原始げんしちゅう飛車ひしゃ

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原始げんしちゅう飛車ひしゃ(げんしなかびしゃ、えい: Primitive Central Rook[1])は、将棋しょうぎ戦法せんぽうちゅう飛車ひしゃ一種いっしゅ

概要がいよう[編集へんしゅう]

だい1 原始げんしちゅう飛車ひしゃ基本形きほんけい
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつら   きむ かつらこういち
  ぎんきむぎんおうかく 
   さん
       よん
        
   ぎん    ろく
 なな
 かくきむ  たま  はち
こうかつらぎん  きむぎんかつらこうきゅう
だい2 原始げんしちゅう飛車ひしゃ基本形きほんけい
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつら   きむ かつらこういち
  ぎんきむぎんおうかく 
   さん
       よん
        
  ぎん    ろく
かく なな
     たま  はち
こうかつらぎんきむ きむぎんかつらこうきゅう
だい3 原始げんしちゅう飛車ひしゃ実践じっせんれい
加藤かとう △持駒もちごま なし
987654321 
こうかつら   きむ かつらこういち
   きむぎんおうかく 
 ぎん  さん
      よん
        
        ろく
かく なな
     たま  はち
こうかつら きむ きむぎんかつらこうきゅう

序盤じょばん早々そうそうちゅう飛車ひしゃめ、あとは5すじいて、さらに中央ちゅうおうぎんす。初手しょてから▲5ろくや▲5はちとして中央ちゅうおう戦力せんりょくあつめ、中央ちゅうおう突破とっぱねらう。一般いっぱんたまをほとんどかこわず、きょだまのままたたかうことがおおい。さらに初心者しょしんしゃ場合ばあいきむぎんもほとんどうごかさずに、飛車ひしゃかくかつらだけでめようとするケースもおおい。

相手あいて陣形じんけいととのえないうちに中央ちゅうおう突破とっぱまれば必勝ひっしょうであるが、たいていは出足であしめられて劣勢れっせいになる(かた定跡じょうせき確立かくりつしている)。あまりにも単純たんじゅんなので、ちゅう飛車ひしゃがわめきるのはむずかしいというのが一般いっぱんてき見解けんかいである。このため、プロ棋士きし同士どうし対局たいきょく出現しゅつげんすることは皆無かいむちかく、アマチュアでも有段者ゆうだんしゃすことはきわめてすくない戦法せんぽうである。

ただしアマチュア大会たいかいではタクシー運転うんてんしゅ石堂いしどうただし原始げんしちゅう飛車ひしゃ一本いっぽんで1980ねん、1981ねんつづけて朝日あさひアマチュア名人めいじんせん福岡ふくおかけん代表だいひょうとなっており、『将棋しょうぎマガジン』1982ねんがつごう対局たいきょく日誌にっし」で紹介しょうかいされ、これでちまくるのが痛快つうかいであり、いろいろなことがかぶとしている。

またかつて、だいじゅうはちAきゅう順位じゅんいせん(1963ねん昭和しょうわ38ねん)10がつ5にち)にて、升田ますだ幸三こうぞうきゅうだん当時とうじ)はたい加藤かとうひろしはちだん(当時とうじ)せんでこの戦法せんぽうもちい、定跡じょうせきちゅう飛車ひしゃ劣勢れっせいとされている局面きょくめんから新手あらてはなって勝利しょうりしており、数少かずすくないプロ公式こうしきせんでの実戦じっせんれいとなっている[2]だい3から△4さんきんけの手段しゅだん後述こうじゅつ手順てじゅん(この場合ばあいは▲4ぎんなりどうかね▲5さんぎん△5▲4ぎんなりどうたま)で先手せんてりというのが従来じゅうらい見解けんかいである。しかしそこから▲4ろく升田ますだ用意よういしたいちちゃくで、つぎに▲4せてかくのラインをかす。以下いかめをつなげた升田ますだ快勝かいしょうした。

この手順てじゅんはそのプロ公式こうしきせんでは登場とうじょうしていない模様もようで、升田ますだ棋譜きふ発掘はっくつした真部まなべ一男かずおは「そのこのもちいた棋士きしないのはなぜか?」とくびをひねっているが、2000年代ねんだい以降いこう先手せんてちゅう飛車ひしゃゴキゲンちゅう飛車ひしゃではきょ飛車ひしゃがわが5すじかず、ぎゃくらせてかたおおく、この戦型せんけいになりにくくなっている。

原始げんしちゅう飛車ひしゃ対処たいしょほう[編集へんしゅう]

後手ごて原始げんしちゅう飛車ひしゃで、しただい1-1から△5どうどうぎん仕掛しかける。これにたいして先手せんては▲2よんどう▲2反撃はんげきるのが好手こうしゅ以下いか△2どうどう△3よん▲2よん先手せんて優位ゆうい

だい1-1 原始げんしちゅう飛車ひしゃ対処たいしょほう
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつらぎんきむ   かつらこういち
  おう  きむかく 
 さん
    ぎん   よん
        
       ろく
   なな
 かくたまぎんきむぎん  はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
だい1-2 原始げんしちゅう飛車ひしゃ対処たいしょほう
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつらぎんきむおう  かつらこういち
     きむかく 
 さん
    ぎん   よん
        
       ろく
   なな
 かくたま  ぎん  はち
こうかつらぎんきむ きむ かつらこうきゅう

ただし、だい1-2のように先手せんてじんが5すじそなえが出来できていない場合ばあい、△5どうどうぎんたいして先手せんてが▲2よんどう▲2反撃はんげきても、△3よん▲2よんには、今度こんどは△5ろくぎんがあり、▲2さんなりには△8八角やすみしげるどうぎん△2なな成立せいりつずる。以下いか▲1はちなら△2さんきん、また▲2ななどうなら△6ななぎんなりから5はちかくなどの強襲きょうしゅうく。このためだい1-2から△5どうどうぎんには▲5はちきんみぎとして、だい2-1への局面きょくめんむことになる。

だい2-1 原始げんしちゅう飛車ひしゃ対処たいしょほう
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつらぎんきむ きむ かつらこういち
  おう     
 かくさん
        よん
    ぎん   
  ぎん    ろく
   なな
 かくたまぎんきむ   はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう
だい2-2 原始げんしちゅう飛車ひしゃ対処たいしょほう
すみみちひらきがた
持駒もちごま なし
987654321 
こうかつらぎんきむ きむ かつらこういち
  おう     
 かくさん
        よん
        
      ろく
 きむぎん なな
 かくたまぎん    はち
こうかつら きむ   かつらこうきゅう

だい2-1は、上記じょうきだい2から後手ごてが△5どうどうぎん仕掛しかけ、以下いか▲5ななぎんみぎに△5ろくとするが、先手せんては▲6ろくぎんとかわす。以下いか△6ろくぎんどうから△5ななぎんにも▲6ななきんとして、△6はちぎんどうかね再度さいど△5ななぎんとしても▲5はちめはつづかない。

評価ひょうか[編集へんしゅう]

上記じょうき定跡じょうせき存在そんざいするため、たいプロ棋士きし・アマ有段者ゆうだんしゃ効果こうかてき戦法せんぽう做されていない。

かつて『将棋しょうぎ世界せかい』1983ねん2がつごうで「定跡じょうせき実験じっけんしつ」のシリーズ企画きかく堀口ほりぐち弘治こうじ先手せんてちゅう飛車ひしゃがわたい室岡むろおか克彦かつひこ後手ごてきょ飛車ひしゃがわ)がかくどうひらきがた後手ごてきょ飛車ひしゃがわ有利ゆうり指定してい局面きょくめんとしてさせて、結果けっか先手せんてちゅう飛車ひしゃがわ勝利しょうりしている。ただちゅう飛車ひしゃがわをもってした堀口ほりぐち観戦かんせんではやはりこのなか飛車ひしゃがわ戦型せんけいしにくい、としている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Kawasaki, Tomohide (2013). HIDETCHI Japanese-English SHOGI Dictionary. Nekomado. p. 36. ISBN 9784905225089 
  2. ^ https://shogidb2.com/games/5ff16ec9b88f47387900a1f91e04113b03a3949b