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愛着あいちゃく障害しょうがい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

愛着あいちゃく障害しょうがい(あいちゃくしょうがい)は、乳幼児にゅうようじ虐待ぎゃくたいネグレクトにより、保護ほごしゃとの安定あんていした愛着あいちゃくたれたことでこされる障害しょうがいをいう[1]。「あまえる」や「だれかを信頼しんらいする」などの経験けいけん極端きょくたんひくいため、自分じぶんけられる愛情あいじょう好意こういたいしての応答おうとうが、いかりや関心かんしんとなってしまう状態じょうたい[2]

  1. まれて2ねんまでに形成けいせいされる通常つうじょう母子ぼしあいだ愛着あいちゃく形成けいせい;
  2. 通常つうじょう愛着あいちゃくが2-3ねん以内いない形成けいせいされない場合ばあいには、愛着あいちゃくおくれて形成けいせいされる

とする愛着あいちゃく理論りろんもとづいている心理しんりがく用語ようごである。

愛着あいちゃく障害しょうがいは、研究けんきゅう文献ぶんけん(O'Connor & Zeanah)においてはられる用語ようごであるが、反応はんのうせい愛着あいちゃく障害しょうがい (Reactive attachment disorder(たとえばアメリカ精神せいしん学会がっかいDSM-IVにあるような)の臨床りんしょうてき診断しんだん基準きじゅんよりはひろ意味いみつ。

治療ちりょうほう支援しえんほうについては、「愛着あいちゃく障害しょうがい#治療ちりょう」を参照さんしょう

分類ぶんるい定義ていぎ

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愛着あいちゃく障害しょうがいDSM-IV-TRにおいては「抑制よくせいがた」と「だつ抑制よくせいがた」にけられ、ICD-10では「反応はんのうせい」と「だつ抑制よくせいせい」にけている[3]

愛着あいちゃく理論りろんもちいられるのは、たとえば、里子さとご養子ようしされた幼児ようじのように、生後せいごすぐに慢性まんせいてき虐待ぎゃくたい経験けいけんした幼児ようじ行動こうどう障害しょうがい説明せつめいする場合ばあいなどである。

愛着あいちゃく療法りょうほう (Attachment therapyは、用語ようごもちかた合意ごういがなされているとはがたい、意味いみひろ用語ようごであるが、おおくのねらいをもつ療法りょうほうである。それゆえに、この用語ようご実用じつようてきではないとかんがえるものもある。

愛着あいちゃく療法りょうほうは1940-50年代ねんだいジョン・ボウルビィによって開発かいはつされ、幼児ようじ精神せいしん医療いりょう小児しょうに発達はったつ (Child Development関連かんれんする領域りょういき(Zeanah, C., 1999)における先進せんしんてき理論りろんである。理論りろん研究けんきゅうはよくなされており、愛着あいちゃく関係かんけいがどのように発達はったつするかや、どうして正常せいじょう健康けんこうてき発達はったつ必須ひっすであるのかや、幼少ようしょう虐待ぎゃくたいやこの期間きかんにおける障害しょうがいがどのような効果こうかをもつのか、などをしめす。

この理論りろん研究けんきゅうエビデンスもとづく治療ちりょうへのアプローチとして、セラプレイ (Theraplayen:Dyadic Developmental Psychotherapyがある.しかし、強制きょうせいてき介入かいにゅう理論りろんてき根拠こんきょく、The Association for The Treatment and Training in the Attachment of Children、APSAC、APA、NASW、AMAなどの職能しょくのう集団しゅうだんからは支持しじされていない。セラプレイやen:Dyadic Developmental Psychotherapyはともに強制きょうせいてき介入かいにゅうもちいておらず、上述じょうじゅつ文献ぶんけんにおける水準すいじゅんとも完全かんぜん合致がっちしている。

原因げんいん

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欧米おうべいでの先行せんこう研究けんきゅうにより、どもの基本きほんてき情緒じょうちょてき欲求よっきゅう身体しんたいてき欲求よっきゅう持続じぞくてき無視むし養育よういくしゃかえわることなどがげられている。また、研究けんきゅうしゃ友田ともだ明美あけみ(2020)[2]は、養育よういくしゃとのあいだ愛着あいちゃく形成けいせい阻害そがいする要因よういんとして、

  1. 暴言ぼうげん虐待ぎゃくたいによる「聴覚ちょうかく肥大ひだい
  2. 性的せいてき虐待ぎゃくたい両親りょうしんのDV目撃もくげきによる「視覚しかく萎縮いしゅく
  3. 厳格げんかく体罰たいばつによる「前頭まえがしら前野まえの萎縮いしゅく

げている。

治療ちりょう

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Attachment-based Therapy愛着あいちゃく療法りょうほうとはことなる)が有効ゆうこうである。上述じょうじゅつDyadic Developmental PsychotherapyTheraplay、またAttachment-based Psychotherapy効果こうかがある。くわえて、しんてき外傷がいしょうストレス障害しょうがい (PTSD)症状しょうじょう併存へいそんする場合ばあいは、「PTSD#治療ちりょう」も参照さんしょう[4]

なお、思春期ししゅんき問題もんだい背景はいけいにある愛着あいちゃく障害しょうがいへの介入かいにゅう方法ほうほうとしては、おおきくけて以下いかのものがあるとされる[4]

  • どもの問題もんだいについての心理しんり教育きょういく (parent education):どもの問題もんだい対処たいしょ方法ほうほうについてのあらたな情報じょうほう提供ていきょうおこな
  • どもー養育よういくしゃ相互そうご作用さようへの介入かいにゅう (parent training):あらたな養育よういく体験たいけん導入どうにゅうによって認知にんちのバイアスにづくことができる。具体ぐたいてきには、ペアレント・トレーニングのセッションで、治療ちりょうしゃにコーチングをけながら、どもの愛着あいちゃく行動こうどう共感きょうかんてき応答おうとうたのしみを共有きょうゆうするなど肯定こうていてき相互そうご作用さよう体験たいけんする。どもが発信はっしんする情緒じょうちょてきな(とく愛着あいちゃく関連かんれんした接近せっきん欲求よっきゅうなどの)がかりのあやまりや見落みおとしをらし、どもの行動こうどうのもつ心理しんりてき意味いみ推測すいそくするちからたかめる
  • 家族かぞくへの介入かいにゅう(attachment based family therapy;愛着あいちゃくもとづく家族かぞく療法りょうほう):愛着あいちゃく関連かんれんする家族かぞく機能きのう不全ふぜん改善かいぜんする
  • 養育よういくしゃへの治療ちりょうてき介入かいにゅう養育よういくしゃどもとのせっかた改善かいぜんする
  • 補完ほかん代替だいたいしうる愛着あいちゃく対象たいしょう提供ていきょう家族かぞく機能きのう不全ふぜんおおきく、どもにとって安全あんぜん保障ほしょうできないとき、安全あんぜん構造こうぞうされた生活せいかつ提供ていきょうする

関連かんれん人物じんぶつ

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愛着あいちゃく障害しょうがいとく回避かいひせい愛着あいちゃく障害しょうがいではないかと専門せんもん指摘してきされる著名ちょめいじんには、哲学てつがくしゃセーレン・キェルケゴールエリック・ホッファー俳人はいじん種田山頭火たねださんとうか作家さっかJ・R・R・トールキンJ・K・ローリング井上いのうえやすし江戸川えどがわ乱歩らんぽ心理しんり学者がくしゃエリク・H・エリクソンなどがいる[5]

関連かんれん文献ぶんけん

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  • 岡田おかだたかし愛着あいちゃく障害しょうがい - ども時代じだいきずる人々ひとびと』(光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、2011ねん
  • 米澤よねざわよしみ『「愛情あいじょううつわ」モデルにもとづく愛着あいちゃく修復しゅうふくプログラム-発達はったつ障害しょうがい愛着あいちゃく障害しょうがい 現場げんばまさしくこどもを理解りかいし、こどもにった支援しえんをする-』 (福村ふくむら出版しゅっぱん、2015ねん
  • ヘネシー澄子すみこあいせないはははは拒否きょひする学習がくしゅう研究けんきゅうしゃ (2004/10/13) - 反応はんのうせい愛着あいちゃく障害しょうがいについて
  • 『わたし、虐待ぎゃくたいサバイバー』(はねうま千恵ちえ、2019) ISBN 978-4-89308-919-9

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 愛着あいちゃく障害しょうがい』 - コトバンク
  2. ^ a b 友田ともだ明美あけみ, 「不適切ふてきせつ生育せいいく環境かんきょうかんするのう科学かがく研究けんきゅう」『日本にっぽんペインクリニック学会がっかい』 27かん 1ごう 2020ねん p.1-7, doi:10.11321/jjspc.19-0024
  3. ^ 愛着あいちゃく障害しょうがい
  4. ^ a b 山下やましたひろし、「思春期ししゅんき問題もんだい背景はいけいにある愛着あいちゃく障害しょうがいについて」『総合そうごう病院びょういん精神せいしん医学いがく』 24かん 3ごう 2012ねん p.230-237, doi:10.11258/jjghp.24.230, 日本にっぽん総合そうごう病院びょういん精神せいしん学会がっかい
  5. ^ 岡田おかだたかし回避かいひせい愛着あいちゃく障害しょうがい』2013ねん 光文社こうぶんしゃ新書しんしょ、p61-66,131-136,166-178,239-241.

関連かんれん項目こうもく

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