英えい春はる流りゅう

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英えい春はる流りゅう（えいしゅんりゅう）は、アマチュアの鈴木すずき英えい春はるが開発かいはつした将棋しょうぎの戦法せんぽうである「かまいたち戦法せんぽう」（「19手て定跡じょうせき」ほか）および「カメレオン戦法せんぽう」の総称そうしょう。近年きんねんではこれに英えい春はる流りゅうの「右みぎ四よん間あいだ」「陽動ようどう振ふり飛車ひしゃ」が開発かいはつされている。

かまいたち戦法せんぽう

先手せんて番ばんでは初手しょて▲7六ろく歩ほもしくは端歩はしふ突とっきの出でだしから、中ちゅう飛車ひしゃや三さん間あいだ飛車ひしゃなどを除のぞいては基本きほん的てきには相手あいての戦術せんじゅつによらず▲4八はち銀ぎん～▲5六ろく歩ほ～▲5七なな銀ぎんと右みぎの銀ぎんを中央ちゅうおうに進出しんしゅつさせるのが基本きほんの構かまえとなっており（中ちゅう飛車ひしゃと三さん間あいだ飛車ひしゃに対たいしては▲4八はち銀ぎん以下いか、飛ひ先さき不ふ突とっき型がたでの一直線いっちょくせんの右みぎ四よん間あいだ飛車ひしゃに組くむ形かたちで対抗たいこうする）、振ふり飛車ひしゃに対たいしては5筋すじ位取くらいどり、居きょ飛車ひしゃに対たいしては菊水きくすい矢倉やぐらに組くむ戦術せんじゅつを取とる。後手ごて番ばんでは初手しょて△6二に銀ぎんの出でだしから角かく道どうを開あけないまま駒こま組ぐみを進すすめ、対たい居きょ飛車ひしゃでは△5四よん歩ほと突ついた際さいに▲2四よん歩ほから飛車ひしゃ先さきを切きられた場合ばあいは、そのタイミングで△3四よん歩ほと突つく。コンピューター評価ひょうか値ちでは、英えい春はる流りゅうの初手しょては疑問ぎもん手しゅと評価ひょうかされている。

『イメージと読よみの将棋しょうぎ観かん』（2010年ねん、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい）によると、2手て目めの△6二に銀ぎんは平成へいせい以降いこうから2008年ねんまでの公式こうしき戦せんで通算つうさん21局きょく指さされて先手せんての11勝しょう10敗はいと、五ご分ぶんの成績せいせきだという。その中なかでも1994年ねんの竜王りゅうおう戦せん1組くみ出場しゅつじょう者しゃ決定けってい戦せんで、羽生はぶ善治よしはるが谷川たにがわ浩司こうじに対たいして指さし、勝利しょうりした一いち局きょくが有名ゆうめいである。同書どうしょで6名めいの棋士きしの見解けんかいは、居きょ飛車ひしゃであれば先手せんてだけ飛車ひしゃ先さきを交換こうかんできるなど後手ごての手順てじゅんを咎とがめられるが、振ふり飛車ひしゃでは咎とがめられず、そのため藤井ふじい猛たけしは振ふり飛車ひしゃ党とうに対たいして居きょ飛車ひしゃにしてみろという挑発ちょうはつだとしている。実際じっさい三浦みうら弘行ひろゆきに指さされて▲2六ろく歩ほと指さして負まけて相手あいての術中じゅっちゅうにはまったという。谷川たにがわ浩司こうじは2手て目めの△6二に銀ぎんは2手て目め△9四よん歩ほや△1四よん歩ほよりも先手せんてが有利ゆうりとしている。

『必殺ひっさつ!かまいたち戦法せんぽう―英えい春はる流りゅうのすべて 』(三さん一いち将棋しょうぎシリーズ、三さん一いち書房しょぼう　1988年ねん）によると、鈴木すずきがこの戦法せんぽうを開発かいはつしたのは奨励しょうれい会かい時代じだいに出会であった禅ぜんの修行しゅぎょうがきっかけと語かたっており、禅ぜん寺てらでの修行しゅぎょう時じに師しの則のり竹ちく秀しゅう南みなみに「禅ぜんのことを知しるためにはどの本ほんを読よめばよいか」と聞きいたところ、「（山田やまだ無文むもんの「真理しんりの言葉ことば」を指さして）この本ほんだけを読よめばよい」と告つげられた事ことを端はしに、将棋しょうぎにおいても「この戦法せんぽうだけでよい」と言いい切きれる総合そうごう戦法せんぽうを編あみ出だすべく考案こうあんされた。

年齢ねんれい制限せいげんによる奨励しょうれい会かいの退会たいかい後ごに大だいよその骨子こっしが完成かんせいしたこの戦法せんぽうを用もちいてアマ棋戦きせんに出場しゅつじょうし、1986年ねんと87年ねんにはアマ王将おうしょうのタイトルを連覇れんぱした。

対たい居きょ飛車ひしゃ

『必殺ひっさつ!19手て定跡じょうせき―英えい春はる流りゅう「かまいたち」戦法せんぽう〈居きょ飛車ひしゃ編へん〉』 (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ、三さん一いち書房しょぼう　1990年ねん）によると、基本きほん戦術せんじゅつは右みぎ図ずに示しめす3パターンで、いずれも19手てで基本きほん図ずまでたどり着つくので「19手て定跡じょうせき」と呼よばれる。

△持もち駒ごま　桂かつら香かおり歩ふ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ   馬うま 香こう 一いち                   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん         桂かつら         五ご     歩ふ   歩ふ         六ろく 歩ふ     歩ふ 銀ぎん 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな               飛ひ   八はち 馬うま 龍りゅう 銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま　銀ぎん歩ふ 基本きほん図ず1 - 一直線いっちょくせん型がた

△持もち駒ごま　角すみ歩あゆみ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう 金きむ     香こう 一いち   飛ひ 銀ぎん         銀ぎん   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら 歩ふ 歩ふ 三さん   歩ふ         歩ふ     四よん                   五ご     歩ふ   歩ふ         六ろく 歩ふ   角かく 歩ふ 銀ぎん 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   飛ひ         金きむ     八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 玉たま     桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま　なし 基本きほん図ず2 - 左右さゆう分裂ぶんれつ型がた

先手せんて番ばんでは初手しょて▲7六ろく歩ほの出でだしから▲4八はち銀ぎん～▲5六ろく歩ほ～▲5七なな銀ぎんと銀ぎんを中央ちゅうおうに進出しんしゅつし、その間あいだに後手ごてが△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふ△同どう飛ひと飛車ひしゃ先さきを切きってきた場合ばあいには、後手ごての角かく道どうが開ひらいている場合ばあいは▲2二に角かく成しげる△同どう銀ぎん▲7七なな角かくで、△8九きゅう飛ひ成なりならば▲2二に角かく成なり。以下いかの予想よそうされる手順てじゅんは△3三さん角かくに▲2一いち馬うま△9九きゅう角かく成しげる▲5五ご桂かつら（基本きほん図ず1、一直線いっちょくせん型がた）、△8九きゅう飛ひ成なりに変かえて△8二に飛ひなら▲8四よん歩ほとし、以下いかの予想よそうされる手順てじゅんは△3三さん桂かつら▲8八はち飛ひ△7二に銀ぎん▲3八はち金きん（基本きほん図ず2、左右さゆう分裂ぶんれつ型がた）、開ひらいていない場合ばあいには▲7八はち金きんから、通常つうじょう通どおりの駒こま組ぐみを進すすめていずれも不利ふりになることはないとされる。

△持もち駒ごま　歩ふ三さん 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ           角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 三さん         歩ふ         四よん         歩ふ         五ご       角かく           六ろく 歩ふ     歩ふ 銀ぎん 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   銀ぎん 金きむ         飛ひ   八はち 香こう 桂かつら     玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま　なし 基本きほん図ず3-1 - 横よこ歩ふとらせ型がた

△持もち駒ごま　歩ふ 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう   銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ   銀ぎん     金きむ 角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ     歩ふ 三さん         歩ふ   歩ふ 飛ひ   四よん                   五ご                   六ろく 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   角かく               八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 玉たま 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 九きゅう ▲持もち駒ごま　歩ふ 基本きほん図ず3-2 - 後手ごて番ばんの例れい

なお、手順てじゅん中ちゅう▲7八はち金きんに後手ごてが△7六ろく飛ひと横よこ歩ふを取とってきたら、▲6六ろく角かくと出でておき、以下いか△8六ろく飛ひ▲8八はち銀ぎん△8二に飛ひ▲5七なな銀ぎんとして5筋すじの位いを取とりに行いく。以下いか後手ごてが△5四よん歩ほと位取くらいどりを阻止そししてきたらそこで▲5五ご歩ほとし、以下いか△同どう歩ふに▲5四よん歩ほとして、中央ちゅうおう制圧せいあつしていく（基本きほん図ず3-1、横よこ歩ふ取とらせ型がた）。

後手ごて番ばんの際さいは角かく道どうを開あけずに飛車ひしゃ先さきを切きらして駒こま組ぐみを進すすめる。銀ぎんを上あがるために△5四よん歩ほと突ついた際さいに▲2四よん歩ほからまた飛車ひしゃ先さきの歩ふを合あわせてきて5四よんの歩ふを取とりに来きた場合ばあい、そのタイミングで△3四よん歩ほと突つく。以下いか3四よんの横よこ歩ふをとってきた場合ばあいは横よこ歩ふ取とらせ型がたとなるが、いずれにせよ後手ごて番ばんながら手て得とくとなって駒こま組ぐみを進すすめられる（基本きほん図ず3-2）。

これらの戦術せんじゅつのルーツは、一直線いっちょくせん型がたと左右さゆう分裂ぶんれつ型がたが木村きむら義雄よしお十じゅう四よん世せい名人めいじん著ちょ『将棋しょうぎ大観たいかん（上うえ）』平手ひらて編へんの相あい懸かか戦せんに出でてくる手順てじゅんで、横よこ歩ふ取とらせ型がたは二に枚まい落おち上手じょうずの▲3四よん歩ほを誘さそっての△5五ご歩ほ止とめ戦法せんぽうにあるという。

　

9	8	7	6	5	4	3	2	1
									一いち
									二に
									三さん
									四よん
									五ご
		歩ふ		歩ふ					六ろく
歩ふ	歩ふ	角かく	歩ふ	銀ぎん	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	七なな
	銀ぎん	金きむ		金きむ			飛ひ		八はち
香こう	桂かつら		玉たま				桂かつら	香こう	九きゅう

　
基本きほん図ず4

穏おだやかに駒こま組ぐみを進すすめた場合ばあいは飛車ひしゃ先さきは受うけずに▲6九きゅう玉たま型がたの菊水きくすい矢倉やぐらに組くみ（基本きほん図ず4）、以下いか相手あいての指さし手てによってはミレニアム囲がこいや銀ぎん冠かんむりに組くみ替かえる場合ばあいもある。

対たい振ふり飛車ひしゃ

9 8 7 6 5 4 3 2 1                     一いち                   二に                   三さん                   四よん       銀ぎん           五ご     歩ふ 銀ぎん 飛ひ         六ろく 歩ふ 歩ふ 角かく 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな     玉たま 金きむ           八はち 香こう 桂かつら   金きむ       桂かつら 香こう 九きゅう 基本きほん図ず1

9 8 7 6 5 4 3 2 1                     一いち                   二に                   三さん                   四よん       銀ぎん 歩ふ         五ご     歩ふ             六ろく 歩ふ 歩ふ 角かく 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな     玉たま   飛ひ         八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ   金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう 基本きほん図ず1-2

早はやい段階だんかいで5筋すじの位いを取とり右みぎ銀ぎんを▲5六ろく銀ぎん～▲6五ご銀ぎんと進すすめ、飛車ひしゃを5筋すじに展開てんかいする。先手せんてはこの後のち▲5六ろく飛ひと浮ういて4段だん目めをカバーし、左ひだり銀ぎんを6六ろくに、右みぎ金きんを6八はちに移動いどうする。縦たてに長ながい構かまえであり、相手あいての囲がこいの発展はってんを抑おさえている。また穴熊あなぐまなど持久じきゅう戦せんの際さいは英えい春はる流りゅう側がわも穴熊あなぐまにして攻撃こうげきするバリエーションがある。

対たい三さん間あいだ飛車ひしゃや対たい中ちゅう飛車ひしゃに関かんしては、『必殺ひっさつ!かまいたち戦法せんぽう―英えい春はる流りゅうのすべて 』(三さん一いち将棋しょうぎシリーズ、三さん一いち書房しょぼう　1988年ねん）や、『必殺ひっさつ!右みぎ四よん間あいだ―英えい春はる流りゅう「かまいたち」戦法せんぽう〈完結かんけつ編へん〉』 (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ、三さん一いち書房しょぼう　1991年ねん）によると、基本きほん図ず1のような陣形じんけいで仕掛しかける。

9 8 7 6 5 4 3 2 1                     一いち                   二に                   三さん                   四よん                   五ご     歩ふ   銀ぎん 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 六ろく 歩ふ 歩ふ 角かく 歩ふ 歩ふ   桂かつら     七なな   銀ぎん 玉たま   金きむ 飛ひ       八はち 香こう 桂かつら   金きむ         香こう 九きゅう 基本きほん図ず2

9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ       桂かつら 香こう 一いち       王おう 飛ひ   金きむ 角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   銀ぎん   歩ふ 歩ふ 三さん         歩ふ 歩ふ 歩ふ     四よん           歩ふ       五ご     歩ふ   銀ぎん         六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく 玉たま     飛ひ       八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ   金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう 対たい中ちゅう飛車ひしゃの例れい

9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ   金きむ   桂かつら 香こう 一いち   王おう 銀ぎん       飛ひ 角かく   二に 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 銀ぎん   歩ふ 歩ふ 三さん           歩ふ 歩ふ     四よん           歩ふ       五ご     歩ふ   銀ぎん         六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 七なな   角かく 玉たま 銀ぎん   飛ひ       八はち 香こう 桂かつら   金きむ   金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう 対たい三さん間あいだ飛車ひしゃの例れい

また、基本きほん図ず2のように組くむ基本きほん的てきに振ふり飛車ひしゃ居きょ飛車ひしゃ問とわず相手あいてすることができる戦法せんぽうもあり、対たい中ちゅう飛車ひしゃや対たい三さん間あいだ飛車ひしゃにはこれを応用おうようする。ポイントは対たい居きょ飛車ひしゃでは左ひだり銀ぎんを8八はちに配備はいびする点てんで、これは相手あいてが角かく交換こうかんを求もとめてきたときにそれを避さけ、その際さい銀ぎんを7七ななから6六ろくへ上あがって活用かつようする余地よちを残のこしている。その後ご、8六ろくの歩ふを8四よんまで配置はいちし、８筋すじ逆襲ぎゃくしゅうをする戦術せんじゅつとなっている。

つくつくぼうし戦法せんぽう

△上手じょうず なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ   桂かつら   一いち             銀ぎん     二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ   角かく 歩ふ 歩ふ 三さん   飛ひ               四よん   歩ふ       歩ふ 歩ふ 歩ふ   五ご     歩ふ             六ろく 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   銀ぎん 金きむ 角かく   銀ぎん   飛ひ   八はち 香こう 桂かつら     玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲下手へた なし

△鈴木すずき なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ   桂かつら 香こう 一いち               角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 銀ぎん   歩ふ 歩ふ 三さん             飛ひ     四よん   歩ふ       歩ふ 歩ふ 歩ふ   五ご     歩ふ   歩ふ         六ろく 歩ふ 歩ふ 銀ぎん 歩ふ   歩ふ 歩ふ   歩ふ 七なな   角かく 金きむ   金きむ 銀ぎん   飛ひ   八はち 香こう 桂かつら   玉たま       桂かつら 香こう 九きゅう ▲野山のやま なし

飛車ひしゃ先さきの歩ふを伸のばした後のちに、加くわえてつくつくぼうし側がわから見みて6筋すじ・7筋すじの歩ふを5段だん目めまで伸のばし、そこから6段だん目めに飛車ひしゃを浮ういて横よこに振ふり石田いしだ流りゅうに構かまえるひねり飛車ひしゃと似にたような発想はっそうの戦法せんぽう。セミのツクツクボウシとは関係かんけいなく、歩ふをいくつも突つく事ことから命名めいめいされた。元もとは鈴木すずきが奨励しょうれい会かい時代じだいに左ひだり香が落おち上手じょうずで用もちいていた指さし方かたを平手ひらてに応用おうようした指さし方かたで、野山のやま知ち敬けいとの朝日あさひアマ名人めいじん戦せん決勝けっしょうでも用もちいている。

カメレオン戦法せんぽう

カメレオンという戦法せんぽうは『島しまノート』で紹介しょうかいされているが、実じつはカメレオンには英えい春はる流りゅうのカメレオンもある。

△後手ごて　なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら 銀ぎん 金きむ 王おう 金きむ 銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ           角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん             歩ふ     四よん   歩ふ               五ご 歩ふ           歩ふ     六ろく   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 七なな   角かく 金きむ     銀ぎん   飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん   玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲先手せんて　なし 図ず1　英えい春はる流りゅうカメレオン

△後手ごて　歩ふ2 9 8 7 6 5 4 3 2 1   香こう 桂かつら   金きむ 王おう   銀ぎん 桂かつら 香こう 一いち   飛ひ   銀ぎん     金きむ 角かく   二に 歩ふ   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 三さん                   四よん             銀ぎん     五ご 歩ふ                 六ろく   歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ 歩ふ   歩ふ 歩ふ 七なな   角かく 金きむ         飛ひ   八はち 香こう 桂かつら 銀ぎん   玉たま 金きむ   桂かつら 香こう 九きゅう ▲先手せんて　歩ふ 図ず2　英えい春はる流りゅうカメレオン

『英えい春はる流りゅう　かまいたち＆カメレオン戦法せんぽう』 (マイナビ将棋しょうぎBOOKS、2019年ねん）によると、これは鈴木すずきが後年こうねん新あらたに開発かいはつした総合そうごう戦法せんぽうであり、守まもりに軸じくを置おくかまいたち戦法せんぽうに対たいし攻せめに主体しゅたいを置おいた戦法せんぽう。先手せんて番ばんでは初手しょて▲9六ろく歩ほ或あるいは▲4八はち銀ぎん、後手ごて番ばんであれば2手て目めはかまいたち戦法せんぽうと同様どうように△6二に銀ぎんと上あがり、以下いか▲3六ろく歩ほ～▲3七なな銀ぎんと右みぎ銀ぎんを3七ななに進出しんしゅつさせる。

2018年ねんの段階だんかいのコンピューター将棋しょうぎの評価ひょうか値ちによれば、カメレオン戦法せんぽうの初手しょてである▲9六ろく歩ほは疑問ぎもん手しゅと評価ひょうかされている。ただし鈴木すずきは上記じょうきの著書ちょしょでも書かいているが、このカメレオンは角かく道どうを開あけない戦法せんぽうであるので、初手しょて▲7六ろく歩ほであるかまいたちと違ちがい、後手ごて番ばんを想定そうていしてつくっている。したがって▲9六ろく歩ほは、先手せんて番ばんでもカメレオンを行おこなうならばの初手しょてとなっている。

△ 持もち駒ごま　なし

9	8	7	6	5	4	3	2	1
香こう	桂かつら		金きむ				桂かつら	香こう	一いち
	王おう	銀ぎん		金きむ		飛ひ			二に
	歩ふ				銀ぎん	角かく	歩ふ		三さん
歩ふ		歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ	歩ふ		歩ふ	四よん
							歩ふ		五ご
歩ふ				歩ふ	歩ふ	歩ふ	銀ぎん	歩ふ	六ろく
	歩ふ	歩ふ	歩ふ	銀ぎん	金きむ	玉たま			七なな
							飛ひ		八はち
香こう	桂かつら	角かく			金きむ		桂かつら	香こう	九きゅう

▲ 持もち駒ごま　なし
図ずは▲3七なな玉たままで
図ず3　英えい春はる流りゅうカメレオン

ここから対たい居きょ飛車ひしゃや対たい中ちゅう飛車ひしゃにおいては▲3八はち飛ひ～▲4六ろく銀ぎんから角かく道どうを開あけないままの袖そで飛車ひしゃに組くみ、特とくに対たい居きょ飛車ひしゃでは場合ばあいによっては居きょ玉だまのまま素早すばやく動うごいて3筋すじを抑おさえ込こむ展開てんかいとなる。四間しけん飛車ひしゃや三さん間あいだ飛車ひしゃに対たいしては右みぎ銀ぎんと、▲6八はち銀ぎん～▲5七なな銀ぎんと左ひだりの銀ぎんも進出しんしゅつさせ、嬉野うれしの流りゅう（鳥刺とりさし）と似にた形かたちに進行しんこうする。

また、図ず3のように、序盤じょばんで棒ぼう銀ぎんと見みせかけて出でていった右みぎ銀ぎんが、実じつは玉たまが右みぎに移動いどうすることで、守備しゅび駒こまに変身へんしんする。居きょ飛車ひしゃなのか振ふり飛車ひしゃなのかよくわからず右みぎ玉だまといっていいのかもわからない。そんな変幻へんげん自在じざいの変かわり身みを見みせる技わざの英えい春はる流りゅうが「カメレオン戦法せんぽう」である。

関連かんれん項目こうもく

• 5筋すじ位取くらいどり
• 5筋すじ位取くらいどり中ちゅう飛車ひしゃ

参考さんこう文献ぶんけん

• 鈴木すずき英えい春はる『英えい春はる流りゅうかまいたち&カメレオン戦法せんぽう』（2019年ねん11月21日にち初版しょはん発売はつばい）
• 鈴木すずき英えい春はる（1988）『必殺ひっさつ!かまいたち戦法せんぽう―英えい春はる流りゅうのすべて (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ)
• 鈴木すずき英えい春はる（1990）『必殺ひっさつ!19手て定跡じょうせき―英えい春はる流りゅう「かまいたち」戦法せんぽう〈居きょ飛車ひしゃ編へん〉 (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ)
• 鈴木すずき英えい春はる（1991）『必殺ひっさつ!右みぎ四よん間あいだ―英えい春はる流りゅう「かまいたち」戦法せんぽう〈完結かんけつ編へん〉 (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ)
• 鈴木すずき英えい春はる（1993）『必殺ひっさつ!陽動ようどう振ふ飛車ひしゃ―英えい春はる流りゅう「かまいたち」戦法せんぽう〈番外ばんがい編へん〉 (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ)
• 鈴木すずき英えい春はる（1995）『英えい春はる流りゅう 将棋しょうぎ問答もんどう―必殺ひっさつ「かまいたち」戦法せんぽう 虎とらの巻まき編へん (三さん一いち将棋しょうぎシリーズ)