ラッキョウ

ラッキョウ
ラッキョウの花はな
保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms 階級かいきゅうなし : 単たん子葉しよう類るい monocots 目め : キジカクシ目め Asparagales 科か : ヒガンバナ科か Amaryllidaceae 属ぞく : ネギ属ぞく Allium 種たね : ラッキョウ A. chinense
学名がくめい
Allium chinense G.Don (1827)
英名えいめい
Rakkyo

ラッキョウ（辣韮らっきょう、学名がくめい: Allium chinense）はヒガンバナ科かネギ属ぞくの多年草たねんそう・野菜やさい。別名べつめいは「オオニラ」、「サトニラ」。鱗茎りんけいを食用しょくようとし、独特どくとくの匂においと辛味からみ、歯はごたえがある。

特徴とくちょう

中国ちゅうごく、チベットのヒマラヤ地方ちほうが原産げんさん。中国ちゅうごくから熱帯ねったいアジア地域ちいきに自生じせいし、紀元前きげんぜんから食用しょくようとされてきた。日本にっぽんへは9世紀せいきに渡来とらいし、薬用やくようとして用もちいられた。当初とうしょは独特どくとくな辛味からみと匂においが敬遠けいえんされていたが、身体しんたいを温あたためる効果こうかがあるとされ、江戸えど時代じだいには食用しょくようとして広ひろまり、漬物つけものだけでなく煮物にものなどにして親したしまれるようになった。根元ねもとで肥大ひだいした、白色はくしょくまたは紫色むらさきいろを帯おびた白色はくしょくの鱗茎りんけいを食用しょくようとする。 特有とくゆうの強つよい匂においと辛味からみを持もつ。この匂においはニンニクやニラと同おなじアリル硫化りゅうか物ぶつである。

産地さんちによって種類しゅるいがあるが、一般いっぱん的てきには玉たまの大おおきい在来ざいらい種しゅの「らくだ」や、主おもに台湾たいわんで生産せいさんされている「玉たまらっきょう」などがある。

軟白栽培さいばいして早はや採とりしたラッキョウを葉はつきのまま出荷しゅっかしているものは、「エシャレット」あるいは「エシャロット」として流通りゅうつうしている。日本にっぽんでは、エシャロットの呼称こしょうに混乱こんらんが見みられ、生食なましょく用ように軟白栽培さいばいされたラッキョウ (Allium chinense) が「エシャロット」の名なで流通りゅうつうしたり、「エシャレット」の商品しょうひん名めいで販売はんばいされていることが多おおい。この一いち年ねん物ぶつの早はや獲えりラッキョウに「エシャレット」という商品しょうひん名めいを命名めいめいしたのは東京とうきょう築地つきじの青果せいか卸業者おろしぎょうしゃ・川井かわい彦二ひこじであり、その理由りゆうとして「『根ねラッキョウ』の商品しょうひん名めいでは売うれないと思おもったのでお洒落しゃれな商品しょうひん名めいを付つけた」と語かたっている。

本物ほんものの エシャロット（仏ふつ: Échalote、学名がくめい: Allium cepa L. var. aggregatum）は、タマネギの一種いっしゅ、具体ぐたい的てきにはタマネギ（Allium cepa）の変種へんしゅである。調味ちょうみ料りょうおよび野菜やさいとして栽培さいばいされており、食用しょくようとされる球根きゅうこん（鱗茎りんけい）もエシャロットと呼よばれる。

• 
  鳥取砂丘とっとりさきゅうのラッキョウ畑はたけ。ラッキョウの花はなは鳥取とっとり市しの市し花はなでもある。
• 
  葉は
• 
  収穫しゅうかくされた鱗茎りんけい
• 
  酒さけのつまみとして供きょうされるラッキョウの甘酢あまず漬づけ

栽培さいばい

通年つうねん栽培さいばいで、作さく型がたは小ちいさな球根きゅうこん（鱗茎りんけい）を晩夏ばんか（8中旬ちゅうじゅん - 9月がつ中旬ちゅうじゅん）に畑はたけに植うえ付つけて冬ふゆを越こし、翌年よくねんの夏なつ（6月がつ中旬ちゅうじゅん - 7月がつ中旬ちゅうじゅん）に葉はが枯かれて休眠きゅうみん状態じょうたいに入はいったら鱗茎りんけいを収穫しゅうかくする。栽培さいばいは容易よういで、土どを選えらばず、堆肥たいひも入いれずに球根きゅうこんを植うえ付つけるだけでも簡単かんたんにできる。冬ふゆの寒さむさにも強つよい性質せいしつで、連作れんさく障害しょうがいもなく、栽培さいばい適温てきおんは20 - 23度どとされている。畑はたけとなる土壌どじょうは、堆肥たいひや有機ゆうき質しつ配合はいごう肥料ひりょうで全面ぜんめん施肥せひを行おこなって育そだてると紹介しょうかいする文献ぶんけんもある。

球根きゅうこんの植うえ付つけは、畑はたけを良よく耕たがやしてから畝うねを立たて、間隔かんかく50センチメートル (cm) ごとに深ふかさ5 cmくらいの穴あなをあけて、ふつう1か所しょに1球きゅうずつ種たね球だまを植うえる。早春そうしゅんに追肥ついひを行おこなって土寄つちよせも行おこなうと、充実じゅうじつしたラッキョウになる。葉はが青あおいうちは若わか採とりしてエシャレット（エシャロット）として利用りようすることも可能かのうである。初夏しょか（6月がつ下旬げじゅん以降いこう）に葉はが枯かれてきたら収穫しゅうかく期きで、球根きゅうこんを掘ほり上あげて風通かぜとおしの良よい日陰ひかげに吊つるして乾燥かんそうさせ、貯蔵ちょぞうする。収穫しゅうかくした球根きゅうこんの一部いちぶは、来期らいき栽培さいばい用ようの種たね球だまとし、枯かれ葉はを取とり除のぞいて1球きゅうずつばらして植うえ付つけする。

日本にっぽんにおける主おもな産地さんちは、鳥取とっとり県けん、鹿児島かごしま県けん、茨城いばらき県けん、宮崎みやざき県けんなどである。

日本にっぽんにおける食品しょくひんとしての扱あつかい

らっきょう　りん茎くき　生せい

100 gあたりの栄養えいよう価か
エネルギー	494 kJ (118 kcal)
炭水化物たんすいかぶつ	29.3 g
食物しょくもつ繊維せんい	20.7 g
脂肪しぼう	0.2 g
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん	(0.03) g
一価いっか不ふ飽和ほうわ	(0.03) g
多た価あたい不ふ飽和ほうわ	(0.08) g
タンパク質たんぱくしつ	1.4 g
ビタミン
チアミン (B1)	(6%) 0.07 mg
リボフラビン (B2)	(4%) 0.05 mg
ナイアシン (B3)	(14%) 2.1 mg
パントテン酸さん (B5)	(11%) 0.56 mg
ビタミンB6	(9%) 0.12 mg
葉酸ようさん (B9)	(7%) 29 µg
ビタミンC	(28%) 23 mg
ビタミンE	(5%) 0.8 mg
ビタミンK	(1%) 1 µg
ミネラル
ナトリウム	(0%) 2 mg
カリウム	(5%) 230 mg
カルシウム	(1%) 14 mg
マグネシウム	(4%) 14 mg
リン	(5%) 35 mg
鉄分てつぶん	(4%) 0.5 mg
銅どう	(3%) 0.06 mg
セレン	(1%) 1 µg
他たの成分せいぶん
水分すいぶん	68.3 g
水溶すいよう性せい食物しょくもつ繊維せんい	18.6 g
不溶性ふようせい食物しょくもつ繊維せんい	2.1 g
ビオチン（B7）	0.9 µg
ビタミンEはαあるふぁ─トコフェロールのみを示しめした。別名べつめい： おおにら、さとにら。廃棄はいき部位ぶい： 根ね、膜まく状じょうりん片ぺん及および両りょう端はし。
単位たんい µg = マイクログラム (英語えいご版ばん) • mg = ミリグラム IU = 国際こくさい単位たんい
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける 成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI) の割合わりあい。

主おもに甘酢あまず漬づけを中心ちゅうしんに、さまざまに味付あじつけがされた市販しはんのラッキョウ漬づけが食たべられているが、各かく家庭かていでも酢す付づけや醤油じょうゆ漬づけ、塩漬しおづけ、味噌みそ漬づけなどが手作てづくりされている。カレーライスのつけあわせ（薬味やくみ）として、福神漬ふくじんづけとならんで一般いっぱん的てきな存在そんざいである。アリル硫化りゅうか物ぶつが消化しょうかを助たすけるほか、ポークカレーの豚肉ぶたにくに含ふくまれるビタミンB1の吸収きゅうしゅうに役立やくだつといわれる。 鳥取とっとり県けん（鳥取砂丘とっとりさきゅう）・福井ふくい県けん（三里浜さんりはま）・鹿児島かごしま県けん南みなみさつま市し（吹上ふきがみ浜はま）・鹿児島かごしま県けん薩摩さつま川内せんだい市し（唐浜からはま）の特産とくさん品ひんである。主おもな旬しゅんは初夏しょかから夏場なつば（6 - 8月がつ）で、緑色みどりいろがかかっていない白色はくしょくのもので、芽めの伸のびていないものが良品りょうひんとされる。漬物つけものにしない状態じょうたいでは生なまラッキョウとも呼よばれるが、初夏しょかの収穫しゅうかく期きに自家製じかせい漬物つけもの用ようとして出回でまわる以外いがいはあまり流通りゅうつうしていない。

生なまラッキョウは生命せいめい力りょくが強つよく、収穫しゅうかくして間あいだもない状態じょうたいでもすぐに芽めが出でてきてしまう。泥どろつきのラッキョウをその日ひのうちに下しも処理しょりを済すませるのが良よく、水洗みずあらいしたら一いち粒つぶずつ皮かわを剥むいて芽めや根ねの部分ぶぶんを切きり落おとし、ザルに広ひろげて2 - 3時じ間あいだ干ほしたら調味ちょうみ液えきに漬つけ込こむ。味あじがなじむまで漬つけ込こんだら、1年間ねんかんほどおいしく食たべられる。なるべく水みずを吸すわせないように手早てばやく洗あらうと、漬づけあがりの歯はごたえが良よくなる。一般いっぱん的てきには、塩漬しおづけにしたラッキョウを甘酢あまずに漬つける。

大乗だいじょう仏教ぶっきょうにおいて摂食せっしょくが避さけられることのある五ご葷のひとつである。

日本にっぽんでは、軟白栽培さいばいされた若わか摘つまみのラッキョウ（根ねラッキョウ）が、しばしば同属どうぞく異種いしゅの香味こうみ野菜やさいエシャロットと呼よばれて混同こんどうも起おきている。これは1960年代ねんだいに東京とうきょうの市場いちばで働はたらいていた男性だんせいが新あらたに仕入しいれた早はや採とりらっきょうを、当時とうじまだ日本にっぽんに輸入ゆにゅうされていなかったエシャロットの名称めいしょうで売うり出だしたことに起因きいんするが、その後ご本物ほんもののエシャロットが輸入ゆにゅう販売はんばいされるに至いたってからはエシャレットという商品しょうひん名めいで売うられるようになった。本来ほんらいのエシャロットは球根きゅうこん性せいの野菜やさいでワケギや小型こがたのタマネギとよく似にている。

栄養素えいようそ

ネギやニンニクと同様どうように、ビタミンB1の吸収きゅうしゅうを助たすけて新陳代謝しんちんたいしゃを活発かっぱつにして促うながす働はたらきがある硫化りゅうかアリルが豊富ほうふに含ふくまれている。硫化りゅうかアリルには、血ち流りゅうを良よくして血栓けっせん症しょうを予防よぼうする働はたらきや、免疫めんえき力りょくの向上こうじょう、肥満ひまん解消かいしょう、生活せいかつ習慣しゅうかん病びょうの予防よぼう効果こうかが期待きたいされている。特有とくゆうのにおい成分せいぶんはアリシンで、強力きょうりょくな抗菌こうきん作用さようが知しられている。

野菜やさいに含ふくまれる食物しょくもつ繊維せんいの多おおくは不溶性ふようせいであることが多おおいが、ラッキョウは水溶すいよう性せい食物しょくもつ繊維せんいが豊富ほうふで、ゴボウの3 - 4倍ばいほど含ふくまれる。ラッキョウの水溶すいよう性せい食物しょくもつ繊維せんいの大半たいはんは、フルクタンである。甘酢あまず漬づけでは、その下した漬づけの際さいにフルクタンが乳酸菌にゅうさんきんにより分解ぶんかいされ、生なまラッキョウと比くらべるとフルクタンが 1⁄6程度ていどである。

島しまラッキョウ

詳細しょうさいは「島しまらっきょう」を参照さんしょう

沖縄おきなわ県けん特産とくさんのラッキョウ。ダッチョウとも呼よばれる。夏なつが旬しゅんである普通ふつうのラッキョウと違ちがい、夏なつから秋あきにかけて栽培さいばいされ、冬ふゆに収穫しゅうかくされる。一般いっぱん的てきなラッキョウより小型こがたで細ほそく、ネギに似にた強つよい辛からみがある。沖縄おきなわでは、浅漬あさづけ、天てんぷら、炒いため物ぶつなどさまざまな料理りょうりに使つかわれる。血液けつえき硬化こうかを防ふせぐアデノシンが多おおく含ふくまれ、脳卒中のうそっちゅうや心臓しんぞう病びょうを回避かいひできる薬効やっこうで注目ちゅうもくされている。

生薬きぐすり

鱗茎りんけいは、薤らっきょう白しろ（がいはく）という生薬きぐすり名ながある。漢方かんぽうでは胸むね痺しびれ（きょうひ）に効果こうかがあるとされる。以下いかに薤らっきょう白しろが配合はいごうされる方かた剤ざいを挙あげる。

• 栝楼薤らっきょう白白しろじろ酒しゅ湯ゆ（かろがいはくはくしゅとう）
• 栝楼薤らっきょう白しろ半はん夏なつ湯ゆ（かろがいはくはんげとう）
• 枳からたち実じつ薤らっきょう白はく桂かつら枝えだ湯ゆ（きじつがいはくけいしとう）

その他た

• 道みちの駅えきみくに - ラッキョウ特産とくさん地ちにあり、ラッキョウ資料しりょう館かんを併設へいせつ。
• イイダコ - ラッキョウを餌えさとした釣つり法ほうがある。
• 鞆鉄道てつどう線せん - ラッキョ汽車きしゃ（機関きかん車しゃの外見がいけんによる別称べっしょう）。
• 素す隠居いんきょ - 岡山おかやま県けん、阿智あち神社じんじゃ例祭れいさいの風物ふうぶつ。
• 井手いでらっきょ - 円形えんけい脱毛だつもう症しょうを理由りゆうにスキンヘッドになった際さい、頭部とうぶがラッキョウに見みえたことから命名めいめいされた。
• 救世主きゅうせいしゅラッキョウ - 小林こばやしよしのりによる架空かくうの新興しんこう宗教しゅうきょうをテーマにした漫画まんが。ラッキョウが聖せいなる存在そんざいとして登場とうじょうする。
• 薤らっきょう露ろ行ゆき - 夏目なつめ漱石そうせきの小説しょうせつ。「薤らっきょう露ろ」はラッキョウの葉はについた露ろのことで、生せいの儚はかなさを表あらわす。

参考さんこう文献ぶんけん

• 猪股いのまた慶子けいこ監修かんしゅう 成美せいび堂どう出版しゅっぱん編集へんしゅう部ぶ編へん『かしこく選えらぶ・おいしく食たべる 野菜やさいまるごと事典じてん』成美せいび堂どう出版しゅっぱん、2012年ねん7月がつ10日とおか、56頁ぺーじ。ISBN 978-4-415-30997-2。 
• 金子かねこ美よし登とう『有機ゆうき・無む農薬のうやくでできる野菜やさいづくり大だい事典じてん』成美せいび堂どう出版しゅっぱん、2012年ねん4月がつ1日にち、208 - 209頁ぺーじ。ISBN 978-4-415-30998-9。 
• 講談社こうだんしゃ編へん『からだにやさしい旬しゅんの食材しょくざい 野菜やさいの本ほん』講談社こうだんしゃ、2013年ねん5月がつ13日にち、50頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-218342-0。 
• 主婦しゅふの友社ともしゃ編へん『野菜やさいまるごと大図おおず鑑あきら』主婦しゅふの友社ともしゃ、2011年ねん2月がつ20日はつか、208 - 209頁ぺーじ。ISBN 978-4-07-273608-1。 

関連かんれん項目こうもく

• ヤマラッキョウ
• たまり漬づけ
• フルクタン
• 赤あか枯病 - ラッキョウ赤あか枯病

外部がいぶリンク

• ラッキョウの省力しょうりょく機械きかい化か技術ぎじゅつ体系たいけいの開発かいはつ (PDF) 福井ふくい県けん農業のうぎょう試験しけん 農業のうぎょう試験場しけんじょう研究けんきゅう報告ほうこく No.48, 2011年ねん12月