(Translated by https://www.hiragana.jp/)
コールドスリープ - Wikipedia コンテンツにスキップ

コールドスリープ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
冷凍れいとう睡眠すいみんから転送てんそう
ベネズエラマラカイ病院びょういん心肺しんぱい蘇生そせいける外傷がいしょう患者かんじゃ。このさいに、仮死かしさせることで患者かんじゃ細胞さいぼう壊死えし)の開始かいしおくらせることができ、最終さいしゅうてき治療ちりょうけるまでの時間じかんかせげる。
コールドスリープ(テレビドラマ『宇宙うちゅう家族かぞくロビンソン』より)

コールドスリープとは、宇宙船うちゅうせんでの惑星わくせいあいだ移動いどうなどにおいて、人体じんたい低温ていおん状態じょうたいたもち、目的もくてきくまでの時間じかん経過けいかによる搭乗とうじょういん老化ろうかふせ装置そうち、もしくはどう装置そうちによる睡眠すいみん状態じょうたい移動いどう以外いがいにも、肉体にくたい状態じょうたいたもったまま未来みらい一方いっぽう通行つうこうタイムトラベル手段しゅだんとしてももちいられる。

SF作品さくひんにはしばしば登場とうじょうする概念がいねんであったが、2020ねん6がつ筑波大学つくばだいがく理化学研究所りかがくけんきゅうしょ共同きょうどう研究けんきゅうチームが、本来ほんらい冬眠とうみんしないはずのマウスを"冬眠とうみんきわめて状態じょうたい"に誘導ゆうどうすることに成功せいこうしたとする論文ろんぶん発表はっぴょう雑誌ざっしNature』)をおこない、世界せかい衝撃しょうげきあたえた[1] [2] [3] [4]

なお、和製わせい英語えいごにおけるSF用語ようごであることから、英語えいごけん使つかわれることはなく、冷凍れいとう睡眠すいみん長期ちょうき冷凍れいとう睡眠すいみんにはハイバネーション冬眠とうみん)やハイパースリープといった語句ごくおも使つかわれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

一般いっぱんにコールドスリープには、低温ていおん状態じょうたいにして睡眠すいみん時々ときどき覚醒かくせいするタイプ、冬眠とうみんタイプ、冷凍れいとうタイプがあるとされる。

すうじゅうねん以上いじょうもの長期間ちょうきかんにおよぶ惑星わくせいあいだ有人ゆうじん移動いどうさい、それに必要ひつよう不可欠ふかけつ搭乗とうじょういん食料しょくりょう酸素さんそといった生命せいめい維持いじけい健康けんこう維持いじのための生活せいかつ空間くうかんなど、生活せいかつようするものをすくなくおさえることができれば宇宙船うちゅうせん質量しつりょうらすことができ、そのぶんだけ燃料ねんりょうらすことができるほか、備蓄びちくスペースをべつのことに利用りようできる。また、すうじゅうねん以上いじょうをかけての有人ゆうじん移動いどうには、人間にんげん寿命じゅみょうとのいがしょうじる。このようなてんから、コールドスリープが選択せんたくされる。

一方いっぽう生命せいめいたもったまま人間にんげん冷凍れいとうさせる技術ぎじゅつや、長期ちょうき冬眠とうみんをさせるための技術ぎじゅつ確立かくりつしていない。

冷凍れいとうした場合ばあい水分すいぶん凍結とうけつしたときこる体積たいせき膨張ぼうちょうによって細胞さいぼう破壊はかいしてしまうため、生命せいめいたもったまま人間にんげん冷凍れいとうできるかどうかなどの問題もんだいがある。なお、精子せいし冷凍れいとう保存ほぞん実用じつようされている。

2020ねん6がつには、筑波大学つくばだいがく理化学研究所りかがくけんきゅうしょ共同きょうどう研究けんきゅうチームが、本来ほんらい冬眠とうみんしないはずのマウスを"冬眠とうみんきわめて状態じょうたい"に誘導ゆうどうすることに成功せいこう。マウスののう視床ししょう下部かぶ存在そんざいする「Qニューロン」を発見はっけんし、冬眠とうみんをしない動物どうぶつでも冬眠とうみんちか状態じょうたいつくれる可能かのうせいしめされた[3]

Qニューロンの発見はっけん[編集へんしゅう]

前述ぜんじゅつマウスの「Qニューロン」はマウスののう視床ししょう下部かぶ存在そんざいし、Qニューロンを刺激しげきすると、マウスの酸素さんそ消費しょうひりょういちじるしく低下ていかするとともに、体温たいおんすう日間にちかんにわたりおおきく低下ていか室温しつおんが20℃、体温たいおんが22-23℃)。この状態じょうたいすくなくとも1にち以上いじょう安定あんていして持続じぞくしたのち、すべてのマウスは障害しょうがいのこることなく、自発じはつてきもと状態じょうたいもどった[3]

睡眠すいみん研究けんきゅう第一人者だいいちにんしゃである筑波大学つくばだいがく教授きょうじゅ櫻井さくらいたけしは、睡眠すいみん覚醒かくせいかかわるのうない物質ぶっしつ調しらべるため、特定とくてい神経しんけい細胞さいぼう興奮こうふんさせる実験じっけんをしていてマウスがうごかなくなった。生理学せいりがくてき冬眠とうみん区別くべつできない状態じょうたいになっていることに気付きづき、親交しんこうがあった理化学研究所りかがくけんきゅうしょ冬眠とうみん生物せいぶつがく研究けんきゅうチームの砂川すなかわげん志郎しろう連絡れんらくし、共同きょうどう研究けんきゅうはじまる。その結果けっか、この神経しんけい細胞さいぼうぐんが、"冬眠とうみんスイッチ"ともいうべき「Qニューロン」であることを発見はっけん。「Q」は、「QRFP」という名前なまえペプチド頭文字かしらもじで、このQRFPは、人間にんげんふく哺乳類ほにゅうるいひろ分布ぶんぷすることがかっているため、人間にんげんでもQRFPをふく神経しんけい刺激しげきすることで、マウス同様どうように"冬眠とうみんきわめて状態じょうたい"を誘導ゆうどうすることができる可能かのうせいたかまった。一方いっぽうで、太古たいこには、人間にんげん冬眠とうみんしていたのではないか、とする報告ほうこくもある[3]人間にんげんにも人工じんこうてき冬眠とうみん状態じょうたいつくすことが可能かのうであれば、救急きゅうきゅう搬送はんそう集中しゅうちゅう治療ちりょう全身ぜんしん麻酔ますい臓器ぞうき保存ほぞん再生さいせい医療いりょうといった臨床りんしょう現場げんば応用おうようできると期待きたいたかまった[4]

2022ねんには、体温たいおんげずに代謝たいしゃだけをげる"あたたかい冬眠とうみん"により、りゅう停止ていし臓器ぞうきダメージをふせげる可能かのうせいあらたにしめされた[5]

類似るいじする技術ぎじゅつ[編集へんしゅう]

クライオニクス[編集へんしゅう]

日本にっぽんではおこなわれてはいないが、クライオニクス(cryonics、人体じんたい冷凍れいとう保存ほぞん)とばれるサービスがある。これは、んだ直後ちょくご人体じんたい冷凍れいとう保存ほぞんし、医療いりょう技術ぎじゅつ発展はってんした未来みらい復活ふっかつのぞみをもとめるものである。しかし、先述せんじゅつしたように冷凍れいとう解凍かいとう細胞さいぼう破壊はかい克服こくふくする技術ぎじゅつ目覚めざましい進歩しんぽ必要ひつようとされることにくわえ、すでに破壊はかいされてしまった細胞さいぼう復元ふくげん非常ひじょう困難こんなんであることから、実際じっさいかれらが復活ふっかつするかについては悲観ひかんてき否定ひていてき意見いけんおおい。

あえて比較ひかくするならコールドスリープは架空かくう技術ぎじゅつだが、クライオニクスは(さまざまな問題もんだいがあるものの)既存きそん技術ぎじゅつである。また、コールドスリープはきている人体じんたい対象たいしょうであり、クライオニクスはんだのち人体じんたい対象たいしょうである。

停滞ていたいフィールド[編集へんしゅう]

SF作品さくひんなどでコールドスリープにちか使つかわれかたをするテクノロジーに停滞ていたいフィールド (stasis) というものがある。これは対象たいしょうとき空間くうかんをまるごと停止ていしすることで、肉体にくたい外部がいぶからの影響えいきょう一切いっさいけないようにする技術ぎじゅつである。恒星こうせいあいだ航行こうこうにおける主観しゅかんてき時間じかん短縮たんしゅくや、じゅう犯罪はんざいしゃたいする長期間ちょうきかん冷凍れいとうけいなどのおう用例ようれいがある。ただし、時空じくうあいだ高度こうど操作そうさする技術ぎじゅつ必要ひつようであるため、実現じつげん可能かのうせいはきわめてひくいとかんがえられる。

ラリー・ニーヴン小説しょうせつ『プタヴの世界せかい』(1966ねん)における、ほしじんスリントじん宇宙船うちゅうせん事故じこ発生はっせいしたため、宇宙うちゅうふく内蔵ないぞうされた停滞ていたいフィールドを起動きどうして救助きゅうじょつつもりが発見はっけんされずに15おくねん地球ちきゅう目覚めざめた、などのれいがある。

冷凍れいとう遺体いたいからのクローン作製さくせい[編集へんしゅう]

2008ねん理化学研究所りかがくけんきゅうしょ若山わかやま照彦てるひこらのチームが、死後しご16年間ねんかん冷凍れいとう保存ほぞんされていたマウスからクローンマウスをすことに成功せいこうした。これにより、理論りろんてきには冷凍れいとう保存ほぞんされたひと遺体いたいからクローン人間にんげんすことが可能かのうとなった。この技術ぎじゅつ応用おうようすれば、マンモスなどの絶滅ぜつめつ動物どうぶつ凍結とうけつ死体したいからクローンをつくれる可能かのうせいもあると期待きたいされている。ただし、クローン個体こたいたんにDNAやからだ構造こうぞう一致いっちするだけのもので意識いしき記憶きおく共有きょうゆうきないとかんがえられており、この技術ぎじゅつ人間にんげんもちいても、本人ほんにんにとっては寿命じゅみょうびることを意味いみしない。

登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]

コールドスリープが登場とうじょうする作品さくひん一覧いちらん参照さんしょう

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 冬眠とうみんさま状態じょうたい誘導ゆうどうする新規しんき神経しんけい回路かいろ発見はっけん人工じんこう冬眠とうみん実現じつげんおおきな前進ぜんしん”. 筑波大学つくばだいがく 国際こくさい統合とうごう睡眠すいみん科学かがく研究けんきゅう機構きこう (2020ねん6がつ11にち). 2020ねん8がつ18にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ 冬眠とうみんさま状態じょうたい誘導ゆうどうする新規しんき神経しんけい回路かいろ発見はっけん人工じんこう冬眠とうみん実現じつげんおおきな前進ぜんしん” (PDF). 筑波大学つくばだいがく 理科りかがく研究所けんきゅうじょ (2020ねん6がつ5にち). 2021ねん2がつ26にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d 人間にんげん冬眠とうみんできる?もはやSFでない「人工じんこう冬眠とうみん研究けんきゅう医療いりょう宇宙うちゅう分野ぶんやへの期待きたいも!”. サイエンスZERO(NHK). 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 人工じんこう冬眠とうみん”が2030年代ねんだいにも実用じつよう医療いりょう現場げんばえる”. 三菱電機みつびしでんきBizTimeline(2021ねん5がつ17にちづけ 日刊にっかん工業こうぎょう新聞しんぶん) (2021ねん5がつ17にち). 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん
  5. ^ 人工じんこう冬眠とうみん臓器ぞうきのダメージをふせ可能かのうせい”. 中沢なかざわしん也 - 理化学研究所りかがくけんきゅうしょ (2023ねん1がつ18にち). 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]