平安へいあんだい将棋しょうぎ

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平安へいあんだい将棋しょうぎ(へいあんだいしょうぎ)は、日本にっぽん将棋しょうぎるいひとつであり、二人ふたりおこなうボードゲーム盤上ばんじょう遊戯ゆうぎ)の一種いっしゅである。

1120ねんごろしょとされる習俗しゅうぞく辞典じてんちゅうれき』に平安へいあん将棋しょうぎとともに掲載けいさいされている将棋しょうぎである。このなかではたんなる「だい将棋しょうぎ」という名前なまえであるが、の15×15マスのだい将棋しょうぎ区別くべつしてこうばれる。

ちゅうれき記述きじゅつ[編集へんしゅう]

ちゅうれき』の「だいじゅうさん はく棊歴」には、以下いかのようなだい将棋しょうぎ記述きじゅつがある[1]

また大将たいしょうじゅうさんあいだうん 玉将ぎょくしょうかくじゅう一方いっぽうなか 金将きんしょうざいわき 銀将ぎんしょうざい金之かねゆき ゆう銀将ぎんしょう ゆうどうしょう ゆうてつしょう ゆう香車きょうしゃ どうはたくだり四隅よすみ てつはたくだりさんぽう また横行おうこうざいおういただきかた ぎょうまえいち左右さゆううん多少たしょう またゆう猛虎もうこざいぎんいただき ぎょうよんかくいち りゅうざいかつら馬之上うまのうえ ゆき四隅よすみ超越ちょうえつ 奔車ざい香車きょうしゃいただき ぎょう前後ぜんこううん多少たしょう ちゅうじんざい中心ちゅうしん歩兵ほへいいただき ぎょう前後ぜんこう如是にょぜ 一方いっぽう如此行方ゆくえじゅん

くだすと以下いかのようになる。銀将ぎんしょう記述きじゅつ重複じゅうふくしており、桂馬けいま記述きじゅつけている。「玉将ぎょくしょうかくじゅう一方いっぽうなか」からそうだまであったとれる一方いっぽうで、「玉将ぎょくしょう」と「おう」が混在こんざいしていることから、玉将ぎょくしょう王将おうしょう区別くべつがあったともれる[2]

また、だい将棋しょうぎじゅうさんあいだにいわく、玉将ぎょくしょうはおのおの一方いっぽうなかじゅう(じゅう)し、金将きんしょうわきにあり、銀将ぎんしょうかねつぎにあり。つぎ銀将ぎんしょうあり、つぎどうはたあり、つぎてつはたあり。つぎ香車きょうしゃあり、どうしょう四隅よすみかず、てつしょううしさんぽうかず。また、横行おうこうおういただきかたにあり。ぜんいちき、左右さゆう多少たしょうをいわず。また、猛虎もうこあり、ぎんいただきにあり、四角よつかどいちく。りゅう桂馬けいまうえにあり、四隅よすみ超越ちょうえつす。奔車は香車きょうしゃいただきにあり、前後ぜんごくこと多少たしょうをいわず。ちゅうじん中心ちゅうしん歩兵ほへいいただきにあり、前後ぜんごくことのごとし。一方いっぽう此のごとく行方ゆくえじゅんぜよ。

ルール[編集へんしゅう]

基本きほんルール[編集へんしゅう]

  • 縦横じゅうおう13マスずつに区切くぎられた将棋しょうぎばんうえおこなう。
  • こまは、平安へいあん将棋しょうぎの6種類しゅるいどうしょうてつしょう横行おうこう猛虎もうこりゅう奔車ちゅうじんくわえた13種類しゅるいあり、それぞれうごきがまっている。なおちゅう将棋しょうぎだい将棋しょうぎおな名前なまえこまもあるが、すべうごきがことなる。
  • 平安へいあん将棋しょうぎ記述きじゅつじゅんじ、敵陣てきじん3だんはいれば玉将ぎょくしょう金将きんしょう以外いがいのどのこま金将きんしょうれる[3]
  • ほん将棋しょうぎとはちがい、ったこまみずからのごまにはできない。
  • ほん将棋しょうぎ同様どうようてき玉将ぎょくしょうつめますとちとなるが、てき玉将ぎょくしょうだけにしてもちである。

初期しょき配置はいち[編集へんしゅう]

通説つうせつ[編集へんしゅう]

現在げんざい一般いっぱんてきせつでの初期しょき配置はいちである。

香車きょうしゃ 桂馬けいま てつしょう どうしょう 銀将ぎんしょう 金将きんしょう 玉将ぎょくしょう 金将きんしょう 銀将ぎんしょう どうしょう てつしょう 桂馬けいま 香車きょうしゃ
▽奔車 りゅう     猛虎もうこ   横行おうこう   猛虎もうこ     りゅう ▽奔車
歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい
            ちゅうじん            
                         
                         
                         
                         
                         
            ちゅうじん            
歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい 歩兵ほへい
奔車 りゅう     猛虎もうこ   横行おうこう   猛虎もうこ     りゅう ▲ 奔車
香車きょうしゃ 桂馬けいま てつしょう どうしょう 銀将ぎんしょう 金将きんしょう 玉将ぎょくしょう 金将きんしょう 銀将ぎんしょう どうしょう てつしょう 桂馬けいま 香車きょうしゃ

こまうご[編集へんしゅう]

平安へいあん将棋しょうぎ共通きょうつうしている玉将ぎょくしょう金将きんしょう銀将ぎんしょう桂馬けいま香車きょうしゃ歩兵ほへい省略しょうりゃく

  • ○はその位置いちうごける。
もとこま うご なりこま うご
どうはた(どうしょう)
どう
四隅よすみけない。 金将きんしょう(きんしょう)
きむ
ななぽうけない。
てつはた(てつしょう)
てつ
うしさんぽうけない。
横行おうこう(おうぎょう)
よこ
たてにはまえいち左右さゆうにはいくらでもける。
猛虎もうこ(もうこ)
とら
四隅よすみいちける。
りゅう(ひりゅう)
りゅう
四隅よすみんでける。
奔車(ほんしゃ)
くるま
前後ぜんごにいくらでもける。
ちゅうじん(ちゅうにん)
ちゅう
前後ぜんごいちずつける。

りゅううごきについては、通説つうせつではうえひょうのように現代げんだい将棋しょうぎ角行かっこうおなうごきであるが、「ななめに1マスんで2マスすすむ」というせつ最近さいきん提唱ていしょうされている[よう出典しゅってん]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ちゅうれき.
  2. ^ 水野みずの 1998, pp. 168, 170.
  3. ^ ただし、岩手いわてけん平泉ひらいずみまちこころざし羅山らざん遺跡いせきだい88発掘はっくつにおいて、表裏ひょうりとも「りゅう」とめるこまじょう木片もくへん出土しゅつどしている(『天童てんどう将棋しょうぎこま全国ぜんこく遺跡いせき出土しゅつどこま』2003ねん天童てんどう将棋しょうぎ資料しりょうかん。2002ねん平泉ひらいずみまち教育きょういく委員いいんかい発行はっこう資料しりょう参考さんこうにしたとある)。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 1318-1339、「だいじゅうさん はく棊歴」、『ちゅうれきみことけいかく善本ぜんぽん影印えいいん集成しゅうせい、3、 (原著げんちょ1220-1221) ISBN 4-8406-2316-3 p. 118
  • 水野みずの 和雄かずお、1998、「輸入ゆにゅうされた娯楽ごらく」、大塚おおつかはつじゅうへん)『芸術げいじゅつ学芸がくげいとあそび』12、 〈考古学こうこがくによる日本にっぽん歴史れきし〉 ISBN 4-639-01497-X pp. 166-178

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]