(Translated by https://www.hiragana.jp/)
電動機 - Wikipedia コンテンツにスキップ

電動でんどう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
電動でんどうから転送てんそう
ブラシきDC電気でんきモーターの動作どうさしめすアニメーション。

電動でんどう(でんどうき、えい: Electric motor)とは、電気でんきエネルギーを力学りきがくてきエネルギー変換へんかんする電力でんりょく機器きき原動機げんどうき総称そうしょうモーター電気でんきモーターともばれる[ちゅう 1]

一般いっぱんに、磁場じば磁界じかい)と電流でんりゅう相互そうご作用さようローレンツつとむ)によるちから利用りようして回転かいてん運動うんどう出力しゅつりょくするものがおおいが、直線ちょくせん運動うんどうリニアモーター磁場じばもちいずちょう音波おんぱ振動しんどう利用りようするちょう音波おんぱモータなども実用じつようされている。静電気せいでんきりょく利用りようしたしずかでんモーターふるくからられている。

なお、本来ほんらい、「モータ(ー)」("moter")という言葉ことばは「動力どうりょく」を意味いみし、とく電動でんどう限定げんていした用語ようごではない。それゆえ、なんらかの動力どうりょく役割やくわりたす装置そうちは、モーターと形容けいようされることもよくある(ロケットモーターなど)。

以下いかでは、電磁でんじりょくにより回転かいてんりょく一般いっぱんてき電動でんどう中心ちゅうしん説明せつめいし、それ以外いがいリニアモーターちょう音波おんぱモータ末尾まつび簡単かんたん説明せつめいする。

今日きょうでは、電気でんきモーターは電気でんき消費しょうひりょう半分はんぶん以上いじょうめている。

電動でんどう構成こうせい

[編集へんしゅう]
電動でんどう
工業用交流電動機の例。このようなモーターはポンプやベルトコンベアに用いられる。
工業こうぎょうよう交流こうりゅう電動でんどうれい。このようなモーターはポンプベルトコンベアもちいられる。
モーターの内部
モーターの内部ないぶ

回転かいてんする電動でんどうは、じく回転かいてんする回転子かいてんし(ロータ: Rotor)と、回転子かいてんし相互そうご作用さようして回転かいてんモーメント発生はっせいさせる固定こてい(ステータ: Stator)、回転子かいてんし回転かいてん外部がいぶつたえる回転かいてんじく回転かいてんじくささえる軸受じくうけ損失そんしつにより発生はっせいしたねつ冷却れいきゃくする冷却れいきゃく装置そうちなどから構成こうせいされる。

回転子かいてんし固定こてい磁界じかい発生はっせいさせる部分ぶぶんさかいという。ローターをかこむように配置はいちした電磁石でんじしゃく磁界じかいみちびつよ磁性じせいたい鉄心てっしん電線でんせんいたものや永久えいきゅう磁石じしゃくもちいられる。

整流せいりゅう電動でんどう (Brush Motor)や同期どうき電動でんどうで、さかい磁と相互そうご作用さようさせトルクをるための磁界じかい発生はっせいさせるものを電機でんきという。 電線でんせん電流でんりゅうながれると、さかい磁の磁界じかいによりローレンツつとむがはたらきローターを回転かいてんさせる。

負荷ふか機器きき接続せつぞくするカップリング・回転かいてんすうげて目的もくてきトルクるための減速げんそくなどが付属ふぞく装置そうちとして接続せつぞくされる。

整流せいりゅう電動でんどうは、整流せいりゅうブラシによって電機でんきながれる電流でんりゅうをきりかえ回転かいてん方向ほうこうたもつことで連続れんぞくてき使用しよう可能かのうにしている。

回転子かいてんし

固定こてい磁界じかい回転子かいてんしない電流でんりゅうによってちからくわわりじく回転かいてんする。ローターに永久えいきゅう磁石じしゃくれ、ステーターに導線どうせんたせるものもある。 ステーターとローターのあいだには、回転かいてんするための隙間すきま(ギャップ)が必要ひつようである。ギャップはばはモーターの電気でんきてき特性とくせいおおきく影響えいきょうし、モーターのちからりつひくくなるしゅ原因げんいんとなっている。 ギャップがおおきいと磁化じか電流でんりゅう増加ぞうかし、ちからりつ低下ていかするため、ギャップはせまほういがちいさいすぎると、騒音そうおん損失そんしつ機械きかいてき問題もんだい発生はっせいする場合ばあいがある。

固定こてい

モーターの電磁でんじ回路かいろのうちローターをかこ固定こてい部分ぶぶんつよ磁性じせいたい鉄心てっしんせんいた電磁石でんじしゃく永久えいきゅう磁石じしゃくであるフィールドマグネットで構成こうせいされる。 磁界じかい電機でんき通過つうかしてまきせんちから発生はっせいさせる。ステーターコアは、たがいに絶縁ぜつえんされた多数たすううす金属きんぞくばん積層せきそうさせたラミネーションとばれる構成こうせいされている。積層せきそうさせているのは、ソリッドコアを使用しようした場合ばあいしょうじるエネルギー損失そんしつ低減ていげんするためである。 洗濯せんたくやエアコンなどに使つかわれている「樹脂じゅし積層せきそうがたモーター」は、ステーターを樹脂じゅし完全かんぜんつつんでおり、樹脂じゅし減衰げんすい特性とくせい利用りようして騒音そうおん振動しんどう低減ていげんしている。

コイル

積層せきそうされた軟鉄なんてつせい磁性じせいたいコアに、電流でんりゅうながしたときに磁極じきょく形成けいせいするようにいたせんのことである。

直列ちょくれつ磁極じきょくがたでは、回転子かいてんし固定こていつよ磁性じせいたいコアに磁極じきょくばれる突起とっきっており、磁極じきょくめんしたには電線でんせんかれていて、電線でんせん電流でんりゅうながれると磁界じかい北極ほっきょくまたは南極なんきょくになるようになっている。 一方いっぽう平行へいこう磁極じきょくがた分布ぶんぷ磁界じかいがた)では、つよ磁性じせいたいのコアには磁極じきょくがなく、なめらかな円筒えんとうがたで、まきせん円周えんしゅうじょうにスロットじょう均等きんとう配置はいちされている。 せんながれる交流こうりゅう電流でんりゅうによってコアに磁極じきょく形成けいせいされ、連続れんぞくてき回転かいてんする。 隈取くまどり磁極じきょくがた誘導ゆうどう電動でんどう磁極じきょく一部いちぶせんがあり、その磁極じきょく磁場じば位相いそうおくらせる。

モーター内部ないぶには棒状ぼうじょういたじょう金属きんぞく通常つうじょうどうやアルミニウム)など、あつみのある金属きんぞく構成こうせいされた導体どうたいれ、電磁でんじ誘導ゆうどうによって駆動くどうさせる。

整流せいりゅう

回転子かいてんし電流でんりゅう供給きょうきゅうする回転かいてんしき電気でんきスイッチのこと。電機でんきうえに、複数ふくすう金属きんぞく接点せってん構成こうせいされた円筒えんとう設置せっちしている。 カーボンなどのやわらかい2つ以上いじょう導電性どうでんせい「ブラシ」とばれる電気でんき接点せってん整流せいりゅうけられ、回転かいてんしながら整流せいりゅう連続れんぞくしたセグメントとすりどう接触せっしょくし、回転子かいてんし電流でんりゅう供給きょうきゅうする。 回転子かいてんしまきせん整流せいりゅうのセグメントに接続せつぞくされている。コミュテータははん回転かいてん(180°)ごとにローターのまきせんながれる電流でんりゅう方向ほうこう周期しゅうきてき反転はんてんさせ、ステーターの磁界じかいがローターにあたえるトルクがつねおな方向ほうこうになるようにしている。 この電流でんりゅう反転はんてんがないと、ローターの各巻かくかんせんにかかるトルクの方向ほうこうはん回転かいてんごとに反転はんてんしてしまい、ローターが停止ていししてしまう。 整流せいりゅう効率こうりつわるく、整流せいりゅうきモーターはほとんどがブラシレス直流ちょくりゅうモーター、永久えいきゅう磁石じしゃくモーター、誘導ゆうどうモーターにってわられている。

動作どうさ原理げんり

[編集へんしゅう]

電動でんどうにはいろいろな種類しゅるいがあるが、電動でんどう固定こてい回転子かいてんしがあって、どちらかが回転かいてん変化へんかする磁界じかい発生はっせいして、その磁界じかい変化へんかによって、駆動くどうりょくるものである。

回転子かいてんしによる分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

整流せいりゅう電動でんどう以外いがいの、固定こていにコイルがあって、コイルに変化へんかする電流でんりゅう供給きょうきゅうすることによって、変動へんどうする磁界じかい発生はっせいさせる電動でんどうについてべると、回転子かいてんし種類しゅるい分類ぶんるいできる。

  1. 永久えいきゅう磁石じしゃくさかい磁 (Permanent Magnet Type) : 永久えいきゅう磁石じしゃくきょく円周えんしゅう方向ほうこう配置はいちすれば、固定こていきょく移動いどうともなって、駆動くどうりょく発生はっせいする。
  2. 電磁石でんじしゃくかい磁 : 回転子かいてんし磁界じかいたせることは電磁石でんじしゃくでも可能かのうであるので、回転子かいてんし固定こていとも電磁石でんじしゃくとする構成こうせいである。
  3. とおる磁率の (Variable Reluctance Type) : 磁性じせいたい突起とっきもうけるなどして、磁力じりょくせんとおやすいところとおりにくいところをもうければ、駆動くどうりょく発生はっせいする。
  4. アラゴーのえんばん : 金属きんぞく導体どうたいをおけば、磁場じば変化へんかにより、うず電流でんりゅう発生はっせいし、うず電流でんりゅうのつくる磁界じかいとの相互そうご作用さようで、駆動くどうりょく発生はっせいする。
  5. まきせんかたち誘導ゆうどう電動でんどう : 導体どうたいのコイルをおけば、磁場じば変化へんかにより、コイルにながれる電流でんりゅう発生はっせいし、それによる磁界じかいとの相互そうご作用さようで、駆動くどうりょく発生はっせいする。

ある方向ほうこう連続れんぞくてき駆動くどうりょく発生はっせいするために駆動くどうがわのコイルを複数ふくすうもうけて、磁気じき位相いそう順番じゅんばんにずらして駆動くどうりょく発生はっせいさせる配置はいちにする。その方法ほうほうもまた、いろいろな配置はいちのものが実用じつようされている。

また回転子かいてんし固定こてい内外ないがい位置いち関係かんけいでも、インナーローターしき・アウターローターしき・フラットローターしき分類ぶんるいでき、これをリニアモーターめれば、くるまじょういちしき地上ちじょう軌道きどういちしきになる。

さかい磁や電機でんき電流でんりゅう種類しゅるい

[編集へんしゅう]

つぎ電機でんきや1がわまきせんによって変動へんどうする磁界じかい発生はっせいするための電流でんりゅう種類しゅるいについてはつぎのようなものがある。

  1. さんそう交流こうりゅう : 商用しょうようさんそう交流こうりゅう(120ずつ位相いそうのずれた正弦せいげん)を3つまたはその倍数ばいすうかずのコイルに供給きょうきゅうすることによって、回転かいてんする磁界じかい発生はっせいすることができる。
  2. たんしょう交流こうりゅう : コンデンサ使つかって、位相いそうをずらした、もう1そうをつくることがおおい。
  3. 可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょインバータによるさんそう交流こうりゅう : 商用しょうようさんそう交流こうりゅう周波数しゅうはすう一定いっていなので、起動きどう速度そくどえるためなどのためにもちいられる。
  4. 直流ちょくりゅうパルス : 位相いそうのちがうパルス電圧でんあつを、別々べつべつのコイルに供給きょうきゅうする。いわゆるステッピングモーターがこれにあたる。
  5. 整流せいりゅう電動でんどう (Brushless DC Motor) は、センサにより回転子かいてんし位置いち検出けんしゅつし、それによって直流ちょくりゅう電流でんりゅう極性きょくせいえるものである。

直流ちょくりゅう電動でんどう交流こうりゅう電動でんどう区分くぶんべつ電動でんどう構造こうぞう区分くぶんでなく、使用しようほう区分くぶんかんがえることができ、どちらでもまわ電動でんどうもありうる。

電動でんどう分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

その分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

電動でんどう仕様しよう

[編集へんしゅう]

電動でんどう損失そんしつ

[編集へんしゅう]

電動でんどう損失そんしつは、入力にゅうりょく電力でんりょく出力しゅつりょく仕事しごととして定義ていぎされる。

特殊とくしゅ電動でんどう

[編集へんしゅう]

電動でんどうおおくは電気でんきによって磁界じかい変化へんかつくし、その磁界じかい変化へんかによって回転かいてんりょくすものが一般いっぱんてきであるが、以下いかのようにこれ以外いがい原理げんり構造こうぞう特殊とくしゅ電動でんどうがある。

リニアモーター

[編集へんしゅう]

リニアモーターとは、回転かいてんしき電動でんどうモーターの固定こてい相当そうとうする一直線いっちょくせんながびた部分ぶぶんうえに、回転子かいてんし相当そうとうする部分ぶぶんいて、磁界じかい変化へんかによって直線ちょくせん運動うんどうるものである。リニア誘導ゆうどうモータ(LIM)、リニア同期どうきモータ(LSM)、リニア直流ちょくりゅうモータ(LDM)、リニアステッピングモータ、リニアあつでんモータ、リニアせいでんモータとうがある。

振動しんどうモーター

[編集へんしゅう]
ちょう音波おんぱ振動しんどうモーター
ちょう音波おんぱモーター振動しんどうたい変形へんけいによるこまかな位置いち変化へんか摩擦まさつによって回転かいてん運動うんどう直線ちょくせん運動うんどうえる。ローレンツつとむ使用しようする従来じゅうらいのモータと比較ひかくして効率こうりつひくい。
あつでん素子そしによるあつでん現象げんしょう利用りようしているものは、あつでんモータとばれることもある。カメラのフォーカスわせのほか、ハイレゾリューションオーディオけイヤホンのちょう音波おんぱ帯域たいいき再生さいせいするスピーカードライバーなどに利用りようされている。
振動しんどうモーター
振動しんどうモーターは携帯けいたい電話でんわなどでの着信ちゃくしん振動しんどうらせる目的もくてき開発かいはつされたものがある。小型こがたのものでは、回転子かいてんし重心じゅうしんかたよってつくられ回転子かいてんし自身じしん振動しんどうつくおもりとなっているものがある。

歴史れきし

[編集へんしゅう]
ファラデーの電磁でんじ実験じっけん(1821ねんごろ)[1]
イェドリクの "lightning-magnetic self-rotor"(1827ねん、Museum of Applied Arts, ブダペスト)

モーター誕生たんじょうまえ

[編集へんしゅう]

1740年代ねんだい、スコットランドの修道しゅうどうアンドリュー・ゴードンとアメリカの実験じっけんベンジャミン・フランクリンが製作せいさくした単純たんじゅんせいでんデバイスが最初さいしょ電気でんきモーターであった。 現代げんだい電磁でんじモーターのまえには、静電気せいでんきちから作動さどうするモーター(しずかでんモーター)の実験じっけんおこなわれていた。

1771ねんヘンリー・キャベンディッシュがその理論りろんてき原理げんり発見はっけんするも発表はっぴょうされず、1785ねんクーロン独自どくじ発見はっけん発表はっぴょうしたため、クーロンの法則ほうそくばれる。 実用じつようるようなおおきさのちから発生はっせいさせるためにはこう電圧でんあつ必要ひつようとなるため、せいでんモーターは実用じつようされなかった。

1799ねんアレッサンドロ・ボルタ化学かがく電池でんち発明はつめいすると、持続じぞくてき電流でんりゅうつくすことが可能かのうになった。

1820ねん、ハンス・クリスチャン・オルステッドは、電流でんりゅう磁場じばつくり、磁石じしゃくちからあたえることを発見はっけんした。 アンドレ・マリー・アンペールは、わずかすう週間しゅうかん電磁でんじ相互そうご作用さようによる機械きかいてきちから発生はっせい記述きじゅつしたアンペールの法則ほうそく発表はっぴょうした。

1821ねん、イギリスの科学かがくしゃマイケル・ファラデー電磁気でんじきてき手段しゅだん電気でんきエネルギーを運動うんどうエネルギーに変換へんかんする実験じっけんおこなった。うえから導線どうせんるし、水銀すいぎんのプールにすこひたしておき、そのうえ永久えいきゅう磁石じしゃくく。その導線どうせん電流でんりゅうながすと、導線どうせん周囲しゅういまる磁場じば発生はっせいし、磁石じしゃくまわりで導線どうせん回転かいてんする[2]。この実験じっけん学校がっこう物理ぶつりがく授業じゅぎょうでもよく実施じっしされるが、毒性どくせいのある水銀すいぎんわりに塩水えんすい使つかうこともある。これはたんきょく電動でんどうばれるもっと単純たんじゅん形式けいしき電動でんどうである。のちにこれを改良かいりょうした Barlow's Wheel もある。これらは実演じつえんけであり、動力どうりょくげんとして実用じつようできるものではなかった。

1827ねん、ハンガリーのイェドリク・アーニョシュ電磁でんじ作用さよう回転かいてんする装置そうち実験じっけん開始かいしし、それを "lightning-magnetic self-rotors" とんでいた。かれはそれを大学だいがくでの教育きょういくよう使つかっており、1828ねんには実用じつようてき直流ちょくりゅうモーターの3だい要素ようそである固定こてい電機でんき整流せいりゅうそなえた世界せかいはつ実用じつようてき直流ちょくりゅう電動でんどう実験じっけん成功せいこうした。その固定こてい部分ぶぶん回転かいてん部分ぶぶん電磁石でんじしゃくになっていて、永久えいきゅう磁石じしゃく使つかっていない[3][4][5][6][7][8]。この装置そうち実験じっけんようであり動力どうりょくげんとして使つかえるものではなかった。

DCモーター

[編集へんしゅう]

1832ねん、イギリスの科学かがくしゃウィリアム・スタージャンが、機械きかい動力どうりょくげんとして使つかえる世界せかいはつ整流せいりゅうしき直流ちょくりゅう電動でんどう発明はつめいした[9]

1837ねん、アメリカでトーマス・ダヴェンポートとそのつまエミリーととも商用しょうよう利用りよう可能かのうなレベルの整流せいりゅうしき直流ちょくりゅう電動でんどう開発かいはつし、特許とっきょ取得しゅとくした。 この電動でんどうまいぶん最大さいだい600かいころげで、印刷いんさつなどの機械きかい駆動くどうした[10]当時とうじ電源でんげんとしては電池でんちしかなく、その電極でんきょくよう亜鉛あえん非常ひじょう高価こうかだった。そのためダヴェンポート夫妻ふさい商業しょうぎょうてきには失敗しっぱい破産はさんした。ほかにも直流ちょくりゅう電動でんどう開発かいはつした発明はつめい何人なんにんかいたが、いずれも電源でんげんコストの問題もんだい直面ちょくめんした。当時とうじ電力でんりょくもうはまだ存在そんざいしなかった。したがって、電源でんげんコストに見合みあうだけの電動でんどう市場いちば存在そんざいしなかった[よう出典しゅってん]

1834ねん、ロシアのモーリッツ・フォン・ヤコビが、比較的ひかくてきよわ回転かいてん往復おうふく運動うんどう装置そうち使つかって、はつ本格ほんかくてき回転かいてんしき電気でんきモーターをつくった。このモーターはおどろくべき機械きかいてき出力しゅつりょくっていた。 このモーターは世界せかい記録きろく樹立じゅりつしたが、さらに自身じしんで1838ねんにその記録きろく更新こうしんした。後者こうしゃ使つかって14にんりのボートでひろかわわたることができた。 1839ねんから40ねんにかけて、開発かいはつしゃ同様どうよう以上いじょう性能せいのうのモーターをつくることに成功せいこうした。

1855ねん、イェドリクは electromagnetic self-rotors と同様どうよう原理げんりやく仕事しごとをする装置そうち製作せいさくした[3][5]。また同年どうねん電動でんどう駆動くどうする自動車じどうしゃ模型もけいつくっている[11]

1864ねんアントニオ・パチノッティがリングじょう電機でんきはじめて発表はっぴょうした(当初とうしょ直流ちょくりゅう発電はつでん(ダイナモ)として考案こうあんされた)。 これは、コイルが左右さゆう対称たいしょうたがいにじられて配置はいちされ、整流せいりゅうのバーに接続せつぞくし、ブラシからは実用じつようじょう問題もんだいないレベルで変動へんどうのない電流でんりゅう供給きょうきゅうするてん特徴とくちょうてきである。 1871ねんにパチノッティの設計せっけいさい発明はつめいやヴェルナー・シーメンスによるいくつかの解決かいけつさく採用さいようしたゼノベ・グラムののちで、直流ちょくりゅうモーターはようやく商業しょうぎょうてき成功せいこうする。

1872ねんジーメンス・ウント・ハルスケしゃのフリードリッヒ・フォン・ヘフナー・アルテンネックがパキノッティのリング電機でんきわりにドラムローターを導入どうにゅうし、機械きかい効率こうりつ向上こうじょうさせた。 翌年よくねんには同社どうしゃがラミネートローターを導入どうにゅうし、てつそん低減ていげんさそえ起電きでんあつ向上こうじょうさせた。1880ねん、Jonas Wenströmはローターにまきせんおさめるためのスロットをもうけ、効率こうりつをさらにたかめた。

1873ねんゼノブ・グラムウィーン万博ばんぱくで、かれダイナモ偶然ぐうぜんべつのダイナモを接続せつぞくして発電はつでんしたところ、じく回転かいてんはじめたのを発見はっけんした。これが世界せかいはつ電動でんどうというわけではないが、実用じつようてき電動でんどうとしては世界せかいはつの1つだった。

1886ねんフランク・スプレイグ負荷ふか変化へんかしても一定いってい回転かいてん速度そくど維持いじできる火花ひばなない直流ちょくりゅう電動でんどう発明はつめいした。このころスプレイグは電動でんどうちから電力でんりょくもうかえ回生かいせい技術ぎじゅつ発明はつめいしており、また路面ろめん電車でんしゃよう架線かせんからしゅうでんする方式ほうしき発明はつめいした。これらの技術ぎじゅつ使つかい、1887ねんバージニアしゅうリッチモンド路面ろめん電車でんしゃ運用うんようして成功せいこうおさめ、1892ねんには電動でんどうエレベーターとその制御せいぎょシステム、さらにイリノイしゅうシカゴ集中しゅうちゅう制御せいぎょ方式ほうしき電動でんどうしき地下鉄ちかてつ通称つうしょうシカゴ・L)を成功せいこうさせた。スプレイグの電動でんどう関連かんれん発明はつめいに、産業さんぎょうにおける電動でんどう需要じゅよう爆発ばくはつてき増大ぞうだいし、発明はつめい同様どうようのシステムを次々つぎつぎ発明はつめいしていった。

電動でんどう効率こうりつ向上こうじょうは、固定こてい回転子かいてんし隙間すきまちいさくすることが重要じゅうようだということがなかなか認識にんしきされず、進歩しんぽすうじゅう年間ねんかんおくれてしまった。初期しょき電動でんどうではその空隙くうげき比較的ひかくてきおおきく、磁気じき回路かいろ磁気じき抵抗ていこう非常ひじょうおおきかった。このため、現代げんだい効率こうりつてき電動でんどうくらべると、おな消費しょうひ電力でんりょく発生はっせいできるトルクがかなりちいさい。その原因げんいん磁石じしゃく電磁石でんじしゃくちかいほどちからつよいため、ある程度ていどはなしておこうとしたためとかんがえられる。効率こうりつてき設計せっけいでは、固定こてい回転子かいてんし隙間すきまをなるべくちいさくし、トルクを発生はっせいしやすい磁束じそくパターンにする。


ACモーター

[編集へんしゅう]

1824ねん、フランスの物理ぶつり学者がくしゃフランソワ・アラゴが「アラゴーのえんばん」でられる回転かいてん磁界じかい定式ていしきした。 1879ねん、ウォルター・ベイリーが手動しゅどうでスイッチをオン・オフすることで、原始げんしてき誘導ゆうどうモーター製作せいさくした。 1880年代ねんだい長距離ちょうきょりこう電圧でんあつ送電そうでんにおける交流こうりゅう利点りてん認識にんしきされていたものの、交流こうりゅうでモーターを作動さどうさせることが課題かだいとなっていたため、実用じつようてき交流こうりゅうモーターの開発かいはつさかんにおこなわれた。

1885ねんガリレオ・フェラリスによって最初さいしょ交流こうりゅう整流せいりゅうレス誘導ゆうどうモーター発明はつめいされた。 1888ねん、トリノ王立おうりつ科学かがくアカデミーは、モータ動作どうさ基礎きそ詳述しょうじゅつしたフェラリスの研究けんきゅう発表はっぴょうしたが、当時とうじは「その原理げんりもとづく装置そうちは、モータとしての商業しょうぎょうてき重要じゅうようせいない」と結論けつろんづけられた。

1887ねんニコラ・テスラはつ実用じつようてき交流こうりゅう電動でんどうあい送電そうでんシステム発明はつめいし、1888ねん特許とっきょ取得しゅとくした。 同年どうねん、テスラはAIEEに論文ろんぶん「A New System for Alternating Current Motors and Transformers」を発表はっぴょうし、特許とっきょ取得しゅとくした3種類しゅるいの2そう4きょくモータについて説明せつめいした。 4きょくのロータで自己じこ始動しどうがたリラクタンスモータ形成けいせいするもの、まきせんのロータで自己じこ始動しどうがた誘導ゆうどうモータを形成けいせいするもの、ロータまきせん個別こべつ励起れいきされた直流ちょくりゅう電源でんげん供給きょうきゅうするしん同期どうきモータである。 この特許とっきょなかには、短絡たんらくまき線型せんけいローターの誘導ゆうどうモーターも記載きさいされていた。 すでにフェラリスから権利けんり取得しゅとくしていたジョージ・ウェスティングハウスは、すぐにテスラの特許とっきょった。 じょうそく交流こうりゅう誘導ゆうどうモーターは路面ろめん電車でんしゃにはてきさなかったが、ウェスティングハウスしゃは1891ねんにコロラドしゅうテルライドの鉱山こうざん事業じぎょう動力どうりょくげんとして採用さいようした。 同社どうしゃは1892ねん最初さいしょ実用じつようてき誘導ゆうどうモーターを実現じつげんし、1893ねんにはしょう60ヘルツ誘導ゆうどうモーターのラインを開発かいはつしたが、これら初期しょきのウェスティングハウスのモーターはまきせんローターのそうモーターであった。 のちにB.G.Lammeが回転かいてんぼうまきせんローターを開発かいはつした。

1889ねん、ミハイル・ドリヴォ=ドブロヴォルスキーが、ケージローターとまきせんローターの両方りょうほうそなえた始動しどうようレオスタットさんそう誘導ゆうどうモーターを、1890ねんにはさん変圧へんあつ発明はつめいするなど、さんそう開発かいはつ着実ちゃくじつすすめていった。 AEGとMaschinenfabrik Oerlikonしゃとの合意ごういて、ミハイル・ドリヴォ=ドブロヴォルスキーとチャールズ・ユージン・ランスロット・ブラウンは、20馬力ばりきのリス・ケージがたと100馬力ばりき始動しどうレオスタットまき線型せんけい大型おおがたモデルを開発かいはつした。 1889ねん以降いこう同様どうようさんそう機械きかい開発かいはつは、ウェンストロムがはじめていた。 1891ねんのフランクフルト国際電気こくさいでんき技術ぎじゅつ博覧はくらんかいで、はつ長距離ちょうきょりさんそうシステムの発表はっぴょう成功せいこうした。これはていかく15kVで、ネッカーがわのラウフェンのたきから175kmにわたってびていた。 ラウフェンの発電はつでんしょには240kWの86V 40Hzへるつ交流こうりゅう発電はつでん昇圧しょうあつトランスがあり、展示てんじかいでは降圧こうあつトランスから100馬力ばりきさんそう誘導ゆうどうモーターに給電きゅうでんして人工じんこうたきうごかし、もと電源でんげん移動いどう表現ひょうげんした。 さんそう誘導ゆうどう現在げんざいだい部分ぶぶん商用しょうようモーターに使用しようされている。ドブロヴォルスキーは、テスラのモーターはそう脈動みゃくどうがあるため実用じつようてきではないと主張しゅちょうし、それがかれさんそう研究けんきゅう固執こしつするきっかけとなった。

1891ねんゼネラル・エレクトリックしゃさんそう誘導ゆうどうモーターの開発かいはつ開始かいしした。 1896ねんには、ゼネラル・エレクトリックしゃとウェスティングハウスしゃが、のちにリスケージ・ローターとばれるバー・ワインディング・ローターの設計せっけいかんするクロスライセンス契約けいやく締結ていけつした。 これらの発明はつめい技術ぎじゅつ革新かくしんともな誘導ゆうどうモーターの改良かいりょうにより、現在げんざい、100馬力ばりき誘導ゆうどうモーターは、1897ねんの7.5馬力ばりきのモーターとおなじサイズになっている。

日本にっぽん国内こくない電動でんどう

[編集へんしゅう]

1895ねん明治めいじ28ねん)、芝浦製作所しばうらせいさくしょ(現在げんざい東芝とうしば)がどう鉱山こうざんポンプよう6きょく25馬力ばりき(18.5kW)の日本にっぽんはつそう誘導ゆうどう電動でんどう誕生たんじょうさせた。

1901ねん明治めいじ34ねん)、明電舎めいでんしゃが1馬力ばりき(0.75kW)のさんそう誘導ゆうどう電動でんどう製造せいぞうした。

1906ねん明治めいじ39ねん)、明電舎めいでんしゃが5馬力ばりき(3.8kW)以下いかさんそう誘導ゆうどう電動でんどう独自どくじ設計せっけいほうをもって標準ひょうじゅんし、汎用はんよう電動でんどうとして本格ほんかく生産せいさん開始かいしした。

1906ねん明治めいじ39ねん)、12月まつ時点じてん調査ちょうさで、明電舎めいでんしゃ東京とうきょう市内しない電動でんどうシュアのやく6わりめていた。東京とうきょう市内しない電動でんどう746だいうちの463だい明電舎めいでんしゃせいで、のこり283だい過半数かはんすう輸入ゆにゅうひんであった[12]

電動でんどうかんする短編たんぺん映画えいが

[編集へんしゅう]

電動でんどうメーカーのひとつ、松下電器産業まつしたでんきさんぎょうげんパナソニック)の企画きかくもとで、1963ねんに『ちから技術ぎじゅつ-モートル-』とだいされた短編たんぺん映画えいがやく28分間ふんかん)が製作せいさくされている。

とう映画えいが作品さくひんでは、モーターの原理げんり説明せつめいからはじまり、各種かくしゅモーター製品せいひん各々おのおの現場げんば光景こうけい完成かんせいひん動作どうさ光景こうけいなどが、じょう達也たつやナレーションりで、紹介しょうかいされている。

ここで、映画えいがタイトルのなかえる「モートル」は、「モーター」のドイツ表記ひょうき“Motor”の20世紀せいき前半ぜんはんまで模範もはんとされていたドイツ発音はつおんもとづく表記ひょうきほうである《ちなみにパナソニックでは、現在げんざい、「モートル」という表記ひょうきほうもちいられていない(一般いっぱん産業さんぎょうけモーターるい生産せいさん継続けいぞく)》[ちゅう 1]

とう映画えいが作品さくひん東京とうきょうシネマ(げん東京とうきょうシネマしんしゃ)により制作せいさくされており、現在げんざい科学かがく映像えいぞうかん(NPO法人ほうじん科学かがく映像えいぞうかんささえるかい)Webサイトないいて無料むりょう公開こうかいされている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b 「モーター」というカタカナ表記ひょうきかんして、電気でんき学会がっかいいては「モータ」という表記ひょうきほうさだめているほか電動でんどうメーカーによっては「モーター」のドイツ表記ひょうき“Motor”の20世紀せいき前半ぜんはんまでドイツ発音はつおん模範もはんとされた「舞台ぶたい発音はつおん」にもとづいた発音はつおんかたならって「モートル」(あるいは「モトール」)という表記ひょうきほうもちいているところがられる《ニデックWebサイトないモーターとは~1-3-6.ちょう音波おんぱモーター』ページ後半こうはん掲載けいさいされているコラム『モーターの語源ごげん』より;なお「モートル」という表記ひょうきは、現在げんざいすくなくとも日立ひたち系列けいれつ日立ひたちさんシステム東芝とうしば系列けいれつ東芝とうしば産業さんぎょう機器ききシステムにいて、おもにブランドめいなかもちいられている》

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Faraday, Michael (1844). Experimental Researches in Electricity. 2  See plate 4.
  2. ^ spark museum
  3. ^ a b Electricity and magnetism, translated from the French of Amédée Guillemin. Rev. and ed. by Silvanus P. Thompson. London, MacMillan, 1891
  4. ^ Nature 53. (printed in 1896) page: 516
  5. ^ a b Battery and Technology History Timeline Electropedia
  6. ^ http://www.fh-zwickau.de/mbk/kfz_ee/praesentationen/Elma-Gndl-Generator%20-%20Druckversion.pdf
  7. ^ http://www.uni-regensburg.de/Fakultaeten/phil_Fak_I/Philosophie/Wissenschaftsgeschichte/Termine/E-Maschinen-Lexikon/Chronologie.htm
  8. ^ Electrical Technology History Electropedia
  9. ^ Gee, William (2004). “Sturgeon, William (1783–1850)”. Oxford Dictionary of National Biography. Oxford, England: Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/26748 
  10. ^ Garrison, Ervan G., "A history of engineering and technology". CRC Press, 1998. ISBN 084939810X, 9780849398100. Retrieved May 7, 2009.
  11. ^ http://www.frankfurt.matav.hu/angol/magytud.htm
  12. ^ 電気でんきとも」(1906) |

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • Donald G. Fink and H. Wayne Beaty, Standard Handbook for Electrical Engineers, Eleventh Edition, McGraw-Hill, New York, 1978, ISBN 0-07-020974-X.
  • Edwin J. Houston and Arthur Kennelly, Recent Types of Dynamo-Electric Machinery, copyright American Technical Book Company 1897, published by P.F. Collier and Sons New York, 1902
  • Kuphaldt, Tony R. (2000-2006). “Chapter 13 AC MOTORS”. Lessons In Electric Circuits — Volume II. http://www.ibiblio.org/obp/electricCircuits/AC/AC_13.html 2006ねん4がつ11にち閲覧えつらん 
  • A.O.Smith: The AC's and DC's of Electric Motors” (PDF). 2009ねん12月7にち閲覧えつらん
  • Resenblat & Frienman DC and AC machinery
  • http://www.streetdirectory.com/travel_guide/115541/technology/understanding_electric_motors_and_their_uses.html
  • Shanefield D. J., Industrial Electronics for Engineers, Chemists, and Technicians,William Andrew Publishing, Norwich, NY, 2001.
  • Fitzgerald/Kingsley/Kusko (Fitzgerald/Kingsley/Umans in later years), Electric Machinery, classic text for junior and senior electrical engineering students. Originally published in 1952, 6th edition published in 2002.
  • Bedford, B. D.; Hoft, R. G. et al. (1964). Principles of Inverter Circuits. New York: John Wiley & Sons, Inc.. ISBN 0 471 06134 4  (インバータ回路かいろ可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ使つかわれている)
  • B. R. Pelly, "Thyristor Phase-Controlled Converters and Cycloconverters: Operation, Control, and Performance" (New York: John Wiley, 1971).
  • John N. Chiasson, Modeling and High Performance Control of Electric Machines, Wiley-IEEE Press, New York, 2005, ISBN 0-471-68449-X.

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]