源みなもと頼よりゆき定じょう

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源みなもと頼よりゆき定じょう
時代じだい 平安へいあん時代じだい中期ちゅうき
生誕せいたん 貞元さだもと2年ねん（977年ねん）
死没しぼつ 寛仁かんじん4年ねん6月11日にち（1020年ねん7月がつ4日にち）
改名かいめい 憲けん定てい王おう→源みなもと憲けん定じょう
官位かんい 正せい三さん位い、参議さんぎ
主君しゅくん 一条天皇いちじょうてんのう→三条さんじょう天皇てんのう→後一条天皇ごいちじょうてんのう
氏族しぞく 源みなもと朝臣あそん（村上むらかみ源はじめ氏し）
父母ちちはは 父ちち：為平親王ためひらしんのう、母はは：源みなもと高明こうめいの娘むすめ
兄弟きょうだい 憲けん定じょう、頼よりゆき定じょう、為ため定じょう、顕定あきさだ、婉子女王じょおう、具平親王ともひらしんのう妃ひ、恭子きょうこ女王じょおう、教きょう定じょう、敦あつし定じょう
妻つま 橘たちばな輔政の娘むすめ、藤原ふじわら元子もとこ（藤原ふじわら顕あらわ光こうの長女ちょうじょ）
子こ 嫄子、女子じょし、定てい季き、頼よりゆき賢けん
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源みなもと 頼よりゆき定じょう（みなもと の よりさだ）は、平安へいあん時代じだい中期ちゅうきの公卿くぎょう。村上むらかみ天皇てんのうの第だい四よん皇子おうじである一品いっぴん式部しきぶ卿きょう・為平親王ためひらしんのうの次男じなん。官位かんいは正せい三さん位い・参議さんぎ。

経歴けいれき[編集へんしゅう]

頼よりゆき定じょうの父ちちである為平親王ためひらしんのうは冷泉れいせん天皇てんのうのすぐ下かの同母どうぼ弟おとうとであった。しかし、母ははの中宮なかみや・安子やすこと外祖父がいそふの右大臣うだいじん・師し輔を早はやくに喪うしなった上うえ、舅しゅうとの源みなもと高明こうめいが外戚がいせきとして勢威せいいを振ふるうのを恐おそれた藤原ふじわら氏しによって、冷泉れいせん天皇てんのうの皇すめらぎ太ふとし弟おとうとには為平親王ためひらしんのうを飛とび越こえての同母どうぼ弟おとうと・守もり平ひら親王しんのう（のちの円融天皇えんゆうてんのう）が選えらばれたため、失意しついの日々ひびを送おくった不運ふうんの皇族こうぞくである。為平親王ためひらしんのうの子息しそくは一斉いっせいに臣籍しんせき降下こうかしたが、頼よりゆき定じょうはその次男じなんにあたる。

一いち条じょう朝あさ初頭しょとうの永えい祚2年ねん（990年ねん）二に世せい王おうの蔭かげ位いにより従したがえ四よん位い下かに初はつ叙じょされ、正せい暦こよみ3年ねん（992年ねん）弾たま正大せいだい弼に任にんぜられる。中ちゅう関白かんぱく家かと親したしく、長ちょう徳いさお2年ねん（996年ねん）長ちょう徳いさおの変へんが発生はっせいし内大臣ないだいじん・藤原伊周ふじわらのこれちかや中納言ちゅうなごん・藤原隆家ふじわらのたかいえが左遷させんされた際さい、頼よりゆき定じょうも連座れんざして勅勘ちょっかんを蒙こうむった。間まもなく許ゆるされたらしく、長ちょう徳いさお4年ねん（998年ねん）右みぎ近衛このえ中将ちゅうじょうに任官にんかん。その後ごは、長保ながほ3年ねん（1001年ねん）従したがえ四よん位い上じょう・左ひだり近衛このえ中将ちゅうじょう、寛弘かんこう2年ねん（1005年ねん）蔵人くろうど頭あたま（頭あたま中将ちゅうじょう）と順調じゅんちょうに昇進しょうしんし、寛弘かんこう6年ねん（1009年ねん）参議さんぎに任にんぜられ公卿くぎょうに列れつした。

しかし、参議さんぎ昇進しょうしん以降いこう、三さん条じょう朝あさにかけて昇進しょうしんが止とまり、伊い予よ権守ごんもりを兼官けんかんするのみであった。三条さんじょう天皇てんのうの東宮とうぐう時代じだいの妃ひである藤原ふじわら綏子と通つうじていたため、三条さんじょう朝あさでは昇殿しょうでんが許ゆるされなかったためという（『大だい鏡かがみ』）。

長和ながわ5年ねん（1016年ねん）後一条天皇ごいちじょうてんのうが践祚せんそすると、頼よりゆき定じょうは従したがえ三さん位い次ついで正せい三さん位いと続つづけて昇叙しょうじょされる。後こう一いち条じょう朝あさでは議ぎ政官せいかんとして勘かん解かい由よし長官ちょうかん・左ひだり兵衛ひょうえ督とく・検非違使けびいし別当べっとうを兼かねた。寛仁かんじん元年がんねん（1017年ねん）末まつ頃ごろより体調たいちょうを崩くずし[1]、寛仁かんじん4年ねん（1020年ねん）6月がつ8日にちに病気びょうき（腫瘍しゅよう）のため出家しゅっけ、同どう11日にちに薨去こうきょ。享年きょうねん44。

逸話いつわ[編集へんしゅう]

  • 『枕草子まくらのそうし』において頼よりゆき定じょうは「宮みやの中将ちゅうじょう」「源みなもと中将ちゅうじょう」と呼よばれ、「かたちよき公達きんだち」の代表だいひょうに挙あげられる
  • 後世こうせいの碩学せきがくとして名高なだかい大江匡房おおえのまさふさは、著書ちょしょの中なかで、頼よりゆき定じょうを雲くも客きゃく（殿上人てんじょうびと）の項目こうもくの4人にんの中なかの1人ひとりに揚あげており[2]、この事ことから頼よりゆき定じょうは公卿くぎょうとして相応そうおうの評価ひょうかを受うけていた事ことが窺うかがえる。
  • 和歌わかは不得意ふとくいだったようだが、漢詩かんしや朗詠ろうえいや弓術きゅうじゅつや蹴鞠けまりなどの一般いっぱん的てきな殿上人てんじょうびとの教養きょうようはこなせていた[3]。

女性じょせい関係かんけい[編集へんしゅう]

頼よりゆき定じょうは、時期じきは不明ふめいだが越えつ中ちゅう守もり・橘たちばな輔政の女おんなを娶めとり、この二人ふたりの間あいだには一男かずお・源みなもと定じょう季きが生うまれている。しかしこの正室せいしつについて知しられていることは少すくなく、頼よりゆき定じょうの女性じょせい関係かんけいはむしろ彼かれが起おこした2件けんの密通みっつう騒動そうどうに詳くわしい。

弾正だんじょう大だい弼であった頼よりゆき定じょうは、東宮とうぐう・居きょ貞さだ親王しんのう（後ごの三条さんじょう天皇てんのう）の尚侍しょうじ・藤原ふじわら綏子と情じょうを通つうじてこれを孕はらませてしまっている。覚おぼえのない綏子の懐妊かいにんを疑うたがわしく思おもった居きょ貞さだが綏子の異母いぼ兄けい・道長みちながに命めいじてその事実じじつ関係かんけいを確認かくにんさせた[4]ところ、やはり間違まちがいないことが判明はんめいした。この密通みっつうに居い貞さだは怒いかり、春宮とうぐう坊ぼうの護衛ごえい官かんらに命めいじて頼よりゆき定じょうを蹴け殺ころしてやろうかと思おもったほどだったが、共ともに祖父そふとする村上むらかみ天皇てんのうの名なを穢けがしたくはないと思おもいとどまったという。ただし三条さんじょう天皇てんのうが即位そくいするとその在位ざいい中ちゅうに頼よりゆき定じょうの昇進しょうしんは一切いっさいなく、昇殿しょうでんすら許ゆるされなかった[5]。綏子との間あいだに生うまれた男子だんしは後のちに寺てらに預あづけられ僧そうとなった頼よりゆき賢けんだという。

その後ご頼よりゆき定じょうは、今度こんどは一条天皇いちじょうてんのうの崩御ほうぎょ後こう孤閨こけいを託かこっていた承うけたまわ香かおり殿どの女御にょうご・藤原ふじわら元子もとこと密ひそかに情じょうを交かわし始はじめる。これを元もと子この父ちち・右大臣うだいじん藤原ふじわら顕あらわ光こうに直接ちょくせつ見みつけられ発覚はっかくする。怒おこった顕あらわ光こうは手てずから元子もとこの髪かみを切きって出家しゅっけを強制きょうせいさせるも関係かんけいは続つづき、顕あらわ光こうは娘むすめを勘当かんどうするが、元子もとこは夜よる蔭かげにまぎれて頼よりゆき定じょうの許もとに走はしり、遂ついに二女じじょを儲もうけたという話はなしが『栄花物語えいがものがたり』[6]ほか諸もろ書しょに見みえる。『御堂みどう関白かんぱく記き』[7]には元もと子こが頼よりゆき定じょうの「妾わらわ」だと記しるされており、顕あらわ光こうには一条天皇いちじょうてんのうの女御にょうごとなり従したがえ二に位いに叙じょされまでした元もと子こを、位階いかいでは下位かい、廟堂びょうどうでは末席まっせき、そして既すでに妻子持さいしもちの頼よりゆき定じょうに妾わらわ同然どうぜんにされてしまったことが許ゆるしがたい屈辱くつじょくだったことが窺うかがえる[8]。

この元子もとことの密通みっつうが発覚はっかくした後のち、頼よりゆき定じょうと正室せいしつとの関係かんけいがどうなったのかは不明ふめいだが、『小しょう右記うき』には元もと子こが「故こ兵衛ひょうえ督とく室しつ」と記しるされていることから、地位ちいも家柄いえがらもはるかに高たかかった元子もとこの方ほうが実質じっしつ的てきに「北きたの方かた」と見みなされていたことが分わかる。ただし頼よりゆき定じょうの死去しきょ後ごその遺体いたいは正室せいしつの実家じっかである橘たちばな氏しと縁えんの深ふかい弥勒寺みろくじ[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]に運はこばれているので[9]、正室せいしつとの縁えんも生涯しょうがい切きれていなかったことが分わかる。 

村上むらかみ天皇てんのう (62) ━┯ 冷泉れいせん天皇てんのう (63) ━┯ 花山はなやま天皇てんのう (65) 
　　　　        　  ┃ 　　　　        　  ┗ 三さん条じょう天皇てんのう (67) 
　　　　        　  ┃　　　　　　　　　　　║
　　　　        　  ┃ 　　　　        　  　 藤原ふじわら綏子(二に位い尚侍しょうじ)
　　　　        　  ┃　　　　　　　　　　　╎
　　　　 　         ┝ 為平親王ためひらしんのう  ━━━━  源みなもと頼よりゆき定じょう
　　　　        　  ┃　　　　　　　　　　　╎
　　　　        　  ┃ 　　　　        　  　 藤原ふじわら元子もとこ (承うけたまわ香かおり殿どの女御にょうご)
　　　　        　  ┃　　　　　　　　　　　║
　　　         　 　┗ 円融天皇えんゆうてんのう (64) ━━ 一条天皇いちじょうてんのう (66)


官かん歴れき[編集へんしゅう]

系譜けいふ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 『小しょう右記うき』
  2. ^ 『続ぞく本朝ほんちょう往生おうじょう伝でん』
  3. ^ 『権けん記き』
  4. ^ 疑うたがわしく思おもった東宮とうぐうは綏子の異母いぼ兄けい道長みちながに実検じっけんを命めいじた。道長みちながは綏子の許もとに参上さんじょうするや、いきなり彼女かのじょの着きていた衣ころもを荒あらっぽく開ひらいて乳房ちぶさを捻ねじり、母乳ぼにゅうが迸ほとばしったのを確認かくにんして帰参きさんし、東宮とうぐうに密通みっつう懐妊かいにんの事実じじつを啓上けいじょうした。東宮とうぐうは頼よりゆき定じょうを憎にくらしく思おもう上うえで、「道長みちながもそこまでしなくてもよかったのに」と、異母いぼ兄けいの去さった後のちで大層たいそう泣ないたという綏子の心中しんちゅうのを思おもいやって少すこし不憫ふびんにも思おもったとも伝つたわる
  5. ^ 『大だい鏡かがみ』第だい四よん巻かん、「太政大臣だじょうだいじん兼けん家か」
  6. ^ 巻まき第だい十じゅう一いち、「つぼみ花はな」
  7. ^ 長和おさわ5年ねん4月がつ21日にち条じょう
  8. ^ 『承うけたまわ香かおり殿どのの女御にょうご』
  9. ^ 『左ひだり経けい記き』
  10. ^ 『小しょう右記うき』
  11. ^ 『栄花物語えいがものがたり』巻まき第だい三さん十じゅう四よん、暮くれまつほし
  12. ^ 『平安へいあん時代じだい史し事典じてん』角川書店かどかわしょてん、1999年ねん、2202頁ぺーじ
  13. ^ 『承うけたまわ香かおり殿どのの女御にょうご』中公新書ちゅうこうしんしょ、1970年ねん
  14. ^ 『僧官そうかん補任ほにん』

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『公卿くぎょう補任ほにん 第だい一いち篇へん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1982年ねん
  • 『尊卑そんぴ分脈ぶんみゃく 第だい三さん篇へん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1987年ねん
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