仮眠かみん

仮眠かみん（かみん）とは短時間たんじかんの睡眠すいみんを取とることである。成人せいじんしているヒトに必要ひつようとされる一いち日にち7 - 8時じ間あいだの睡眠すいみん時間じかんを満足まんぞくに得えられないときに、それを補完ほかんする形かたちで実施じっしされる場合ばあいや一いち日にちの生活せいかつにおける睡眠すいみんそのものが仮眠かみんである場合ばあい、生活せいかつリズムに昼寝ひるねを取とり入いれている場合ばあいなど各人かくじんの生活せいかつにより仮眠かみんの有無うむや頻度ひんどは大おおきく異ことなる。

概要がいよう

仮眠かみんは状況じょうきょうに応おうじて数すう分ふんから数時間すうじかんにわたって実施じっしされるものである。

最もっとも代表だいひょう的てきな仮眠かみんである昼寝ひるねは昼食ちゅうしょく後のちに数すう分ふんから2 - 3時じ間あいだ程度ていどの睡眠すいみんを取とることを指さし、南みなみヨーロッパではシエスタ（Siesta）と言いう。

通勤つうきん・通学つうがくなどにおける移動いどうの際さいにバスや列車れっしゃの中なかで寝ねる行為こういや会議かいぎ中なか・授業じゅぎょう中ちゅうなどに寝ねる行為こういも仮眠かみんの形態けいたいの一ひとつであり、通常つうじょうの座すわっている姿勢しせいのまま目めを閉とじたり机つくえの上うえに置おいた腕うでを枕まくらの代かわりにして伏ぶせて寝ねたりする体勢たいせいが一般いっぱん的てきである。

警備けいび員いん・守衛しゅえい等ひとしの長時間ちょうじかん勤務きんむのある職業しょくぎょうでは、交代こうたいで数時間すうじかんずつの仮眠かみんを取とることがある。

15 - 30分ぶんの仮眠かみんが脳のうを活性かっせい化かするという研究けんきゅう結果けっかが出でている。しかし、それ以上いじょうの仮眠かみんは逆ぎゃくに脳のうの活性かっせいを下さげ、また夜よるの不眠ふみんの原因げんいんにもなるとも言いわれる。

利点りてん

仮眠かみんは生理せいり的てきおよび心理しんり的てきの両面りょうめんにおいて有益ゆうえきである事ことが分わかってきている。20分間ふんかんの仮眠かみんで、精神せいしんがリフレッシュされ、全般ぜんぱん的てきな注意ちゅうい力りょくが増まし、気分きぶんが良よくなり、生産せいさん性せいも向上こうじょうする。仮眠かみんは心臓しんぞうにも良よい可能かのう性せいがある。ギリシャ人じんの成人せいじんを対象たいしょうとした6年間ねんかんの研究けんきゅうによれば、研究けんきゅう者しゃたちは少すくなくとも週しゅう3回かい以上いじょうの仮眠かみんをとる人ひとは心臓しんぞう関係かんけいの死亡しぼうのリスクが37%低ひくいことを見出みいだした。また、仮眠かみんにより頭痛ずつうが緩和かんわされる事こともある。

科学かがく者しゃたちは、仮眠かみん（20分ぶんの仮眠かみんや1 - 2時じ間あいだの睡眠すいみんなど）の効用こうようについて長年ながねん調査ちょうさしている。様々さまざまな認知にんち機能きのうの成績せいせきについての調査ちょうさが行おこなわれた。研究けんきゅうによれば、いくつかの種類しゅるいの記憶きおく作業さぎょうについて、仮眠かみんは一いち晩ばんの睡眠すいみんと同どう程度ていどによい成績せいせきとなった。ペンシルバニア大学だいがく医学部いがくぶのDavid F. Dinges教授きょうじゅが指揮しきしているNASAの研究けんきゅうによれば、仮眠かみんはある種しゅの記憶きおく機能きのうを向上こうじょうさせる効果こうかがあり、短みじかい仮眠かみんよりも長ながい仮眠かみんの方ほうがより有効ゆうこうである事ことを見出みいだした。そのNASAの研究けんきゅうでは、被験者ひけんしゃは全すべて実験じっけん室しつ環境かんきょうの中なかで、18種類しゅるいの異ことなる睡眠すいみんスケジュールのいずれかにより数すう日間にちかん過すごした。仮眠かみんの有効ゆうこう性せいを測定そくていするために、記憶きおく、注意ちゅうい力りょく、反応はんのう時間じかん、その他たの認知にんちスキルを試ためすテストが行おこなわれた。

アメリカの国立こくりつ精神せいしん衛生えいせい研究所けんきゅうじょ（National Institute of Mental Health）は、ハーバード大学だいがくのAlan Hobson氏し、Robert Stickgold氏しらを中心ちゅうしんとする研究けんきゅうチームを助成じょせいして、日にち中ちゅうの仮眠かみんが情報じょうほうオーバーロードを緩和かんわするという事ことを示しめした。また、「Nature Neuroscience」誌しにおいて、Sara Mendnick氏し、Stickgold氏しやその同僚どうりょうたちは、ある種しゅの場合ばあい、1時じ間あいだの仮眠かみんでさえも、その個人こじんのトップレベルのパフォーマンスを引ひき出だせる事ことを示しめしたと報告ほうこくした。NIMHチームは次つぎのように述のべている：「結論けつろんを言いえば、我々われわれはいわゆる『パワーナップ』を勤務きんむ中ちゅうにとる事ことについて罪つみの意識いしきを感かんじるのはやめるべきである」。

難点なんてん

仮眠かみんは（一いち日にちに数すう回かいとった場合ばあいでも）、眠ねむりが十分じゅうぶんに長ながくもなく深ふかくもないのが典型てんけい的てきであり、連続れんぞく的てきな6 - 8時じ間あいだの睡眠すいみんと同どう程度ていどの回復かいふくの効用こうようをもたらすほどではない。したがって、日常にちじょう的てきに仮眠かみんによって睡眠すいみん不足ふそくを補おぎなおうとしても、睡眠すいみん不足ふそくの蓄積ちくせきという結果けっかにつながる。不眠症ふみんしょうやうつ病びょうの患者かんじゃには仮眠かみんは推奨すいしょうされない。なぜなら、既すでに乱みだれている覚醒かくせい/睡眠すいみんパターンをさらに悪化あっかさせる可能かのう性せいがあるからである。

勤務きんむ中ちゅうの睡眠すいみん

勤務きんむ中ちゅうの睡眠すいみんについての考かんがえ方かたは雇用こよう者しゃにより様々さまざまである。ある会社かいしゃでは、生産せいさん性せいを高たかめるために勤務きんむ中ちゅうに仮眠かみん休憩きゅうけいをとる事ことを認みとめる制度せいどを設もうけている。その一方いっぽうで、別べつの会社かいしゃでは従業じゅうぎょう員いんに対たいして勤務きんむ中ちゅうの睡眠すいみんを厳きびしく禁きんじ、例たとえば監視かんしカメラを用もちいて、勤務きんむ中ちゅうに寝ねている従業じゅうぎょう員いんがいないか監視かんしする場合ばあいもある。規則きそくに違反いはんして勤務きんむ中ちゅうに眠ねむった従業じゅうぎょう員いんは懲戒ちょうかい処分しょぶんを受うける場合ばあいもある。

従業じゅうぎょう員いんの中なかには、認みとめられた休憩きゅうけい時間じかんの間あいだのみ、睡眠すいみん、仮眠かみん、あるいはパワーナップをとる者ものもいる。この場合ばあいの仮眠かみんも、会社かいしゃの方針ほうしんにより許可きょかされている場合ばあいと禁止きんしされている場合ばあいがある。無給むきゅうの休憩きゅうけい時間じかん内ないであっても寝ねる事ことを禁きんずる会社かいしゃもある。その理由りゆうは様々さまざまだが、例たとえば、眠ねむっている従業じゅうぎょう員いんはプロフェッショナルな仕事しごとをしているようには見みえないから、あるいは従業じゅうぎょう員いんが緊急きんきゅう事態じたいに即座そくざに対応たいおうできる事ことが必要ひつようだから、あるいは法令ほうれい上じょうの規制きせいが理由りゆうという場合ばあいもある。勤務きんむ中ちゅうに眠ねむると他人たにんに危険きけんを与あたえるような種類しゅるいの職業しょくぎょうの場合ばあいは、勤務きんむ中ちゅうに眠ねむってしまうと法令ほうれい上じょうの制裁せいさいを受うける場合ばあいがある。例たとえば、航空機こうくうきパイロットの場合ばあい、免許めんきょ剥奪はくだつの処分しょぶんを受うける場合ばあいもある。

戦時せんじ中ちゅうのアメリカでは、哨兵しょうへいが勤務きんむ中ちゅうに眠ねむってしまった場合ばあい、それは軍法ぐんぽう（Uniform Code of Military Justice）によれば死刑しけいにもなりうる罪つみであった。朝鮮ちょうせん戦争せんそう中なか、米国べいこくのある兵士へいしは、見張みはり所しょで眠ねむってしまった罪つみで重労働じゅうろうどう10年ねんの刑けいをい渡いわたされたが、その後ご控訴こうそ審しんで原はら判決はんけつ破棄はきにより釈放しゃくほうされた。帝国ていこく陸軍りくぐんにおいても、陸軍りくぐん刑法けいほう第だい48条じょうにおいて、哨兵しょうへいが睡眠すいみんや酩酊めいていにより職務しょくむを怠おこたった場合ばあいは、敵前てきぜんの場合ばあい五ご年ねん以下いかの禁固刑きんこけい、その他たの場合ばあい一いち年ねん以下いかの禁固刑きんこけいと定さだめられていた。

関連かんれん項目こうもく

• 睡眠すいみん
• パワーナップ