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なます

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

なますなます(なます、音読おんよでは「カイ」、ピンインではkuài)は、けた獣肉じゅうにく魚肉ぎょにく調味ちょうみりょうわせて生食なましょくする料理りょうりす。

獣肉じゅうにくもちいたものは「なます」、魚肉ぎょにくもちいて同様どうよう調理ちょうりをしたものは「なます」、また「さかななます」ともいった。

日本にっぽんでは魚介ぎょかいるい野菜やさいるい果物くだものるいほそく(あるいはうすく)り、基本きほんにした調味ちょうみりょうえた料理りょうり発展はってんした。日本にっぽんなますについてはものともよばれる。

中国ちゅうごくにおけるなますについて

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もともとなます細切こまぎりの生肉せいにく生魚なまざかなのことを[注釈ちゅうしゃく 1]春秋しゅんじゅう時代じだいにおいては、これら細切こまぎりの生肉せいにく生魚なまざかなねぎからしさいなどの薬味やくみをつけてべていた。孔子こうしにくなますこのんだという[1]

当時とうじあぶ[注釈ちゅうしゃく 2]とも著名ちょめい料理りょうりほうとしてられた。『孟子もうし』では「おいしいもの」のれいとして「膾炙かいしゃ」をあげている[2]

はたかん時代じだいになると、うしひつじなどの家畜かちく野獣やじゅうなますにすることすくなくなり、もっぱら魚肉ぎょにくざいとして使つかわれるようになった。そこで、「なます」のへんを「さかな」にえてつくられた「なます」というがしばしば使つかわれるようになった[3]。このころなます一般いっぱんてき料理りょうりとしてられており、なます生魚なまざかな)をべないむらが「奇異きい風俗ふうぞく習慣しゅうかん」として記録きろくのこるほどであった[注釈ちゅうしゃく 3]

南北なんぼくあさ時代じだいになると「きむ齏玉なます」という料理りょうり登場とうじょうする。これは「八和やつわ齏」[注釈ちゅうしゃく 4]という調味ちょうみりょうさかななますにかけた料理りょうりずい煬帝このんだ料理りょうりであった。

以降いこう時代じだいなますべる習慣しゅうかんつづいたが、明代あきよになると次第しだいにその習慣しゅうかんうしなわれるようになり、しんだいには一部いちぶ地域ちいきのぞ生肉せいにくなますにしてべる習慣しゅうかんうしなわれた。現代げんだいでは中国ちゅうごく東北とうほく地区ちくにある満州まんしゅうぞくナナイぞく一部いちぶ村落そんらくや、南方なんぽうかんぞく一部いちぶさかななますべる習慣しゅうかんのこすのみとなっている。

日本にっぽんなます(なます)について

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なます文字もじ古事記こじき日本書紀にほんしょき時代じだいからられ、生肉せいにくこまかくきざんだものをした。「なます」の語源ごげんは「なましし(生肉せいにく)」とも「なますき(なまきり)」がてんじたともわれている。なお、なますもちいるようになったのは後世こうせいのことなので、「生酢きず」を語源ごげんとするのはあやまりである。江戸えど時代じだいまで「なます」はぜんにおけるメインディッシュとしてのあつかいをけており、ぜん中央ちゅうおうよりこうがわかれることから「向付むこうづけ」(むこうづけ)とばれるようになった。

現在げんざい「なます」の調味ちょうみりょうとしてもちいられるものとしては、甘酢あまず二杯酢にはいず三杯酢さんばいず、ゆず、たでなどがあるが、ふるくはしゅ鰹節かつおぶし梅干うめぼしさけみずまりをわせて煮詰につめたもの)などももちいられた。

なます原義げんぎ忠実ちゅうじつ料理りょうりとしては、さけこおりあたまもちいた「こおりあたまなます」や、千葉ちばけん房総ぼうそうられる漁師りょうし料理りょうりの「みずなます」などがあげられる。みずなますはあじなどのしょうさかなこまかくたたいて味噌みそ調味ちょうみし、薬味やくみとなる香味こうみ野菜やさいとも氷水こおりみずったものである。また魚介ぎょかいるいにした酢蛸すだこさばなどの「もの」、刺身さしみかまぼこなどを酢味噌すみそえた「味噌和みそあえ」「ぬた」などもなます一種いっしゅである。

室町むろまち時代ときよ院政いんせい以降いこうは、魚介ぎょかいるい獣肉じゅうにくかぎらずもちいたもの全般ぜんぱんすようになり、野菜やさい果物くだものだけをもちいる「精進しょうじんなます」がしょうじた。根菜こんさいるい油揚あぶらあ椎茸しいたけなどとってからえる「きなます」は現在げんざい家庭かてい惣菜そうざいとしてつくられる。

正月しょうがつおせち調理ちょうりとして、レンコン使つかった「はちすれんこん/ばす)」や、繊切せんぎりにしたダイコンニンジン(あるいはがき)をもちいた「紅白こうはくなます」がつくられる。あかしろみなもと平家ひらかはた見立みたてて「源平げんぺいなます」ともばれる。

紅白こうはくなますのつくかた

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紅白こうはくなます
  1. ダイコンとニンジンをながさ5cmほどのごくほそ繊切せんぎりにする。まえかわ方法ほうほうもある。
  2. ったダイコンとニンジンにしおをふり、しんなりしたらかたしぼって水気みずけをとる。このさい、ダイコンとニンジンをべつけたり、重石おもしをのせてける方法ほうほうもある。
  3. 砂糖さとう食塩しょくえんみずれる方法ほうほうもある)をぜて、たかつめともける。(まず半量はんりょうけてから水気みずけり、けする方法ほうほうもある)
  4. ユズかわこまかくぜる。
  5. 地方ちほうによってはピーナッツ[4]ごまなどをくわえることもある。

朝鮮ちょうせん韓国かんこくにおけるなます(フェ)について

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朝鮮半島ちょうせんはんとうでは、「なます」または「なます」を「フェ」とぶ。さんこく時代じだい中国ちゅうごくよりつたわり、あきらしんだいなます消費しょうひおとろえた中国ちゅうごくとはことなり、朝鮮ちょうせん時代じだいにもなます(フェ)は孔子こうし祭礼さいれいなどにきょうされ、一般いっぱんでもべられた。現在げんざいでもフェはさかんにべられている。たとえばユッケは「にくなます」とき、なます一種いっしゅとされる(「にく」を「ユッ」、なますを「フェ」と発音はつおんするが、リエゾンによって「ユッケ」と発音はつおんされる)。また、日本にっぽん統治とうち時代じだい日本にっぽんから朝鮮半島ちょうせんはんとうはいった刺身さしみをもとにした料理りょうりフェ表現ひょうげんされる。また素材そざい生肉せいにく生魚なまざかなとはかぎらず、家畜かちく内臓ないぞうとおして野菜やさいるいえたフェもある。

ことわざ・慣用かんよう

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ことわざ慣用かんようでの「なます」は、古代こだい中国ちゅうごくけた生肉せいにく生魚なまざかなによる料理りょうり意味いみすることがおおい。

  • あつもの(あつもの)にりてなます(なます)をく」 - あつあつもの汁物しるものスープ)でしたなどくちなかをやけどしたのにりて、つめたいなますでさえもいて(いききかけてまして)う。つまり、一度いちど失敗しっぱいしたことにりて無益むえき用心ようじんをすること(「あつものりたるもの、あえをく」と同意どうい。“あえ”とはあえもの、刺身さしみ意味いみ)。もともとこごめはらいた『すわえ きゅうしょうちゅう〈惜誦〉』のいちせつである。
  • 人口じんこう膾炙かいしゃ(かいしゃ)する」 - なますあぶ(あぶりにくちょくによるにく)はいずれもおおくのひとよろこんでべることから、物事ものごとおおくのひとあいだ話題わだいになり、もてはやされること[5]
  • なまする」「なますたたく」 - なますこまかにきざむ(たたく)ことから、てんじてひと滅多めったりにすることをす。
  • 「蓴羹すずきなます(じゅんこうろかい)」 - 故郷こきょうなつかしくおもしんのこと。「蓴羹」は蓴菜じゅんさいあつもの(とろみをつけたスープ)、「すずきなます」はスズキなますすすむちょう郷土きょうど料理りょうりの蓴羹すずきなますなつかしく、しょくした故事こじもとづく[6]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 漢書かんしょ東方とうほうついたちつてに「生肉せいにくためなます」(生肉せいにくなますとする)という記載きさいが、れいに「にくなまぐさほそためなます」(にくさかな細切こまぎれをなますとする)という記載きさいがある。
  2. ^ あぶったにく [1]
  3. ^ かんだいおうしるした「風俗ふうぞく通義みちよし」という書物しょもつには「しゅくおもね現在げんざい山東さんとうしょうひとしかわけんしゅくおもね)という土地とち生魚なまざかなべない奇異きい風俗ふうぞくがある」と記録きろくのこっている。なおずいしょ地誌ちしでんにも同様どうよう記載きさいのこっており、ずいだいにも同様どうよう風習ふうしゅうのこっていたことがわかる。
  4. ^ 八和やつわ齏」についてはきたのうしょひとしみんようじゅつつくかたっている(Wikisourceの該当がいとう箇所かしょへのリンク)。それによると「ひる」(ニンニクもしくはラッキョウ)、「はじかみ」(ショウガ)、「たちばな」(タチバナ)、「白梅はくばい」(ウメ)、「じゅくあわ」(したあわ)、「粳米うるちまいめし」(米飯べいはん)、「しお」(食塩しょくえん)、「ひしお」(醤油じょうゆ)というはちしゅ材料ざいりょうぜてつくったもののようである。

出典しゅってん

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  1. ^ ちょうけい(チョウ,キョウ)中華ちゅうか料理りょうり文化ぶんか筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま新書しんしょ〉、1997ねん9がつISBN 4-480-05724-2  43P
  2. ^ 孟子もうしつきしんしょう
  3. ^ ちょう涌泉 (2008), 敦煌とんこうけい文献ぶんけんごうしゅう, 北京ぺきん: 中華ちゅうかしょきょく, p. 3858, ISBN 9787101060355 
  4. ^ ピーナツりなます
  5. ^ 故事こじことわざ事典じてん
  6. ^ すすむしょちょう翰伝

関連かんれん項目こうもく

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