十八番じゅうはちばん

十八番じゅうはちばん（じゅうはちばん、おはこ）とは、もっとも得意とくいな芸げいや技わざのこと。転てんじて、その人ひとがよくやる動作どうさやよく口くちにすることば。その人ひとのくせ。数字すうじは常つねに漢かん数字すうじ表記ひょうきにするのが正ただしく、アラビア数字すうじ表記ひょうきは誤あやまり。

語源ごげん

語源ごげんには複数ふくすうの説せつがあるが、それぞれが相互そうごに関係かんけいしている。

1. 歌舞伎かぶきで、初代しょだい團だん十郎じゅうろう・二に代目だいめ團だん十郎じゅうろう・四よん代目だいめ團だん十郎じゅうろうがそれぞれ得意とくいとしていた荒事あらごとの演目えんもく18種しゅを七なな代目だいめ市川いちかわ團だん十郎じゅうろうが選えらんで「歌舞伎かぶき十じゅう八はち番ばん」と呼よんだ。ここから、得意とくいとする芸げいという意味いみで広ひろく用もちいられるようになった。なぜ18という数かずになったのかについては、歌舞伎かぶき界かいでは特別とくべつの演目えんもくを十じゅう八はち番ばんとよんでいた説せつ、「十じゅう八はち界かい」「十八般じゅうはっぱん」のごとき総称そうしょう・代表だいひょうの意いによる説せつ、荒事あらごとの主人公しゅじんこうの年齢ねんれいとの関係かんけいの説せつなど、複数ふくすうの説せつがあるが、どの説せつが正ただしいのかは明あきらかではない。選えらばれた18種しゅは、『勧進かんじん帳ちょう』、『不破ふわ』、『鳴神なるかみ』、『暫』、『不動ふどう』、『嫐』、『象ぞう引』、『助六すけろく』、『押戻』、『外郎ういろう売うり』、『矢やの根ね』、『関せき羽はね』、『景けい清きよし』、『七ななつ面めん』、『毛抜けぬき』、『解脱げだつ』、『蛇へび柳やなぎ』、『鎌髭かまひげ』である。
2. 阿弥陀如来あみだにょらいが仏ふつになる修行しゅぎょうをしている時ときに立たてられた48種類しゅるいの誓ちかい（弥わたる陀の四よん十じゅう八はち願ねがい）の18番目ばんめが「念仏ねんぶつをする人達ひとたちを必かならず救済きゅうさいする」というものであり、これ（生いけとし生いけるもの全すべてを救すくう）が他たの諸しょ仏ほとけの立たてられた誓ちかいより突出とっしゅつしていることから、十八番じゅうはちばんが得意とくいなものの代名詞だいめいしとなった。
3. 武士ぶしが身みに着つけるべき武芸ぶげいの種類しゅるい（刀かたな、弓ゆみ、組くみなど）が、全部ぜんぶで18（武芸十八般ぶげいじゅうはっぱん）ある事ことから来きている。この場合ばあいは「とっておきのひとつ」ではなく、18種類しゅるい全すべてに優すぐれた「多才たさい」の意味いみも含ふくまれる。こちらは別べつに「武芸ぶげい百般ひゃっぱん」とも呼よばれる。
4. 江戸えど時代じだいでは、高価こうかな書画しょがや茶器ちゃきなどを丁重ていちょうに箱はこに入いれて、「真しん作さくである」ことを示しめす鑑定かんてい者しゃの署名しょめいである「箱書はこがき」を添そえた。ここから、「本物ほんものの芸げいであると認定にんていされた」という意味いみで、「おはこ」と言いうようになった。

なお、十八番じゅうはちばんと書かいて「おはこ」と読よませた初出しょしゅつは、柳やなぎ亭てい種彦たねひこが文化ぶんか12年ねん（1815年ねん）から天保てんぽう2年ねん（1831年ねん）にかけて書かいた『正本しょうほん製せい』（しょうほんじたて）。また七なな代目だいめ團だん十じゅう郎ろうが歌舞伎かぶき十じゅう八はち番ばんを初はじめて公表こうひょうしたのは天保てんぽう3年ねん（1832年ねん）のことで、この頃ころから広ひろまった流行りゅうこう表現ひょうげんだったことが分わかる。

外部がいぶリンク

• 七なな代目だいめ團だん十じゅう郎ろうの歌舞伎かぶき十じゅう八はち番ばん