領りょう邦くに

領りょう邦くに（りょうほう、独どく: Territorium）は、中世ちゅうせいヨーロッパに成立せいりつした君主くんしゅを中心ちゅうしんとする半はん自立じりつの支配しはい圏けん。ドイツでは領りょう邦くにが徐々じょじょに自立じりつを進すすめて国家こっかの体裁ていさいを整ととのえていき（領りょう邦くに国家こっか、独どく: Territorialstaat, Landesstaat）、17世紀せいき半なかばに一応いちおうの国家こっか主権しゅけんが認みとめられた。19世紀せいき後半こうはんにドイツ統一とういつが果はたされると国家こっか主権しゅけんは失うしなわれ、その後ごもドイツ帝国ていこくを構成こうせいする諸しょ邦くにとしての地位ちいを認みとめられたが、その地位ちいも1918年ねんのドイツ革命かくめいによって完全かんぜんに否定ひていされることになる。

名称めいしょう

ドイツ語ごのTerritorium は「縄張なわばり」を意味いみする語かたりである。

「フュルスト（諸侯しょこう）の国くに」（「公国こうこく」）Fürstentum が「領りょう邦くに」に対応たいおうされることもある。

「領りょう邦くに国家こっか」という語かたりは神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこくを構成こうせいする地方ちほう国家こっか（諸侯しょこう領りょう・帝国ていこく都市とし）を指さし、中世ちゅうせい後期こうき（13世紀せいきごろ）以降いこう、神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこくの解体かいたい（1806年ねん）までの時期じきについて用もちいるのが一般いっぱん的てきとされるが、ドイツ統一とういつ（1871年ねん）までのドイツ諸しょ邦くにについても用もちいられることがある。

歴史れきし

11世紀せいきまでには、ヨーロッパ各地かくちにおいて一定いっていの軍事ぐんじ力りょく権限けんげんを行使こうしする実力じつりょく者しゃが現あらわれており、より上位じょういの権力けんりょく（帝みかど権けん、王権おうけんなど）の下したで半はん自立じりつ的てきな政権せいけんを樹立じゅりつしていた。彼かれらは、かつてのように辺境へんきょう防衛ぼうえいの目的もくてきから築城ちくじょうを行おこなうのではなく、自みずからの支配しはい拠点きょてんにあたる箇所かしょに城しろを設もうけるようになり、世襲せしゅう制せいのもとで一定いっていの領域りょういきに対たいして支配しはい力りょくを行使こうしするようになった。ただし、その領域りょういき的てき支配しはいは封建ほうけん的てきな人的じんてき関係かんけいに依存いぞんするものであった。

フランスでは、中世ちゅうせい後期こうきになると王権おうけんの強化きょうかが進すすみ、各地かくちの領りょう邦くにはフランス王権おうけんに従属じゅうぞくする。そのため、各かく領りょう邦くにが自立じりつした主権しゅけん国家こっかへと至いたることはなかった。イングランドでは11世紀せいき後半こうはんのノルマン・コンクエストで、他国たこくと比くらべ王権おうけんの強つよい体制たいせいが形成けいせいされており、領りょう邦くには辺境へんきょう地域ちいき以外いがいにはほとんど存在そんざいしなかった。しかし、ドイツでは領りょう邦くにが徐々じょじょに領りょう邦くに国家こっかとして発展はってんしていった。この背景はいけいとしては、当時とうじの神聖しんせいローマ皇帝こうていが、「イタリア政策せいさく」や「叙任じょにん権けん闘争とうそう」に追おわれて、ドイツ総体そうたいの利害りがい意識いしきへの指導しどう力りょくを欠かいていたことが要因よういんとして挙あげられよう。

ドイツの領りょう邦くに国家こっか

13世紀せいき前半ぜんはん、神聖しんせいローマ皇帝こうていフリードリヒ2世せいは、聖職せいしょく諸侯しょこうと世俗せぞく諸侯しょこうに対たいして上級じょうきゅう裁判さいばん権けん、貨幣かへい鋳造ちゅうぞう権けん、築城ちくじょう権けんなどの諸しょ権利けんりを承認しょうにんするに至いたった。さらに、13世紀せいき半なかばに皇帝こうてい不在ふざいの大だい空位くうい時代じだいに入はいったことは、各地かくちにおける諸侯しょこうの自立じりつを決定的けっていてきなものとし、領りょう邦くに国家こっかの形成けいせいが進すすんだ。1356年ねんの金きむ印しるし勅書ちょくしょはさらに帝国ていこくの分権ぶんけん化かを促進そくしんし、各地かくちの領りょう邦くに君くん主ぬしは領りょう邦くにごとの集権しゅうけん化かを進すすめていった。この時期じきに領りょう邦くにの数かずは300以上いじょうにのぼった。

16世紀せいき、ハプスブルク家かが強大きょうだい化かして領りょう邦くにの自立じりつ性せいが脅おびやかされたが、幾度いくどかの宗教しゅうきょう戦争せんそうを経へてアウクスブルクの宗教しゅうきょう和議わぎが成立せいりつしたことで、領りょう邦くには領内りょうないにおける宗教しゅうきょう選択せんたく権けんを獲得かくとくした。こうして領りょう邦くに教会きょうかい体制たいせいが成立せいりつしたことは、皇帝こうてい・教皇きょうこうの干渉かんしょうから領りょう邦くにを一層いっそう自立じりつさせることになった。

1648年ねん、ヴェストファーレン条約じょうやくにおいて、各かく領りょう邦くにの主権しゅけんが一応いちおうは容認ようにんされ、およそ300の領りょう邦くに国家こっかが成立せいりつした。これはあくまでも理念りねん上じょうの話はなしであり、実際じっさいに主権しゅけん国家こっかとしての地位ちいを固かためたのはごく少数しょうすうの大だい諸侯しょこう領りょうのみであったが、彼かれらは領内りょうない貴族きぞくの勢力せいりょくを抑おさえ、財政ざいせいを安定あんていさせて官僚かんりょう制せいと常備じょうび軍ぐんを養成ようせいした。隣国りんごくフランスが「絶対ぜったい王政おうせい」下したで中央ちゅうおう集権しゅうけん化かを進すすめるのに対たいし、ドイツではこのように各地かくちの領りょう邦くに国家こっかごとに集権しゅうけん化かが進すすめられたため、近代きんだいにおいて統一とういつ的てきな国民こくみん国家こっかを形成けいせいするのが遅おくれることになった。

関連かんれん項目こうもく

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