永なが州しゅう路ろ

永なが州しゅう路ろ（えいしゅうろ）は、中国ちゅうごくにかつて存在そんざいした路みち。大だい元もとウルスの時代じだいに現在げんざいの湖南こなん省しょう永なが州しゅう市し一帯いったいに設置せっちされた。治ち所しょは零れい陵りょう県けんで、大元おおもとウルスの行政ぎょうせい上じょうは湖みずうみ広こう等とう処しょ行ゆき中書ちゅうしょ省しょうに属ぞくした。

華北かほくの平ひら陽ひ路ろ（晋すすむ寧やすし路ろ）とともに、チンギス・カンの長男ちょうなんのジョチを始祖しそとするジョチ・ウルスの投下とうか領りょうであった^[1]。

歴史れきし

唐とう代だいの永なが州しゅうを前身ぜんしんとする。モンゴル帝国ていこく第だい5代だい皇帝こうていセチェン・カアン（クビライ）によって南みなみ宋そうが平定へいていされると、1276年ねん（至いたり元もと13年ねん）に安やす撫なで司しが置おかれ、更さらに1277年ねん（至いたり元もと14年ねん）に永なが州しゅう路ろ総そう管かん府ふが置おかれた^[2]。

南みなみ宋そうの平定へいていが完了かんりょうするのと時ときを同おなじくして、北方ほっぽうでは反はんクビライ派はの王族おうぞくが叛旗はんきを翻ひるがえし、クビライの子このノムガンを捕虜ほりょにするという事件じけんが起おこった（シリギの乱らん）。この頃ころ、ジョチ・ウルスとクビライ家か（大元おおもとウルス）は関係かんけいが悪化あっかしており、叛乱はんらんを起おこしたシリギらは捕虜ほりょとしたノムガンをジョチ・ウルスの下したに送おくり、ノムガンは数すう年ねんにわたって虜囚りょしゅうの身みとなった。「シリギの乱らん」自体じたいはクビライの迅速じんそくな対応たいおうによって鎮圧ちんあつされたものの、その残党ざんとうが中央ちゅうおうアジアのカイドゥの下したに逃のがれ、カイドゥの勢力せいりょく（カイドゥ・ウルス）は更さらに大だい規模きぼなものとなった。それまでカイドゥ・ウルスと協力きょうりょく関係かんけいにあったジョチ・ウルスはその急速きゅうそくな拡大かくだいに危機きき感かんを覚おぼえ、方針ほうしんを変更へんこうしてノムガンをクビライの下したに送おくり返かえし、大元おおもとウルスとの友好ゆうこう関係かんけいを復活ふっかつさせた。そしてその直後ちょくご、1281年ねん（至いたり元もと18年ねん）にジョチ・ウルスは江南こうなん投下とうか領りょうとして永なが州しゅうの6万まん戸こを与あたえられた^[3]。「シリギの乱らん」に関かかわった諸王しょおうの多おおくが江南こうなん投下とうか領りょうを与あたえられていないのに対たいし、ジョチ・ウルスが永なが州しゅうを与あたえられたのは、ノムガンを送おくり返かえしたことで大元おおもとウルスとの関係かんけいが良好りょうこうになったためと考かんがえられている^[4]。

1336年ねん（後こう至いたり元もと2年ねん）、時ときのジョチ・ウルス当主とうしゅウズベク・ハンは大だい元もとウルスに使者ししゃを派遣はけんし、それまで中止ちゅうしされていたジョチ・ウルス分地ぶんち（投下とうか領りょう）の歳とし賜たまものの輸送ゆそうを再開さいかいさせるよう要求ようきゅうした。しかし、既すでにこれを管轄かんかつする公的こうてき機関きかんがなかったため、1337年ねん（後こう至いたり元もと3年ねん）に総そう管かん府ふが設置せっちされた。1341年ねん（至いたり正ただし元年がんねん）にウズベク・ハンが亡なくなりジャーニー・ベク・ハンが立たつと、晋すすむ寧やすし路ろの平たいら陽よう・晋すすむ州しゅうと、永なが州しゅう路ろ分ぶんの歳とし賦ふ2400錠じょうのジョチ・ウルスへの送付そうふが1345年ねん（至いたり正せい5年ねん）から始はじめられた^[5]^[6]。

朱しゅ元もと璋あきらが明朝みょうちょうを建国けんこくすると、永なが州しゅう路ろは永なが州しゅう府ふと改あらためられた。

管轄かんかつ州しゅう県けん

永なが州しゅう路ろには録ろく事ごと司し、3県けんが設置せっちされていた。

3県けん

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脚注きゃくちゅう

^ 植松うえまつ1997, p. 101,110.
^ 『元もと史し』巻まき62志こころざし14地理ちり志こころざし5,「永なが州しゅう路ろ、下した。唐から改あらため零れい陵りょう郡ぐん為永ためなが州しゅう、宋そう因いん之の。元もと至いたり元もと十じゅう三さん年ねん、置おけ安やす撫なで司し。十じゅう四よん年ねん、改あらため永なが州しゅう路ろ総そう管かん府ふ。戸と五ご万まん五ご千せん六ろく百ひゃく六ろく十じゅう六ろく、口くち一いち十じゅう万まん五ご千せん八はち百ひゃく六ろく十じゅう四よん。領りょう司し一いち・県けん三さん。本ほん路ろ屯田とんでん一いち百ひゃく三さん頃ごろ」
^ 『元もと史し』巻まき95志こころざし44食しょく貨志3,「太ふとし祖そ長子ちょうし朮うけら赤あか大王だいおう位い……江南こうなん戸と鈔、至いたり元もと十じゅう八はち年ねん、分ぶん撥ばち永なが州しゅう六ろく万まん戸こ、計けい鈔二に千せん四よん百ひゃく錠じょう」
^ 村岡むらおか1997, p. 18-19.
^ 『元もと史し』巻まき117列伝れつでん4朮うけら赤あか伝でん,「朮うけら赤あか者しゃ、太ふとし祖そ長子ちょうし也。……至いたり元もと二に年ねん、月つき即そく別べつ遣や使つかい来らい求もとめ分地ぶんち歳とし賜たまもの、以賑給きゅう軍ぐん站、京師けいし元もと無む所領しょりょう府ふ治ち。三さん年ねん、中書ちゅうしょ請置総そう管かん府ふ。給きゅう正せい三さん品ひん印しるし。至いたり正せい元年がんねん、月つき即そく別べつ薨、子こ札さつ尼あま別べつ嗣。其位下か旧きゅう賜たまもの平たいら陽よう・晋すすむ州しゅう・永なが州しゅう分地ぶんち、歳とし賦ふ中ちゅう統すべ鈔二に千せん四よん百ひゃく錠じょう、自じ至いたり元もと五年己卯歳始給之」
^ 村岡むらおか2002,162-163頁ぺーじ
^ 『元もと史し』巻まき62志こころざし14地理ちり志こころざし5,「永なが州しゅう路ろ……領りょう司し一いち・県けん三さん。本ほん路ろ屯田とんでん一いち百ひゃく三さん頃ごろ。録ろく事ごと司し。県けん三さん：零れい陵りょう、上うえ。倚郭。東ひがし安やす、上うえ。祁陽。中なか」

参考さんこう文献ぶんけん

植松うえまつ正ただし『元もと代だい江南えな政治せいじ社会しゃかい史し研究けんきゅう』汲古書院しょいん〈汲古叢書そうしょ〉、1997年ねん。ISBN 4762925101。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID:000002623928。
杉山すぎやま正明まさあき『モンゴル帝国ていこくと大元おおもとウルス』京都大学きょうとだいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱん会かい〈東洋とうよう史し研究けんきゅう叢くさむら刊かん; 65(新装しんそう版ばん3)〉、2004年ねん。ISBN 4876985227。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID:000007302776。
村岡むらおか倫りん「元もと代だい江南こうなん投下とうか領りょうとモンゴリアの遊牧ゆうぼく集団しゅうだん」『龍谷りゅうざく紀要きよう』第だい18巻かん第だい2号ごう、龍谷大りゅうこくだい学がく、1997年ねん3月がつ、13-30頁ぺーじ、CRID 1573950401567310720、ISSN 02890917。

[FOOTNOTE植松1997101,110-1] 植松うえまつ1997, p. 101,110.

[2] 『元もと史し』巻まき62志こころざし14地理ちり志こころざし5,「永なが州しゅう路ろ、下した。唐から改あらため零れい陵りょう郡ぐん為永ためなが州しゅう、宋そう因いん之の。元もと至いたり元もと十じゅう三さん年ねん、置おけ安やす撫なで司し。十じゅう四よん年ねん、改あらため永なが州しゅう路ろ総そう管かん府ふ。戸と五ご万まん五ご千せん六ろく百ひゃく六ろく十じゅう六ろく、口くち一いち十じゅう万まん五ご千せん八はち百ひゃく六ろく十じゅう四よん。領りょう司し一いち・県けん三さん。本ほん路ろ屯田とんでん一いち百ひゃく三さん頃ごろ」

[3] 『元もと史し』巻まき95志こころざし44食しょく貨志3,「太ふとし祖そ長子ちょうし朮うけら赤あか大王だいおう位い……江南こうなん戸と鈔、至いたり元もと十じゅう八はち年ねん、分ぶん撥ばち永なが州しゅう六ろく万まん戸こ、計けい鈔二に千せん四よん百ひゃく錠じょう」

[FOOTNOTE村岡199718-19-4] 村岡むらおか1997, p. 18-19.

[5] 『元もと史し』巻まき117列伝れつでん4朮うけら赤あか伝でん,「朮うけら赤あか者しゃ、太ふとし祖そ長子ちょうし也。……至いたり元もと二に年ねん、月つき即そく別べつ遣や使つかい来らい求もとめ分地ぶんち歳とし賜たまもの、以賑給きゅう軍ぐん站、京師けいし元もと無む所領しょりょう府ふ治ち。三さん年ねん、中書ちゅうしょ請置総そう管かん府ふ。給きゅう正せい三さん品ひん印しるし。至いたり正せい元年がんねん、月つき即そく別べつ薨、子こ札さつ尼あま別べつ嗣。其位下か旧きゅう賜たまもの平たいら陽よう・晋すすむ州しゅう・永なが州しゅう分地ぶんち、歳とし賦ふ中ちゅう統すべ鈔二に千せん四よん百ひゃく錠じょう、自じ至いたり元もと五年己卯歳始給之」

[6] 村岡むらおか2002,162-163頁ぺーじ

[7] 『元もと史し』巻まき62志こころざし14地理ちり志こころざし5,「永なが州しゅう路ろ……領りょう司し一いち・県けん三さん。本ほん路ろ屯田とんでん一いち百ひゃく三さん頃ごろ。録ろく事ごと司し。県けん三さん：零れい陵りょう、上うえ。倚郭。東ひがし安やす、上うえ。祁陽。中なか」

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