福原ふくはら元もと僴

凡例はんれい 福原ふくはら 元はじめ僴
『高名こうみょう像ぞう伝でん : 近世きんせい遺のこ勲くん. 地ち』
時代じだい	江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ）
生誕せいたん	文化ぶんか12年ねん8月がつ28日にち（1815年ねん9月30日にち）
死没しぼつ	元治もとはる元年がんねん11月12日にち（1864年ねん12月10日にち）
改名かいめい	毛利もうり澂之助すけ→佐さ世よ勝かつ定じょう→佐さ世よ元もと僴→福原ふくはら元もと僴
別名べつめい	福原ふくはら越後えちご、佐さ世よ主ぬし殿どの、号ごう：翠みどり崖がけ
戒名かいみょう	隆文たかふみ院いん願ねがい堂どう全ぜん忠ちゅう居士こじ
墓所はかしょ	山口やまぐち県けん宇部うべ市し宗そう隣となり寺てら
官位かんい	越後えちご守もり
幕府ばくふ	江戸えど幕府ばくふ
主君しゅくん	毛利もうり斉ひとし熙、斉ひとし元もと、斉広なりなが、慶けい親おや
藩はん	長州ちょうしゅう藩はん
氏族しぞく	大江おおえ姓せい毛利もうり氏し→宇多うた源はじめ氏し佐々木ささき氏し流ながれ佐さ世よ氏し→大江おおえ姓せい福原ふくはら氏し
父母ちちはは	父ちち：毛利もうり広ひろ鎮、母はは：不ふ詳しょう 養父ようふ：佐さ世よ親おや長ちょう、福原ふくはら親ちかし俊しゅん
兄弟きょうだい	雅まさ太郎たろう、寛之ひろゆき進すすむ、鋭するど三郎さぶろう、雍五郎ろう、堅田かただ元もと琦、元もと僴、元げん蕃しげる、秋元あきもと志こころざし朝あさ、定広さだひろ（元もと徳とく）、他た多数たすう
妻つま	正室せいしつ：椙森元もりもと周あまねの娘むすめ
子こ	彦七ひこしち、トハ子こ（福原ふくはら良りょう通どおり妻つま） 養子ようし：良りょう通どおり （粟屋あわや氏しより）

福原ふくはら 元はじめ僴（ふくばら もとたけ）は、江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ期き）の長州ちょうしゅう藩はんの永代えいたい家老がろう。通称つうしょうは越後えちごで、福原ふくはら越後えちごとして知しられる。

長州ちょうしゅう藩はん支ささえ藩はんである周防すおう徳山とくやま藩はん主あるじ毛利もうり広ひろ鎮の六ろく男なんで、最後さいごの長州ちょうしゅう藩主はんしゅとなる毛利もうり元もと徳とくの実兄じっけいである。

生涯しょうがい

文化ぶんか12年ねん（1815年ねん）8月がつ28日にち生うまれ。六ろく男なんであるために家督かとくを継つぐことはできず、文政ぶんせい9年ねん（1826年ねん）に長州ちょうしゅう藩はん寄よせ組ぐみ・佐さ世よ親おや長ちょう（益田ますだ就恭の実弟じってい）の養子ようしとなる。初はじめは勝かつ定じょうと称しょうしたが、嘉よしみ永なが7年ねん（1854年ねん）に藩主はんしゅ・毛利もうり斉ひとし元もと（在任ざいにん：1824年ねん - 1836年ねん）から偏へん諱いみなを受うけて元もと僴と改名かいめいした。

嘉よしみ永ひさし4年ねん（1851年ねん）、家老がろうに昇進しょうしんするが、大名だいみょうの子この養子ようし先さきとしては家格かかくが低ひくすぎることから、安政あんせい5年ねん（1858年ねん）に藩はん命いのちで長州ちょうしゅう藩はんで代々だいだい家老がろう職しょくを継つぐ家柄いえがらの福原ふくはら親ちかし俊しゅん（伯父おじ・福原ふくはら房ぼう純じゅんの孫まご）の家督かとくを継承けいしょうした。

万延まんえん元年がんねん（1860年ねん）に国家老くにがろうとして藩主はんしゅ・毛利もうり慶けい親おや（斉ひとし元もとの子こ、後ごの敬けい親おや）を補佐ほさし、尊王そんのう攘夷じょうい運動うんどうを推進すいしんする。文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん）に廃止はいしされた最後さいごの当とう職しょく（財務ざいむを統括とうかつする家老がろう職しょく）を務つとめており、当とう職しょく廃止はいし後ごも加か判ばん役やくとして藩政はんせいの中枢ちゅうすうに残のこった。後述こうじゅつの長州ちょうしゅう軍ぐん上洛じょうらくに至いたる政務せいむにおいて、どのような権限けんげんを持もち政務せいむを行おこなったかは定さだかでは無ないものの、在職ざいしょく期間きかんから考かんがえて、航海こうかい遠とお略りゃく策さくの進言しんげん・藩はん是ただし転換てんかん（奉勅ほうちょく攘夷じょうい・破約はやく攘夷じょういの提案ていあん・実行じっこう）などの政策せいさくで責任せきにん者しゃのひとりであった可能かのう性せいが高たかい。

同年どうねん、八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへんで長州ちょうしゅう藩はんが京都きょうとから追放ついほうされると、元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）に来島くるしま又兵衛またべえや久坂くさか玄げん瑞みずらと協力きょうりょくして挙兵きょへいし、上京じょうきょうして禁門きんもんの変へんを引ひき起おこした。元もと僴は伏見ふしみ長州ちょうしゅう藩邸はんていに布陣ふじんした長州ちょうしゅう藩主はんしゅ力りょく軍ぐんの総そう大将たいしょうとして伏見ふしみ街道かいどうを進すすむが、途中とちゅうで交戦こうせんした大垣おおがき藩はん勢いきおいの銃撃じゅうげきで負傷ふしょう、敗退はいたいして帰国きこくした。

その後ご、幕府ばくふによる第だい1次じ長州ちょうしゅう征伐せいばつが起おこると、藩はん内ないでは保守ほしゅ派はである俗論ぞくろん党とうが主導しゅどう権けんを掌握しょうあくしてしまう。元もと僴は禁門きんもんの変へんで敗やぶれて逃にげ戻もどったという経緯けいいがあったため、保守ほしゅ派はの意向いこうに逆さからうことができず、西郷さいごう隆盛たかもりの要求ようきゅうにより国司こくし親おや相しょう・益田ますだ親ちかし施ほどこせと共ともに禁門きんもんの変へん、並ならびに長州ちょうしゅう征伐せいばつの責任せきにんを取とる形かたちで、同年どうねん11月がつ12日にちに岩国いわくにの龍りゅう護まもる寺てらで自害じがいした（享年きょうねん50）。首級しゅきゅうは他たの家老がろうらの首級しゅきゅうと共ともに幕府ばくふ側がわに送おくられた。

辞世じせいの句く：くるしさは　絶ぜっゆるわが身みの夕煙ゆうけむり　空そらに立たつ名なは　捨すてがてにする

死後しご

慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）8月がつに罪状ざいじょう焼しょう棄の命いのちが下くだり、藩主はんしゅに背そむいた不忠ふちゅう不義ふぎとの汚名おめいは破棄はきされ、11月に完成かんせいした維新いしん招魂しょうこん社しゃ（現げん・宇部うべ護国ごこく神社じんじゃ）の主神しゅしんとして遷座せんざされた。

養嗣子ようししは福原ふくはら姓せいを憚はばかって鈴すず尾お五ご郎ろう（後のちに毛利もうり敬たかし親おやの1字じを受うけて鈴すず尾お親おや徳とく）と名乗なのったが、後のちに復姓ふくせいして福原ふくはら良りょう通どおりと名乗なのった。また、佐さ世よ家かに養子ようしへ出だされた時ときに側室そくしつとの間あいだに実子じっし彦七ひこしちが生うまれ、文久ぶんきゅう2年ねん（1862年ねん）に彦七ひこしちと井上いのうえ馨かおるの妹いもうと孝子こうしとの間あいだに孫まご栄太郎えいたろうが誕生たんじょうした。栄太郎えいたろうは母方ははかたの伯父おじ馨かおるの庇護ひごを受うけ慶應義塾けいおうぎじゅくへ入学にゅうがく、三井物産みついぶっさんへ就職しゅうしょくして明治めいじ34年ねん（1901年ねん）頃ごろに小野田おのだセメント社長しゃちょうになった。 元もと僴については、昭和しょうわ期きに周防すおう大島おおしま町まち出身しゅっしんの画家がか・中村なかむら青田あおたによって作つくられたとされる木像もくぞうが知しられていたが、平成へいせい25年ねん（2013年ねん）に防府ほうふ市しの毛利もうり博物館はくぶつかんで肖像しょうぞう画がが発見はっけんされ、明治めいじ45年ねん/大正たいしょう元年がんねん（1912年ねん）までに同どう博物館はくぶつかんに預あづけられたとみられることから、前述ぜんじゅつの木像もくぞうの元もとになった可能かのう性せいが指摘してきされている。その他た、地元じもと彫刻ちょうこく家かによって作つくられた銅像どうぞうが、宇部うべ護国ごこく神社じんじゃに平成へいせい22年ねん（2010年ねん）に建たてられた。

人物じんぶつ

寡黙かもくで果断かだん、温厚おんこうでもあり、幕末ばくまつ初期しょきの長州ちょうしゅう藩政はんせいを見事みごとに運営うんえいした名めい臣しんとして、高たかく評価ひょうかされている。毛利もうり博物館はくぶつかんには元もと僴が描えがいたとされる郭公かっこうの絵えが残のこされている。元治もとはる元年がんねんに藩はん兵へいを率ひきいて上洛じょうらくする直前ちょくぜんに描えがかれたこの絵えには、『太平たいへい記き』で楠木くすのき正成まさしげが登場とうじょうする一節いっせつと思おもわれる文ぶんが書写しょしゃされている。湊川みなとがわの戦たたかいで敗はい死しした楠木くすのき正成まさしげは、事前じぜんに勝かち目めが無ないことを悟さとっていた（桜井さくらいの別わかれ）とされることから、長州ちょうしゅう軍ぐんの挙兵きょへい・上洛じょうらくが成功せいこうするかどうか疑問ぎもん視ししていたとの見方みかたもある。

系図けいず

実際じっさいの親子おやこ関係かんけいのみを示しめす。

毛利もうり就馴 (徳山とくやま7代だい)

福原ふくはら房ぼう純じゅん (21代だい)

毛利もうり広ひろ鎮 (徳山とくやま8代だい)

福原ふくはら熙賢 (22代だい)

宍戸ししど元もと礼れい

福原ふくはら熙賢室しつ

福原ふくはら元もと僴 (24代だい)

毛利もうり元もと蕃しげる (徳山とくやま9代だい)

秋元あきもと志こころざし朝あさ (館林たてばやし藩主はんしゅ)

毛利もうり元もと徳とく (長州ちょうしゅう藩主はんしゅ)

福原ふくはら親ちかし俊しゅん (23代だい)

福原ふくはら親ちかし俊しゅん室しつ

宍戸ししど親ちかし基もと

関連かんれん作品さくひん

テレビドラマ

• 『竜馬りょうまがゆく』（1968年ねん、NHK大河たいがドラマ、演えんじ：高橋たかはし正夫まさお）
• 『天皇てんのうの世紀せいき』（1971年ねん、ABCテレビ・国際こくさい放映ほうえい、演えんじ：矢野やの宏ひろし）
• 『花はな神しん』（1977年ねん、NHK大河たいがドラマ、演えんじ：草薙くさなぎ幸二郎こうじろう）※役名やくめいは「佐さ世よ主ぬし殿どの」
• 『花はな燃もえゆ』（2015年ねん、NHK大河たいがドラマ、演えんじ：西岡にしおか秀記ひでき）