2手て目め△3二に飛ひ

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2手て目め3二に飛ひ（にてめ さんに ひ）は将棋しょうぎの戦法せんぽうの一ひとつ。三さん間あいだ飛車ひしゃの後手ごて番ばんが用もちいる指さし方かたで、先手せんての初手しょて▲7六ろく歩ほに対たいして△3二に飛ひと飛車ひしゃを振ふる。

戦法せんぽうの特徴とくちょう

△持もち駒ごま なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち             飛ひ 角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 三さん                   四よん                   五ご     歩ふ             六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく           飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず1 2手て目め△3二に飛ひの基本形きほんけい

△持もち駒ごま 角かく 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ   金きむ   桂かつら 香こう 一いち       王おう     飛ひ 銀ぎん   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん       角かく       歩ふ   五ご     歩ふ             六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな               飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま なし 図ず2 2手て目め△3二に飛ひ戦法せんぽうの進行しんこう例れい

先手せんてが初手しょて▲7六ろく歩ほとした後のち、後手ごてが石田いしだ流りゅうを目指めざした場合ばあい、従来じゅうらいは2手て目めで△3四よん歩ほとし、以降いこう▲2六ろく歩ほ、△3五ご歩ほと進すすむが、研究けんきゅうが進すすんだ結果けっか後手ごてが作戦さくせん負まけをすることが多おおかった。そこで後手ごてが2手て目めで3筋すじに飛車ひしゃを振ふり石田いしだ流りゅうを目指めざす指さし方かたが創案そうあんされた（図ず1）。以降いこう、▲2六ろく歩ほ、△6二に玉たま、▲2五ご歩ほ、△3四よん歩ほと進すすむ。その局面きょくめんで先手せんては▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎんの角かく交換こうかんから▲6五ご角かくと打うち（図ず2）馬うまを作つくることが可能かのうであり、従来じゅうらいはそれで後手ごて不利ふりとされていたが、研究けんきゅうの結果けっか、後手ごても指させることが分わかり、2手て目め3二に飛ひが新あらたな指さし方かたとしてプロに注目ちゅうもくされることとなった。

先手せんて側がわの対策たいさくとしては3手て目めに▲9六ろく歩ほと突つくというものがあり、△9四よん歩ほとの交換こうかんは後手ごて少すこし苦くるしいとの判断はんだんが定説ていせつである。後手ごてとしては先手せんてに▲9五ご歩ほと位いを取とらせることを許ゆるす展開てんかいとなる。また、3手て目めに▲7七なな角かくと指さし、相あい振ふり飛車ひしゃを目指めざす対策たいさくもある。久保くぼ利明としあきによると、2011年ねんの時点じてんで「先手せんてが簡単かんたんによくなる順じゅんはない」という。

歴史れきし

• 創案そうあん者しゃはアマチュアから三さん段だんリーグ編入へんにゅう試験しけんで関西かんさい奨励しょうれい会かいに編入へんにゅうした今泉いまいずみ健司けんじ。久保くぼ利明としあき経由けいゆで関東かんとうに伝つたわる。谷川たにがわ浩司こうじは研究けんきゅう会かいで久保くぼに指さされたことによりこの指さし方かたを知しったという。
• 実戦じっせんでは、長岡ながおか裕也ゆうやが2007年ねん12月11日にちの竜王りゅうおう戦せん6組くみで佐藤さとう天たかし彦を相手あいてに公式こうしき戦せんで初はじめて用もちいた（結果けっかは佐藤さとう天たかし彦の勝かち）。その後ご、久保くぼがA級きゅう順位じゅんい戦せんで、羽生はぶ善治よしはるが朝日あさひ杯はいの準決勝じゅんけっしょうで用もちいて注目ちゅうもくを集あつめた。この戦法せんぽうにより、今泉いまいずみは奨励しょうれい会員かいいんとして初はじめて第だい35回かい升田ますだ幸三こうぞう賞しょうを受賞じゅしょうした。2010年ねんの竜王りゅうおう戦せん決勝けっしょうトーナメントで久保くぼが丸山まるやま忠久ただひさ相手あいてに再度さいど試こころみて千日手せんにちて指さし直なおし。久保くぼが『久保くぼの石田いしだ流りゅう』で本戦ほんせん法ほうを取とり上あげた2011年ねん以降いこうも研究けんきゅう・実戦じっせん例れいは続つづいており、新手あらても現あらわれている。
• 2011年ねんの竜王りゅうおう戦せん１組くみで佐藤さとう康光やすみつが2手て目め△3二に飛ひから4手て目め△4二に銀ぎんとする新手あらてを見みせて木村きむら一基いっきに勝利しょうり。佐藤さとう康やすしは2018年ねんの竜王りゅうおう戦せん1組くみ・5位い決定けってい戦せん でも本戦ほんせん法ほうで糸谷いとたに哲郎てつろうに勝利しょうりしている 。2011年ねんのA級きゅう順位じゅんい戦せんでは谷川たにがわ浩司こうじが渡辺わたなべ明あきらを破やぶる。2012年ねんの王座おうざ戦せん第だい4局きょくでは羽生はぶ善治よしはるが渡辺わたなべ明あきらに採用さいようして千せん日にち手指しゅしし直なおしとなっている。
• 2015年ねんには土佐とさ浩司こうじが所司しょし和かず晴はるに採用さいようし勝利しょうり。2017年ねんには福崎ふくざき文吾ぶんご、菅井すがい竜也たつやが採用さいようしたが負まけている。宮本みやもと広志ひろしも島本しまもと亮あきらに採用さいようしたが、飛車ひしゃを自陣じじんに封ふうじ込こめられた状態じょうたいが続つづき、作戦さくせん負まけで敗勢はいせいになったが、終盤しゅうばんの先手せんてに見落みおとしがあり逆転ぎゃくてん勝がちした。
• 2018年ねんには安用やすもち寺てら孝こう功こうが南みなみ芳一よしかずに用もちいたが負まけている。 2019年ねんには鈴木すずき大介だいすけが、井上いのうえ慶太けいたに使用しようしている。

評価ひょうか

佐藤さとう康光やすみつは、2手て目め3二に飛ひは「論理ろんり的てきに不可能ふかのうだと思おもっていた」と発言はつげんしている。森内もりうち俊之としゆきは「コロンブスの卵たまご的てきな大おおきな発見はっけん」と評ひょうしている。

藤井ふじい猛たけしは「実じつはこの手ては昔むかし研究けんきゅうしたことがある。」と発言はつげんしている。藤井ふじいは△3二に飛ひに▲2六ろく歩ほ△6二に玉たま▲2五ご歩ほ△3四よん歩ほに▲4八はち銀ぎん△7二に玉たま▲6八はち玉たま△3五ご歩ほとなり石田いしだ流りゅうとなるなら有力ゆうりょくとしているが、先手せんてが初手しょて▲2六ろく歩ほとされると指させないとしている。

『イメージと読よみの将棋しょうぎ観かん』ではこの他ほか、谷川たにがわ浩司こうじは研究けんきゅう会かいで久保くぼ利明としあきに指さされたことがあり、そのときは△3二に飛ひに▲2六ろく歩ほ△6二に玉たま▲2五ご歩ほ△3四よん歩ほに▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲6五ご角かく△7四よん角かく▲4三角みすみ成しげる△4七なな角かく成なりとなり、結局けっきょくは後手ごてを手てをとがめられずに馬うまをつくりあって囲がこい合あいになったとし、こうして収おさまってしまえば先手せんて不満ふまんという気きと、ほかの公式こうしき戦せんもみて、感心かんしんしたという。渡辺わたなべ明あきらは石田いしだ流りゅうに組くませても一いち局きょくの将棋しょうぎで、居きょ飛車ひしゃが角かく道どうを止とめる必要ひつようがないのでその1手てを指ささなくてすむとするが、△3二に飛ひに▲2六ろく歩ほ△6二に玉たま▲2五ご歩ほ△3四よん歩ほのときに▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲6五ご角かく△7四よん角かく▲4三角みすみ成しげる△4七なな角かく成しげる▲5八はち金きん右みぎ△7四よん馬うまを決行けっこうするかどうかは結構けっこう悩なやむといい、藤井ふじい猛たけしもこの順じゅんで意外いがいと難むずかしい将棋しょうぎとしている。また2008年ねんの王位おうい戦せんで羽生はぶ善治よしはるが実際じっさいに採用さいようし、2008年ねん8月がつまでにプロ公式こうしき戦せんでの採用さいよう数すう13局きょくのうち後手ごての5勝しょう7敗はい1千日手せんにちてという結果けっかになっているとしている。

初手しょて7八はち飛ひ戦法せんぽう

「角かく交換こうかん振ぶり飛車ひしゃ#初手しょて7八はち飛ひ（△3二に飛ひ）角すみ交換こうかん型がた」も参照さんしょう

• 初手しょて7八はち飛ひ戦法せんぽうは久保くぼ利明としあきが第だい66期き（2016年度ねんど）王将おうしょう戦せんの七なな番ばん勝負しょうぶで、郷田ごうだ真しん隆たかし王将おうしょうとの対局たいきょくで試こころみ勝利しょうりした。久保くぼは第だい76期き（2017年度ねんど）Ａ級きゅう順位じゅんい戦せん11回戦かいせんでも、深浦ふかうら康やすし市し九きゅう段だんとの対局たいきょくで採用さいようしたが敗やぶれている。また、第だい68期き（2018年度ねんど）王将おうしょう戦せんの七なな番ばん勝負しょうぶでも渡辺わたなべ明あきらに用もちいたが、左ひだり玉だまに構かまえ右みぎ四よん間あいだ飛車ひしゃに振ふり直なおし、陽動ようどう居きょ飛車ひしゃのような構想こうそうを見みせた。
• プロ棋士きしで最初さいしょに採用さいようしたのは真部まなべ一男かずおとされる。それ以外いがいには、銀河ぎんが戦せんなどで土佐とさ浩司こうじが採用さいようし勝利しょうり（次つぎに▲7六ろく歩ほから▲7七なな飛ひとして8筋すじを受うける、または▲7七なな角かくとした後のちに▲5九きゅう角かくと最さい下段げだんまで引ひき、早はや石田いしだに進すすめる場合ばあいが多おおい）、新人しんじん王おう戦せんで青嶋あおしま未来みらいが採用さいようしている。
• 2017年度ねんどは、山本やまもと博志ひろし（当時とうじ三さん段だん）、王座おうざ戦せんで菅井すがい竜也たつや、朝日あさひ杯はいで竹内たけうち雄つよし悟さとるが試こころみている。
• 門倉かどくら啓あきら太ふとしも度々たびたび採用さいようしており（▲7七なな桂かつらから▲8五ご桂かつらと跳はねる順じゅんを得意とくいとする）、「猫ねこだまし戦法せんぽう（初手しょての革命かくめい　7八はち飛ひ戦法せんぽう）」として「将棋しょうぎ世界せかい」2013年ねん10月がつ号ごうで解説かいせつしている。近年きんねんでは、西田にしだ拓也たくやや古こ森もり悠太ゆうたが用もちいることが多おおく、西田にしだは棋聖きせい戦せんはじめ10局きょく以上いじょう（1千日手せんにちて）、古森こうもりも竜王りゅうおう戦せんはじめ15局きょくを超こす実践じっせん例れいがある。
• 2018年ねんには里見さとみ香奈かなが島本しまもと亮あきらに使用しよう、佐々木ささき慎まことが三さん枚まい堂どう達也たつやに使用しようしたがどちらも負まけ。佐々木ささきも本戦ほんせん法ほうの採用さいようが多おおい棋士きしであり、テレビ棋戦きせんでも視聴しちょう者しゃに披露ひろうしている。村田むらた顕あらわ弘ひろしにも数すう回かいの実践じっせん例れいがある。
• 2019年ねんには西山にしやま朋とも佳けいが、本戦ほんせん法ほうを奨励しょうれい会かいでよく使つかった山本やまもと博志ひろしに対たいし使用しようしたが負まけている。山本やまもと博志ひろし自身じしんも、三枚さんまい堂どう達也たつやなどに対たいして使用しようしている。西山にしやまは2020年度ねんども複数ふくすうの男性だんせい棋士きしを相手あいてに度々たびたび試こころみている。
• 2021年ねんには桐山きりやま清澄きよすみが負まければ引退いんたいという大だい一番いちばんに本戦ほんせん法ほうを採用さいよう、中盤ちゅうばんまでは互角ごかくだったが攻せめ合あい勝かちで最低さいていでもあと1年ねんの現役げんえき続行ぞっこうを勝かち取とった。

関連かんれん項目こうもく

• 将棋しょうぎの戦法せんぽう
• 三さん間あいだ飛車ひしゃ

参考さんこう文献ぶんけん

• 将棋しょうぎ世界せかい2008年ねん4月がつ号ごう
• 長岡ながおか裕也ゆうや『2手て目めの革新かくしん　3二に飛車ひしゃ戦法せんぽう』（毎日まいにちコミュニケーションズ、2008年ねん）
• 鈴木すずき宏彦ひろひこ『イメージと読よみの将棋しょうぎ観かん』（日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい、2008年ねん）
• 先崎まっさき学がく・北尾きたおまどか『先崎まっさき学がくのすぐわかる現代げんだい将棋しょうぎ』（日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、2010年ねん）
• 佐藤さとう康光やすみつ『佐藤さとう康光やすみつの石田いしだ流りゅう破やぶり』（日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい、2010年ねん）
• 久保くぼ利明としあき『久保くぼの石田いしだ流りゅう』（日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい、2011年ねん）