統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい

統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい
概要がいよう
診療しんりょう科か	精神せいしん医学いがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	F25
ICD-9-CM	295.70
OMIM	181500
DiseasesDB	33444
MedlinePlus	000930
eMedicine	article/294763
Patient UK	統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい
MeSH	D011618
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統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい（とうごうしっちょうかんじょうしょうがい、英えい: Schizoaffective Disorder）は、精神せいしん障害しょうがいの一ひとつである。統合とうごう失調しっちょう症しょうの症状しょうじょうに明白めいはくな躁病そうびょうあるいはうつ病びょうの症状しょうじょうの両方りょうほうが同時どうじに混在こんざいしており、永続えいぞく的てきな欠陥けっかんを残のこさず寛解かんかいする傾向けいこうを持もつが、再発さいはつしやすい。非ひ定型ていけい精神病せいしんびょうと混同こんどうされやすいが、同一どういつの概念がいねんではない。

治療ちりょう法ほうについては、「統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい#治療ちりょう」を参照さんしょう。

定義ていぎ

→「精神せいしん障害しょうがい § 定義ていぎ」も参照さんしょう

統合とうごう失調しっちょう症しょうの症状しょうじょうと気分きぶん障害しょうがいの症状しょうじょうの両方りょうほうが同時どうじに現あらわれるのが特徴とくちょうである。統合とうごう失調しっちょう症しょうの症状しょうじょう、あるいは気分きぶん障害しょうがい（躁病そうびょう、うつ病びょう、または躁そううつ混合こんごう性せい）の症状しょうじょうだけが別々べつべつの期間きかんに現あらわれる場合ばあいは、統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがいとは診断しんだんされない^[1]。また躁やうつ（あるいは混合こんごう）などの気分きぶん障害しょうがいが生しょうじている時ときのみ、統合とうごう失調しっちょう症しょうの症状しょうじょうを呈ていする場合ばあいは、気分きぶん障害しょうがいの扱あつかいになる^[2]。

診断しんだん

DSM-IVによる診断しんだん基準きじゅんは次つぎのようなものになっている。

気分きぶん障害しょうがいのエピソード期間きかん以外いがいにも幻覚げんかく・妄想もうそうなどの精神病せいしんびょう症状しょうじょうのある期間きかんが必要ひつようとされること（基準きじゅんB）や、またそれ以外いがいにも気分きぶん障害しょうがいの基準きじゅんを満みたす十分じゅうぶんな期間きかんが必要ひつようであること（基準きじゅんC）などの基準きじゅんがある^[2]。

DSM-IVによる診断しんだん基準きじゅん

A. 中断ちゅうだんされない一ひとつの疾病しっぺいのエピソードの間あいだに、大だいうつ病びょうエピソード、躁病そうびょうエピソード、混合こんごう性せいエピソードのいずれかと、統合とうごう失調しっちょう症しょうの診断しんだん基準きじゅんAを満みたす症状しょうじょうが同時どうじに存在そんざいすること。

B. 同おなじエピソードの間あいだに、少すくなくとも2週間しゅうかん、著ちょ明あかりな気分きぶん障害しょうがいを伴ともなわずに幻覚げんかくや妄想もうそうが存在そんざいしたことがある。

C. 気分きぶん障害しょうがいのエピソード基準きじゅんを満みたす症状しょうじょうが、疾患しっかんの活動かつどう期きおよび残ざん遺のこ期きを含ふくむ全ぜん期間きかんの大だい部分ぶぶんに存在そんざいすること。

D. 障害しょうがいは物質ぶっしつ（例れい：乱用らんよう薬物やくぶつ、投薬とうやく）や一般いっぱん身体しんたい疾患しっかんの直接的ちょくせつてきな生理学せいりがく的てき身体しんたい作用さようによるものではない。

分類ぶんるい

統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがいには2つのサブタイプが存在そんざいしており、診断しんだん書しょに記載きさいすることがある。

双極そうきょく型がた -
- 躁病そうびょう型がた（躁病そうびょうエピソードのみの場合ばあい）
- 混合こんごう型がた（躁病そうびょうまたは混こん合性あいしょうエピソードと大だいうつ病びょうエピソード）
抑そもそもうつ型がた - 大だいうつ病びょうエピソードのみの場合ばあい

疾病しっぺいエピソードを繰くり返かえす患者かんじゃ、特とくにうつ状態じょうたいより躁状態じょうたいを繰くり返かえす患者かんじゃは、通常つうじょう完全かんぜん寛解かんかいし、欠陥けっかんを残のこすことはまれである^[1]。

うつ病びょう・躁そううつ病びょう・統合とうごう失調しっちょう症しょうを経過けいかした場合ばあいは、躁状態じょうたいを繰くり返かえす場合ばあいでも、完全かんぜんに寛解かんかいすることはない。通院つういんと服薬ふくやくを続つづけなければ、再発さいはつした際さいに、病名びょうめいが変かわることになり、この病名びょうめいに当あてはまらなくなる。とくに統合とうごう失調しっちょう症しょうを発症はっしょうした場合ばあいは、生涯しょうがい残のこる障害しょうがいと言いわれているため、完全かんぜん寛解かんかいに至いたると断だん薬やくした場合ばあい、再発さいはつの可能かのう性せいが高たかまる点てんに注意ちゅういが必要ひつようである。

ICD-10による分類ぶんるい

F25.0 統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい躁病そうびょう型がた (Schizoaffective Disorder, Manic Type)
F25.1 統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがいうつ病びょう型がた (Schizoaffective Disorder, Depressive Type)
F25.2 統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい混合こんごう型がた (Schizoaffective disorder, mixed type)
F25.8 その他たの統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい (Other schizoaffective disorders)
F25.9 統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい詳細しょうさい不明ふめい (Schizoaffective disorder, unspecified)

治療ちりょう

薬物やくぶつ療法りょうほう

パリペリドンなどの抗こう精神病せいしんびょう薬やく、リチウムやバルプロ酸さん、カルバマゼピンなどの気分きぶん安定あんてい薬やく、SSRI や SNRI などの抗こううつ薬やくなどを用もちいる。

抗こう精神病せいしんびょう薬やくに、バルプロ酸さんなどの気分きぶん安定あんてい薬やくを併用へいようすることは、抗こう精神病せいしんびょう薬やく単独たんどくでの使用しようよりも、より効果こうか的てきであることが示しめされている^[3]。ただしリチウムと抗こう精神病せいしんびょう薬やくの組くみ合あわせは錐きり体外たいがい路ろ症状しょうじょうを引ひき起おこす危険きけん性せいがある。抗こううつ作用さようを持もつラモトリギンの使用しようは、抑そもそもうつ時ときの患者かんじゃに薦すすめられる。

フルオキセチンやセルトラリンなどのSSRIや、SNRIの使用しようは、躁または精神病せいしんびょう症状しょうじょうを出現しゅつげんさせるおそれがあり、単独たんどくでの使用しようは薦すすめられない^[4]^[5]。

心理しんり療法りょうほう

認知にんち行動こうどう療法りょうほうが有効ゆうこうである（症状しょうじょうへの具体ぐたい的てきな治療ちりょう法ほうについては、「統合とうごう失調しっちょう症しょう#治療ちりょう」「うつ病びょう#認知にんち行動こうどう療法りょうほう」「双極そうきょく性せい障害しょうがい#認知にんち行動こうどう療法りょうほう」を参照さんしょう）^[6]。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

出典しゅってん

^ ^a ^b 野村のむら総一郎そういちろう、樋口ひぐち輝彦てるひこ、尾崎おざき紀夫のりお (2009) p287
^ ^a ^b 大熊おおくま輝雄てるお (2008) p360
^ Flynn J, Grieger TA, Benedek DM (January 2002). “Pharmacologic treatment of hospitalized patients with schizoaffective disorder”. Psychiatric Services (Washington, D.C.) 53 (1): 94–6. doi:10.1176/appi.ps.53.1.94. PMID 11773657.
^ Preda A, MacLean RW, Mazure CM, Bowers MB Jr (2001). “Antidepressant-associated mania and psychosis resulting in psychiatric admissions”. The Journal of clinical psychiatry 62: 30-3.
^ Fortunati F, Mazure C, Preda A, Wahl R, Bowers M Jr (2002). “Plasma Catecholamine Metabolites In Antidepressant-Exacerbated Mania and Psychosis Plasma catecholamine metabolites in antidepressant-exacerbated mania and psychosis”. Journal of Affective Disorders 68: 331–334.
^ Turner, D. T., Garg, M., Karyotaki, Eirini., & Cuijpers, P. (2013). Psychological Interventions for Psychosis: A Meta-Analysis of Comparative Outcome Studies. The American Journal of Psychiatry, 171, 523-538.

参考さんこう文献ぶんけん

大熊おおくま輝雄てるお『現代げんだい臨床りんしょう精神せいしん医学いがく改訂かいてい第だい11版はん』金原出版かねはらしゅっぱん、2008年ねん。ISBN 9784307150613。
野村のむら総一郎そういちろう、樋口ひぐち輝彦てるひこ、尾崎おざき紀夫のりお『標準ひょうじゅん精神せいしん医学いがく第だい4版はん』医学書院いがくしょいん、2009年ねん3月がつ。ISBN 9784260007078。

外部がいぶリンク

統合とうごう失調しっちょう感情かんじょう障害しょうがい - MSDマニュアルプロフェッショナル版ばん

[nomura-1] 野村のむら総一郎そういちろう、樋口ひぐち輝彦てるひこ、尾崎おざき紀夫のりお (2009) p287

[ookuma-2] 大熊おおくま輝雄てるお (2008) p360

[3] Flynn J, Grieger TA, Benedek DM (January 2002). “Pharmacologic treatment of hospitalized patients with schizoaffective disorder”. Psychiatric Services (Washington, D.C.) 53 (1): 94–6. doi:10.1176/appi.ps.53.1.94. PMID 11773657.

[4] Preda A, MacLean RW, Mazure CM, Bowers MB Jr (2001). “Antidepressant-associated mania and psychosis resulting in psychiatric admissions”. The Journal of clinical psychiatry 62: 30-3.

[5] Fortunati F, Mazure C, Preda A, Wahl R, Bowers M Jr (2002). “Plasma Catecholamine Metabolites In Antidepressant-Exacerbated Mania and Psychosis Plasma catecholamine metabolites in antidepressant-exacerbated mania and psychosis”. Journal of Affective Disorders 68: 331–334.

[6] Turner, D. T., Garg, M., Karyotaki, Eirini., & Cuijpers, P. (2013). Psychological Interventions for Psychosis: A Meta-Analysis of Comparative Outcome Studies. The American Journal of Psychiatry, 171, 523-538.

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