農学部のうがくぶ

農学部のうがくぶ（のうがくぶ）は、大学だいがくにおいて農学のうがくを中心ちゅうしんとする教育きょういく、研究けんきゅうがなされる学校がっこう、およびその名称めいしょう。大学だいがくの学部がくぶのひとつである。教育きょういく・研究けんきゅうのために、農場のうじょうや実習じっしゅう林りんを保有ほゆうし、研究けんきゅう・実習じっしゅうに利用りようする大学だいがくが多おおい。

概要がいよう

農学のうがくは古典こてん的てきには農学のうがく（植物しょくぶつ栽培さいばい）、農芸のうげい化学かがく、農業のうぎょう工学こうがく、農業のうぎょう経済けいざい学がく、林学りんがく、畜産ちくさん学がく、水産すいさん学がくに区分くぶんされる7領域りょういきを含ふくむ学問がくもん領域りょういきである。現代げんだいでは農芸のうげい化学かがくから派生はせいした栄養えいよう学がく、農業のうぎょう工学こうがく（農業のうぎょう土木どぼく、圃場ほじょう整備せいび）から派生はせいした環境かんきょう学がくなど非常ひじょうに広ひろい教育きょういく・研究けんきゅう分野ぶんやを含ふくみ、近年きんねん、環境かんきょう保護ほごや国際こくさい開発かいはつ、地域ちいき振興しんこうなどに関かんする研究けんきゅう・教育きょういくに力ちからを入いれている所ところも多おおい。また日本にっぽんでは伝統でんとう的てきに昆虫こんちゅう学がくが農学部のうがくぶに設置せっちされる。ただし、植物しょくぶつ（農学のうがく）分野ぶんやと農芸のうげい化学かがく分野ぶんやが大おおきく林学りんがく、農業のうぎょう工学こうがく、水産すいさん分野ぶんや^[1]を持もたない岡山大学おかやまだいがく農学部のうがくぶのように、多おおくの大学だいがくの農学のうがく系けい学部がくぶは設置せっちする学科がっか分野ぶんやに偏かたよりがあり、農学部のうがくぶの文理ぶんり全ぜん領域りょういきを設置せっちする大学だいがくは旧きゅう帝国ていこく大学だいがくと筑波大学つくばだいがく、静岡大学しずおかだいがく、愛媛大学えひめだいがくなどに限かぎられる。一般いっぱん的てきに理系りけいに分類ぶんるいをされるが、農業のうぎょう経済けいざい学がくのように文系ぶんけいに分類ぶんるいされる分野ぶんやもあり、1943年ねんの学徒がくと出陣しゅつじん時ときには、農学部のうがくぶの中なかでも獣医じゅうい学科がっかなどに所属しょぞくする学生がくせいは徴兵ちょうへい猶予ゆうよされる一方いっぽうで、農業のうぎょう経済けいざい学科がっかや農学のうがく科かに所属しょぞくしていた学生がくせいは「文科ぶんか系けい」とみなされ、徴兵ちょうへい対象たいしょうとなった^[2]^[3]。

農業のうぎょうに関かんする学科がっかを専攻せんこうして学士がくしの学位がくいを取得しゅとくし、1年ねん以上いじょうその学科がっかに関かんする実地じっち経験けいけん（技術ぎじゅつ優秀ゆうしゅう）を有ゆうする者ものは、教育きょういく職員しょくいん検定けんていを経へて高等こうとう学校がっこう教諭きょうゆ一種いっしゅ（農業のうぎょう実習じっしゅう）の普通ふつう免許めんきょ状じょうを取得しゅとくすることも出来できる（教育きょういく職員しょくいん免許めんきょ法ほう・別表べっぴょう第だい五ご）。

歴史れきし

日本にっぽん

1876年ねんに開校かいこうした札幌さっぽろ農のう学校がっこう（現在げんざいの北海道大学ほっかいどうだいがく）と1877年ねんに開校かいこうした三田みた育種いくしゅ場じょう、1878年ねんに開校かいこうした駒場こまば農みのり学校がっこう（現在げんざいの東京大学とうきょうだいがく）が、日本にっぽんにおける農学部のうがくぶの源流げんりゅうといえる^[4]。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえ、日本にっぽんで農学部のうがくぶを有ゆうした大学だいがくは、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく、北海道ほっかいどう帝国ていこく大学だいがく、京都きょうと帝国ていこく大学だいがく、九州きゅうしゅう帝国ていこく大学だいがく、東京農業大学とうきょうのうぎょうだいがくの5校こうのみ^[5]であり、現在げんざい、農学部のうがくぶおよびそれに類るいする学部がくぶを有ゆうする大学だいがくは、戦後せんご、旧制きゅうせい専門せんもん学校がっこうなどから昇格しょうかくをしたものがほとんどである。ただし、日本にっぽん大学だいがく農学部のうがくぶ（現在げんざいの生物せいぶつ資源しげん科学かがく部ぶ）は戦中せんちゅうの1943年ねんに増設ぞうせつ、名古屋大学なごやだいがく農学部のうがくぶは学制がくせい改革かいかく後ごの1951年ねんに増設ぞうせつされている。

2010年代ねんだい後半こうはんからは、和食わしょくがユネスコの無形むけい文化ぶんか遺産いさんに登録とうろくされるなど、食しょくに対たいし世間せけんの関心かんしんが高たかまったことを背景はいけいに、農業のうぎょう系けい学部がくぶの新設しんせつが相次あいついでいる^[6]。2015年度ねんどに龍谷大りゅうこくだい学がくで国内こくないで35年ねんぶりに農学部のうがくぶが新設しんせつされ、2016年度ねんどには徳島大学とくしまだいがくでも生物せいぶつ資源しげん産業さんぎょう学部がくぶが新設しんせつされた^[7]。さらに、2018年度ねんどには、東京農業大学とうきょうのうぎょうだいがく以来いらい93年ねんぶりの農業のうぎょう大学だいがくとして新潟にいがた食料しょくりょう農業のうぎょう大学だいがくが開ひらけ学がくするなど、8大学だいがくで食物しょくもつ学がく、医療いりょう栄養えいよう学がく、獣医じゅうい学がくなどの学部がくぶ・学科がっかが新設しんせつされた^[6]。2012年度ねんどには、国立こくりつ大学だいがくでは40年ねんぶりの農学のうがく系けい学がく部長ぶちょう会議かいぎに所属しょぞくする農のう系けい学部がくぶとして山梨大学やまなしだいがくに生命せいめい環境かんきょう学部がくぶが新設しんせつされた。さらに2020年代ねんだいからは、文部もんぶ科学かがく省しょうは管轄かんかつする委員いいん会かいの報告ほうこく書しょを受うけ、特定とくてい成長せいちょう分野ぶんやとしてデジタルとグリーンを牽引けんいんする人材じんざい育成いくせい支援しえんのため、理り、工こう、農学のうがくの分野ぶんやまたはいずれかを含ふくむ融合ゆうごう分野ぶんやを対象たいしょうに、2022年度ねんど第だい2次じ補正ほせい予算よさんで3002億おく円えんを確保かくほ^[8]。2023年ねんに発表はっぴょうされた大学だいがく・高こう専せん機能きのう強化きょうか支援しえん事業じぎょうでは、グリーン等とうの農学部のうがくぶなどの新規しんき開設かいせつを促うながす「デジタル・グリーン等とうの成長せいちょう分野ぶんやをけん引いんする機能きのう強化きょうか支援しえん1」を発表はっぴょう。これについて初年度しょねんど選定せんてい結果けっかを分析ぶんせきし、開設かいせつ申請しんせい学部がくぶを早期そうきに申請しんせいしないと採択さいたく予定よてい件数けんすうの上限じょうげんに達たっするとの見解けんかいを公表こうひょうした。また「情報じょうほう」のほかに「環境かんきょう」や「食しょく」と「農のう」の組くみ合あわせがトレンドとなっている^[9]。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、IT人材じんざいなどは30年ねんには最大さいだい79万まん人にん足たりなくなると試算しさん、文部もんぶ科学かがく省しょうは、デジタルの他ほかに脱だつ炭素たんそなどを成長せいちょう分野ぶんやとし、分野ぶんやを人材じんざいを育成いくせいする理工りこうのほか農のう系けいの学部がくぶを増ふやすため、私立しりつ大学だいがくと公立大こうりつだい学がくを対象たいしょうに約やく250学部がくぶの新設しんせつや理系りけいへの学部がくぶ転換てんかんを支援しえんする方針ほうしんを固かためている。そして創設そうせつした3000億おく円えんの基金ききんを活用かつようし、今後こんご10年ねんかけて文系ぶんけい学部がくぶの多おおい私大しだいを理系りけいに学部がくぶ再編さいへんするよう促うながすという。これは経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう（OECD）諸国しょこくが増加ぞうかしているのに対たいし、日本にっぽんはほとんど変かわっていないという日本にっぽんの理系りけい人材じんざい育成いくせいの停滞ていたいがあり、OECD諸国しょこくがその国くにの大学だいがくで理系りけいを専攻せんこうする学生がくせいは割合わりあい平均へいきん27パーセントより低ひくい17パーセントにとどまっているとの背景はいけいがある^[10]。

日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎも大学だいがく教育きょういくの農学のうがく分野ぶんやの教育きょういく課程かていに関かんする報告ほうこくで、「従来じゅうらいの農学のうがくの専門せんもん構成こうせいを尊重そんちょうし発展はってんさせながらも、細分さいぶん化かや縦割たてわりの負まけの側面そくめんがあることも認識にんしきして、農学のうがくの対象たいしょうを総合そうごう的てきに学まなび農学のうがく構成こうせい分野ぶんや全般ぜんぱんにわたるリテラシーの高たかい学生がくせいの育成いくせいも考かんがえてゆくべきである」と記載きさい^[11]。農学部のうがくぶはデータサイエンス学がくとともに、国くにが特定とくてい成長せいちょう分野ぶんやとして力ちからを入いれる農学のうがく、環境かんきょう学がくを指さし示しめす「グリーン」にあたり、また2024年ねん新設しんせつの食しょく健康けんこう科学かがく部ぶや食しょく環境かんきょう学部がくぶ、農学のうがく食しょく科学かがく部ぶは農学部のうがくぶの食しょく分野ぶんやを進化しんかさせた形かたちで、貧困ひんこんをなくす、環境かんきょう破壊はかいを防ふせぐなどの持続じぞく可能かのうな開発かいはつ、持続じぞく可能かのうな世界せかいを築きずくための持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう（SDGs）を意識いしきしており、農のう食しょく関連かんれん系けい学部がくぶもこれから増ふえることが予想よそうされている^[8]。