両りょう取とり

8

	a	b	c	d	e	f	g	h
8									8
7									7
6									6
5									5
4									4
3									3
2									2
1									1
	a	b	c	d	e	f	g	h

白しろのナイトは黒くろのキングとルークに両りょう取とりをかけている。このようにキングに両りょう取とりをかける手ては有効ゆうこうである。また黒くろのポーンは白しろのルーク2個こに両りょう取とりをかけている。

8

	a	b	c	d	e	f	g	h
8									8
7									7
6									6
5									5
4									4
3									3
2									2
1									1
	a	b	c	d	e	f	g	h

白しろのクイーンが黒くろのキング、ルーク、ビショップに両りょう取とりをかけている。白しろのポーンは黒くろのナイトに両りょう取とりをかけている。

両りょう取とり（フォーク、Fork）とは、チェスや将棋しょうぎにおいて相手あいての駒こまを取とるために、1つの駒こまで2つ以上いじょうの相手あいての駒こまを同時どうじに攻撃こうげきする戦略せんりゃくである。相手あいては1度どに1つの駒こましか逃にげることができないため、どちらかの駒こまを取とることができる。 取とられそうな両方りょうほうの駒こまを取とられない形かたちで打開だかいするには、両りょう取とりをかけている駒こまを取とるか、相手あいてのキング（王おう）への攻撃こうげきなどを組くみ合あわせて相手あいてに取とる暇ひまを与あたえないなどの方法ほうほうが考かんがえられる。 また、ディスカバード・チェック（空あき王手おうて）の形かたちを利用りようすることで、両りょう取とりの形かたちにすることも可能かのうである。

両りょう取とりはしばしば、他たの戦略せんりゃくと組くみ合あわせて用もちいられる。

ナイトや桂馬けいまは他たの駒こまを飛とび越こせるという性質せいしつがあるため、両りょう取とりの駒こまとして用もちいられやすい。

両りょう取とりの種類しゅるいは、チェスでは一般いっぱん的てきには取とる方ほうの駒こまの種類しゅるいによる。例たとえばナイトフォークとは、ナイトを相手あいての2つ以上いじょうの駒こまを同時どうじに攻せめる位置いちに移動いどうすることである。一方いっぽう将棋しょうぎでは、一般いっぱん的てきには取とられる方ほうの駒こまの種類しゅるいによって、例たとえば飛ひ金きん両りょう取とり等とうと言いわれる。キングを含ふくめてどの種類しゅるいの駒こまでも両りょう取とりをかけることは可能かのうであり、またどの種類しゅるいの駒こまも両りょう取とりの対象たいしょうとなり得える。

チェス

チェスのクイーンや将棋しょうぎの飛車ひしゃ角かくも両りょう取とりの駒こまとして用もちいられやすいが、他たの駒こまと比くらべて価値かちが高たかいため、両方りょうほうの駒こまが守まもられていない場合ばあいか、一方いっぽうの駒こまがキング（王おう）の場合ばあい以外いがいは相手あいての駒こまを取とることは少すくない。守まもられたクイーンによって相手あいてのクイーンとキング（あるいは守まもられていない駒こま）を狙ねらう両りょう取とりは、クイーンの交換こうかんを迫せまる場合ばあいに有効ゆうこうである。

ポーンによっても、右みぎと左ひだりの斜ななめ前まえに相手あいての駒こまがある場合ばあい、両りょう取とりすることができる。右みぎ図ずでは、黒くろのポーンは2つの白しろのルークを狙ねらっている。

「ロイヤルフォーク」とは、チェスにおいてキングとクイーンの両りょう取とりに使つかわれる言葉ことばである。「グランドフォーク」とは、キング、クイーンと1つか2つのルークを両りょう取とりする状況じょうきょうに使つかわれる言葉ことばである。

Tissir-Dreev 2004

	a	b	c	d	e	f	g	h
8									8
7									7
6									6
5									5
4									4
3									3
2									2
1									1
	a	b	c	d	e	f	g	h

白しろが33手て目めを指さした後のちの場面ばめん

右みぎの例れい（Tissir-Dreev 2004）は、2004年ねんの世界せかいチェス選手権せんしゅけんの第だい1ラウンドで、Mohamed Tissirとアレクセイ・ドレーフの間あいだで行おこなわれた試合しあいである。 33...Nf2+ 34.Kg1 Nd3と進行しんこうして白しろが投了とうりょうした。最終さいしゅう的てきには黒くろのナイトが白しろのクイーンとルークを両りょう取とりして、クイーンが逃にげてルークとナイトの交換こうかんを許ゆるした。

将棋しょうぎ

様々さまざまな両りょう取とり

9	8	7	6	5	4	3	2	1
	銀ぎん				王おう				一いち
金きむ		金きむ							二に
							角かく		三さん
								飛ひ	四よん
									五ご
	飛ひ								六ろく
						銀ぎん		金きむ	七なな
	角かく								八はち
	香こう						桂かつら		九きゅう

(左上ひだりうえ)割わり銀ぎん、(右上みぎうえ)王手おうて飛車ひしゃ、(左下ひだりした)香車きょうしゃ田楽でんがく、(右みぎ下か)桂馬けいまふんどし

将棋しょうぎでは飛車ひしゃ、角行かっこう、桂馬けいまによる両りょう取とりが比較的ひかくてきよく見みられる。桂馬けいまによるものは「桂馬けいまふんどし」と俗称ぞくしょうされ、駒こま得とくを狙ねらう基本きほん的てきな手筋てすじである。また、銀将ぎんしょうを使つかって金将きんしょうまたは飛車ひしゃの両りょう取とりを狙ねらう「割わり銀ぎん」も有名ゆうめいな手筋てすじである。香車きょうしゃによるものは直接ちょくせつ2枚まいの駒こまを狙ねらったものではないが、一方いっぽうの駒こまが逃にげても他方たほうを取とることができるために両りょう取とりの範疇はんちゅうに入はいる。これは「香車きょうしゃ田楽でんがく」と俗称ぞくしょうされる。

両りょう取とりは駒こま得とくを狙ねらったものが多おおい。たとえば図ずの右みぎ下かで示しめした「桂馬けいまふんどし」では、自みずからの桂馬けいまと、相手あいての金将きんしょうまたは銀将ぎんしょうを交換こうかんすることで駒こま得とくを図はかるものである（△2七なな金きん、▲3七なな桂かつら、△同どう金かね、と進すすむと、桂馬けいまと銀将ぎんしょうの交換こうかんになるが、一般いっぱんに金かね又または銀ぎんの方ほうが桂かつらより価値かちが高たかい）。

一方いっぽうが玉将ぎょくしょうの場合ばあいは「王手おうて角かく取とり」、「王手おうて金きん取とり」というように言いわれる。とくに角行かっこうによる王手おうて飛車ひしゃ取とりは「王手おうて飛車ひしゃ」と言いわれ、状況じょうきょうにもよるが極きわめて強力きょうりょくな手てとして知しられる。王手おうてのかかった両りょう取とりは、王手おうてへの対応たいおう（逃にげる、合ごう駒こまを打うつなど）を優先ゆうせんしなければならない制約せいやくがあるため、もう一方いっぽうの駒こまは交換こうかんではなく単純たんじゅんに取とられてしまう場合ばあいも多おおい。図ずの右みぎ上じょうで示しめした「王手おうて飛車ひしゃ」の場合ばあい、△3二に角かくと打うてれば角行かっこうと飛車ひしゃの交換こうかんにとどまるが、それ以外いがいの駒こまを合ごう駒こまとしたり玉将ぎょくしょうが逃にげた場合ばあいには、飛車ひしゃが只ただで取とられることになる。

王手おうてがかかっている場合ばあいを別べつとして、両りょう取とりはどちらかの駒こまを逃にがしても他方たほうが取とられるため、駒こまを逃にげる手筋てすじは有効ゆうこうでない場合ばあいも多おおい。そのため、両りょう取とりを放置ほうちして別べつの手てが指さされることが多おおく、とくに相手あいての両りょう取とりを機きに反撃はんげきを始はじめることも好このまれる。「両りょう取とり逃にげるべからず」という有名ゆうめいな格言かくげんがある。棋士きし同士どうしの対局たいきょくの場合ばあいは、「王手おうて飛車ひしゃをかけた方ほうが負まける」という言葉ことばもある（棋士きしは王手おうて飛車ひしゃになる可能かのう性せいまで踏ふまえて指さしているため）。

参考さんこう文献ぶんけん

• 米長よねなが邦雄くにお、『米長よねなが流りゅう 必かならず勝かつ基本きほん手筋てすじ』、有紀ゆうき書房しょぼう、1986年ねん。ISBN 978-4638072301

関連かんれん項目こうもく

• ディスカバードアタック
• ピン
• 抽将

外部がいぶリンク

• Chess Tactics Repository - Forks - Collection of chess problems involving forks