも以前いぜんからある。また後手ごてかくわりなどを拒否きょひする3さんきん戦法せんぽうなども以前いぜんからあった。
かた3-1のとおり飛車ひしゃさき交換こうかんせずに飛車ひしゃをひねり、かねかく交換こうかん飛車ひしゃさき交換こうかんふせいで、3-2を3-3のようにかまえる。以下いか後手ごてが△8ろくどうかね△7いちきん▲8ななきんに△6きゅうには▲8ろくとし、以下いか△8さん▲7ななきん△5よん▲7ろくつぎにうちこまれた飛車ひしゃがめしることができる。かねうえっている飛車ひしゃが、フワフワと浮遊ふゆうするすじくもったまご悟空ごくうをイメージしている。島本しまもと著書ちょしょ戦慄せんりつの7ななきん!奇襲きしゅう・きんとうん戦法せんぽう』(マイナビ出版しゅっぱん)で解説かいせつしており、本人ほんにん公式こうしきせんすういちきょく採用さいようして、勝利しょうりしている。プロでも立派りっぱ通用つうようしている。
ごま かく
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こうかつらぎんきむおう ぎんかつらこういち
     きむ  
  さん
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かつら なな
  きむ     はち
こう ぎん たまきむぎんかつらこうきゅう
ごま かく
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こうかつら きむ   かつらこういち
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かく      ろく
かつら なな
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こう ぎん  きむたまかつらこうきゅう
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こうかつらおうきむ  ぎん こういち
  ぎん   きむ  
  かつらさん
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   かく  ろく
ぎんぎん  なな
 たまきむ   きむ はち
こうかつら     かつらこうきゅう
かく交換こうかんがた
のようにかくわり模様もようから△7ななかくなりを▲どうかつらり、飛車ひしゃいてかまえる。後手ごてみぎぎん位置いちがまえがのようにいていると升田ますだしき石田いしだりゅうのように▲9ろくかくとする。以下いか△9よんかくに▲8かつら△7きん▲8ろく△8さんかくであると▲7さんかつらしげるどうかつらに▲6三角みすみしげるどうかね▲7ぎん△7いちかつらどうぎんなり△8いち▲9かつら△7いち▲8さんなりがある。
また、後手ごてばん場合ばあい後手ごていちそんかくわり模様もようから1-3のような展開てんかいいちれい

その塚田つかだ泰明やすあき豊川とよかわ孝弘たかひろらが創始そうししたとおもわれるちょう急戦きゅうせんがたたまかこわない)もある。

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こうかつらぎんきむおう ぎんかつらこういち
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こうかつらぎん たまきむぎんかつらこうきゅう
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こうかつらぎんきむおう ぎんかつらこういち
      きむかく 
    さん
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後手ごてばんひねり飛車ひしゃ[編集へんしゅう]

ひねり飛車ひしゃ通常つうじょう先手せんてばんでの作戦さくせんであるが、後手ごてばんでひねるやりかたもある。

ひとつはよこ模様もようからの場合ばあいよこせんでもひねり飛車ひしゃができるのは通常つうじょう先手せんてかぎられるが、のようによこりにきたときに△3とするもの。 5-1の△3に、▲2ろくならば△8ろくどうどうで、▲8なな△8よん▲4はちぎん△3よん。▲2よんには△2どう△3さんかつら▲2ろく△2など。

には1982ねん3がつ先手せんて五十嵐いがらし豊一とよかず vs. 後手ごて田中たなか寅彦とらひこたたかえだい40順位じゅんいせん昇降しょうこうきゅうリーグ3くみ(Cきゅう1くみ)での手順てじゅんで、後手ごては△2さんたずに△1よんとして、以下いか▲2はち飛車ひしゃさき交換こうかん△8かまえて5-2の局面きょくめんから△3さんかつら~2~2よんとしてひねり飛車ひしゃにしている。田中たなかはその1988ねん棋聖きせいせんや2007ねんにももちいるなど、度々たびたびこの作戦さくせん復活ふっかつさせている。

後手ごてたいひねり飛車ひしゃ[編集へんしゅう]

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こうかつら きむ  ぎんかつらこういち
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 ぎん  さん
  きむ  よん
        
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かく かつら  なな
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こう    きむ かつらこうきゅう
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こうかつら きむ   かつらこういち
    ぎんきむおう 
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こう    きむたまかつらこうきゅう
たこきん
△3さんきん悪形あくがたなんとかしようとかんがされた。この「たこ」は(うみにいる「だこ」ではなく)そらかべる「たこ」である。この戦法せんぽうは、△3さんきん→△4よんきん→△5きんもしくは△5よんきんる。このかね威力いりょく先手せんてこまさえむことにある。かねを「たこ」のようにびたせ、△2かくの「ヒモ」をたよりにめていく戦法せんぽうである。そして5よんかねくことで、先手せんての6よんから7よん攻撃こうげきをケアしている。
ただし、たまうすくなるので現在げんざいではまったされていない。
考案こうあんしゃ升田ますだ幸三こうぞう命名めいめいしゃ加藤かとう治郎じろうとされている。ひねり飛車ひしゃ後手ごてばんは▲3ろくのタテりをられると、△3さんきんがってそんふせぐことになるが、このかね使つかいにくいのが難点なんてんだった。そこに打開だかいじゅん升田ますだ開発かいはつした。
カタがこい・きょ飛車ひしゃきん美濃みの
日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめいコラムにもある、△2たまがたたいひねり飛車ひしゃ対策たいさく陣形じんけい代表だいひょうかく。△2たま-3きん-4ぎん-△3三角さんかくがたかまえる。
また△3さんかく-3きんがたみ、たまを2までふかかこかたちから場合ばあいによってはひだりぎんみぎきんを4さんにもっていく「きむ美濃みの」、さらにみぎぎん利用りようして金銀きんぎん4まい堅陣けんじんとする。現在げんざい、ひねり飛車ひしゃ対策たいさくとしてもっとおおされている。
ひだり美濃みの穴熊あなぐま
やや変則へんそくてき手順てじゅんによることが必要ひつようであるが、ひだり美濃みの穴熊あなぐまかこ場合ばあいもある。

ひねり飛車ひしゃ得意とくいとした棋士きし[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Kawasaki, Tomohide (2013). HIDETCHI Japanese-English SHOGI Dictionary. Nekomado. p. 84. ISBN 9784905225089 
  2. ^ 末席まっせき幹事かんじ (2018ねん12月7にち). “ひねり飛車ひしゃ歴史れきし”. 将棋しょうぎペンクラブログ. 2019ねん9がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ 羽生はぶ善治よしはる羽生はぶ頭脳ずのうだい8かん最新さいしんのヒネリ飛車ひしゃ」など。
  4. ^ 加藤かとう治郎じろう復刻ふっこくばん 将棋しょうぎ公式こうしき東京とうきょう書店しょてん、2001。原著げんちょは1967ねん刊行かんこう
  5. ^ れいげれば近年きんねん定跡じょうせきしょのスタンダード、羽生はぶ善治よしはるの『羽生はぶ頭脳ずのうだい8かん最新さいしんのヒネリ飛車ひしゃ」では、あいかり腰掛こしかけぎんや3ななぎん戦法せんぽうおなまきあいかり戦法せんぽうひとつとしてひねり飛車ひしゃあつかっている。
  6. ^ 加藤かとう一二三ひふみいちさん玉手箱たまてばこだいしょう加藤かとう一二三ひふみのエッセイ」めとまもりP142。光文社こうぶんしゃ知恵ちえもり文庫ぶんこ、2019
  7. ^ 塚田つかだ泰明やすあき監修かんしゅう横田よこたみのるちょちょう急戦きゅうせんころしのテクニック』だいいちしょうしょうきょ飛車ひしゃへんP58。高橋たかはし書店しょてん、1988
  8. ^ 加藤かとう一二三ひふみいちさん玉手箱たまてばこだいしょう加藤かとう一二三ひふみのエッセイ 」めとまもりP143。光文社こうぶんしゃ知恵ちえもり文庫ぶんこ、2019。加藤かとうによればふるくは飛車ひしゃ交換こうかん主流しゅりゅうだったが、相手あいておうじなくなり▲7石田いしだりゅうがたえたという。深浦ふかうらやすし『これが最前線さいぜんせんだ!』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ1999では、▲8ろく飛型ひけいもよくあるが▲7はより無難ぶなんかただとしている。
  9. ^ 加藤かとう一二三ひふみいちさん玉手箱たまてばこだいしょう加藤かとう一二三ひふみのエッセイ」めとまもりP143。光文社こうぶんしゃ知恵ちえもり文庫ぶんこ、2019。

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