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矢倉やぐら3ななぎん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ごま なし
987654321 
こうかつら   おうかくかつらこういち
  ぎんきむ きむ  
    ぎんさん
    よん
         
     ろく
ぎんきむ ぎんなな
  きむ     はち
こうかつらかくたま   かつらこうきゅう

矢倉やぐら3ななぎん(やぐらさんななぎん)は将棋しょうぎ戦法せんぽうの1つ。あい矢倉やぐらの24ぐみか25に▲3ななぎんすもの。

あい矢倉やぐらにおける主流しゅりゅう戦法せんぽうであり、森下もりしたシステム急戦きゅうせん矢倉やぐらはやかことともに、現代げんだいあい矢倉やぐら序盤じょばん戦術せんじゅつ根幹こんかんである。容易ようい主導しゅどうけんにぎつづけられるのがおも特徴とくちょう森下もりしたたくによれば、昭和しょうわ40年代ねんだいなだはちすあきらした「なだりゅう矢倉やぐら」を源流げんりゅうとするという。(森下もりした初段しょだん矢倉やぐら戦法せんぽうそうもとしゃ、2003ねんなど)

渡辺わたなべあきらはこの戦型せんけいでは先手せんて対策たいさくがわ後手ごてっても滅法めっぽうつよく、通算つうさん20きょくほどして勝率しょうりつわりほこった。

概要がいよう

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ごま なし
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       かつらこういち
     かくきむおう 
     きむぎんさん
       よん
       
     かくぎん  ろく
     かつら  なな
        はち
        こうきゅう
ごま なし
987654321 
       かつらこういち
     かくきむおう 
     きむぎんさん
       よん
       
     ぎんかく ろく
      かつら  なな
        はち
        こうきゅう

後手ごてとしては25▲3ななぎんたいし△6四角よつかどとするが、このおこたると先手せんてから▲3どうどうかくとされ、▲4ろくかく・3ろくぎんがた理想りそうてき攻撃こうげきじん先手せんてゆるすことになる。その場合ばあいには先手せんて2-1のようにかまえて3すじれたかして▲1よんどう▲2よん仕掛しかける。△2よんどうぎんなら▲2ぎんのぶつけから△どうぎんは▲どうかつらから▲3さんで、△どうぎんえて△3ぎんでは▲どうかくどうに▲3よんぎん。△2よんどうには▲2から△どうならば▲どうかつら~▲3さんなど、いずれも仕掛しかけが成立せいりつする。1すじからめればめがあつくなるのはたりまえであるが、1すじからめなくても仕掛しかけは十分じゅうぶん成立せいりつするほか端歩はしふくのを省略しょうりゃくして▲2よんから仕掛しかけるのも有力ゆうりょくである。このほかかくを2ろくかまえて(つまり3かく2-2)▲4はち-4ろく-3ろくぎん-3ななかつらかまえから、▲2よんどう▲2どうどうかつら△2よんぎん▲4や、▲4どう▲4よんどうぎん▲4ぎんどうぎん▲4よん△3さんきんよせ▲4かつらなどの仕掛しか[1]相当そうとうである。

後手ごて先手せんての▲3ななぎんに、ほかにも△2よんぎんとして3すじ交換こうかんふせいでいたが、この場合ばあい先手せんて以下いかたまを8はち入城にゅうじょうさせてから▲2ろく~▲3はち~▲4ろくぎん~▲3ななかつらかまえて▲3攻撃こうげき仕掛しかける。

後手ごてはこのほかには▲3ななぎんに△5さんぎんとし、▲3どうどうかくには△4用意よういして△4よんぎんみぎから反撃はんげきするかたもよくられたが、これも後手ごてが△4かく~△5一角いっかく~△8よんかく四手よつでかくあいだ先手せんて上記じょうき攻撃こうげき態勢たいせいかまえて▲2かつらから▲3仕掛しかけがまることがおおかった。

△6よんかく以後いご先手せんて作戦さくせんは、わきシステム、▲3ななぎん-▲3交換こうかん飛車ひしゃさき矢倉やぐらかたすずめ(▲2ろくぎん-3ななかつらがた)、ぼうぎん、▲4ろくぎん-2-3加藤かとうりゅう、4ろくぎん・3ななかつらがたなどがかんがえられる。

ここでは加藤かとうりゅう、4ろくぎん・3ななかつらがた中心ちゅうしん解説かいせつする。

加藤かとうりゅう

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ごま なし
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こうかつら     かつらこういち
  ぎん  きむおう 
   きむぎんさん
 かく  よん
         
   ろく
ぎんきむ ぎん  なな
 たまきむかく    はち
こうかつら     かつらこうきゅう

1990年代ねんだい前半ぜんはん勝率しょうりつ7わりともわれた森下もりしたシステムぜん盛時せいじにも独特どくとくのこだわりをもつ加藤かとう一二三ひふみによってされつづけたいきなが作戦さくせんであり、▲4ろくぎん - ▲3ななかつらがたにするには森下もりしたシステムぜん盛時せいじでは▲3はち~▲4はちぎん~▲5ななぎん~▲4ろくぎん~▲3ななかつらとしていたが、加藤かとうりゅうかたくなに▲3ななぎん~▲2ろく~▲4ろくぎんとしていた。加藤かとうは1980ねんじゅうだんせんでは先手せんてばんあい矢倉やぐらさいにはすべてこの戦法せんぽう使用しようしてタイトルせんせいした。

矢倉やぐら得意とくいとする棋士きし愛用あいようされている。当初とうしょは▲2ろくはやくから矢倉やぐら24ぐみからの移行いこうであったが、そのは(かたくなに飛車ひしゃさき矢倉やぐらこばんでいた加藤かとういちさんきゅうだんも)飛車ひしゃさき矢倉やぐらからむことがおおくなっていった。

▲2ろく - ▲1ろくめたのちに、相手あいてが1すじけるかかで対応たいおうえる柔軟じゅうなんせい特長とくちょう戦型せんけいである。まずはしけた場合ばあいぼうぎんかたちから▲1ななこう - ▲1はちかたちにしてたおす。現在げんざいはこれで先手せんて有利ゆうり確立かくりつしている。

はしけなかった場合ばあいはしとっしてから▲3はちり、▲4ろくぎん機会きかいねらう。▲3はちるのは、△6よんかくのけんせいたいして飛車ひしゃかくすじからはずすためである。

後手ごてにもある程度ていど選択肢せんたくしがあり、当初とうしょ四手よつでかくじんでのかまえから、△7さんぎんから△7どうどうかくや△8よんぎんからぼうぎん速攻そっこうる、△5さんぎんまもりをかた中央ちゅうおうからの反撃はんげきうかがう、△5さんかく-6さんぎんがたむなど手段しゅだんおおい。それぞれの手順てじゅんについて定跡じょうせき確立かくりつしている。たとえば△7さんぎんからの速攻そっこうには飛車ひしゃを2はちから5はちって▲4ろくぎんから▲5中央ちゅうおう突破とっぱせるかたおおかった。このとき後手ごて攻撃こうげきそなえて△5防御ぼうぎょすれば▲3はちとし、後手ごても8すじもどればたんに3すじうごくよりもとくとなっている。

また先手せんても▲3はちるだけではなく、場合ばあいによってはぼうぎんかたちから▲3ななかつら - ▲2なな - ▲1はちこう場合ばあいもある。

4ろくぎん・3ななかつらがた

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飛車ひしゃさききの状態じょうたいから加藤かとうりゅう同様どうよう▲4ろくぎん - ▲3ななかつらとして、▲2かつらからの仕掛しかけをねらう。かつて『将棋しょうぎ世界せかい』1990ねん1がつごうで「提言ていげんシリーズ だい1かい もとむ!名付なづおや」という企画きかく名前なまえ募集ぼしゅうしていたが、結局けっきょく特別とくべつ戦法せんぽうめい名付なづけられていない。

ごま なし
987654321 
こうかつら     かつらこういち
     きむおう 
   ぎんきむぎんさん
かく  よん
         
  ぎん  ろく
ぎんきむ かつらなな
 たまきむかく    はち
こうかつら      こうきゅう

当初とうしょ後手ごてはこれにたいして素直すなおませて▲2かつらからの仕掛しかけをまともにらっていた。もとは4から後手ごては4かくがたみ、先手せんては1すじとっしてから▲3はち-2ろくとして▲3どう▲2かつらあるいは▲2かつら△2よんぎん▲3としてめる。先手せんては3すじれてから▲3さんどうかつら▲1よんなど3すじと1すじをからめてし、先手せんてめはほぼれない。

後手ごて対策たいさくとしては、たとえばさきに△2よんぎんておいて、▲2かつらならばそこで△4反発はんぱつをしていた。

また▲3どう▲2かつらには4かく布陣ふじんかして△3ろくどう△6どう△4はちかくなりとしていたが、▲3ななぎん△4ななうま▲3さん以下いか一方いっぽうてきめられるので、後手ごても1すじは△1よんけておいて以降いこうはしめを緩和かんわしておいて▲3に△どうぎんとして、以下いかどうぎんどう▲2かつらに△3ろくぎんという手段しゅだん対応たいおうしていた。

布陣ふじんたい加藤かとうりゅう同様どうよう△6さんぎん-5三角さんかくがたなどを趣向しゅこうして▲2かつら△2よんぎん▲3瞬間しゅんかんに△4反発はんぱつし、▲どうぎんなら△3や3ぎん先手せんてあしおさえたり、守勢しゅせいまわるのではなく、△7さんぎんから△7どうどうかくうごいたりぼうぎんくなどの手段しゅだんをとっていた。

ただし、先手せんてからは今度こんどは▲5はちから▲5中央ちゅうおう突破とっぱなどもあり、次第しだいに△6よんかく-5さんぎんがた趣向しゅこうするようになる。

こうして4のような布陣ふじんおおくみられ、先手せんては▲3はち△2よんぎん▲1ろく△1よん▲6△7さんかく▲1はちこう△9▲2ろく△8に、2003ねん王座おうざせん最終さいしゅうきょく後手ごて羽生はぶ善治よしはるたい先手せんて渡辺わたなべあきらせんでは▲1どう▲6よんどう▲3かく△3よん▲6はちかく△6以下いか、▲1さん△1よんぎん▲1ぎんどうこうどうなりどうたま▲1ななこう△2たま▲1こう△2ぎんどう△8ろくどう△6ろくかつらどうぎんどうどうかね△8▲1こうなりと、はしめがかなり有効ゆうこう手段しゅだんとなった。

その▲4ろくぎん瞬間しゅんかんに△4いて▲3ななぎんかえおおられた。ただしそれでもこのびすぎとして▲4ろく反発はんぱつされて争点そうてんになるので、いちはほぼ消滅しょうめつした。4の手前てまえ▲3ななかつらと△9交換こうかんがない状態じょうたいで▲4ぎんに△4▲3ななぎん△7さんかくは▲4ろくどうどうかくどうかくどうぎん△4ななかく▲3ななぎんで△6きゅうかくは、以下いか▲6はちきん引△5きゅううまに▲6ななかくとしてうま仕留しとめる。以下いかは△6よんぎん▲4はちぎん△6はちうまどうかね△7さんかつら▲5ななぎんすすむと先手せんてペースとなることになる。

さらにその後手ごて対策たいさくは▲4ろくぎん - ▲3ななかつら - ▲3はち理想りそうがたませるあいだに△6よんかく - △5さんぎん - △7さんかくから△8いて先手せんてめをって反撃はんげきするものになり、場合ばあいによっては△4ぎんみぎいてさらにかためる。つまり後手ごて理想りそうがたつくられても、2かつらをはねさせても、△7三角さんかくがたで△4反発はんぱつする対策たいさくす。以下いかどうぎん△1きゅうかくしげる▲4ろくかくどううまどうに△5きゅうかくで、△2ろくかくなりをみせて先手せんてこまをとってしまっておさえるかたで、▲3ななかくには△どうすみしげるどう今度こんどは△1きゅうかくがあり、▲3はち△4ろくかくなり勝率しょうりつ後手ごてばんたかくなっていた。

先手せんてはこうしていきなり仕掛しかけると反撃はんげききびしくなり、ここから先手せんて今度こんど矢倉やくら穴熊あなぐまえてから仕掛しかけることを志向しこうした。そこで後手ごて穴熊あなぐまきらい、今度こんどは△8でなく△9とし、△8かつら用意よういしてはし殺到さっとうする構想こうそう森内もりうちりゅうもあり、これにたい先手せんてがなおも穴熊あなぐま目指めざすと敗勢はいせいおちいるという結論けつろんていた。

宮田みやた新手あらてと91定跡じょうせき

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△7三角さんかく待機たいきがたにはすぐに仕掛しかけるのも穴熊あなぐまにするのも面白おもしろくないことがかり、ちをするなど先手せんて苦戦くせんしていたが、2002ねんに△2よんぎん-8-7三角さんかくがたには▲2かつらえて▲6宮田みやた新手あらてあらわれて、態勢たいせいなおした。△7さんかくとされたのちでも▲6き、後手ごて理想りそうがたからわざといちさせてそれをくずすのが目的もくてきで、ほかにも▲6よんてや▲6ろくかくえるなどのている。▲6にはすぐ△6よん反発はんぱつになるが、8までびていないので成立せいりつしない。このため▲6で△8としても、以下いか▲2かつら△4どうぎん△1きゅうかくしげる▲4ろくかくどううまどう△5きゅうかくさいに▲6ろくかくしょうじており、このとき後手ごてれなので△4よんてなくなっており、△3さんかつらは▲3、△1たまは▲1からのめがく。

このため、△4からの反発はんぱつ回避かいひして、△4ぎんとすると今度こんどは▲3どうぎんどうぎんどうから▲1めがしょうじることになる。▲1どうに▲6よん宮田みやた新手あらてのもうひとつのねらいで、▲どうかくかくちかづけておくと、▲3飛車ひしゃはしって▲6展開てんかいするまれる。つぎに▲1こうどうこう▲6よんどう▲1三角さんかく△1たまに▲4いちぎんがある。このため後手ごては▲3に△2よんぎんち、▲6△7さんかつら▲6ろくに△9ろくどう△9ななで、▲9ななどうこうなら△どうかくなりから△6よんこう飛車ひしゃころねらいをせるが、先手せんてが▲1たたしょうじ、△どうこう▲7△8ろく▲7よん△8かつら▲7さんなりひとつの手順てじゅん。こうして今度こんどは△8見直みなおされ、そのさい先手せんて▲9はちこう対策たいさくにはその瞬間しゅんかんか▲9きゅうたまとさせて△6四角よつかどそんるという手段しゅだんむ。

一方いっぽうで、▲3どうぎんどうぎんどうから▲1のときに後手ごてから△3ななぎんっておさえこむかたしょうじた。以下いか▲3きゅうに△1もどして▲6よんに△どうかくという手段しゅだん後手ごて連戦れんせん連勝れんしょうとなった。

こののち羽生はぶ善治よしはる渡辺わたなべあきら相手あいてだい60かいNHKはいせん準決勝じゅんけっしょうで△1に▲6よんどう かく ▲1こうとし、以下いかどう こう ▲6ぎん △2ろくぎんなり ▲6よんぎんどう ▲3 △2よんぎんに、▲1さんかつらしげるどう かつら ▲1よんとして快勝かいしょうする。 だい61かいNHKはい決勝けっしょうでもおなじカードで先手せんて羽生はぶが▲1よん以下いかは△3ぎんに▲どうかく以下いか△1にすぐ▲1さんなりとし、以下いかどう ▲7一角いっかく △2なりぎんに、▲4よんかくじょうどう かねどうすみしげるじゅんでまた勝利しょうりした。このとき▲どうかくなり後手ごての△3さんぎん先手せんてうまげていたが、2012ねんだい71Aきゅう順位じゅんいせん屋敷やしき伸之のぶゆきたい渡辺わたなべあきらせん先手せんてげずに▲3よんかつらとし、以下いか△1たま ▲3さんうまどう かね ▲2きんどう どうかつらしげるどう たま▲8 △3 ▲8いちなりとなった。ここまで初手しょて▲7ろくから、4と宮田みやた新手あらて▲6経由けいゆして91および、91ぐみばれる長大ちょうだい定跡じょうせき誕生たんじょうするまでになる。

△4復活ふっかつ

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この△7三角さんかくがたから△8と△9長年ながねんおも対策たいさくとしてもちいられてきたが、2013ねんころから塚田つかだ泰明やすあきにより前述ぜんじゅつした△4研究けんきゅうはじまり、菅井すがい竜也たつや披露ひろうした△5、さらに渡辺わたなべあきらした△9よん展開てんかいする発見はっけんされ、△4優秀ゆうしゅうではないかと見直みなおされてきた。たしかに先手せんて反発はんぱつされる争点そうてんができるのであるが、先手せんてめきるのもむずかしいという認識にんしきまれていく。

こうして近年きんねんは4ろくぎん・3ななかつらがたそのものを先手せんて先手せんてとくをいかしきれないとみなしてける傾向けいこうにある。2015年度ねんど名人めいじんせん棋聖きせいせんでは5きょく矢倉やぐらせんとなったが、いずれも先手せんては4ろくぎん・3ななかつらがた選択せんたくせず、そのしばらくは藤井ふじい矢倉やぐら選択せんたくされる傾向けいこうつよまっていく。

そして2015年度ねんど以降いこうから、矢倉やぐら後手ごて対策たいさく急戦きゅうせん矢倉やぐらへと移行いこうしていく。そのさいには先手せんて矢倉やぐら趣向しゅこうするためにはやめに▲2めるかたえ、このため戦型せんけいとしても4ろくぎん・3ななかつら~2かつらかたちしょうじることがすくなくなった。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 加藤かとう治郎じろう将棋しょうぎ公式こうしき東京とうきょう書店しょてん、1967ねん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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