陶磁器とうじき

陶磁器とうじき（とうじき、英語えいご: pottery and porcelain）は、粘土ねんど・長石ちょうせき・ケイ石けいせきなどを主原あるじはら料りょうにした焼やき物もの（やきもの）の総称そうしょう^[1]。セラミックスの一種いっしゅ。

概要がいよう

土器どき、陶器とうき、炻器、磁器じきなどを広ひろくまとめて指さすための用語ようご・概念がいねんである。→#定義ていぎと分類ぶんるい

ろくろを用もちいて粘土ねんどを成型せいけいする

陶磁器とうじきに使つかわれる粘土ねんどには、加熱かねつすることでアルミニウムやカルシウムなど他たの物質ぶっしつと化合かごうしガラス化かする珪酸けいさんを主成分しゅせいぶんとする石英せきえいなどが含ふくまれている。粘土ねんどを成形せいけいした後のちに、加熱かねつする（熱ねつを加くわえる）ことで溶とけて流体りゅうたいとなったガラスが土ど粒子りゅうしの間あいだに入はいり込こみ、その後ご、冷さめるとそのガラスが固体こたい化かし土ど粒子りゅうし同士どうしをくっつける。『古こ陶磁とうじの科学かがく』の著者ちょしゃ・内藤ないとう匡ただしは、この過程かていをおこしに喩たとえている。おおまかに言いえば、陶器とうきと磁器じきの違ちがいはこのガラスになる成分せいぶんと量りょうの違ちがいである^[2]。

陶磁器とうじきは質感しつかんに優すぐれており衛生えいせい的てきで一定いっていの耐久たいきゅう性せいもあることから、食器しょっき、花器かき、植木鉢うえきばち、装飾そうしょく品ひん^{[注釈ちゅうしゃく 1]}、衛生えいせい陶器とうき、タイルなどに利用りようされている^[3]^[4]。

もう少すこし詳くわしく説明せつめいすると、陶磁器とうじきは陶器とうきなど多孔たこう質しつの素地そじ（微細びさいな穴あなが多おおく空あいている性質せいしつ）で吸水きゅうすい性せいのあるものと、炻器（せっき）や磁器じきなどの素地そじで吸水きゅうすい性せいが低ひくいものに分わけられる^[4]。

多孔たこう質しつの素地そじの製品せいひんの用途ようととしては食器しょっき、タイル、植木鉢うえきばちなどがある^[3]^[4]。また、緻密ちみつ質しつの素地そじの製品せいひんには食器しょっき、タイル、装飾そうしょく品ひん、衛生えいせい陶器とうき、工業こうぎょう用よう及および電気でんき用よう磁器じき、歯科しか用よう磁器じきなどがある^[3]^[4]。

定義ていぎと分類ぶんるい

「陶磁器とうじき」は日本にっぽんで使つかわれている用語ようごである。陶磁器とうじきを含ふくめたセラミックスの分類ぶんるいについては研究けんきゅう者しゃによって議論ぎろんがあり、窯業ようぎょう用語ようごも国くにによって異ことなっている^[3]。→#英語えいご圏けんの用語ようご・概念がいねんとの比較ひかく

代表だいひょう的てきな分類ぶんるい

陶磁器とうじきは釉薬の有無うむおよび焼成しょうせい温度おんどで以下いかのように大別たいべつされる。

やきもの（窯かま器き）の種類しゅるい：土器どき・陶器とうき・炻器・磁器じき^[5]
種別しゅべつ	焼成しょうせい	釉薬	特徴とくちょう
土器どき	低てい火ひ度ど（1000°C以下いか）	無む釉	軟質なんしつ、土色つちいろ、吸水きゅうすい性せい大だい
陶器とうき	低てい中火ちゅうび度ど（1200°C以上いじょう）	施ほどこせ釉	軟硬質しつ、灰白色かいはくしょく、吸水きゅうすい性せいあり
炻器	高こう火ひ度ど（1100 - 1250°C）	無む釉	硬質こうしつ、灰色はいいろ、吸水きゅうすい性せい小しょう
磁器じき	高こう火ひ度ど（1350°C以上いじょう）	施ほどこせ釉	硬質こうしつ、白色はくしょく、吸水きゅうすい性せい無な

英語えいご圏けんの用語ようご・概念がいねんとの比較ひかく

ドイツや日本にっぽんでは磁器じきの概念がいねんなど比較的ひかくてき明確めいかくであるが、アメリカやイギリスでは素地そじの特性とくせいだけでなく用途ようとを含ふくめた分類ぶんるいと呼称こしょうになっているため概念がいねんが不明瞭ふめいりょうといわれている^[3]。

Whiteware: アメリカで施ほどこせ釉または無む釉素地ちの緻密ちみつな組織そしきをもつ焼成しょうせい品ひんをいう（陶器とうき、炻器、ファイアンスを含ふくむ）^[3]。
ChinaまたはChinaware: 狭義きょうぎにはアメリカにおいてディナーウエア（dinnerware）のことをいう^[3]。広義こうぎには熔化に至いたるまで白色はくしょくに焼成しょうせいした食器しょっきや美術びじゅつ品ひんなどの製品せいひんをいう^[3]。
Earthenware: 語源ごげんでは土器どきや陶器とうきを意味いみするが、アメリカでは施ほどこせ釉または無む釉で吸水きゅうすい率りつ10%以上いじょうのwhitewareをいう^[3]。

土器どき

→詳細しょうさいは「土器どき」を参照さんしょう

素焼すやきのやきもの。窯かまを使つかわず、粘土ねんどを野焼のやきの状態じょうたいで700 - 900°Cの温度おんどで焼やいたもの。釉薬（うわぐすり、またはゆうやく）はかけないが、彩色さいしきされているものを「土器どき」と呼よぶことがあり、その場合ばあいは、その彩色さいしき具ぐを釉薬としないことを前提ぜんていとしている。歴史れきし的てきには陶磁器とうじきの前身ぜんしんにあたる。

陶器とうき

カオリナイト（カオリン）やモンモリロナイトを多おおく含ふくんだ粘土ねんどを原料げんりょうとし、窯かまで1100 - 1300°Cの温度おんどで焼やいたもの。釉薬を用もちいる。透とおる光ひかり性せいはないが、吸水きゅうすい性せいがある。厚手あつでで重おもく、叩たたいたときの音おとも鈍にぶい。粗そ陶器とうきと精せい陶器とうきに分わけられる。

炻器

→詳細しょうさいは「炻器」を参照さんしょう

せっきと読よむ。「炻」は国字こくじ（日本にっぽんで考案こうあんされた漢字かんじ）。英語えいごの"Stoneware"の訳語やくごである。窯かまを使つかい、焼成しょうせい温度おんどは1200 - 1300°C。土器どきと陶器とうきの中なか間あいだ的てき性質せいしつを示しめすもので、釉薬の有無うむにかかわらず、透とおる光ひかり性せい・吸水きゅうすい性せいともにないものを指さす。

炻器の原語げんごである"Stoneware"は西洋せいよう陶磁とうじの用語ようごであり、中国ちゅうごく、日本にっぽんなどの東洋とうよう陶磁とうじの分類ぶんるい概念がいねんとは必かならずしも一致いっちしない。たとえば、"Celadon"と呼よばれる青色あおいろの焼やき物ものは、日本にっぽん・中国ちゅうごくでは青磁せいじ（青あお瓷）と言いい、磁器じきに分類ぶんるいされるが、欧米おうべいでは"Stoneware"の一種いっしゅとみなされる。日本にっぽんの陶磁とうじ研究けんきゅう者しゃや陶芸とうげい作家さっかには「炻器」という概念がいねんを立たてる者ものと立たてない者ものがいる^{[注釈ちゅうしゃく 2]}。

磁器じき

→詳細しょうさいは「磁器じき」を参照さんしょう

磁器じきは半はん透とおる光ひかり性せいで、吸水きゅうすい性せいが殆ほとんどない。また、陶磁器とうじきの中なかでは最もっとも硬かたく、軽かるく弾ひくと金属きんぞく音おんがする。粘土ねんど質物しちもつや石英せきえい、長石ちょうせき→陶土とうどを原料げんりょうとして1300°C程度ていどで焼成しょうせいするが、焼成しょうせい温度おんどや原料げんりょうによって軟質なんしつ磁器じきと硬質こうしつ磁器じきに分わけられる。

世界せかいの主おもな陶磁器とうじき産地さんちとブランド

→詳細しょうさいは「陶磁器とうじき産地さんち一覧いちらん」を参照さんしょう

日本にっぽんと陶磁器とうじき

→「日本にっぽんの陶磁器とうじき（英語えいご版ばん）」も参照さんしょう

畿内きないより東ひがしでは瀬戸物せともの（せともの）と呼よばれ、中国ちゅうごく、四国しこく以西いせいでは唐津からつ物ぶつ（からつもの）とも呼よばれる。焼やき方かたや用途ようとや生産せいさん地ちなどからさまざまに分類ぶんるいされる。

生産せいさん量りょう日本一にっぽんいちは岐阜ぎふ県けん土岐とき市しである。

日本にっぽんの陶磁器とうじき

日本にっぽんの土器どき、陶器とうき、炻器、磁器じきには次つぎのようなものがある。

日本にっぽんの土器どきの例れい、縄文じょうもん土器どき
日本にっぽんの陶器とうきの例れい、乾山けんざんの茶碗ちゃわん
日本にっぽんの炻器の例れい、信楽焼しがらきやき
日本にっぽんの磁器じきの例れい。写真しゃしんは、1873年ねんの万博ばんぱくに、出品しゅっぴんされたもの

日本にっぽんの主おもな陶磁器とうじき産地さんち

→詳細しょうさいは「日本にっぽんの陶磁器とうじき産地さんち一覧いちらん」を参照さんしょう

益子ましこ焼しょう

備前焼びぜんやき（古こ備前びぜん花はな生せい）

唐津焼からつやき

有田焼ありたやき

東北とうほく地方ちほう
- 北海道ほっかいどう - 流氷りゅうひょう焼しょう
- 岩手いわて県けん - 小久慈こくじ焼しょう
- 宮城みやぎ県けん - 堤つつみ焼しょう
- 秋田あきた県けん - 楢なら岡焼おかやき
- 山形やまがた県けん - 平ひら清水焼きよみずやき
- 福島ふくしま県けん - 会津本郷あいづほんごう焼しょう、大堀おおほり相馬そうま焼しょう
関東かんとう地方ちほう
- 茨城いばらき県けん - 笠間かさま焼しょう
- 栃木とちぎ県けん - 益子ましこ焼しょう、小砂こいさご焼しょう
中部ちゅうぶ地方ちほう
- 新潟にいがた県けん - 無名むめい異い焼やき
- 長野ながの県けん - 高遠こうえん焼しょう
- 石川いしかわ県けん - 九谷焼くたにやき、大樋おおひ焼しょう、珠洲すず焼しょう
- 福井ふくい県けん - 越前えちぜん焼しょう（六ろく古こ窯かまの一ひとつ）
- 岐阜ぎふ県けん - 美濃みの焼しょう（日本にっぽんの陶磁器とうじき生産せいさんシェア50%以上いじょう）
- 静岡しずおか県けん - 志戸呂しとろ焼しょう（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）
- 愛知あいち県けん - 瀬戸焼せとやき（六ろく古こ窯かまの一ひとつ。瀬戸物せとものの名なの元もととなった地名ちめい）、常滑とこなめ焼しょう（六ろく古こ窯かまの一ひとつ）
近畿きんき地方ちほう
- 三重みえ県けん - 萬古ばんこ焼しょう、伊賀いが焼しょう
- 滋賀しが県けん - 信楽焼しがらきやき（六ろく古こ窯かまの一ひとつ）、膳所ぜぜ焼しょう（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）、湖南こなん焼しょう、御ご庭にわ窯かま（保全ほぜん最後さいごの窯かまとして知しられる）
- 京都きょうと府ふ - 京きょう焼しょう、楽焼らくやき、清水焼きよみずやき、朝あさ日焼ひやけ（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）、御室おむろ焼しょう
- 兵庫ひょうご県けん - 丹に波立はったち杭くい焼しょう（六ろく古こ窯かまの一ひとつ）、明石あかし焼しょう、出石いずし焼しょう
- 奈良なら県けん - 赤膚あかはだ焼しょう（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）
中国ちゅうごく地方ちほう
- 島根しまね県けん - 石見いわみ焼しょう、布志名ふじな焼しょう
- 岡山おかやま県けん - 備前焼びぜんやき（六ろく古こ窯かまの一ひとつ）、虫明むしあけ焼しょう
- 山口やまぐち県けん - 萩はぎ焼しょう
四国しこく地方ちほう
- 徳島とくしま県けん - 大谷おおや焼しょう
- 愛媛えひめ県けん - 砥部とべ焼しょう、江こう山焼やまやき
九州きゅうしゅう地方ちほう
- 福岡ふくおか県けん - 上野うえの焼しょう（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）、小石原こいしわら焼しょう、高取たかとり焼しょう（遠とお州しゅう七なな窯かまの一ひとつ）
- 佐賀さが県けん - 唐津焼からつやき（唐津からつ物ぶつの名なの元もととなった地名ちめい）、有田焼ありたやき（伊万里いまり、有田ありたを中心ちゅうしんに焼やかれた肥前ひぜん磁器じきの総称そうしょう。古こ九谷くたに様式ようしき、柿かき右みぎ衛門えもん様式ようしき、鍋島なべしまなどを含ふくむ）
- 嬉野うれしの市し - 吉田よしだ焼しょう
- 長崎ながさき県けん - 波佐見はさみ焼しょう、三川内みかわうち焼しょう（平戸ひらど焼しょう）
- 熊本くまもと県けん - 小代こしろ焼しょう（小しょう岱焼）
- 大分おおいた県けん - 小しょう鹿田かつた焼しょう
- 鹿児島かごしま県けん - 薩摩焼さつまやき
- 沖縄おきなわ県けん - 壺屋つぼや焼しょう

日本にっぽんの主おもな陶磁器とうじき企業きぎょう若もしくはブランド

ナルミ - 名古屋なごや市し（本社ほんしゃ）
ノリタケ - 名古屋なごや市し（本社ほんしゃ）
大倉おおくら陶すえ園えん - 横浜よこはま市し（本社ほんしゃ）
三郷みさと陶器とうき - 愛知あいち県けん尾張旭おわりあさひ市し（本社ほんしゃ）
ニッコー - 石川いしかわ県けん白山はくさん市し（本社ほんしゃ）
たち吉きち - 京都きょうと市し（本社ほんしゃ）
香蘭社こうらんしゃ - 佐賀さが県けん西松浦にしまつうら郡ぐん有田ありた町まち（本社ほんしゃ）
深川製磁ふかがわせいじ - 佐賀さが県けん西松浦にしまつうら郡ぐん有田ありた町まち（本社ほんしゃ）
白山はくさん陶器とうき - 長崎ながさき県けん東彼杵ひがしそのぎ郡ぐん波佐見はさみ町まち（本社ほんしゃ）
中ちゅう善ぜん - 長崎ながさき県けん東彼杵ひがしそのぎ郡ぐん波佐見はさみ町まち（本社ほんしゃ）
ブルーダニューブ
アイトー - 東京とうきょう都と品川しながわ区く（本社ほんしゃ）
東京とうきょう西海さいかい - 東京とうきょう都と世田谷せたがや区く（本社ほんしゃ）

日本にっぽん国内こくないの陶磁器とうじきの公募こうぼ展てん

出石いずし磁器じきトリエンナーレ

日本にっぽん国内こくないの関連かんれん組織そしき

陶磁とうじネットワーク会議かいぎ - 2008年ねん（平成へいせい20年ねん）に発足ほっそくした日本にっぽんの陶磁とうじ専門せんもん公立こうりつ博物館はくぶつかんで構成こうせいされる組織そしき^[6]。