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いずみ漳語

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いずみ漳語
いずみ漳片 / 閩台へん
はなされるくに 中華人民共和国の旗 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく
中華民国の旗 中華民国ちゅうかみんこく台湾たいわん
シンガポールの旗 シンガポール
マレーシアの旗 マレーシア
ブルネイの旗 ブルネイ
インドネシアの旗 インドネシア
フィリピンの旗 フィリピン
ミャンマーの旗 ミャンマー
地域ちいき 閩南台湾たいわん広東かんとんしょう東部とうぶ汕尾
話者わしゃすう 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく中華民国ちゅうかみんこく台湾たいわん)にやく2せんまんにん、その地域ちいきに3せんまんにん(2012ねん)
言語げんご系統けいとう
方言ほうげん
言語げんごコード
ISO 639-3 nan
 いずみ漳語
 うしおしゅう
 大田おおた方言ほうげん
 浙南閩語
 中山なかやま閩語
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いずみ漳語(せんしょうご)は、狭義きょうぎ閩南のこと[1]いずみ漳片いずみ漳話漳泉ばなし[2]閩台へん[3]いずみ漳閩みなみひとし別称べっしょうがある。閩語けいのうちで最大さいだいにして最強さいきょう勢力せいりょく方言ほうげん区分くぶん方言ほうげんぶんへん)で、福建ふっけんしょうの閩南地区ちく台湾たいわん一帯いったいおよ東南とうなんアジアはじめとする海外かいがい中国人ちゅうごくじんコミュニティーで一定いってい影響えいきょうりょくゆうしている。閩南の閩台へん現代げんだい閩語のなかでも使用しよう人数にんずうもっとおおく、使用しよう範囲はんいもっとひろく、最大さいだい影響えいきょうりょくつ閩語であり、厦門あもい台湾たいわんいずみ漳語の代表だいひょうてき方言ほうげんとされる。

狭義きょうぎの閩南とは閩南の閩台へん[3]いずみ漳語の発祥はっしょう中国ちゅうごく福建ふっけんしょう南部なんぶで、閩南本土ほんど以外いがい広範こうはん使用しようされている地域ちいきは、台湾たいわんシンガポールマレーシアフィリピンのように、閩南移民いみんとその子孫しそん多数たすう居住きょじゅうしている地域ちいきである。

いずみ漳語(いずみ漳片)は中国ちゅうごく福建ふっけんしょうでは閩南ばなし通称つうしょうされ、台湾たいわんではたい台湾たいわんばなし台湾たいわん閩南ひとし呼称こしょうされ、東南とうなんアジアでは福建ふっけん(Hokkien)とうばれている。いずみ漳語はうしおしゅう(Teochew)とは十分じゅうぶんちか関係かんけいにある。これらの方言ほうげん以外いがいにも、福建ふっけんしょう周辺しゅうへんには、おなじシナ閩語ささえ多種たしゅ多様たような閩南方言ほうげん存在そんざいする。

名称めいしょう

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いずみ漳閩名称めいしょうかんしては、福建ふっけんばなし、閩南ばなし台湾たいわんばなしぶく佬話、つる佬話、かわらくばなしなど、多数たすうがあり、一定いっていしていない[4]

  • かわらくばなし:1955ねんえんじゅ発表はっぴょうの「かわらく・閩南からそう故事こじ」ののち使用しようされている[5]
    • がく佬話:海陸かいりくゆたか広東かんとんしょう汕尾)で使用しようされている。広東かんとんきゃくの「hok-ló」(ぶく佬)を音訳おんやくした言葉ことばである。
    • ぶく佬話:広東かんとん福建ふっけんきゃく人々ひとびと使用しようしている。
    • つる佬話:ひろ人々ひとびと使用しようしている。
  • 台湾たいわんばなしたい:これは、日本にっぽん統治とうち時代じだい日本にっぽん政府せいふが、台湾たいわん最多さいた話者わしゃ人口じんこう言語げんご定義ていぎとして「台湾たいわん」をもちいたことに由来ゆらいする。「早期そうき台湾たいわん」は、西洋せいよう東洋とうよう日本にっぽん)・南洋なんよう影響えいきょうける以前いぜん台湾たいわん言語げんご、つまり、漳・いずみしおなどの閩南ばなし[6]実際じっさいには、日本語にほんご出版しゅっぱんぶつは「台湾たいわん」の表記ひょうき普通ふつうであり、「台湾たいわんばなし」ではない。
  • 咱人ばなし(咱儂ばなし)、咱厝ばなし泉州せんしゅうと漳州の人々ひとびと使用しようする名称めいしょう[7]

下位かい方言ほうげん

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福建ふっけんしょうの閩南いずみ漳片は、『福建ふっけんしょうこころざし』の分類ぶんるいによれば、4つのへん方言ほうげん)に分類ぶんるいされる[8]。『中国ちゅうごくげん地図ちずしゅう』は浙南閩語を泉州せんしゅうはなし下位かい位置付いちづけている。

福建ふっけんしょう

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  • 東片ひがしかた厦門あもいはなし):厦門あもい厦門あもいとうおもえあきらみずうみうら)で通用つうようしている。厦門あもいばなし総称そうしょうする。泉州せんしゅうはなし基礎きそとし、泉州せんしゅうばなしなまりと漳州ばなしなまりがざりっている。
    • 島内とうないばなし
    • しまがいばなし
  • きたへん泉州せんしゅうはなし):おおむね泉州せんしゅう市内しない通用つうようしている。泉州せんしゅう市区しくいし獅、すすむこうめぐみやすみなみやすえいはる徳化とっかあんけいふくむ。また、廈門どうやすしょうやすあつまりうみ滄、中華民国ちゅうかみんこくかねもんふくむ。泉州せんしゅうばなし総称そうしょうする。
    • どうやすばなしきむもんばなしふくむ)
    • みなみやすばなし
    • あんけいばなし
    • すすむこうはなし
    • いし獅話
    • めぐみやすばなしめぐみやす県内けんない現在げんざいいずみみなとふくむ。
    • はん南北なんぼくばなし
    • みなみばなし
    • めぐみやすばなし
    • 恵南えなみばなし
    • あたまきたばなし泉州せんしゅういずみみなときさきりゅう鎮、みね鎮、みなみ埔鎮で通用つうようしている。この方言ほうげんは莆仙せんゆうはなしから一定いってい程度ていど影響えいきょうけてきた。
  • みなみへん(漳州はなし):おおむね漳州一帯いったい通用つうようしている。漳州市区しくりゅううみ、漳浦、くも霄、東山ひがしやまみことのりやすはなやすしちょうやすし平和へいわみなみやすしふくむ。漳州ばなし総称そうしょうする。
    • 龍渓りゅうけいばなし
    • 漳浦ばなし
    • みなみやすしばなし
    • みことのりやすばなし
  • 西片にしかたりゅういわはなし):りゅういわしんと漳平で通用つうようしている。りゅういわばなし総称そうしょうする。この方言ほうげんきゃく影響えいきょう一定いってい程度ていどけてきた。
    • しんはなし
    • 漳平ばなし

台湾たいわん

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台湾たいわんおも泉州せんしゅうばなしと漳州はなしのなまり(腔調)がざりっている。くわえて、日本語にほんごにちしき外来がいらいふくむ)とその外来がいらい語彙ごいくわわっている。言語げんご学者がくしゃひろしおもんみじんは、台湾たいわんのなまりをおおきくみっつのなまりに分類ぶんるいしている。 ただし、みっつの差異さい泉州せんしゅうばなし・漳州ばなしとのあいだ差異さいほどおおきくはなく、みっつのあいだ意思いし疎通そつう困難こんなんはさほどたかくはない。 ただ、以下いかみっつ(だい腔調)のそれぞれの下位かい分類ぶんるいされるなまり(しょう腔調)同士どうしでは語彙ごい発音はつおん差異さいがある場合ばあいがあり、意思いし疎通そつう障壁しょうへきおおきくなる[9]

  • 混合こんごうなまり(漳州と泉州せんしゅう発音はつおん混合こんごうしている。声調せいちょうは漳州おんの漳泉濫にちかい)
  • 漳なまり(むべらんなまりと桃園ももぞのなまりをのぞき、うち埔なまりと総称そうしょうされる)
  • いずみなまり(台北たいぺいなまりと鹿しかこうなまりをのぞき、うみこうなまりと総称そうしょうされる)

東南とうなんアジア諸国しょこく

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  • 東南とうなんアジア福建ふっけん:閩南いずみ漳片の南洋なんよう地域ちいきいち形態けいたい福建ふっけん台湾たいわんの閩南意思いし疎通そつう可能かのう
    • シンガポール福建ふっけん泉州せんしゅうちかい)
    • 南部なんぶマレーシア福建ふっけん泉州せんしゅうちかい)
    • 北部ほくぶマレーシア福建ふっけん(漳州ちかい)
      • ペナン福建ふっけん(漳州うしおしゅうちかい)


音韻おんいん

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こえはは

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いんはは

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声調せいちょう

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いずみ漳片(いずみ漳語)の声調せいちょう声調せいちょうひょう[10]
声調せいちょうめい 泉州せんしゅうばなし 漳州ばなし 厦門あもいばなし
陰平かげひら 1 [˧] 33 [˥] 34 [˥] 55
かげじょう 2 [˥] 55 [˥˧] 53 [˥˧] 53
かげ 3 [˧˩] 31 [˨˩] 21 [˨˩] 21
かげいれ 4 [˥ʔ] 5 [˩ʔ] 1 [˩ʔ] 1
陽平ようへい 5 [˧˥] 35 [˩˧] 13 [˧˥] 35
じょう 6 [˨] 22
7 [˧˩] 31 [˩] 11 [˩] 11
いれ 8 [˨˧ʔ] 23 [˩˨ʔ] 12 [˥ʔ] 5

内部ないぶ比較ひかく

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廈門台湾たいわん泉州せんしゅうと漳州混合こんごう形態けいたい、すなわち、「漳泉濫」である。泉州せんしゅうと漳州発音はつおん語彙ごい用法ようほうめんからはわずかな差異さいがあるものの、文法ぶんぽうてきには一致いっちしている。このほか台湾たいわんは、はん世紀せいきおよ日本にっぽん統治とうち影響えいきょうかれたため、外来がいらいとしての日本語にほんご語彙ごい日常にちじょう語彙ごい数多かずおおざりっている。シンガポールとマレーシアでも、マレー英語えいごうしおしゅう広東かんとん由来ゆらい外来がいらい影響えいきょうられる。

泉州せんしゅう、漳州、廈門台湾たいわん、メダン福建ふっけんインドネシア)、ペナン福建ふっけんマレーシア)、シンガポール福建ふっけんあいだでは実際じっさいじょう相互そうご意思いし疎通そつう可能かのうである。

基礎きそ語彙ごい

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文法ぶんぽう

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代名詞だいめいし

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いずみ漳語の方言ほうげんどうしでは,代名詞だいめいし運用うんようほうちがいはない。以下いか説明せつめいには漢字かんじ白話はくわもちいる。

人称にんしょう 単数たんすう 複数ふくすう
第一人称だいいちにんしょう わがgóa goán1 · 阮儂goán-lâng3

lán2 · 咱儂lán-lâng3
おれán
わがわしgóa-lâng

第二人称だいににんしょう なんじlú/lí/lír lín
恁儂lín-lâng
第三人称だいさんにんしょう i 𪜶in
わしi-lâng
1 排他はいたてきな「わが們」、つまり、はなとききてふくまない「わたしたち」。
2 包容ほうようてきな「わが們」、つまり、はなとききてふくむ「わたしたち」。
3 東南とうなんアジア福建ふっけん用法ようほう

所有しょゆうあらわ連体れんたい修飾しゅうしょく

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所有しょゆうかく通常つうじょううしろに「まと」(ê)をける。文言もんごんではうしろに「これ」(chi)をける。複数ふくすう人称にんしょう場合ばあいは、一般いっぱんてきに、こうけのかたりけずに所有しょゆうかくあらわす。たとえば:goán おうang せいsèⁿ ひねTânわたしたちのおっと名字みょうじひねです。「阮」には「まと」「これ」をけない)

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 中国ちゅうごくげん地図ちずしゅう,BぐみB12 閩語
  2. ^ もとごく燉,《臺灣たいわんばなし流浪るろう》, ぺーじ56, 臺灣たいわんぶん研究けんきゅう發展はってん基金ききんかい, 1988
  3. ^ a b しゅうちょうかじおう憶耘(へん),《厦門あもい方言ほうげん研究けんきゅう》,ぺーじ 3; 211, 福建ふっけん人民じんみん出版しゅっぱんしゃ,1998
  4. ^ ひつじさるあかり. 臺灣たいわん閩南淵源えんげんあずか正名まさな. 臺灣たいわんがく研究けんきゅうだい. 臺灣たいわんがく研究けんきゅう中心ちゅうしん: 54–73. 2008ねん6がつ.
  5. ^ 臺灣たいわんばなし俗諺ぞくげんてんうえしもさつ)‧序言じょげんしょう藤村ふじむら
  6. ^ ただし忠司ただし編輯へんしゅう召集しょうしゅうぶくなんじすなてき烙印らくいん臺灣たいわん閩南概要がいよう(うえさつ)》ぺーじ12,25.--だいいちはん.--〔臺北たいぺい〕:ぶんけんかいみん90
  7. ^ 「閩南ばなし」往過さけべ啥物めい. 鷺水ろすい薌南-閩南部落ぶらく.
  8. ^ 福建ふっけんがいらん 方言ほうげん
  9. ^ ひろしおもんみじん. 台灣たいわんてき語種かたりぐさ分布ぶんぷあずかぶん. Language and Linguistics (中央ちゅうおう研究けんきゅういん). 2013, 14 (2): 315–369 (ちゅうぶん台灣たいわん)). Map 5, p. 355.
  10. ^ 閩南辞典じてんだい21ぺーじ. : 21. ISBN 9578447523.(ちゅうぶん)(閩南ぶん

外部がいぶリンク

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