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有機ゆうきセレン化合かごうぶつ

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有機ゆうきセレン化合かごうぶつ(ゆうきセレンかごうぶつ)は炭素たんそセレン (Se) の化学かがく結合けつごうふく化合かごうぶつである。それらの性質せいしつ反応はんのうせい有機ゆうきセレン化学かがくあつかわれる[1][2][3]。セレンは酸素さんそ (O) や硫黄いおう (S) とおなじくだい16ぞく元素げんそであり、それらの化学かがくてき性質せいしつ類似るいじするところもある。

セレンは -2 から +6 までの酸化さんかすうをとることができる。周期しゅうきひょうれつくだるにつれて結合けつごうエネルギーよわくなり(C−Se結合けつごうは234 kJ/mol、C−S結合けつごうは272 kJ/mol)、結合けつごうながくなる(C−Se結合けつごうは198 pm、C−S結合けつごうは181 pm、C−O結合けつごうは141 pm)。セレンの化合かごうぶつ硫黄いおう類縁るいえんたいよりももとめかくせいたかく、より酸性さんせいである。YH2かた化合かごうぶつpKaは Y = O の場合ばあい16、Y = S の場合ばあい7、Y = Se の場合ばあい3.8である。スルホキシドくらべ、対応たいおうするセレノキシドはβべーたプロトンがあると不安定ふあんていになり、この性質せいしつはセレンを使つかった有機ゆうき化学かがく反応はんのうとくにセレノキシド酸化さんかやセレノキシドだつはなれ利用りようされる。

最初さいしょたんはなされた有機ゆうきセレン化合かごうぶつは1836ねんのジエチルセレニドである[4]

セレノール

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セレノール(RSeH)はアルコールチオールのセレン類縁るいえんたいである。毒性どくせいがあり、通常つうじょう不快ふかいしゅうつ。フェニルセレノール(セレナフェノール)はチオフェノールよりも酸性さんせいたかく(pKaはそれぞれ5.9および6.5)、酸化さんかされてジセレニドになりやすい。フェニルマグネシウムブロミドと単体たんたいセレンを反応はんのうさせたのち酸性さんせい後処理あとしょりおこなうとられる。

ジセレニド

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ジセレニド(RSeSeR)はペルオキシドジスルフィドのセレン類縁るいえんたいであり、セレノールおよびRSeCl、RSeBrといったセレニルハライド合成ごうせいするさい出発しゅっぱつ物質ぶっしつとしてもちいられる。

セレニド

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セレニド(RSeR)はエーテルスルフィドのセレン類縁るいえんたいで、無機むきセレニド有機ゆうき置換ちかんもとったものである。炭素たんそとセレンの電気でんき陰性いんせいはほぼひとしい(ともに2.55)ためセレニドは両性りょうせい化合かごうぶつであり、もとめかくざいもとめ電子でんしざいのいずれとしても作用さようする。ハロゲンアルキル R'−X にたいしてはもとめかくざいとして反応はんのうしてセレノニウムしお R'RRSe+Xあたえ、有機ゆうきリチウム R'Li との反応はんのうではもとめ電子でんしざいとして作用さようし、セレンのそらの4d軌道きどうによって安定あんていされたカルボアニオンをアート錯体さくたい R'RRSeLi+生成せいせいする。このアート錯体さくたい分解ぶんかいしてセレニドにもどるが、そのさいはい交換こうかんこったR'SeRも生成せいせいする。

セレノキシド

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セレノキシド(RSe(=O)R)はスルホキシドのセレン類縁るいえんたいである。さらに酸化さんかされるとセレノン RSeO2R となる。これはスルホンのセレン類縁るいえんたいである。

セレノキシド酸化さんか

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アリル酸化さんかはアリルせいメチレンもと酸化さんかしてアリルアルコールまたはケトンとするはんおうである。二酸化にさんかセレンはこの反応はんのうにしばしば使つかわれる試薬しやくである。

セレノキシド酸化

このたね反応はんのうフリーラジカル経由けいゆすることがおおいが、二酸化にさんかセレンをもちいる場合ばあいには協奏きょうそうてきペリ環状かんじょう反応はんのうとして進行しんこうすることもある。最初さいしょ段階だんかいはアリルプロトンがセレンじょううつエン反応はんのうで、[2,3]シグマトロピー転位てんいがこれにつづく。

二酸化にさんかセレンによる酸化さんかは、触媒しょくばいりょうのセレン化合かごうぶつ犠牲ぎせい試薬しやく過酸化水素かさんかすいそなどのきょう酸化さんかざい存在そんざいおこなうことができる。酸化さんかざいとしてはセレンさん H2SeO3クロロクロムさんピリジニウムられる。

ケトンなどはジケトンなどのαあるふぁ-カルボニル化合かごうぶつ変換へんかんされる。

セレノキシドだつはなれ

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βべーた-プロトンを基質きしつたいしては酸化さんかののちだつ離反りはんおうこしてアルケンとセレネンさんあたえる。反応はんのう寄与きよする5つの部位ぶい平面へいめんじょう位置いちするためsynだつはなれこる。酸化さんかざいとしては過酸化水素かさんかすいそオゾンMCPBAなどが使つかわれる。この反応はんのうはしばしばケトンをエノンに変換へんかんするのに利用りようされる。

セレノキシド脱離

グリエコだつはなれ (Grieco elimination) はo-ニトロフェニルセレノシアナートとトリブチルホスフィンをもちいる、セレノキシドだつはなれ一種いっしゅである。

だつセレン

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さんいんたまき化合かごうぶつセレニランオキシランのセレン類縁るいえんたいであるが、オキシランとことなり速度そくどろんてき不安定ふあんていで、酸化さんかることなく直接ちょくせつセレンがはずれてアルケンとなる。この性質せいしつ有機ゆうき合成ごうせい応用おうようされている[5]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Krief, A.; Hevesi, L. Organoselenium Chemistry I. Functional Group Transformations; Springer: Berlin, 1988. ISBN 0-387-18629-8.
  2. ^ In The Chemistry of Organic Selenium and Tellurium Compounds; Patai, S., Rappoport, Z., Eds; John Wiley and Sons: Chichester, 1986; Vol. 1. ISBN 0-471-90425-2.
  3. ^ Paulmier, C. In Selenium Reagents and Intermediates in Organic Synthesis; Baldwin, J. E., Ed; Pergamon Books Ltd.: New York, 1986. ISBN 0-08-032484-3.
  4. ^ Löwig, C. J. Pogg. Ann. 1836, 37, 552.
  5. ^ Młochowski, J.; Kloc, K.; Lisiak, R.; Potaczek, P.; Wójtowicz, H. "Developments in the chemistry of selenaheterocyclic compounds of practical importance in synthesis and medicinal biology". Arkivoc 2007, (vi), 14–46 (JE-1901MR). リンク

関連かんれん項目こうもく

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