陽ひ人じんの戦たたかい

陽ひ人じんの戦たたかい
戦争せんそう：陽ひ人じんの戦たたかい
年月日ねんがっぴ：西暦せいれき191年ねん
場所ばしょ：陽ひ人じん（現在げんざいの河南かなん省しょう汝なんじ州しゅう市し）
結果けっか：反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんの勝利しょうり
交戦こうせん勢力せいりょく
反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐん（袁紹・袁術・橋はし瑁など）	董ただし卓たく軍ぐん
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
袁術 孫まご堅けん	董ただし卓たく 胡えびす軫 呂りょ布ぬの 華はな雄つよし †
戦力せんりょく
不明ふめい（反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんは十じゅう数すう万まん）	不明ふめい
損害そんがい
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三さん国こく時代じだい 黄き巾はば 張ちょう純じゅん 馬うま相しょう 陽ひ人じん 襄じょう陽ひ 江東こうとう平定へいてい 宛あて城じょう 官かん渡わたり（ 白馬はくば） 倉くら亭てい 博ひろし望もち 白しろ狼おおかみ山やま 長坂ながさか 赤あか壁かべ 合ごう肥こえ（第だい一いち次じ） 潼関 濡須口こう 入にゅう蜀しょく 陽平ようへい関せき 合ごう肥こえ（第だい二に次じ） 定じょう軍ぐん山やま 樊城 夷えびす陵りょう 洞口ほらぐち 南みなみ征ただし 街まち亭てい 石いし亭てい 陳ちん倉くら 子こ午うま 祁山 合ごう肥こえ（第だい三さん次じ） 合ごう肥こえ（第だい四よん次じ） 五丈原ごじょうげん 遼りょう隧 芍陂 興きょう勢ぜい 東興とうこう 合ごう肥こえ（第だい五ご次じ） 狄道 段だん谷だに 寿ことぶき春はる 蜀しょく漢かん滅亡めつぼう 西陵せいりょう 呉ご滅亡めつぼう

陽ひ人じんの戦たたかい（ようじんのたたかい）は、中国ちゅうごく後こう漢かん末期まっきの191年ねん、袁紹・袁術・橋はし瑁らが指揮しきを執とる「反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐん」の袁術軍ぐん・孫まご堅けん軍ぐんと朝廷ちょうてい軍ぐんが指揮しきを執とる董ただし卓たくの軍ぐんが、司つかさ隷河南かなん尹いん梁やな県けんの陽ひ人じんにおいて衝突しょうとつした戦たたかいである。

反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐん

董ただし卓たくは勝手かってに劉りゅう弁べん（少しょう帝みかど）を廃位はいいし陳ひね留とめ王おう（献けんじ帝みかど）を皇帝こうていに即位そくいさせたり、洛陽らくようの富豪ふごうから金品きんぴんを強奪ごうだつしたり、女官にょかんを凌辱りょうじょくするなど暴虐ぼうぎゃくの限かぎりを尽つくしていた。

190年ねん春はる正月しょうがつ、董ただし卓たくの専横せんおうに反発はんぱつした橋はし瑁が三公みつきみの回付かいふの公文書こうぶんしょを偽造ぎぞうし、董ただし卓たくに対たいする挙兵きょへいを呼よびかける檄文げきぶんを作つくったことや、張ちょう超すすむの部下ぶかの臧洪の呼よびかけなどにより、後こう将軍しょうぐん袁術・冀州牧まき韓かん馥・豫よ州しゅう刺史しし孔あな伷・兗州刺史しし劉りゅう岱・河内かわうち太守たいしゅ王おう匡ただし・渤海太守たいしゅ袁紹・陳ちん留とめ太守たいしゅ張ちょう邈・東ひがし郡ぐん太守たいしゅ橋きょう瑁・山陽さんよう太守たいしゅ袁遺・済すみ北国きたぐに相しょう鮑あわび信しん・広陵こうりょう太守たいしゅ張ちょう超ちょう・陳ひね国こく相しょう許もと瑒・潁川太守たいしゅ李り旻みん・西河にしかわ太守たいしゅ崔ちぇ鈞ひとしらはそれぞれ数すう万まんの兵へいを率ひきいて挙兵きょへいし、袁紹を盟主めいしゅとして反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんを結成けっせいした。当初とうしょ、袁隗や袁基とともに董ただし卓たく政権せいけんに参加さんかしていた袁術は、曹操そうそうや袁紹から遅おくれて洛陽らくようを脱出だっしゅつし、南陽なんようへ逃のがれて孫まご堅けんと合流ごうりゅうした。長ちょう沙すな太守たいしゅだった孫まご堅けんは武たけ陵りょう太守たいしゅ曹寅の計略けいりゃくで反はん董ただし卓たく連合れんごうに加くわわる予定よていだった荊州刺史しし王おう叡あきらを殺害さつがいしてから北上ほくじょうした。孫まご堅けんは南陽なんようでも南陽なんよう太守たいしゅの張ちょう咨を殺害さつがいし、袁術に合流ごうりゅうして魯陽城じょうで練兵れんぺいをした。曹操そうそうは家財かざいを使つかって義兵ぎへいを集あつめ、『世よ語ご』によれば5千せんの兵へいを率ひきいて反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんに参加さんかした。また孫まご堅けんに殺ころされた王おう叡あきらの代かわりに、荊州刺史ししになったばかりの劉りゅう表ひょうも反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんに参加さんかした。反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんは洛陽らくようを東ひがしから囲かこむように河内かわうちや酸さん棗なつめや南陽なんようなどに駐屯ちゅうとんした。皇族こうぞくの陳ひね王おう劉りゅう寵ちょうは陽ひ夏なつに駐屯ちゅうとんし、輔漢大将軍だいしょうぐんを自称じしょうした。

董ただし卓たくは弘ひろ農のう王おうとなった前ぜん皇帝こうていの劉りゅう弁べんを毒殺どくさつした。

反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんといっても、全ぜん軍ぐんが合流ごうりゅうしたわけではなく、袁紹は河内かわうち、袁術は南陽なんよう、張ちょう邈・劉りゅう岱・橋きょう瑁・袁遺・鮑あわび信しん・曹操そうそうが酸さん棗なつめ、孔あな伷は潁川、韓かん馥は鄴にあった。酸さん棗なつめでは会議かいぎと酒盛さかもりに明あけ暮くれていた。董ただし卓たくの軍ぐんは強大きょうだいであったため、率先そっせんして攻せめ込こむものはいなかった。

190年ねん2月がつ、董ただし卓たくは先さきに天子てんしを長安ながやすに移うつし、董ただし卓たく自身じしんは遅おくれて長安ながやすに入はいった。

190年ねん3月がつ、酸さん棗なつめの曹操そうそう・鮑あわび信しん・張ちょう邈らは消極しょうきょく的てきな袁紹らに業ごうを煮にやし、董ただし卓たく軍ぐんに戦たたかいを挑いどんだが、滎陽の汴水で董ただし卓たく配下はいかの徐じょ栄さかえに大敗たいはいし、張ちょう邈軍の衛まもる茲・鮑あわび信しん軍ぐんの鮑あわび韜らが戦死せんしし、曹操そうそうも矢や傷きずを負おった。徐じょ栄さかえは酸さん棗なつめの軍ぐんが寡兵かへいながらも奮闘ふんとうする様子ようすを見みて、「酸さん棗なつめはまだ容易よういに攻せめられないぞ」と言いって帰還きかんした。 曹操そうそうは酸さん棗なつめに帰還きかんすると、諸しょ将しょうの前まえで自分じぶんの計略けいりゃくを語かたったが、張ちょう邈らは採用さいようしなかった。曹操そうそうは兵へいが足たりなかったため、揚あげ州しゅうへ兵へいを集あつめに行いった。

190年ねん3月がつ、太ふとし傅でんの袁隗や太ふとし僕ぼくの袁基を筆頭ひっとうにその三さん族ぞく共々ともども処刑しょけいした。

190年ねん、徐じょ栄さかえは南陽なんようの孫まご堅けんを梁はりの東部とうぶで打うち破やぶり、潁川太守たいしゅの李り旻みんが捕つかまって煮に殺ころされた。この頃ころ、袁術に孫まご堅けんのことを讒言ざんげんする者ものがいて、袁術は孫まご堅けんに兵糧ひょうろうを送おくらなくなった。孫まご堅けんは自みずから魯陽にいる袁術に会あいに行いき、「私わたしがわが身みを投なげ出だすのは、上うえは国家こっかのために、下したは将軍しょうぐん（袁術）の家門かもんの仇かたきを報ほうじるためです。それなのに将軍しょうぐんは陰口かげぐちを信しんじて、私わたしを疑うたがうのですか?」と袁術に論ろんじた。袁術は孫まご堅けんのためにすぐに兵糧ひょうろうを手配てはいさせ、孫まご堅けんは自分じぶんの軍営ぐんえいに戻もどった。

190年ねん冬ふゆ、王おう匡ただしは董ただし卓たくを襲撃しゅうげきするために河陽かわよう津つに軍団ぐんだんを集結しゅうけつさせていたが、董ただし卓たくは陽動ようどう作戦さくせんを用もちいて王おう匡ただし軍ぐんの背後はいごをつき、王おう匡ただし軍ぐんを大おおいに破やぶった。

袁紹・韓かん馥・張ちょう超ちょうは董ただし卓たくにより擁立ようりつされた献けんじ帝みかどに対抗たいこうすべく、皇族こうぞくの劉りゅう虞おそれの擁立ようりつを計画けいかくしたが、劉りゅう虞おそれや袁術や曹操そうそうはこれに強つよく反対はんたいした。

陽ひ人じんの戦たたかい

191年ねん、孫まご堅けんは敗残はいざん兵へいを集あつめて、梁やな県けんの陽ひ人じんに駐屯ちゅうとんした。

191年ねん2月がつ、董ただし卓たくは大だい督とく護まもるの胡えびす軫・騎き督とくの呂りょ布ぬのを派遣はけんして、陽ひ人じんの孫まご堅けんを攻撃こうげきさせた。胡えびす軫・呂りょ布ぬのらは陽ひ人じんから数すう十じゅう里さとの広こう成なりに到着とうちゃくしたが、日にちが暮くれ、軍ぐんは疲労ひろう困憊こんぱいであった。呂りょ布ぬのらは胡えびす軫に反感はんかんを抱だいており、胡えびす軫の作戦さくせんを失敗しっぱいさせようとし、「孫まご堅けんが逃にげたから追撃ついげきすべきです」と誤あやま情報じょうほうを流ながした。そこで胡えびす軫・呂りょ布ぬのらは徹夜てつやで軍ぐんを進すすめたが、陽ひ人じん城じょうの孫まご堅けん軍ぐんは堅かたく防衛ぼうえい体制たいせいを敷しいており、勝かてそうになかった。そこで胡えびす軫らが甲冑かっちゅうを脱ぬいで休やすんでいると、呂りょ布ぬのは「孫まご堅けん軍ぐんが出撃しゅつげきしてきた」と誤あやま情報じょうほうを流ながした。胡えびす軫らは慌あわてて逃にげたが、敵てき軍ぐんはどこにもいなかった。夜よるが明あけて陽ひ人じん城じょうの孫まご堅けん軍ぐんを攻せめようとしたが、相変あいかわらずの防衛ぼうえい体制たいせいであったため、有効ゆうこうな攻撃こうげきをかけることもできず撤退てったいした。孫まご堅けんは出撃しゅつげきして大おおいに董ただし卓たく軍ぐんを破やぶり、董ただし卓たく軍ぐんの都と尉じょう華はな雄つよしを討うち取とった。

孫まご堅けんはその後ごも董ただし卓たくとの戦たたかいを優勢ゆうせいに進すすめた。董ただし卓たくは形勢けいせい不利ふりと見みて、洛陽らくようの町まちを焼やき払はらって長安ながやすに撤退てったいした。

孫まご堅けんは洛陽らくように入はいり、皇帝こうてい達たちの陵墓りょうぼを修復しゅうふくした。『江こう表ひょう伝でん』によれば、この時とき、孫まご堅けんは伝つて国こくの玉たま璽（皇帝こうていの印璽いんじ）を見みつけたという。その後ご、孫まご堅けんは魯陽まで後退こうたいした。

反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんの崩壊ほうかい

この時とき、孫まご堅けんは豫よ州しゅう刺史ししであったが、袁紹は周しゅう喁を豫よ州しゅう刺史ししとして派遣はけんしたので、孫まご堅けんと袁術は周しゅう喁・周しゅう昕・周しゅう昂のぼると豫よ州しゅうを奪うばい合あい戦たたかうこととなった。これにより袁術と袁紹の対立たいりつは決定的けっていてきとなり、反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんは崩壊ほうかいし、多おおくの武将ぶしょうが己おのれの勢力せいりょく伸張しんちょうを目指めざす群雄ぐんゆうと化かした。後こう漢かんの支配しはい力りょくは大おおきく低下ていかし、戦乱せんらんの時代じだいが本格ほんかく的てきに始はじまったのである。

劉りゅう岱と橋はし瑁が反目はんもくし、劉りゅう岱が橋はし瑁を殺ころしたり、曹操そうそうが胡えびす毋班の遺族いぞくとともに王おう匡ただしを殺ころしたりするなど、反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんは不協和音ふきょうわおんが目立めだった。『三国志さんごくし』司馬しば朗あきら伝つてによれば、反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんの将軍しょうぐんたちはあまり協力きょうりょくすることが出来できず、兵へいを放はなって略奪りゃくだつを行おこなう者ものもおり、多おおくの人民じんみんが巻まき込こまれて死しんだという。

三国志さんごくし演義えんぎにおける虎とら牢ろう関せきの戦たたかい

詳細しょうさいは「虎とら牢ろう関せきの戦たたかい」を参照さんしょう

虎とら牢ろう関せきの戦たたかいは、『三国志さんごくし演義えんぎ』で袁紹が指揮しきを執とる「反はん董ただし卓たく連合れんごう」と董ただし卓たく軍ぐんが洛陽らくよう郊外こうがいの虎とら牢ろう関せきにおいて一時いちじ的てきに衝突しょうとつする架空かくうの戦たたかいである。

緒戦しょせんは連合れんごう軍ぐんが有利ゆうりであったが、猛もう将しょうといわれる呂りょ布ぬのや華はな雄つよしの奮戦ふんせんにより董ただし卓たく軍ぐんは危機ききを脱だっす。しかし、連合れんごう軍ぐんの関せき羽はねが董ただし卓たく軍ぐんの華はな雄ゆうを討うち取とるなど連合れんごう軍ぐんが優勢ゆうせいとなり、董ただし卓たくは洛陽らくようから長安ながやすに遷都せんとしてしまう。

なお、関せき羽はねの主君しゅくんである劉りゅう備は、反はん董ただし卓たく連合れんごう軍ぐんに参加さんかしたとする史料しりょう（『英雄えいゆう記き』）もあるが、正史せいしの「先さき主ぬし伝でん」では参加さんかしたかについては書かきしていない。