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目隠めかくしチェス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
目隠めかくしチェスをおこなうフィリドール
目隠めかくしチェスをおこなうモーフィー

目隠めかくしチェス(めかくしチェス、えい: Blindfold chess)は、プレイヤーがのうないチェスボードもちいてこま位置いちられない状態じょうたいおこなチェス形式けいしきである。こまうごきは、棋譜きふ符号ふごうべることによって伝達でんたつされる。

目隠めかくしチェスは、長年ながねんあいだ奇跡きせきてきなこととみなされてきたが、今日きょうでは、複数ふくすう目隠めかくしチェスを同時どうじおこなものもいる[1]同時どうじ目隠めかくしチェスでは、通常つうじょうべつ仲介ちゅうかいしゃ双方そうほうつたえる。

初期しょき歴史れきし

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目隠めかくしチェスは、チェスの歴史れきしのかなり初期しょきからおこなわれていたとかんがえられ、サイード・イブン・ジュバイル(665ねん-714ねん)が中東ちゅうとう最初さいしょったともわれている[2]。ヨーロッパでは、実力じつりょくがある場合ばあいのハンディキャップやすぐれた実力じつりょくせつけることとう目的もくてきとしておこなわれた。

ハロルド・マレー著書ちょしょチェスの歴史れきし』(A History of Chess) のなかで、2人ふたり中央ちゅうおうアジアじんならんでうまってばんこま使つかわずにチェスをする様子ようす記録きろくしている[3]

ヨーロッパで最初さいしょ目隠めかくしチェスのイベントは、1266ねんフィレンツェおこなわれた[1]。1783ねんには、フランスのフランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドールが3にん相手あいて同時どうじ目隠めかくしチェスをおこない、新聞しんぶんほうじた。フィリドールはねむれないときにベッドのなかばん想像そうぞうすることで、ひとりでに目隠めかくしチェスができるようになった。

1858ねんには、ポール・モーフィーがパリでもっとつよい8にんのプレイヤーと目隠めかくしチェスのエキシビジョンをおこない、6しょう2引分ひきわけと圧倒あっとうした。に、初期しょき目隠めかくしチェスの名人めいじんには、ルイス・パウルセンジョゼフ・ブラックバーン最大さいだい16にん同時どうじ目隠めかくしチェスをおこなった)、初代しょだい世界せかいチャンピオンのヴィルヘルム・シュタイニッツ(1867ねんダンディーで6にん同時どうじ目隠めかくしチェスをおこない、3しょう3引分ひきわけだった)とうがいる。

20世紀せいき歴史れきし

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時期じきくだると、目隠めかくしチェスの記録きろくびていった。1900ねんには、ハリー・ピルズベリーフィラデルフィアで20にん同時どうじ相手あいてにして目隠めかくしチェスをおこなった。そのすこにはピルズベリーによって目隠めかくしチェス15試合しあい目隠めかくチェッカー15試合しあい同時どうじおこなうというめずらしい記録きろく達成たっせいされた(目隠めかくしチェッカーの同時どうじ記録きろくは、28試合しあいである)。つぎ記録きろくおおきくばしたのはチェコスロバキアリカルド・レティロシア世界せかいチャンピオンアレクサンドル・アレヒンであった。

1924ねん、アレヒンはニューヨークのアラマクホテルで、アイザック・カシュダンハーマン・ステイナーふく強者きょうしゃ26にん同時どうじ目隠めかくしチェスをおこない、16しょう5はい5引分ひきわけであった。これは、おそらくこれまで開催かいさいされた目隠めかくしチェスのエキシビジョンのなか最強さいきょうのものであった。翌年よくねん2がつには、パリで1チーム4にんの28チームを相手あいておこない、22しょう3はい3引分ひきわけという結果けっかであった。同年どうねん、レティはサンパウロで29にん相手あいてにしてこの記録きろく更新こうしんした。

1934ねん7がつ16にち、アレヒンはシカゴで32にん相手あいて同時どうじ目隠めかくしチェスをするという世界せかい記録きろく樹立じゅりつ[4]結果けっかは19しょう4はい9引分ひきわけであった。エドワード・ラスカーは、このイベントの審判しんぱんつとめた。

20世紀せいきのこりの期間きかんにおいて一般いっぱんてきられていた世界せかい記録きろくは、1937ねん9がつ20日はつかエディンバラジョージ・コルタノウスキーが13あいだで34試合しあい同時どうじおこない、24しょう10はいという記録きろくであった。この記録きろくギネス世界せかい記録きろくにも掲載けいさいされていた[1]のちに、ミゲル・ナイドルフとヤーノシュ・フレシュが記録きろく更新こうしん主張しゅちょうしたが、コルタノウスキーの記録きろくのような適切てきせつ監視かんしいていた。ナイドルフの最初さいしょ記録きろくは、アルゼンチンロサリオで、40にん相手あいてにし、36しょう3はい1引分ひきわけであった[5]かれ出身しゅっしんポーランドから1939ねんチェス・オリンピアード参加さんかするためアルゼンチンにわたり、ドイツぐんのポーランド侵攻しんこうけて同国どうこくとどまっていたため、祖国そこく家族かぞくかれ生存せいぞんつたえるのに十分じゅうぶん注目ちゅうもくあつめるためにこのイベントをおこなった。1947ねんにはサンパウロでこの記録きろくを45にんばし、結果けっかは39しょう2はい4引分ひきわけであった[6]。しかし、ナイドルフは棋譜きふることができ、またボードたりすうめい対戦たいせん相手あいてがいた(つまりいち相手あいてにした人数にんずうすくない)とわれていたため[1]、ギネスはこの記録きろくみとめていない。コルタノウスキーは、このような条件じょうけんなら100試合しあいできると主張しゅちょうしている[7]。ただしナイドルフの記録きろく正当せいとうなものとしている情報じょうほうげんもある[8]ハンガリーのヤーノシュ・フレシュは1960ねんブダペストで52にん対戦たいせんし、31しょう18はい3引分ひきわけの成績せいせきのこしてこの記録きろくやぶったと主張しゅちょうした。しかし、フレシュは試合しあいちゅう口頭こうとう棋譜きふ確認かくにんすることをゆるされており、さらに挑戦ちょうせんやく5あいだというきわめてみじか時間じかんわり、おおくのたん手数てかずきょくふくまれていたとわれている[7]

1960ねんには、コルタノウスキーはサンフランシスコで110びょう目隠めかくしチェスを56にん相手あいて連続れんぞくおこなった。9あいだわたっておこなわれ、結果けっかは50しょう6はいであった[9]かれ得意とくいわざ目隠めかくナイトツアーである。

21世紀せいきの24あいだ目隠めかくしチェス記録きろく

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2010ねんにドイツのマルク・ラングはゾントハイムで35にん試合しあいおこない、23あいだで19しょう3はい13引分ひきわけの記録きろくのこして、欧州おうしゅうしん記録きろく樹立じゅりつした[10]

翌年よくねん2011ねんには、ラングがふたたびゾントハイムで46にん相手あいてに25しょう2はい19引分ひきわけの成績せいせきおさめ、世界せかい記録きろく更新こうしんした[10][11]


2016ねん12月3にちティムール・ガレーエフフィットネスバイクまたがって、をマスクでおおい、48にんとチェスをおこなって、35しょう6はい7引分ひきわけであった[12]

健康けんこうへの懸念けねん

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目隠めかくしチェスは、競技きょうぎりょくたかめる方法ほうほうとして適度てきど推奨すいしょうされてきたが、1930ねんソ連それんでは、健康けんこう被害ひがいおそれがあるとして、同時どうじ目隠めかくしチェスのエキシビジョンを公式こうしき禁止きんしした[1][2]ミハイル・ボトヴィニク目隠めかくしチェスにたいして警告けいこくおこなっている[1]目隠めかくしチェスは、通常つうじょうにチェスをおこなうよりもつよ疲労ひろうかんおぼえると報告ほうこくされている[1]

心理しんりがく

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目隠めかくしチェスは、異常いじょう視覚しかく空間くうかん能力のうりょく記憶きおくりょく必要ひつようとするとかんがえられるため、心理しんりがく分野ぶんやさかんに研究けんきゅうされてきた。1893ねんアルフレッド・ビネーはじまり、チェスのグランドマスターであり心理しんり学者がくしゃでもあるルーベン・ファインの1965ねん研究けんきゅうがこれにつづき、最近さいきんの20年間ねんかんには目隠めかくしチェスの心理しんりがく実験じっけんあつかった科学かがく論文ろんぶん多数たすうている[13]。これらの研究けんきゅう一般いっぱんに、目隠めかくしチェスに必要ひつようなのは、チェス選手せんしゅ後天的こうてんてき獲得かくとくした知識ちしきと、しん視覚しかく空間くうかんてき操作そうさおこなう能力のうりょく両方りょうほうであることをしめしている。

近年きんねん状況じょうきょう

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今日きょうでは、一年中いちねんじゅう目隠めかくしチェスの大会たいかいひらかれているが、そのなかもっと地位ちいたかいのは、2011ねんまでモンテカルロで開催かいさいされていたアンバー・チェストーナメントである。プレイヤーとしては、ウラジーミル・クラムニクヴィスワナータン・アーナンドアレクセイ・シロフアレクサンドル・モロゼヴィッチひとしとく目隠めかくしチェスが得意とくい名手めいしゅとしてられ、1996ねんから2007ねんまでは、交互こうごにアンバー・チェストーナメントで優勝ゆうしょうしていた。それまでは、レヴォン・アロニアンが3優勝ゆうしょうしており、2012ねんスポーツアコードワールドマインドゲームズおこなわれた目隠めかくしチェスのイベントでも優勝ゆうしょうした。

エリオット・ハーストとジョン・ノットが2009ねんあらわした『Blindfold Chess, History, Psychology, Techniques, Champions, World Records and Important Games』は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくチェス連盟れんめいひとし主催しゅさいしたフレッド・クレーマー年間ねんかん最優秀さいゆうしゅうチェス書籍しょせきしょう受賞じゅしょうした。

関連かんれん項目こうもく

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g The Elite Meet in Monte Carlo”. ChessBase (2003ねん3がつ15にち). 2021ねん11月16にち閲覧えつらん
  2. ^ a b Wall 2010, p. 8.
  3. ^ A History of Chess 
  4. ^ Saidy, Anthony; Lessing, Norman (1974) (英語えいご). The World of Chess. p. 22 この情報じょうほうげんには日付ひづけが"1933"とだけしるされ、かち/ぶん/はいゲームすうしめされていない。
  5. ^ Sánchez, Christian (2013ねん). “Perlas Ajedrecísticas - Christian Sánchez” (スペイン). Christian Sánchez. 2021ねん11月16にち閲覧えつらん
  6. ^ Chess Notes by Edward Winter” (2007ねん1がつ18にち). 2021ねん11月16にち閲覧えつらん 4811. Blindfold record
  7. ^ a b Lawton, Geoff (2003). Tony Miles:It's Only Me. Batsford. ISBN 0-7134-8809-3 
  8. ^ Hearst, Eliot & Knott, John (2009). Blindfold Chess: history, psychology, techniques, champions, world records and important games. McFarland & Company 
  9. ^ Hooper, David & Whyld, Kenneth (1996). Oxford Companion To Chess. Oxford University Press. ISBN 0-19-280049-3 
  10. ^ a b http://www.blindsimultan.de
  11. ^ Barden, Leonard (2011ねん12月30にち). “Marc Lang catches the eye by breaking world blindfold record” (英語えいご). The Guardian. ガーディアン. 2021ねん11月16にち閲覧えつらん
  12. ^ Timur Gareyev breaks blindfold record”. ChessBase (2016ねん12月5にち). 2021ねん11月16にち閲覧えつらん
  13. ^ Campitelli, Guillermo; Gobet, Fernand (2005-01). “The mind's eye in blindfold chess”. European Journal of Cognitive Psychology 17 (1): 23–45. doi:10.1080/09541440340000349. https://bura.brunel.ac.uk/handle/2438/819 2021ねん11月16にち閲覧えつらん. 

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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