デジタイズ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
電子でんしから転送てんそう

デジタイズえい: digitize)は連続れんぞくてき離散りさんてき変換へんかんすること。その手法しゅほう全般ぜんぱんふくめてデジタイゼーションえい: digitization)ともいう。離散りさんデジタルえい: digital value)といい、コンピュータもちいた手法しゅほうでは2ビットえい: bit)を使つかった量子りょうし主流しゅりゅうとなっている。発展はってんした情報じょうほう理論りろん応用おうようして、既存きそんオブジェクト画像がぞう信号しんごう通常つうじょうアナログ信号しんごう)などの情報じょうほうをデジタイズすることを電子でんし [ちゅう 1]、またはデジタルえい: digitalize)という。デジタイズの結果けっかられた情報じょうほうは、もと情報じょうほうとの対比たいひとして「デジタル表現ひょうげん」あるいは「デジタル形式けいしき」、画像がぞうであれば「デジタル画像がぞう」などとぶ。

デジタルされた情報じょうほうはビット量子りょうしされたたんなる数列すうれつであるため、人間にんげん知覚ちかく認識にんしきができるようにデータを画像がぞうとしてディスプレイ表示ひょうじさせたり、文字もじれつてて印字いんじしたり、電気でんき信号しんごう変換へんかんしてスピーカーから発音はつおんさせたりなどの加工かこうおこなう。これをレンダリングえい: rendering)といい、レンダリングをおこな仕組しくみや装置そうちをレンダラー(えい: renderer)という。

近年きんねんでは、デジタルの情報じょうほうをデジタイズするだけでなく、情報じょうほうそのものが作成さくせいされた時点じてんですでにデジタルされている場合ばあいえた。このような情報じょうほうコンテンツボーン・デジタルえい: born-digital[1]という。書籍しょせき出版しゅっぱんでは文章ぶんしょうワープロ図版ずはんデジタイザえい: digitizer)などで入力にゅうりょくし、かみ媒体ばいたいへの印刷いんさつからおこなう(デジタルファースト - えい: digital-first、ペーパーレイター - えい: paper-later[2][3]ことも一般いっぱんしてきている。

総務そうむしょう情報じょうほう通信つうしん白書はくしょでは、企業きぎょうデジタルトランスフォーメーション推進すいしん関連かんれんし、デジタルふくまれる概念がいねんに、「既存きそんかみのプロセスを自動じどうするなど、物質ぶっしつてき情報じょうほうをデジタル形式けいしき変換へんかんすること」をデジタイゼーション (Digitization) 、「組織そしきのビジネスモデル全体ぜんたい一新いっしんし、クライアントやパートナーにたいしてサービスを提供ていきょうするより方法ほうほう構築こうちくすること」をデジタライゼーション (Digitalization)英語えいごばん として、2つをけてもちいている[4]

以下いかではデジタイズ、電子でんし両方りょうほうについてべる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

アナログ信号しんごうは、時間じかんてき連続れんぞく連続れんぞく信号しんごうで、その連続れんぞくてき変化へんかする。しかし、デジタル信号しんごうはどちらの観点かんてんからも離散りさんてきであり、デジタイズは本来ほんらい信号しんごう近似きんじでしかない。しかし、アナログ信号しんごう通常つうじょう情報じょうほう成分せいぶんだけでなくノイズ成分せいぶんふくむことをかんがえれば、デジタイズによってかなら情報じょうほううしなわれるとはえない。

デジタル信号しんごう整数せいすう数列すうれつとしてあらわされる。デジタイズであれば、一定いってい間隔かんかくサンプリング周波数しゅうはすう)でアナログ信号しんごうり、その時点じてん整数せいすうする。このように間隔かんかく設定せっていしてることを標本ひょうほんび、またったを8ビットあるいは16ビットのような範囲はんい表現ひょうげんすることを量子りょうしぶ。標本ひょうほんこまかさはサンプリング周波数しゅうはすうまり、分解能ぶんかいのう解像度かいぞうどとしてあらわれる。量子りょうしこまかさは量子りょうしビットすうまる。デジタイズのこまかさは標本ひょうほん量子りょうしふたつの要素ようそによって決定けっていされる。なおデジタイズをおこな電子でんし回路かいろアナログ-デジタル変換へんかん回路かいろび、デジタイズを信号しんごう変調へんちょう方式ほうしき一種いっしゅとして場合ばあいは、パルス符号ふごう変調へんちょうう。周波数しゅうはすう領域りょういきでは標本ひょうほん定理ていりにより標本ひょうほん限界げんかいさだまる。

整数せいすうれつをアナログ信号しんごうもどすことで本来ほんらい信号しんごう近似きんじられる。この変換へんかんおこな電子でんし回路かいろデジタル-アナログ変換へんかん回路かいろぶ。この近似きんじ正確せいかくせい基本きほんてきにサンプリング周波数しゅうはすう量子りょうしビットすうによって決定けっていされる。

デジタル電子でんし[編集へんしゅう]

通常つうじょう、「デジタイズ」という単語たんごはデジタルデータをつく機械きかい機能きのう機械きかい操作そうさたいしてもちいられる。これにたいして用例ようれい比較ひかくする。

  • デジタル
    • ひろく、アナログデータをデジタルデータに変換へんかんすることにもちいる。れいとして、定規じょうぎながさを計測けいそくし、数値すうちすること。
    • 放送ほうそうれいにとれば、「デジタイズ」が信号しんごう変換へんかんをいうのにたいし、「放送ほうそうのデジタル」のように社会しゃかいてき過程かていについてもいう。
  • 電子でんし
    • 人間にんげんがデータをりデジタルデータをつくる。たとえば、文書ぶんしょって、キーボード操作そうさテキストファイル作成さくせいする。
    • デジタルデータをつく業務ぎょうむてき経営けいえいてき社会しゃかいてき過程かていう。たとえば、社会保険庁しゃかいほけんちょう年金ねんきん情報じょうほう電子でんしする。
    • すでに電子でんしされているアナログデータにはもちいない。「放送ほうそう電子でんし」とはわない。

各種かくしゅデータのデジタイズ[編集へんしゅう]

「デジタイズ」という用語ようごは、音声おんせいだけでなく写真しゃしんビデオなどをスキャンしてコンピュータにむこともす。写真しゃしん場合ばあい、サンプリング周波数しゅうはすう画像がぞう解像度かいぞうどdpi)に相当そうとうする。またりデータは24ビットカラー、あるいは8ビットモノクロ形式けいしき一般いっぱんてきである。デジタイズは画像がぞう電気でんき通信つうしん転送てんそう可能かのうにしたり、コンピュータ処理しょりできるようにするおも手法しゅほうえる。

地理ちり情報じょうほうシステムでは、地理ちりてき特徴とくちょうをデジタイズしてビットマップ画像がぞうラスタ形式けいしき)にする。電子でんし地図ちず様々さまざま地理ちりてき画像がぞう地図ちずをデジタイズすることで作成さくせいされる。

また、ペンタブレットなどの図形ずけい画像がぞう情報じょうほう入力にゅうりょくする機器きき総称そうしょうしてデジタイザーぶ。大型おおがた機器きき図面ずめんりに利用りようされている。この場合ばあい基本きほんてき機器ききからは座標ざひょうデータが送信そうしんされ、ソフトウェアで意味いみのあるベクトル形式けいしきのデータに変換へんかんされる。機器きき精度せいど通常つうじょう0.02~0.1mm程度ていどであるが、操作そうさでは誤差ごさしょうじるので、ソフトウェアがわ補正ほせいすることがおおい。小型こがた機器ききマウスわるポインティングデバイスとして、手描てがきのタッチでイラストえがく、文字もじくといった使つかかた利用りようされる。

アナログからデジタルへ[編集へんしゅう]

現在げんざいでは、音楽おんがく録音ろくおんはほとんどすべてデジタイズをともなう。やく50まんほんInternet Movie Databaseにある映画えいがのうち、やく10%がDVDうえにデジタイズされている。2006ねん現在げんざい世界中せかいじゅうぜん文書ぶんしょやく5%がデジタイズされている[参考さんこう文献ぶんけん 1]

デジタイズが人間にんげん知覚ちかく分解能ぶんかいのうよりちいさいサンプリング間隔かんかくおこなわれると、人間にんげんにはデータがアナログかデジタルかの区別くべつがつかない。音楽おんがく映画えいが放送ほうそうのデジタルはこれにあたる。

デジタル段階だんかい[編集へんしゅう]

デジタルであってもいろいろな段階だんかいがある。たとえば、電子でんし図書館としょかんにおいて、書籍しょせきスキャナった場合ばあいは、書籍しょせき画像がぞうデータであり、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん近代きんだいデジタルライブラリーはこの段階だんかいである。むかし書籍しょせき活字かつじ様子ようすれるが、文字もじがテキストデータされてはいない。これにたいし、青空あおぞら文庫ぶんこ場合ばあいは、書籍しょせき文字もじテキストデータした段階だんかいである。

フィクション[編集へんしゅう]

サイエンス・フィクションでは、人間にんげんをコンピュータないおくむためにデジタル信号しんごうすることを「デジタイズ」とぶことがある。その場合ばあい何故なぜかその人間にんげん現実げんじつ世界せかいからえ、コンピュータない世界せかいあらわれることがおおい(たとえば、映画えいがトロン』など)。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

註釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 電算でんさん」も電子でんし計算けいさんのことをすように、「電子でんし」も説明せつめいのとおり”電子でんし計算けいさんによる情報じょうほうのビット量子りょうし”のことであり、電子でんしとはここでは直接ちょくせつ関係かんけいがない。量子りょうしてき挙動きょどうをとる電子でんし応用おうようした電子でんし工学こうがく電子でんし計算けいさん開発かいはつされていることのアナロジーである。このアナロジーは「英語えいご: Electric」と「英語えいご: Eletronic」の明確めいかくちがいからきているものだが、日本語にほんごでのちがいは一般いっぱんにはそれほど意識いしきされていない。詳細しょうさいは「電子でんし機器きき」を参照さんしょう

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ デジタル大辞泉だいじせんボーンデジタル』 - コトバンク
  2. ^ デジタル大辞泉だいじせんデジタルファースト』 - コトバンク
  3. ^ デジタル大辞泉だいじせんペーパーレイター』 - コトバンク
  4. ^ (1)デジタル・トランスフォーメーションの定義ていぎ”. 情報じょうほう通信つうしん白書はくしょれい3年版ねんばん. 総務そうむしょう (2021ねん7がつ30にち). 2022ねん1がつ9にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]