西洋せいよう度量どりょう考こう

『西洋せいよう度量どりょう考こう』
著者ちょしゃ	青山あおやま幸みゆき哉
発行はっこう日び	安政あんせい2年ねん（1855年ねん）
国くに	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
形態けいたい	美濃みの本ほん
ページ数すう	二に十じゅう丁ちょう
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『西洋せいよう度量どりょう考こう』（せいようどりょうこう）は、美濃みの国こく郡上ぐじょう藩はん主おも・青山あおやま幸みゆき哉によって撰述せんじゅつされた、西洋せいようの度量衡どりょうこうの研究けんきゅう書しょ。西洋せいようの度量衡どりょうこうについて先行せんこうする書物しょもつをまとめたもので、刊本かんぽんとしては最もっとも古ふるく、広ひろく流布るふした。同おなじ『西洋せいよう度量どりょう考こう』のタイトルで呼よばれる書籍しょせき（写本しゃほん）はいくつかあるため、「郡上こおりかみ版ばん」、「青山あおやま本ほん」などの名称めいしょうで呼よばれることもある。

内容ないよう

安政あんせい2年ねん（1855年ねん）刊行かんこう。木版もくはんで印刷いんさつされた、美濃みの本ほんで一いち巻かん一いち冊さつ、二に十じゅう丁ちょうからなる書物しょもつである。篠山しのやま藩はんの医師いしで蘭学らんがく者しゃの足立あだち栄さかえ建けん（足立あだち櫟くぬぎ亭てい）が序文じょぶんを著あらわしている。

青山あおやまによる「例言れいげん」には、1798年ねんにフランス、スペイン、オランダ、イタリア、デンマークなどの欧州おうしゅう諸国しょこくの学者がくしゃが集あつまり、1800年ねんから新あらたに欧州おうしゅう諸国しょこくで通用つうようする基準きじゅんが制定せいていされたと情報じょうほうが記載きさいされており、「旧制きゅうせい」に加くわえ近年きんねんの書物しょもつに見みえる「新制しんせい」の度量衡どりょうこうに関かんする知見ちけんと見解けんかいを増補ぞうほして発行はっこうすると記しるしている。

青山あおやまは、西洋せいよう諸国しょこくの度たび（長ながさと面積めんせき）・量りょう（質量しつりょうと体積たいせき）・数かず（個数こすう・ダース・比ひなど）・貨（貨幣かへいの単位たんい）の名称めいしょうをまとめ、アルファベット順じゅんに配列はいれつして解説かいせつした。採用さいようされている語彙ごいの大半たいはんはオランダ語ごの名称めいしょうであるが、ラテン語らてんごや英語えいごによる名称めいしょうも見みられる。

メートルについては、当時とうじのオランダ語ごでの呼称こしょうであったEl（ヱル、会かい爾なんじ）もしくはEllemaat（ヱルレマート）の項目こうもくで言及げんきゅうされ、地ち周しゅうの四よん万まん分ぶんの一いちにあたる「新しん尺しゃく」1ヱルを3尺しゃく2寸すん8分ふん9厘りん2毛もう4糸いと8忽ゆるがせとして記載きさいしている。当時とうじ日本にっぽんで行おこなわれていた「ヱル」のいくつかの換算かんさんについての考察こうさつもなされている。なお、フランス語ふらんすごのMetres（メトレス）の項目こうもくもあるが、「新しん度量どりょう名めい　未み詳しょう」とのみある。

編纂へんさん過程かていと評価ひょうか

青山あおやま幸みゆき哉は、文化ぶんか12年ねん（1815年ねん）に丹波たんば国こく篠山しのやま藩主はんしゅ青山あおやま忠裕ただみちの子ことして江戸えどに生うまれた。幸こう哉は篠山しのやま在住ざいじゅう時じから蘭学らんがくに志こころざし、足立あだち櫟くぬぎ亭ていからオランダ語ごを学まなんでいる。足立あだち櫟くぬぎ亭ていは宇田川うだがわ榕庵ようあんの弟おとうとにあたる。幸こう哉は同族どうぞくの郡上こおりかみ藩主はんしゅ青山あおやま幸みゆき礼れいの養子ようしとなり、天保てんぽう9年ねん（1838年ねん）に藩主はんしゅとなった。なお、江戸えど幕府ばくふにおいては天保てんぽう14年ねん（1843年ねん）から弘ひろし化か3年ねん（1846年ねん）にかけて寺社じしゃ奉行ぶぎょうを務つとめている。青山あおやまが本書ほんしょの「例言れいげん」で述のべることによれば、青山あおやまの書庫しょこには『度量どりょう考こう』と題だいする著者ちょしゃ不明ふめいの写本しゃほんがあり、西洋せいよう砲術ほうじゅつや兵学へいがくの書しょを読よむうえで非常ひじょうに役立やくだったという。

西洋せいようの書物しょもつを読よむ上じょうでは、記載きさいされた度量衡どりょうこうを理解りかいすることが必要ひつようであり、そのために研究けんきゅう書しょあるいは換算かんさん表ひょうがまとめられることとなった。たとえば、長崎ながさき通詞つうじ志筑しづき忠雄ただお稿こう・馬場ばば佐十郎さじゅうろう補修ほしゅうになる『度量どりょう考こう』は、馬場ばばの手てにより文化ぶんか9年ねん（1812年ねん）にまとめられた。青山あおやまの手元てもとにあった『度量どりょう考こう』はこの写本しゃほんであると考かんがえられている。18世紀せいき以後いご、フランスを中心ちゅうしんにメめートル法とるほうによる単位たんい統一とういつがはかられると、オランダ経由けいゆで日本にっぽんにもその情報じょうほうが伝つたわった。宇田川うだがわ榕庵ようあんも『西洋せいよう度量どりょう考こう』という題名だいめいの書しょを著あらわしている（写本しゃほんのみ）。

ただし、これらの書しょは写本しゃほんの形かたちで伝つたえられるものであった。たとえば馬場ばばの『度量どりょう考こう』には何なに種類しゅるいかの写本しゃほんが伝つたえられている。青山あおやまの『西洋せいよう度量どりょう考こう』は、先行せんこうする西洋せいようの度量衡どりょうこうについての書物しょもつに増補ぞうほを加くわえ、体系たいけい的てきにまとめた書籍しょせきとされ、体系たいけい的てきにまとめられた書籍しょせきとしては日本にっぽん最初さいしょのものではないかという評価ひょうかがある。しかし、西洋せいよう度量衡どりょうこうの受容じゅよう史しを研究けんきゅうした橋本はしもと萬平まんぺいは、その語彙ごいは宇田川うだがわ榕庵ようあんの『西洋せいよう度量どりょう考こう』から引ひき写うつしたもので、独自どくじに採取さいしゅ・増補ぞうほされた語彙ごいはないとしている。宇田川うだがわの書物しょもつという出所しゅっしょをはっきりとさせていないという問題もんだい点てんも指摘してきされている。しかしながらアルファベット順じゅんの整理せいりは青山あおやまの新あたらしい工夫くふうである。それまで写本しゃほんでしか広ひろがらなかったものを出版しゅっぱんした点てんには大おおきな意味いみがあり、青山あおやまの『西洋せいよう度量どりょう考こう』は当時とうじ最もっとも広ひろく流布るふした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 橋本はしもと萬平まんぺい「西洋せいよう度量衡どりょうこうの受容じゅよう(3)」『計量けいりょう史し研究けんきゅう』22巻かん1号ごう（2000年ねん12月がつ）
• 日本にっぽん計量けいりょう史し学会がっかい編集へんしゅう部会ぶかい「郡上ぐじょう蔵版ぞうはん『西洋せいよう度量どりょう考こう』」『計量けいりょう史し研究けんきゅう』23巻かん1号ごう（2001年ねん12月がつ）

外部がいぶリンク

• 西洋せいよう度量どりょう考こう / 青山あおやま幸みゆき哉 撰せん - 早稲田大学わせだだいがく図書館としょかん古こ典籍てんせき総合そうごうデータベース