森もり五ご六ろく

森もり 五ご六ろく（もり ごろく、1885年ねん（明治めいじ18年ねん）10月がつ23日にち - 1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）12月31日にち）は、日本にっぽんの陸軍りくぐん軍人ぐんじん。最終さいしゅう階級かいきゅうは陸軍りくぐん少将しょうしょう。

森もり　五ご六ろく
生誕せいたん	1885年ねん10月23日にち 日本にっぽん 福島ふくしま県けん
死没しぼつ	1973年ねん12月31日にち
所属しょぞく組織そしき	大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん
軍ぐん歴れき	1904年ねん - 1935年ねん
最終さいしゅう階級かいきゅう	陸軍りくぐん少将しょうしょう

経歴けいれき

福島ふくしま県けん出身しゅっしん。森もり立りつ二に郎ろうの長男ちょうなんとして生うまれる。仙台せんだい陸軍りくぐん地方ちほう幼年ようねん学校がっこう、陸軍りくぐん中央ちゅうおう幼年ようねん学校がっこうを経へて、1904年ねん（明治めいじ37年ねん）10月がつ、陸軍りくぐん士官しかん学校がっこう（16期き）を永田ながた鉄山てつざんに次ついで2番ばん/549名めいで卒業そつぎょうする。同年どうねん11月がつ、歩兵ほへい少尉しょういに任官にんかんし歩兵ほへい第だい31連隊れんたい付づけとなる。日にち露ろ戦争せんそうに出征しゅっせい後ご、陸士りくし付づけ、歩兵ほへい第だい31連隊れんたい付づけなどを経へて、1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）11月、陸軍りくぐん大だい学校がっこう（25期き）を卒業そつぎょうし歩兵ほへい第だい31連隊れんたい中隊ちゅうたい長ちょうに就任しゅうにん。

1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）5月がつ、近衛このえ師団しだん参謀さんぼうとなり、参謀さんぼう本部ほんぶ員いん、フランス駐在ちゅうざい（フランス陸軍りくぐん大だい学校がっこう卒業そつぎょう）を務つとめ、1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）4月がつ、歩兵ほへい少佐しょうさに進すすむ。同年どうねん12月がつ、陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶ付づけ（欧州おうしゅう出張しゅっちょう）、教育きょういく総監そうかん部ぶ付づけ、同どう部課ぶか員いんなどを歴任れきにんし、1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）8月がつ、歩兵ほへい中佐ちゅうさに昇進しょうしんし教育きょういく総監そうかん部ぶ付づけとなる。歩兵ほへい第だい33連隊れんたい付づけ、第だい3師団しだん司令しれい部ぶ付づけを経へて、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）7月がつ、第だい2師団しだん司令しれい部ぶ付づけ（東北とうほく帝国ていこく大学だいがく配属はいぞく将校しょうこう）となる。1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）7月がつ、歩兵ほへい大佐たいさに進すすみ歩兵ほへい第だい41連隊れんたい長ちょうに就任しゅうにん。第だい20師団しだん参謀さんぼう長ちょうを経へて、1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）4月がつ、陸軍りくぐん少将しょうしょうに進級しんきゅうし歩兵ほへい第だい21旅団りょだん長ちょうとなる。1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）3月がつ、近衛このえ師団しだん司令しれい部ぶ付づけに転てんじ、1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）3月がつ、待命たいめいとなり、同月どうげつ、予備よび役やくに編入へんにゅうされた。1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）11月28日にち、公職こうしょく追放ついほう仮かり指定していを受うけた。

実み役やく停年ていねん名簿めいぼ（昭和しょうわ6年版ねんばん）における森もり五ご六ろく歩兵ほへい大佐たいさ

大江おおえ志乃しの夫おっと著ちょ「昭和しょうわの歴史れきし③」及および松本まつもと清張せいちょう著ちょ「昭和しょうわ史し発掘はっくつ③」の”桜さくら会かいの野望やぼう”の章しょうでは、森もりについて次つぎのように触ふれている。

「昭和しょうわの歴史れきし③」

大正たいしょう十じゅう四よん年ねん九きゅう月がつ一いち日にち調ちょうの『実み役やく停年ていねん名簿めいぼ』で、陸士りくし一いち六ろく期生きせいは進級しんきゅうの早はやいものが中佐ちゅうさ、遅おそいものが少佐しょうさである。中佐ちゅうさの総員そういんは六ろく八はち〇人にんである。一いち六ろく期きのトップは中佐ちゅうさの序列じょれつ一いち三さん三さん位いの永田ながた（鉄山てつざん）、二に位いが同どう一いち三さん九きゅう位いの森もり五ご六ろく（少将しょうしょうで予備よび役やく）、三さん位いが同どう一いち四よん四よん位いの藤岡ふじおか万蔵まんぞう（参謀さんぼう本部ほんぶ課長かちょう在任ざいにん中ちゅう殉職じゅんしょく、少将しょうしょうに進級しんきゅう）、四よん位いが同どう一いち五ご一いち位いの小畑おばた（敏さとし四郎しろう）、五ご位いが同どう一いち五ご八はち位いの岡村おかむら（寧やすし次じ）、六ろく位いが同どう一いち六ろく三さん位いの土肥どい原はら賢二けんじである。これら六ろく人にんの同期生どうきせいは僅差きんさで出世しゅっせ競争きょうそうのトップグループをかたちづくっていた。のちの大将たいしょう板垣いたがき征四郎せいしろうは中佐ちゅうさの序列じょれつ二に二に八はち位いで同期生どうきせいの一いち五ご位いにある。大佐たいさで殉職じゅんしょくして早はやく進級しんきゅうした藤岡ふじおかをのぞいて、少将しょうしょうに同時どうじ進級しんきゅうしたのは、進級しんきゅうが早はやい工兵こうへいと航空こうくう兵へいの二人ふたりを別べつにすれば右みぎの五ご人にんだけである。

二に位いの森もりは旅団りょだん長ちょう在任ざいにん中ちゅうに病気びょうきになったのか、近衛このえ師団しだん司令しれい部ぶ附ふという休職きゅうしょく同様どうようの地位ちいに一いち年間ねんかんおかれたのち、待命たいめい、予備よび役やくとなった。

「昭和しょうわ史し発掘はっくつ③」

（満州まんしゅう事変じへんのとき）朝鮮ちょうせん軍ぐんの出動しゅつどうは、勅命ちょくめいなしで、林はやし(銑ずく十じゅう郎ろう)軍ぐん司令しれい官かんの独断どくだんであった。事件じけん勃発ぼっぱつの報ほうが政府せいふに伝つたわると、内閣ないかくでは大だいあわてに閣議かくぎを開ひらき、早はやくも事件じけん不拡大ふかくだいの方針ほうしんを立たて、これを現地げんち軍ぐんに急電きゅうでんした。しかし、板垣いたがき関東軍かんとうぐん参謀さんぼうはこれを無視むしした。むろんのこと越境えっきょうの勅命ちょくめいが出でるはずはない。これまで世上せじょうでいわれているところでは、軍ぐん司令しれい官林かんばやし銑ずく十じゅう郎ろうはロボットで、実際じっさいは朝鮮ちょうせん軍ぐん高級こうきゅう参謀さんぼうの神田かんだ正種まさたね大佐たいさが越境えっきょう命令めいれい者しゃだということになっている。当時とうじ、朝鮮ちょうせんには竜山たつやまの二に十じゅう師団しだん、羅ら南みなみの十じゅう九きゅう師団しだんとがあった。出動しゅつどうしたのは竜山たつやま二に十じゅう師団しだんのうち一いち個こ旅団りょだんと特別とくべつ部隊ぶたいの混成こんせいだったが、二に十じゅう師団しだん参謀さんぼう長ちょうは森もり五ご六ろく大佐たいさである。森もりは林はやし軍司ぐんじ令れい官かんから出動しゅつどう命令めいれいを受うけたものの、勅命ちょくめいが来きていないのを知しっているので大おおいに悩なやんだ。軍ぐん司令しれい部ぶからの出動しゅつどう命令めいれいは柳やなぎ条じょう湖みずうみ事件じけんの起おこった十じゅう八はち日にちにはすでに発はっせられ、とにかく編成へんせいは十じゅう九きゅう日にちのうちに終おわって、一応いちおう鴨かも緑みどり江こうの南岸なんがん、新しん義ぎ州しゅうまで到達とうたつしている。ここから渡河とかすれば勅命ちょくめいなしの越境えっきょうとなる。

林はやし軍司ぐんじ令れい官かんからは、早急そうきゅうに渡河とかせよ、との命令めいれいが来きているものの、勅命ちょくめいいまだなしを知しっている。森もりはぐずぐずしている。たとえ、勅命ちょくめいはなくとも、師団しだん参謀さんぼう長ちょうの森もりは軍ぐん司令しれい官かんの命令めいれいだから、それに従したがって責任せきにんはないはずなのに、彼かれには納得なっとくできなかったのだ。そのため、後日ごじつ、彼かれは他人たにんからバカだといわれた。この森もり五ご六ろくは、各かく大学だいがくに教官きょうかん配属はいぞくの制度せいどが作つくられた最初さいしょの東京とうきょう帝国ていこく大学だいがくの配属はいぞく将校しょうこうで、それだけに相当そうとうなインテリ将校しょうこうだったといわれている。なお、配属はいぞく将校しょうこうに対たいして東大とうだい側がわが抵抗ていこうを試こころみたことは世よに知しられている通とおりだ。

二に十じゅう師団しだん参謀さんぼう長森ながもりインテリ大佐たいさが河かわを渡わたるか渡わたらざるべきか、ハムレットのように迷まよったため、この一いち個こ旅団りょだんはむなしく三さん日間にちかん新あたらし義よし州しゅうに足踏あしぶみしてしまった。このことがたたって、のち、森もりは予備よび役やく編入へんにゅうとなっている。

＜余談よだん＞

※ 森もりが予備よび役やく編入へんにゅうとなったのは、林はやし銑ずく十じゅう郎ろう大将たいしょうが陸軍りくぐん大臣だいじんのとき（1934年ねん1月がつ～1935年ねん9月がつ）である。

栄典えいてん

• 1904年ねん（明治めいじ37年ねん）12月8日にち - 正せい八はち位い

著作ちょさく

• 『憲政けんせいと軍人ぐんじん』日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ、1936年ねん。

参考さんこう文献ぶんけん

• 秦はた郁いく彦編へん『日本にっぽん陸海りくかい軍ぐん総合そうごう事典じてん』第だい2版はん、東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい、2005年ねん。
• 福川ふくかわ秀樹ひでき『日本にっぽん陸軍りくぐん将官しょうかん辞典じてん』芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、2001年ねん。
• 外山とやま操みさお編へん『陸海りくかい軍ぐん将官しょうかん人事じんじ総覧そうらん 陸軍りくぐん篇へん』芙蓉ふよう書房しょぼう出版しゅっぱん、1981年ねん。
• 大江おおえ志乃しの夫おっと『昭和しょうわの歴史れきし③・天皇てんのうの軍隊ぐんたい』小学館しょうがくかん、1988年ねん
• 松本まつもと清張せいちょう『昭和しょうわ史し発掘はっくつ③』文春ぶんしゅん文庫ぶんこ