資本しほんきん

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資本しほんきん(しほんきん、えい: share capital, stated capital, legal capital, どく: Gezeichnetes Kapital, Grundkapital, Stammkapital, ふつ: Capital social)は、出資しゅっししゃ会社かいしゃはらんだ金額きんがく払込はらいこみ資本しほん)を基礎きそとして設定せっていされる一定いっていがく会計かいけいおよび会社かいしゃほうにおける用語ようご簿記ぼき勘定かんじょう科目かもくひとつ)。

概要がいよう[編集へんしゅう]

資本しほんきんは、会社かいしゃ財産ざいさん確保かくほのために設定せっていされる計算けいさんじょうかずがくであって、現実げんじつ会社かいしゃ財産ざいさんとはことなる。会社かいしゃ財産ざいさんつね変動へんどうするのにたいし、資本しほんきんがくは、法律ほうりつ会社かいしゃほう)の規定きていもとづいて算出さんしゅつされるため、現実げんじつ会社かいしゃ財産ざいさん連動れんどうして増減ぞうげんすることはない。

日本にっぽん会社かいしゃでは、貸借たいしゃく対照たいしょうひょう純資産じゅんしさんのうち、株式会社かぶしきがいしゃにあっては株主かぶぬし資本しほん持分もちぶん会社かいしゃにあっては社員しゃいん資本しほん構成こうせいするものとされている(会社かいしゃ計算けいさん規則きそくだい76じょう)。資本しほんきんがくは、原則げんそくとして、会社かいしゃ設立せつりつ募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうさい株主かぶぬしとなるもの会社かいしゃ払込はらいこまた給付きゅうふをした財産ざいさんがくであるが(だい445じょう)、準備じゅんびきん剰余じょうよきん資本しほん組入くみいとうによっても増額ぞうがくする。また、資本しほんきんがく登記とうき事項じこうとされている(会社かいしゃほうだい911じょうだい3こうだい5ごう)。

株式かぶしき資本しほんきん関係かんけい[編集へんしゅう]

資本しほんきんかんするしょ原則げんそく[編集へんしゅう]

従来じゅうらいは、資本しほんきんかんして、債権さいけんしゃ保護ほごのためにつぎのような原則げんそくがあると説明せつめいされていた[1]

資本しほん維持いじ原則げんそく
資本しほんきんおよ準備じゅんびきん)のがく相当そうとうする財産ざいさん維持いじされなければならないとする原則げんそく#資本しほん維持いじ原則げんそく参照さんしょう)。
資本しほん不変ふへん原則げんそく
資本しほんきんがく会社かいしゃ自由じゆう減少げんしょうさせることはできないとする原則げんそく#資本しほんきん減少げんしょう参照さんしょう)。
資本しほん充実じゅうじつ原則げんそく
出資しゅっしおこなわれるさい資本しほんきんおよ準備じゅんびきん)のがく相当そうとうする財産ざいさん実際じっさい会社かいしゃ拠出きょしゅつされなければならないとする原則げんそく現物げんぶつ出資しゅっし場合ばあい検査けんさやく調査ちょうさおこなわれるのは、この原則げんそくのためである[2]。ただし、日本にっぽんでは、合資ごうし会社かいしゃ有限ゆうげん責任せきにん社員しゃいんには出資しゅっし全額ぜんがく払込はらいこみ主義しゅぎ採用さいようされておらず、合同ごうどう会社かいしゃでは現物げんぶつ出資しゅっしさい調査ちょうさ必要ひつようとされていない。
資本しほん確定かくてい原則げんそく
定款ていかん資本しほんきんがく確定かくていし、予定よていされた資本しほんきんがく相当そうとうする財産ざいさん拠出きょしゅつされなければ、設立せつりつ増資ぞうし効力こうりょくしょうじないとする原則げんそく無責任むせきにん設立せつりつ増資ぞうし防止ぼうししようとするものである[3]。ただし、日本にっぽん現行げんこう会社かいしゃほうでは、資本しほんきんがく定款ていかん絶対ぜったいてき記載きさい事項じこうではなく、募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうかんし、打切うちき発行はっこう制度せいどだい208じょうだい5こう)が導入どうにゅうされている。

資本しほん維持いじ原則げんそく[編集へんしゅう]

資本しほんきんは、会社かいしゃ債権さいけんしゃ保護ほごのために、出資しゅっしされた財産ざいさんのうちの一定いってい金額きんがく以上いじょう会社かいしゃ財産ざいさんとして保有ほゆうさせる仕組しくみである[4]。したがって、剰余じょうよきん分配ぶんぱい可能かのうがくは、純資産じゅんしさんがくから、資本しほんきん準備じゅんびきんとう控除こうじょしたがく剰余じょうよきん)を基準きじゅんにして算出さんしゅつされる。すなわち、貸借たいしゃく対照たいしょうひょうじょう純資産じゅんしさんがく資本しほんきん準備じゅんびきんとう総額そうがく上回うわまわ場合ばあいでなければ、株主かぶぬしへの配当はいとうとう財産ざいさん分配ぶんぱいをしてはならない(資本しほん維持いじ原則げんそく)。この資本しほん維持いじ原則げんそくは、大陸たいりくほうけい会社かいしゃほうには共通きょうつうして存在そんざいし(ドイツ株式かぶしきほう (Aktiengesetz) だい57じょう、ドイツ有限ゆうげん会社かいしゃほう (Gesetz betreffend die Gesellschaften mit beschränkter Haftung) だい30じょう、フランス商法しょうほう (Code de commerce) だい232-11じょうとう[3]、また、イギリスにおいても1985ねん会社かいしゃほう (Companies Act 1985) 以来いらい資本しほん維持いじ規定きてい存在そんざいする(2006ねん会社かいしゃほう (Companies Act 2006) だい830じょう)が、アメリカ各州かくしゅう会社かいしゃほうには、存在そんざいしない[3]

資本しほんきん減少げんしょう[編集へんしゅう]

資本しほんきんがく自由じゆう減少げんしょうさせることができると、資本しほん維持いじ原則げんそく骨抜ほねぬきとなり、会社かいしゃ債権さいけんしゃ利益りえきそこなうおそれがあるため、それをふせ特別とくべつのルールが存在そんざいする(資本しほん不変ふへん原則げんそく)。

日本にっぽんにおいては、株式会社かぶしきがいしゃ資本しほんきんがく減少げんしょうさせるためには、原則げんそくとして株主かぶぬし総会そうかい特別とくべつ決議けつぎようし、債権さいけんしゃ保護ほご手続てつづきなければならない(だい447じょう)。資本しほん維持いじ原則げんそく存在そんざいするドイツやフランスにおいても、同様どうよう手続てつづき必要ひつようとされる(ドイツ株式かぶしきほうだい222じょう以下いか、ドイツ有限ゆうげん会社かいしゃほうだい58じょう、フランス商法しょうほうだい223-34じょうだい225-204じょうだい225-205じょう[5]

イギリスでは、株主かぶぬし総会そうかい特別とくべつ決議けつぎくわえ、裁判所さいばんしょ認可にんか必要ひつようとされる(イギリス会社かいしゃほうだい641じょう)。

他方たほう、アメリカには資本しほん維持いじ原則げんそくがないため、取締役とりしまりやくかい決議けつぎによって資本しほん減少げんしょうできるしゅうおおく、債権さいけんしゃ保護ほご手続てつづき必要ひつようとされていない[5]

最低さいてい資本しほんきん制度せいど[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、かつては、会社かいしゃ設立せつりつさいして最低さいてい資本しほんきん制度せいどはなかったが、1990ねん改正かいせいきゅう商法しょうほう最低さいてい資本しほんきん制度せいど規定きていされ、株式会社かぶしきがいしゃはそれまでの事実じじつじょう35まんえんから資本しほんきん1000まんえん以上いじょうきゅう商法しょうほうだい168じょうの4)、有限ゆうげん会社かいしゃはそれまでの10まんえんから資本しほんきん300まんえん以上いじょうきゅう有限ゆうげん会社かいしゃほうだい9じょう)が必要ひつようとなった。

2003ねん2がつしん事業じぎょう創出そうしゅつ促進そくしんほう改正かいせいされ、特例とくれい措置そちとして資本しほんきん1えんでの株式会社かぶしきがいしゃ有限ゆうげん会社かいしゃ設立せつりつ法的ほうてきには可能かのうとなり、きゅう商法しょうほうきゅう有限ゆうげん会社かいしゃほう統合とうごうして2006ねん5がつ施行しこうされた会社かいしゃほうでは、最低さいてい資本しほんきん制度せいど廃止はいしされた。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 神田かんだ (2009) 262ぺーじ
  2. ^ 伊藤いとう (2009) 258ぺーじ
  3. ^ a b c 江頭えがしら (2006) 34ぺーじ
  4. ^ 江頭えがしら (2006) 33ぺーじ
  5. ^ a b 江頭えがしら (2006) 615ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 伊藤いとうやすし大杉おおすぎ謙一けんいち田中たなかわたる松井まつい秀征ひでゆき (2009) 『会社かいしゃほう有斐閣ゆうひかく
  • 江頭えがしら憲治けんじろう (2006) 『株式会社かぶしきがいしゃほう有斐閣ゆうひかく
  • 神田かんだ秀樹ひでき (2009) 『会社かいしゃほうだい11はん〕』 弘文こうぶんどう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]