(Translated by https://www.hiragana.jp/)
防衛機制 - Wikipedia コンテンツにスキップ

防衛ぼうえいせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
フランシスコ・デ・ゴヤの版画はんが連作れんさく『ロス・カプリチョス』から、『理性りせいねむりは妖怪ようかいむ』(El sueño de la razón produce monstruos)

防衛ぼうえいせい(ぼうえいきせい、えい: defence mechanism)は、れがたい状況じょうきょう、または潜在せんざいてき危険きけん状況じょうきょうさらされたときに、それによる不安ふあん軽減けいげんしようとする無意識むいしきてき心理しんりてきメカニズムである[1]欲求よっきゅう不満ふまんなどによって社会しゃかい適応てきおう出来できない状態じょうたいおちいったときおこなわれる自我じがさい適応てきおうメカニズムをす。広義こうぎにおいては、自我じがちょう自我じが本能ほんのうてき衝動しょうどうをコントロールするすべての操作そうさす。

元々もともとジークムント・フロイトヒステリー研究けんきゅうからかんがえられたものであり[2]のちかれむすめアンナ・フロイトが、ちち研究けんきゅうもとに、キンダー・トランスポート英語えいごばんでイギリスにれてこられたユダヤじんどもたちのケアをしながらった児童じどう精神せいしん分析ぶんせき研究けんきゅうなか整理せいりした概念がいねんである。その経過けいかは、アンナ・フロイト著作ちょさくしゅうだい7・8かんの「ハムステッドにおける研究けんきゅう : 1956-1965」にくわしい。この研究けんきゅう舞台ぶたいになったハムステッドのクリニックは、いまのアンナ・フロイトセンターである。

防衛ぼうえいせいには、発動はつどうされた状況じょうきょう頻度ひんどおうじて、健康けんこうなものと不健康ふけんこうなものがある[3]精神せいしん分析ぶんせき理論りろんでは、防衛ぼうえいせい無意識むいしき(スーパーエゴ)においておこなわれ、不安ふあんれがたい衝動しょうどうからまもり、自分じぶん自己じこスキーマ維持いじするためになされる、現実げんじつ否認ひにんまたは認知にんちゆがといった心理しんりてき戦略せんりゃくであるとされる[4]

防衛ぼうえいせい仕組しくみと定義ていぎ

[編集へんしゅう]
部分ぶぶんとの関係かんけいせいふくめたしん仕組しくみを説明せつめいするさいには、氷山ひょうざん比喩ひゆがよくもちいられる

防衛ぼうえいには自我じがちょう自我じが命令めいれいされておこなうものと、自我じがそれ自身じしんおこなうものとでかれる。人間にんげんにはエス(イド)というしん深層しんそうがあり、そのエス(イド)からよくどうから自我じがまもったり、それを上手うま現実げんじつ適応てきおうてき活用かつようしたりする方法ほうほうが、防衛ぼうえいというかたちあらわれる。防衛ぼうえい自体じたい自我じが安定あんていたもためおこなわれるので、健全けんぜん機能きのうえるが、ときにはそれは不快ふかい感情かんじょう気分きぶん人間にんげんあたえることもある。

ジークムント・フロイトにおける厳密げんみつ定義ていぎによれば、あらゆるよくどう自我じが処理しょりする方法ほうほう防衛ぼうえいである。よって人間にんげんつねよくどう防衛ぼうえいしていることになる。人間にんげん文化ぶんかてき活動かつどう創造そうぞうてき活動かつどうすべよくどう防衛ぼうえいした結果けっかであり、その変形へんけいぎないとされている。しかし一般いっぱんてきには防衛ぼうえいは、自我じが(あるいは自己じこ)が認識にんしきしている、否認ひにんしたい欲求よっきゅう不快ふかい欲求よっきゅうからまも手段しゅだんとしてもちいられると理解りかいされている。

最初さいしょフロイト記述きじゅつした防衛ぼうえいせいは「抑圧よくあつ」である。アンナ・フロイトは主要しゅよう防衛ぼうえいせいとして、退行たいこう抑圧よくあつ反動はんどう形成けいせい分裂ぶんれつし、投影とうえい自己じこへのえ(自虐じぎゃく[ちゅう 1]逆転ぎゃくてん[ちゅう 2]昇華しょうかの10種類しゅるいげている。またフロイトの弟子でしであるメラニー・クラインは、分裂ぶんれつ投影とうえいどういちなどの原始げんしてき防衛ぼうえいせい概念がいねん発展はってんさせた。

原始げんしてき防衛ぼうえいせい

[編集へんしゅう]

原始げんしてき防衛ぼうえいせいとは、自我じが分離ぶんり - 固体こたいられる以前いぜんからられる、生後せいご5かげつくらいまでの乳幼児にゅうようじでももちいることが出来でき基礎きそてき防衛ぼうえいせい総称そうしょうである。自我じが心理しんりがく発展はってんしたアメリカにたいし、イギリスでは対象たいしょう関係かんけいろん発展はってんし、フロイトの弟子でしであったメラニー・クライン児童じどう分析ぶんせきおも病理びょうりもの精神せいしん分析ぶんせきをしていくなかで、この原始げんしてき防衛ぼうえいせい発見はっけん概念がいねんした。対象たいしょう関係かんけいろんの「対象たいしょう関係かんけい」とは、おもである自分じぶん対象たいしょう人間にんげんふくむ)との関係かんけいのことである。フロイトは人間にんげんちょう自我じがは4 - 5さいごろ形成けいせいされるとかんがえていたが、クラインは、ちょう自我じが形成けいせい母子ぼし関係かんけい重要じゅうよう意味いみ生後せいご1ねん以内いないであるとし、母親ははおやとの対象たいしょう関係かんけいつうじてちょう自我じが発達はったつするといた。

クラインの記述きじゅつした原始げんしてき防衛ぼうえいせいは、分裂ぶんれつ否認ひにん投影とうえいどういち原始げんしてき理想りそう、躁的防衛ぼうえいなどがあった。

道徳どうとくてき合理ごうり

[編集へんしゅう]

研究けんきゅうによると、道徳どうとく合理ごうり人間にんげん普遍ふへんてき心理しんりてき傾向けいこう一部いちぶであることが示唆しさされている。この傾向けいこうは、文化ぶんか社会しゃかいてき背景はいけい関係かんけいなく存在そんざいする可能かのうせいがある。道徳どうとく合理ごうりは、一般いっぱんてきには識別しきべつひく状況じょうきょうでより頻繁ひんぱん発生はっせいする。人々ひとびとは、自分じぶん行動こうどう信念しんねん正当せいとうし、説明せつめいするために、より曖昧あいまい状況じょうきょうこの傾向けいこうがある。人間にんげん心理しんりは、しばしば自己じこ行動こうどう合理ごうりしようとする。道徳どうとく合理ごうりは、この心理しんりてきなメカニズムのひとつである。人々ひとびとは、自分じぶんたちの行動こうどう道徳どうとくてきであるとしんじることで、自尊心じそんしんたもちながら行動こうどうすることができる。自己じこイメージを保護ほごするための防御ぼうぎょてきなメカニズムとしても機能きのうする。人々ひとびとは、道徳どうとくてき価値かちかんはんする行動こうどうった場合ばあいでも、自分じぶん自身じしん正当せいとうするために、その行動こうどう合理ごうりしようとする。道徳どうとく合理ごうりは、個人こじん意思いし決定けってい行動こうどう根底こんていにある理由りゆう説明せつめいするさいに、よくられるパターンである。人々ひとびとは、自分じぶんたちの行動こうどうをよりせるために、合理ごうりてき理由りゆう道徳どうとくてき原則げんそく引用いんようすることがある。道徳どうとく合理ごうりは、個人こじん社会しゃかいのエゴイズムをささえる要素ようそとも関連かんれんしている。自己じこ利益りえき最大さいだいするために行動こうどうする人々ひとびとは、その行動こうどう道徳的どうとくてき正当せいとうすることで、自分じぶんたちを正当せいとうしようとする[5]

Vaillantによる防衛ぼうえいせい分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

防衛ぼうえいせいは、階層かいそうてき分類ぶんるいすることができる[6]以下いかにヴァイラントの4分類ぶんるいしたがってしめ[6]

レベル1、精神病せいしんびょうてき防衛ぼうえい

[編集へんしゅう]

自己じこあいてき精神病せいしんびょうてき防衛ぼうえいとも[6]

  • 転換てんかん(Conversion) - 抑圧よくあつされた衝動しょうどう葛藤かっとうが、麻痺まひ感覚かんかく喪失そうしつとなって表現ひょうげんされる。手足てあししびれたり、しつりつしつ脱力だつりょくったりあるけなくなる)、こえなくなるしつごえしょう視野しやせまくなる、嚥下えんか困難こんなんしょく嘔吐おうとなどの症状しょうじょうる。
  • 否認ひにん(Denial)- 不安ふあん苦痛くつうすようなある出来事できごとからをそらし、みとめないこと[6]。「抑圧よくあつ」はその出来事できごと無意識むいしきてきはらうものだが、「否認ひにん」は出来事できごと自体じたい存在そんざいしないかのような言動げんどうをとる。とくに「原始げんしてき否認ひにん」は分裂ぶんれつ強化きょうかするような性質せいしつ否認ひにんす。理想りそうだつ価値かちは、原始げんしてき否認ひにん背景はいけいとし、また否認ひにん強化きょうかする。
  • 代替だいたい
  • 歪曲わいきょく(Distortion)- 内面ないめんニーズをたすよう外部がいぶ現実げんじつさい構成こうせいする[6]
  • 投影とうえい(Projection)- 自分じぶん内面ないめんにあるれがたい感情かんじょうよくどうを、自分じぶんのものとしてみとめず、外部がいぶうつすこと[6]。これはあきらかな妄想もうそう迫害はくがいされるという被害ひがい妄想もうそう)のかたちる(精神病せいしんびょうせい妄想もうそう[6]妄想もうそうてき投影とうえい(Delusional projection)。たとえば「わたしかれにくむ」が「かれわたしにくむ」になる[7]
  • 分裂ぶんれつ(Splitting, スプリッティング, スプリット) - 対象たいしょう自己じこたいしてのいイメージ・わるいイメージをべつのものとして隔離かくりすること。「い」部分ぶぶんが「わるい」部分ぶぶんによって汚染おせん破壊はかいされるという被害ひがいてき不安ふあんがあり、両者りょうしゃ分裂ぶんれつさせ、けることで部分ぶぶんまもろうとする。抑圧よくあつが「くさいものにフタをする」のにたいし、分裂ぶんれつは「それぞれべつはこれて」しまう。分裂ぶんれつさせた自己じこわる部分ぶぶんは、しばしば相手あいてなかに「投影とうえい」される。
  • 躁的防衛ぼうえい(Manic defence) - 自分じぶん大切たいせつ対象たいしょううしなったり、きずつけたりしてしまったとかんじたときしょうじる不安ふあんそもそもうつなどの不快ふかい感情かんじょう意識いしきしなくするためにおこなう。「優越ゆうえつかん征服せいふくかん)」「支配しはいかん」「軽蔑けいべつかん」のみっつの感情かんじょう特徴とくちょうづけられ、自分じぶん万能ばんのうであり相手あいて支配しはいできるとおもんだり、ぎゃく相手あいて価値かちをおとしめたりする。うつ気分きぶん逆転ぎゃくてんさせた躁の気分きぶんそもそもうつのいたみをはらおうとする。

レベル2、未熟みじゅく防衛ぼうえい

[編集へんしゅう]
  • 行動こうどう(Acting out)- 抑圧よくあつされた衝動しょうどう葛藤かっとう問題もんだい行動こうどうとして表出ひょうしゅつすること[6]具体ぐたいてきには性的せいてき逸脱いつだつ行動こうどうきず行為こうい自殺じさつ企図きと暴言ぼうげん暴力ぼうりょく過食かしょくこばめしょく浪費ろうひ万引まんび薬物やくぶつ依存いぞんアルコール依存いぞんなどがげられる。
  • 途絶とぜつ(Blocking)[6]
  • 病気びょうき不安ふあんしょう(Illness Anxiety Disorder)[6] - 深刻しんこく病気びょうきへの過度かど心配しんぱいおもみの状態じょうたい
  • 摂取せっしゅ, Introjection)[6] - 投影とうえいぎゃくで、他者たしゃなかにある感情かんじょう観念かんねん価値かちかんなどを自分じぶんのもののようにかんじたり、れたりすること。とく他者たしゃこのましい部分ぶぶんれることがおおい。発達はったつ過程かていにおいては道徳心どうとくしん良心りょうしん形成けいせい役立やくだつ。しかしぎると主体性しゅたいせいのなさにつながったり、他人たにん業績ぎょうせき自分じぶんのこととおもんで満足まんぞくする(自我じが拡大かくだい)、自他じた区別くべつがつきにくい人間にんげんとなる。「相手あいてにあやかる」[7]
  • シゾイド幻想げんそう(Schizoid Fantasy)[6] - 内部ないぶ外部がいぶへの葛藤かっとう解消かいしょうするため、妄想もうそうへと退化たいかする
  • 理想りそう - 自己じこ対象たいしょうが「分裂ぶんれつ」している状態じょうたいで、分裂ぶんれつさせた一方いっぽう過度かど誇大こだいして「理想りそう」すること。分裂ぶんれつされたもう一方いっぽうは「だつ価値かち」をともなう。高次こうじの「理想りそう」は、対象たいしょうわる部分ぶぶんないようにすることで自分じぶん攻撃こうげきせい否認ひにんし、それにともな罪悪ざいあくかんるのにたいし、原始げんしてき理想りそう」は、対象たいしょうわる部分ぶぶん破壊はかいされないようにその部分ぶぶん認識にんしきしないようにする。
  • 受動じゅどうてき攻撃こうげき行動こうどう[6] - サボタージュ[よう曖昧あいまい回避かいひ]など。
  • 投影とうえいせいどういち(Projective identification, 投影とうえいどういち投影とうえい同一どういつ) - スプリッティングがはたらいているなかで、自分じぶん自身じしんわる部分ぶぶん相手あいてなかうつし(投影とうえい)、相手あいて支配しはいしている、またはきずつけているとかんじること。そのとき投影とうえいされているがわ人間にんげんに、投影とうえいされた「わる部分ぶぶん」(にくしみやいかり、軽蔑けいべつなど)の感情かんじょうまれるという現象げんしょうこる。
  • 投影とうえい(Projection)[6] - 自分じぶん自身じしんなかにあるれがたい不快ふかい感情かんじょうを、自分じぶん以外いがい他者たしゃっていると知覚ちかくすること。たとえば、自分じぶんにくんでいる相手あいてを「にくんでいる」とは意識いしきできず、相手あいて自分じぶんにくんでおり攻撃こうげきしてくるのではないかとおもおそれる、自分じぶん性的せいてき欲望よくぼうかんじている異性いせいたいし、相手あいて自分じぶん情欲じょうよくかんじているとおもい、「誘惑ゆうわくされている」とかんじたりする。
  • 退行たいこう(Regression)[6]- がた事態じたい直面ちょくめんしたとき、現在げんざい自分じぶんよりおさな時期じき発達はったつ段階だんかいもどること。以前いぜん未熟みじゅく段階だんかいていつぎ行動こうどうをしたり、分化ぶんか思考しこう表現ひょうげん様式ようしきとなる。不安ふあんとき他人たにんはなし鵜呑うのみにしやすくなったりするのも退行たいこう一種いっしゅだが、これは「れ」をよくもちいる発達はったつ段階だんかいもどったことでおこる現象げんしょうである。退行たいこうには「病的びょうてき退行たいこう以外いがいにも「治療ちりょうてき退行たいこう」、「創造そうぞうてき退行たいこう健康けんこうてき退行たいこう)」などがある。病的びょうてき退行たいこう持続じぞくてき機能きのう低下ていかこさせるが、治療ちりょうてき退行たいこう治療ちりょうほどこしたことにより表出ひょうしゅつする、一時いちじてき可逆かぎゃくてき現象げんしょうである。
  • 身体しんたい(Somatization) - [6]抑圧よくあつされた衝動しょうどう葛藤かっとうが、様々さまざま身体しんたい症状しょうじょうとなってあらわれること。こころ気化きか
  • 希望きぼうてき観測かんそく

レベル3、神経症しんけいしょうてき防衛ぼうえい

[編集へんしゅう]
  • 統制とうせい(Controlling)[6] - 周囲しゅうい環境かんきょうにおける出来事できごと対象たいしょうを、過度かど管理かんり統制とうせいしようとする。
  • (Displacement)[6] - 欲求よっきゅう本来ほんらいのものとはべつ対象たいしょうえることで充足じゅうそくすること。
  • 解離かいり(Dissociation)[6] - 苦悩くのうけるために、自分じぶんのパーソナリティの一部いちぶ一時いちじてきだが徹底的てっていてき一部いちぶ変更へんこうすること。遁走とんそうなど。
  • 外在がいざい(Externalization)[6]
  • 静止せいし(Inhibition)[6]
  • 知性ちせい(Intellectualization)[6] - 孤立こりつかたちをとる。感情かんじょういたみを難解なんかい専門せんもん用語ようご延々えんえんかたるなどして観念かんねんし、情緒じょうちょからはなせい
  • 隔離かくり(Isolation)[6] - 思考しこう感情かんじょう、または感情かんじょう行動こうどうはなされていること[7]。「本音ほんね建前たてまえ[7]観念かんねんとそれにともな感情かんじょうとを分離ぶんりするが、観念かんねん意識いしきにおいて保持ほじし、感情かんじょう抑圧よくあつすることなどである。おかしな行為こういだと自分じぶんではづいているがその行為こういめられない、あるしゅ強迫きょうはく行為こういかかわっているとかんがえられている。
  • 合理ごうり(Rationalization)[6] - たされなかった欲求よっきゅうたいして、理論りろんしてかんがえることにより自分じぶん納得なっとくさせること。イソップ寓話ぐうわすっぱい葡萄ぶどう』がれいとして有名ゆうめいきつねになる葡萄ぶどうろうとするが、うえ葡萄ぶどうとどかないため、「とどかない位置いちにあるのはすっぱい葡萄ぶどう」だと口実こうじつをつける。
  • 反動はんどう形成けいせい(Reaction formation)[6] - れがたい衝動しょうどう観念かんねん抑圧よくあつされ、無意識むいしきてきなものとなり、意識いしき行動こうどうレベルではせい反対はんたいのものにわること。本心ほんしん裏腹うらはらなことをったり、そのおもいとせい反対はんたい行動こうどうをとる。にくんでいるのにあいしているとおもんだり、愛他主義あいたしゅぎ背後はいごじつ利己りこしんがあったりと、性格せいかくとして固定こていされることもおおい。
  • 抑圧よくあつ(Repression)[6] - 実現じつげん困難こんなん欲求よっきゅう苦痛くつう体験たいけんなどを無意識むいしきなかふうわすれようとすることである。その内容ないようには観念かんねん感情かんじょう思考しこう空想くうそう記憶きおくふくまれる。ジークムント・フロイトはこの「抑圧よくあつ」がもっと基本きほんてき防衛ぼうえいせいかんがえた。とくしんてき外傷がいしょう体験たいけんトラウマ体験たいけん)や、性的せいてき欲求よっきゅうなどの倫理りんりてき禁止きんしされた欲求よっきゅう抑圧よくあつされるとかんがえられている。 否認ひにんとのちがいは、否認ひにん実現じつげん困難こんなん欲求よっきゅう苦痛くつう体験たいけん一時いちじてきわすれるだけで、他人たにん指摘してきされるとそのこと気付きづく。しかし抑圧よくあつ意識いしきよりふかしん深部しんぶぜん意識いしき無意識むいしき)にまでめられてしまう。そのため基本きほんてきにはおもせなくなってしまう。おもすには努力どりょく必要ひつようであり、それほどわる観念かんねんでなければ簡単かんたんおもせるが(ぜん意識いしきからのおもし)、つよ抑圧よくあつ無意識むいしきにまでしやられているのでおもすのは困難こんなんである。その代表だいひょうれいとしてはあかちゃんのころ記憶きおくなどがある。
  • 性的せいてき特徴とくちょう(Sexalization)[6]
  • (Undoing) - 罪悪ざいあくかんはじ感情かんじょうこす行為こういをしたのちで、それをすような類似るいじの、またはそれとはぎゃく行動こうどうること。分離ぶんりとももちいられることがおおい。
  • 社会しゃかいてき上向うわむき・下向したむきの比較ひかく
  • 逃避とうひ(Withdrawal)

レベル4、成熟せいじゅくした防衛ぼうえい

[編集へんしゅう]
  • アクセプタンス受容じゅよう
  • 愛他主義あいたしゅぎ(Altruism)- たとえ自分じぶん不利益ふりえきこうむっても、他人たにんわって建設けんせつてきたすけをする[6]
  • 先取さきど(Anticipation)- 将来しょうらい苦痛くつう予想よそうする[6]
  • 禁欲きんよく主義しゅぎ(Asceticism)[6]
  • 勇気ゆうき(Courage)
  • 感情かんじょう自己じこコントロール
  • 感情かんじょうてきレジリエンス
  • ゆる(Forgiveness)
  • 感謝かんしゃ(Gratitude)
  • 謙虚けんきょ(Humility)
  • ユーモア[6]
  • どういち(Identification) - 自分じぶんにない名声めいせい権威けんい自分じぶんちかづけることによって自分じぶんたかめようとすること。他者たしゃ状況じょうきょうなどを自分じぶんのことのようにおもい、かんかんが行動こうどうすること[7]。このどういち他人たにんから他人たにん伝染でんせんする。
  • 慈悲じひ
  • マインドフルネス
  • 節制せっせい(Moderation)
  • 忍耐にんたい(Patience)
  • 尊敬そんけい(Respect)
  • 昇華しょうか(Sublimation)[6] - はん社会しゃかいてき欲求よっきゅう感情かんじょうを、社会しゃかい文化ぶんかてき還元かんげん出来できるような価値かちある行動こうどうへとえること[6][7]たとえば、性的せいてき欲求よっきゅう小説しょうせつ表現ひょうげんすることなどである。
  • 抑制よくせい(Suppression)[6] - 意識いしきてき衝動しょうどうを、意識いしきてきもしくはほぼ意識いしきてき延期えんきする[6]
  • 寛容かんよう(Tolerance)

臨床りんしょうにおける防衛ぼうえい

[編集へんしゅう]

転移てんい

[編集へんしゅう]

転移てんい(transference)とは、幼児ようじ存在そんざいした重要じゅうよう人物じんぶつへの感情かんじょうを、現今げんこんまえにいる治療ちりょうしゃ人物じんぶつ医師いしやカウンセラーなど)にける(てんじてうつす)こと [7]。この概念がいねん精神せいしん分析ぶんせきにおける臨床りんしょう現象げんしょうとしてとく区別くべつされる。この現象げんしょうにはどういち投影とうえいえと退行たいこうなどが同時どうじ複数ふくすう発生はっせいする。

転移てんいつぎ種類しゅるい分別ふんべつされる[7]

  • 陽性ようせい転移てんい - 好意こういしたしみ、あまえ、依存いぞん信頼しんらい愛情あいじょう性的せいてき感情かんじょう尊敬そんけい理想りそうなど [7]
  • 陰性いんせい転移てんい - 敵意てきい嫌悪けんお馴染なじみにくさ、腹立はらだち、不振ふしん軽蔑けいべつ恐怖きょうふなど [7]

たとえば患者かんじゃ-治療ちりょうしゃ関係かんけいにおいて、以下いかのようなやりとりがある[7]

  • ねむれないんです、くすりくださいよう」(陽性ようせい転移てんい) - 患者かんじゃ治療ちりょうしゃに「やさしい母親ははおや」を期待きたいしている(理想りそう
  • ねむれないぞ、くすりくれ!」(陰性いんせい転移てんい) - 患者かんじゃ治療ちりょうしゃ格下かくさげしている(だつ価値かち

ぎゃく転移てんい

[編集へんしゅう]

ぎゃく転移てんい(counter transference)とは、治療ちりょうしゃ患者かんじゃたいしていだ無意識むいしきしんうごきのこと。たとえば、クライアントが診察しんさつおとずれる機会きかいたのしみにかんじてしまう。この時点じてんでは、すで意識いしきされている。治療ちりょうしゃぎゃく転移てんいあしがかりにして、自身じしんなか想起そうきする感情かんじょう自己じこ点検てんけんし、コントロールする必要ひつようがある。

たとえば患者かんじゃ-治療ちりょうしゃ関係かんけいにおいて、以下いかのようなやりとりがある[7]

  • 患者かんじゃねむれないんです、睡眠薬すいみんやくください!」
    • 仕方しかたないわね、今回こんかいだけだからね」(陽性ようせいぎゃく転移てんい)- 治療ちりょうしゃ患者かんじゃ子供こどもとしてあやし、自立じりつ阻害そがいしている。
    • 「ダメです!くすりばかりにたよっては!」(陰性いんせいぎゃく転移てんい)- 治療ちりょうしゃ患者かんじゃ子供こどものようにしかり、関係かんけいこわしている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 自己じこへのえ(turning against the self)とは、相手あいてけている感情かんじょうを、自分じぶん自身じしんえること。攻撃こうげきとはぎゃくで、本当ほんとう相手あいてわるいとおもっているひとが、それを意識いしきできずに自分じぶん自身じしんめ、そもそもうつてきになる場合ばあいなどは典型てんけいれいである。
  2. ^ 逆転ぎゃくてん(inversion)とは、感情かんじょう欲望よくぼう反対はんたいのものに変化へんかさせること。愛情あいじょうにくしみにえる、サディズム傾向けいこうマゾヒズム傾向けいこうえるなど。けたダメージを加工かこうし、れやすくする。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Schacter, Daniel L. (2011). Psychology Second Edition. 41 Madison Avenue, New York, NY 10010: Worth Publishers. pp. 482–483. ISBN 978-1-4292-3719-2 
  2. ^ "Freud Theories and Concepts (Topics) AROPA. 2013. Retrieved on 05 October 2013
  3. ^ Utah Psych. "Defense Mechanisms" 2010. Retrieved on 05 October 2013.
  4. ^ archive of: www.3-S.us What is a self-schema?”. Info.med.yale.edu. 2013ねん2がつ4にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん5がつ5にち閲覧えつらん
  5. ^ Mulder, Laetitia B.; Van Dijk, Eric (2020-01-08). “Moral Rationalization Contributes More Strongly to Escalation of Unethical Behavior Among Low Moral Identifiers Than Among High Moral Identifiers”. Frontiers in Psychology 10: 2912. doi:10.3389/fpsyg.2019.02912. ISSN 1664-1078. https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2019.02912/full. 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai B.J.Kaplan; V.A.Sadock『カプラン臨床りんしょう精神せいしん医学いがくテキスト DSM-5診断しんだん基準きじゅん臨床りんしょうへの展開てんかい』(3はん)メディカルサイエンスインターナショナル、2016ねん5がつ31にち、Chapt.4。ISBN 978-4895928526 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l よしまつ和哉かずや; 小泉こいずみ典章てんしょう; 川野かわのみやび精神せいしん看護かんごがくI』(6はん)ヌーヴェルヒロカワ、2010ねん、Chapt.1.3。ISBN 978-4-86174-064-0 

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]